• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない C11D
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない C11D
審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正しない C11D
審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正しない C11D
管理番号 1161932
審判番号 訂正2007-390009  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2007-01-31 
確定日 2007-07-30 
事件の表示 特許第3608844号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨・手続の経緯
本件審判請求の要旨は、特許3608844号(平成7年6月13日出願、平成16年10月22日設定登録)の願書に添付した明細書を、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、これに対し、当審は平成19年3月22日付け訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

2.訂正の内容
本件審判請求での訂正事項は以下のa?cのとおりである。
a.特許請求の範囲、請求項1第3行の記載「ラウリル硫酸ナトリウム」を削除する。
b.上記請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載に、発明の詳細な説明の記載を整合させるために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書、発明の詳細な説明、段落【0013】、第4行及び段落【0044】第2?3行の記載の「ラウリル硫酸ナトリウム」を削除する。
c.上記請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載に、発明の詳細な説明の記載を整合させ、それによって、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書、発明の詳細な説明、段落【0141】の記載の全文を削除する。

3.訂正拒絶理由
当審で平成19年3月22日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、上記訂正事項aは特許法第126条第1項第1号の「特許請求の範囲の減縮」、訂正事項b、cは同第3号の「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものと認められるが、該特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正(訂正事項a)は、以下の「理由1」?「理由3」により、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるというものである。

「理由1」本件訂正後の請求項1、2係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記Aの刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

「理由2」本件訂正後の請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記A?Dの刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

「理由3」この出願は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(1)訂正発明
本件訂正後の請求項1、2係る発明は、本件審判請求書に添付された訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】洗浄剤成分と、増粘増泡剤成分と、水とを含む組成物であって、
前記洗浄剤成分が、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸Na混合物、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸アンモニウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸Na、POE(9)ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、POE(9)ノニルスルホフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリン酸モノエタノールアミド硫酸Na混合物、ポリオキシエチレン(3)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリン酸ミリスチン酸(75:25)モノエタノールアミドリン酸エステルNa混合物、モノ(ポリオキシエチレン(6)ラウリン酸アミド)リン酸ナトリウム、モノドデシルリン酸トリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンNa、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸Na、N-ココイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルアスパラギン酸Na、ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム、ラウロイルイセチオン酸Na、ココイルイセチオン酸ナトリウム、POE(3)ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテル(3)カルボン酸Na混合物、ヤシ脂肪酸Na、ラウリン酸トリエタノールアミン、ラウロイルアミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドジメチルプロピルベタイン、N-2-ヒドロキシエチル-N-2-ヤシ脂肪酸アミドエチルグリシン、N-2-ヒドロキシエチル-N-2-ヤシ油脂肪酸アミドエチル-β-アラニン、N-カルボキシメチル-N-{2-〔2-ヒドロキシエチル-ヤシ油脂肪酸アミド〕エチル}グリシン、2-ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシ-エチルイミダゾリニウムベタイン、2-ヤシ油アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミドジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミドから選ばれた少なくとも1種を含み、
前記増粘増泡剤成分が、下記一般式(1):
【化1】

(1)
(但し式(1)中、Rは炭素原子数7?21の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基或は不飽和炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基を表し、POは炭素原子数3のオキシアルキレン基を表し、pは1或は2の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表し、nは0又は1以上の整数を表す)
により表される2種以上のポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物を含み、この混合物におけるmの平均値が0又は1以下の正数であり、かつnの平均値が0.3?2の正数であり、かつ前記増粘増泡剤成分の、洗浄剤組成物中の含有量が0.1?20重量%であることを特徴とする水性高粘度液体洗浄剤組成物。」

(2)引用刊行物及びそれらに記載された事項
「引用刊行物」
A.特開昭56-82897号公報(審査段階での拒絶理由引用文献2)
B.特開昭58-149999号公報
C.特開昭62-10197号公報(拒絶査定で提示された周知文献)
D.JOURNAL of the AMERIRCAN OIL CHEMISTS’SOCIETY,(米)、1971、Vol.48,NO.11,p.674-677(本件訂正審判で請求人が提示した参考資料1)

「引用刊行物に記載された事項 」
A.特開昭56-82897号公報
a1:「(1)一般式(I)・・・で示されるアニオン界面活性剤を4?40重量パーセントおよび一般式(II)
R4

R3CONHCH2CHO(AO´)mH (II)
〔式中、R3は平均炭素数9?15のアルキル基であり、R4は水素又はメチル基、AO´は炭素数2?3のオキシアルキレン基、mは0?20の整数である。〕
で示される非イオン界面活性剤1?10重量パーセント含有し、かつ系のpHが4?7であることを特長とするシャンプー組成物。
(2)一般式(II)で示される非イオン界面活性剤がアルカリ金属触媒の存在下で高級脂肪酸の低級アルコールエステルと当モル以上のアルカノールアミンを反応せしめ、次いで過剰のアルコールアミンを除去し、その後60?100℃でアルキレンオキサイドを反応せしめることによつて得られる反応生成物である特許請求の範囲第1項記載のシヤンプー組成物」(第1頁特許請求の範囲請求項1、2)
a2:「本発明は高泡性を有し、かつ洗髪中のきしみが無く、皮膚、眼粘膜に温和なシャンプー組成物に関するものである。」(第1頁右下欄下から1行?第2頁左上欄2行)
a3:「従来、シャンプー用の界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルフアオレフインスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤が広く使用されているが、これらの界面活性剤は程度の差こそあれいずれも皮膚、眼粘膜に対して刺激作用を有することが認められている。これに対して皮膚、眼粘膜に温和な界面活性剤として例えば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインのようなイミダゾリン型両性界面活性剤があるが、この活性剤は泡立ちが十分でなく・・・このような欠点を改良するため、ラウリン酸ジエタノールアマイドのような公知の増泡剤を併用し、起泡力を良くする試みもなきれているが、その効果は十分でない。また、毛髪のいたみを少くするためにシャンプーのpHは弱酸性が好ましいが、ラウリン酸ジエタノールアマイドは弱酸性では加水分解を受けやすいという欠点があり、シャンプーの経日安定性が十分でなくなる。本発明者らはこれらの欠点を改良すべく研究を重ねた結果」(第2頁左上欄6行?右上欄17行)a4:「本発明の組成物にはさらに従来のシャンプ組成物に一般に配合される成分、例えば高級アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン界面活性剤、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、高級脂肪酸アルカノールアマイド、アルキルジメチルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤、高級アルコールやイソプロピルミリステートなどの油成分、酸化防腐剤、キレート剤、ビルダー、紫外線吸収剤、殺菌剤、防腐剤、色素、香料などを配合することができる。これら添加成分の配合割合は界面活性剤である場合は0?80重量%を加えるかシャンプー処方中の一般式(I)、(II)の活性剤成分の80%までを置換えることができる。」(第4頁左上欄3?19行)
a5:「本発明のシャンプー組成物はシャンプーに必要な諸性能は十分満足な上、洗髪中のきしみが無く、皮膚、眼粘膜に対してきわめて温和な特徴を有している。」(第4頁右上欄5?8行)
a6:「

」(第5頁左上欄 表2)
a7:「実施例5
実施例1中のサンプルNo.A-6 10g
実施例1中のサンプルNo.B-5 2g
2-ウンデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシ
エチルイミダゾリニウムベタイン 10g
プロピレングリコール 2g
香料、色素 微量
水 76g
PHはクエン酸にて5.5に調製した。
上記の処方で製造されたシャンプーは泡立ちが良く、洗髪中のきしみがなく、洗髪後の毛髪はしなやかであった。」(第6頁左上欄8?20行)

B.特開昭58-149999号公報
b1:「1.エチレンオキシドの平均付加モル数が、1ないし4モルの高級脂肪酸モノアルキロールアミドエチレンオキシド付加物を主剤として含有することを特徴とする液体洗浄組成物。
2.高級脂肪酸の炭素数が8ないし18である特許請求の範囲第1項記載の組成物。
3.モノアルキローサルアミドが、モノエタノールアミドおよびイソプロパノールアミドから運ばれる少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の組成物。
4.他の界面活性剤が、高級脂肪酸水溶性塩、ポリオキシエチレン高級アルコール硫酸エステル水溶性塩、高級アルコール硫酸エステル水溶性塩、αーオレフィンスルフォン酸水溶性塩、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸水溶性塩、アシルザルコシン、アシルーβーアラニン、アシルグルタミン酸などのNー長鎖アシルアミノ酸の水溶性塩、高級アルコールリン酸エステル水溶性塩、ポリオキシエチレン高級アルコールリン酸エステル水溶性塩、水溶性ベタイン塩両性界面活性剤、高級脂肪肪酸ショ糖エステル、水溶性非イオン界面活性剤からなる群より選らばれた1種または2種以上である特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(第1頁特許請求の範囲請求項1?4)
b2:「本発明は皮膚に対して低刺激であり、微生物分解性が高く、かつ起泡力、洗浄力等十分に満足できる性能を有する液体洗浄組成物に関するものである。」(第5頁右下欄14?17行)
b3:「エチレンオキシドの平均付加モル数が、1ないし4モルの高級脂肪酸モノアルキロールアミドエチレンオキシド付加物は、軽質あるいは重質の洗浄剤またはシャンプーの添加剤として重要な物質で、これらの用途に使用される場合には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩などの主洗浄剤と併用して洗浄剤組成物の粘度向上、使用時の泡の安定などの効果を目的とした場合が多く、特に、この非イオン性界面活性剤が、酸性でも分解しにくい性質を有していることから、弱酸性軽質洗浄剤または弱酸性シャンプーの添加剤として配合される。」(第2頁右上欄1?12行)

C.特開昭62-10197号公報
c1:「(1)オレイン酸アルカノールアミドのエチレンオキシド付加物からなる非イオン性界面活性剤水溶液用粘度向上剤。
(2)オレイン酸アルカノールアミドのエチレンオキシド付加物におけるアルカノールアミドがモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミンのうちの1種または2種以上の混合物のアミドである特許請求の範囲第(1)項記載の非イオン性界面活性剤水溶液用粘度向上剤。
(3)オレレイン酸アルカノールアミドのエチレンオキシド付加物におけるエチレンオキシドの付加モル数が1?50である特許請求の範囲第(1)項または第(2)項記載の非イオン性界面活性剤水溶液用粘度向上剤。」(第1頁特許請求の範囲請求項1?3)
c2:「脂肪酸アルカノールアミドまたはそのエチレンオキシド付加物が、シャンプー、衣料品、台所用液体洗浄剤のような液体洗浄組成物の有効成分のひとつとして用いられている。」(第1頁右下欄下から7行?下から3行)

D.JOURNAL of the AMERIRCAN OIL CHEMISTS’SOCIETY,(米)、1971、Vol.48,NO.11,p.674-677
(記載事項は、和訳で示した。)
d1:「要約
N-(2-ヒドロキシエチル)アミドとN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミドのオキシアルキル化は、洗浄剤添加物や洗浄剤中間体として価値のある生成物を生成させた。」(第674頁左欄1?5行)
d2:「粘度
アミドと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)又はドデシル硫酸ナトリウムを割合を変えて配合し、全体の濃度は15%水溶液となるようにした、そして、粘度をカノン-マンニング セミミクロ管粘度計で測定した。図1は、LASとアルカノールアミド類の混合物である選定試料組成物に関する粘度変化を示す。図2は、市販のラウリル硫酸ナトリウムとアミド類の混合物に関する同様な粘度変化を示す。」(第675頁右欄の表Iの下 7?16行)
d3:「起泡安定性
起泡安定性に関するアミド添加物の効果をAnstett及びSchuck(7)の小規模皿洗い試験により測定した。この試験の条件を、0.36gの水素化植物油を含む1l/2インチの時計皿が、3枚のディナー皿に相当するように、また、0.l2gの前記水素化植物油を含む1インチ時計皿が、1枚の皿に相当するように、縮小した。皿洗い溶液は、0.12gのドデシル硫酸ナトリウム及び、0.024gの添加物を400mlの水道水(l00ppm硬度)中に、114°Fにおいて溶解したものであった。活性成分として純ドデシル硫酸ナトリウムを使用した。その理由はドデシル硫酸ナトリウムそれ自身の起泡安定性は(皿2枚の)低いものであり、起泡安定性は、添加剤に高く依存することにある。この試験によるアミド類の起泡安定力を、表IVに示す。」(第675頁右欄の表Iの下 17?31行)
d4:「表IIは10重量%のナトリウムメトキシドの存在下、60-75℃において、1.11モルのプロピレンオキサイドと、1モルのペラルゴンアミドとの反応により得られた生成物の通常の分析結果を示すものである。0.92モルのプロピレンオキサイドと1モルのヒドロキシエチルペラルゴンアミドとの付加反応による生成物の組成を比較のために示す。高濃度の非オキシアルキル化アミドは前者の生成物であって、それは洗浄剤添加物として使用するには不満足なものであった。しかしながら、ヒドロキシエチルアミド類のオキシアルキル化は、洗浄剤添加物として、又は硫酸化用に興味深い生成物を生成させる。」(第676頁左欄の図1の下 1?4行及び右蘭の表IVの下 1?8行)

(3)対比判断
(i)訂正発明1について
(i-1)「理由1」(特許法第29条第1項第3号)に関して
刊行物Aには、一般式(I)で示される特定のアニオン界面活性剤4?40重量%および一般式(II)で示される非イオン界面活性剤1?10重量%を含有するシャンプー組成物が記載されている(摘記a1)。ここで、シャンプー組成物は洗浄剤組成物の一種であり、また、該一般式(II)で示される非イオン界面活性剤は、一般式(II)の定義及びその製造方法(摘記a1特に請求項2参照)からみて、訂正発明1で示される一般式(1)により表される2種以上のポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物を含むものであって、この混合物におけるmの平均値が0又は1以下の正数であり、かつnの平均値が0.3?2の正数に該当するものを包含することは技術常識から明らかであり(例えば刊行物Dの表II、摘記d4参照)、その配合量も訂正発明1で規定する量と重複するものである。
そして、訂正発明1は、特定の44種の界面活性剤から選ばれた少なくとも1種を含むことを必須の要件の一つとするものであるが、それ以外の界面活性剤の含有を排除するものではなく、一方、刊行物Aには、該シャンプー組成物に、上記特定のアニオのン界面活性剤以外の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン界面活性剤、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、高級脂肪酸アルカノールアマイド、アルキルジメチルアミンオキサイドなどの非イオン界面活性剤などの訂正発明1で特定する44種の界面活性剤の1種に該当する界面活性剤を、80重量%まで加えるか、シャンプー処方中の一般式(I)、(II)の活性剤成分の80%まで置換えることができる旨記載されており(摘記a4)、しかも、その実施例5には、訂正発明1で示される一般式(1)において、Rが炭素原子数11の飽和炭化水素基で、pが1、mが0、nが2に該当するサンプルNo.B-5(摘記a6の表2参照)であるポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物(これが混合物であることは上記したように技術常識である。)を2g(約2重量%)と訂正発明1で必須とされる特定の界面活性剤成分の1種である2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインに該当する2-ウンデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを10g(約10重量%)及び水を76g含有するシャンプー組成物が記載されており(摘記a7)、具体的にも訂正発明1と区別できない発明が記載されている。
したがって、訂正発明1は、刊行物Aに記載された発明である。

(i-2)「理由2」(特許法第29条第2項)に関して
上記(i-1)に示したように、刊行物Aには、訂正発明1と同一の発明が記載されており、それが、シャンプーに必要な諸性能は十分満足な上、洗髪中のきしみが無く、皮膚、眼粘膜に対してきわめて温和で、高泡性を有すること(摘記a2、a5、実施例6参照)も記載されている。
ここで、訂正発明1は、刊行物Aに記載された発明以外の発明、例えば、刊行物Aに記載された発明での必須成分である一般式(I)で示される特定のアニオン界面活性剤を含まないシャンプー組成物やシャンプー組成物以外の洗浄剤組成物に係る発明も包含するものであるので、それらの点について検討する。
刊行物Aに記載された発明は、一般式(I)で示される特定のアニオン界面活性剤と一般式(II)で示される非イオン界面活性剤を併用することにより、高泡性を有すると記載されているが、同時に、刊行物Aには、皮膚、眼粘膜に温和な界面活性剤として公知であるが泡立ちが十分でない2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインのようなイミダゾリン型両性界面活性剤(摘記a2)に対して、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するサンプルNo.B-5(摘記a6の表2参照)などの一般式(II)で示される非イオン界面活性剤が、公知の増泡剤であるラウリン酸ジエタノールアマイド(摘記a2)より起泡力が優れていることも示されている(第5頁右上欄表3参照)。
また、刊行物Aにおいて、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するサンプルNo.B-5(摘記a6の表2参照)と同様な効果を奏するものとして一般式(II)で示される非イオン界面活性剤のうちの、エチレンオキシドの平均付加モル数が、1ないし4モルの高級脂肪酸モノアルキロールアミドエチレンオキシド付加物などは、軽質あるいは重質の洗浄剤またはシャンプーの添加剤や洗剤成分として重要な物質であって、洗浄剤組成物の粘度向上、使用時の泡の安定などの効果を有し、酸性でも分解しにくいことは、刊行物B、Cに記載されているように当業者に周知の技術的事項である(摘記b1、b2、b3、c1、c2)。
さらに、刊行物Dに記載されているように、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物を含むものが、洗浄剤添加物として価値があり(摘記d1、d4及び表II)、例えば、それ自身の起泡安定性が低いドデシル硫酸ナトリウムを含む洗浄剤組成物による皿洗い試験で、「パルミチン酸ヒドロキシエチルアミド プラス 1モルのプロピレンオキサイド」(摘記d4及び表IIの記載からみて、これが1モルのパルミチン酸ヒドロキシエチルアミドと1モルのプロピレンオキサイドとの付加反応による生成物であって、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するものと認められる。)を添加剤として配合した場合、起泡安定性が向上すること(摘記d3及び表IV)も知られているところである。
しかも、訂正発明1で特定する44種の界面活性剤は、洗浄剤成分として配合されることが周知のものであり、通常、洗浄剤の用途、目的に応じて適宜配合されるものである(摘記a3、a4、b1特に請求項4)。
以上のとおり、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物及びそれを包含する刊行物A記載の一般式(II)で示される非イオン界面活性剤が、シャンプー組成物に限らず、通常の洗浄剤組成物の配合剤として有用であることは公知であるから、該ポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物と、洗浄剤成分として用いられることが周知の訂正発明1で特定する44種の界面活性剤のうちの少なくとも1種の界面活性剤とを含有する洗浄剤組成物を成すことは、刊行物A?Dの記載から当業者の容易に想到し得るところであり、それによる効果も刊行物A?Dの記載から当業者の予想するところである。

なお、請求人は、本願に係る査定不服審判請求書の補正書(平成16年8月5日付けの手続補正書)において、脂肪酸アルカノールアミドのエチレンオキサイド基数、プロピレンオキサイド基数の調製による効果を述べているが、刊行物Cに記載されているようにモノエタノールアミンやジエタノールアミンの脂肪酸アルカノールアミドのエチレンオキサイド付加物が増粘剤として用いられること(摘記c1)、及び刊行物Dに記載されているように、増粘効果は、脂肪酸アルカノールアミドそのものより、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したものの方が小さくなり、かつ、その付加するアルキレンオキサイドの種類によっても効果の程度が異なること、さらに、付加数が多くなれば増粘効果が激減することや配合量にも影響されること(摘記d2及び図1、2)は当業者に公知の技術事項であるから、洗浄剤組成物の用途に応じた粘度等に好適な脂肪酸アルカノールアミドのアルキレンオキサイドの付加数範囲及び該付加物の配合量を選択することは、当業者が実施に際し、実験等により適宜なし得るところと認められる上、例えば、刊行物Aには、シャンプーに必要な諸性能に十分満足な特性をあたえるもの(摘記a5)として、具体的に、訂正発明1で規定する範囲内のエチレンオキサイド基数、プロピレンオキサイド基数のポリオキシプロピレン脂肪酸アルカノールアミド化合物の混合物を含むもの(サンプルNo.B-5)及び配合量が開示されており(摘記a7)、刊行物Dにも、洗浄剤添加物として、具体的に、訂正発明1で規定する範囲内のエチレンオキサイド基数、プロピレンオキサイド基数のものである「0.92モルのプロピレンオキサイドと1モルのヒドロキシエチルペラルゴンアミドとの付加反応による生成物」(摘記d4及び表II)や「パルミチン酸ヒドロキシエチルアミド プラス 1モルのプロピレンオキサイド(1モルのパルミチン酸ヒドロキシエチルアミドと1モルのプロピレンオキサイドとの付加反応による生成物)」(摘記d3及び表IV)が開示されているのであるから、訂正発明1で規定する如きエチレンオキサイド基数、プロピレンオキサイド基数の範囲を選択することも格別困難なものとは認められない。

(i-3)「理由3」(特許法第36条第6項第1号)に関して
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載では、本件訂正明細書段落【0077】の比較製造例9で得られるポリオキシプロピレン(1)ラウリン酸トリグリコールアミド混合物も、訂正発明1での増粘増泡剤成分に該当するものとなるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、明細書において発明として効果を有しないとされるものをも包含するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(i-4)まとめ
したがって、訂正発明1は、上記の「理由1」?「理由3」により独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上検討したとおり、訂正発明1は、上記の「理由1」?「理由3」により独立して特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に違反するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-28 
結審通知日 2007-05-31 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願平7-146403
審決分類 P 1 41・ 121- Z (C11D)
P 1 41・ 856- Z (C11D)
P 1 41・ 537- Z (C11D)
P 1 41・ 113- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 紹英藤森 知郎  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 岩瀬 眞紀子
井上 彌一
登録日 2004-10-22 
登録番号 特許第3608844号(P3608844)
発明の名称 高粘度液体洗浄剤組成物  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 西舘 和之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ