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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1161998 |
審判番号 | 不服2005-16240 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-25 |
確定日 | 2007-08-01 |
事件の表示 | 特願2002-355703「携帯電話用弾性表面波共振子フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月11日出願公開、特開2003-198316〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成6年4月13日に出願された特願平6-74830号の一部を、平成14年12月6日に分割して新たな特許出願としたものであって、拒絶理由に対して平成17年4月14日に手続補書が提出され、平成17年6月28日付で拒絶査定され、これに対して平成17年8月25日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 第二.本願発明 本願発明は、平成17年4月14日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである。 「36°回転YカットLiTaO3基板上に、複数組のIDTを近接配置し、かつ前記IDTの両側に反射器を配設してなるモード結合を利用した弾性表面波共振子フィルタであって、前記IDTおよび前記反射器の電極膜厚をh、当該弾性表面波共振子フィルタで発生する表面波の波長をλとしたとき、0.06≦h/λ≦0.10であり、前記IDTおよび前記反射器の電極指幅をM、同電極指形成ピッチをPとしたとき、0.6≦M/Pであることを特徴とする携帯電話用弾性表面波共振子フィルタ。」 第三.特許法第第29条第2項について、 [1].刊行物、及びその記載事項 原査定の拒絶理由に引用された(A)特開平5-251988号公報、(B)特開平5-121996号公報、及び、周知事項を例示する為の刊行物である(C)特開平2-295212号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (A)特開平5-251988号公報(以下「刊行物A」という。) (A-1).「【0008】【発明の概要】上述の目的を達成するため本発明に係る縦結合二重モードリーキーSAWフィルタは、IDTの電極指幅(ライン幅)hと間隔幅(スペース幅)aとの関係が0.3≦h/(h+a)<0.5となるようにする。 【0009】【実施例】以下本発明を図面に示した実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る縦結合二重モードリーキーSAWフィルタの一実施例の電極パターンの構成図であって、圧電基板1の表面に入力IDT及びその両側に出力IDT3、4を配置し、更にその両側に反射器5、5を配している。このIDT周期をLT (=SAWの波長λ)、ライン幅をh、スペース幅をaとする。[ここでLT =2(h+a)]この構成によりIDT間の音響結合によって生ずる1次モードと3次モードの2つの共振モードを利用した縦結合二重モードリーキーSAWフィルタを実現できる。」 (A-2).「【0011】図3は他は同じ条件としてIDTのライン幅hとスペース幅aの比を変えた時の周波数減衰特性の実験値を示すグラフである。同図より明らかな如くIDTのライン幅hとスペース幅aの比[h/(h+a)]が小さくなる程通過域の高域側近傍のスプリアスが減少し減衰量が大きくなる。しかし上述した如く従来IDTのライン-スペース比はh:a=1:1とするのが一般的であり、特にSAW共振子或はリーキーSAW共振子ではライン幅がスペース幅より細くなると共振子のQが低下する為、できるかぎり同じかむしろライン幅を太くするように構成するのが常であった。[0.5≦h/(h+a)] (A-3).「【0013】尚、ライン幅hを細くすると質量負荷効果の影響が小さくなって中心周波数が高い方へシフトするのはもちろんであるが、反射係数(モード間結合係数κ12´)が大きくなってストップバンド幅が広がり通過帯域幅も広がっていくというメリットもある。以上、本発明を北米向け携帯電話の仕様(AMPS)を例に説明してきたが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、広帯域低損失なフィルタを実現する為IDTのライン幅hとスペース幅aとの関係を0.3≦h/(h+a)<0.5とした縦結合二重モードリーキーSAWフィルタを示したのである。又、本発明を64°YカットX伝搬LiNbO3 基板上のリーキーSAWを用い、1次モードと3次モードの2つの共振モードを利用した縦結合二重モードリーキーSAWフィルタについて説明したが、同様に1次モードと2次モードの2つの共振モードを利用してもよいし、41°YカットX伝搬LiNbO3 、36°YカットX伝搬LiTaO3 等、他のカット、基板のリーキーSAWを用いてもよいこと明白である。」 (A-4).以上の記載から、刊行物Aには次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「36°YカットX伝搬LiTaO3基板上に、複数組のIDTを近接配置し、かつ前記IDTの両側に反射器を配設してなるモード結合を利用した縦結合二重モードリーキーSAWフィルタであって、共振子のQが低下しないようにライン幅を太くするように、前記IDTの電極指幅をh、スペース幅をaとしたとき、電極指幅hとスペース幅aのデューティ比h/(h+a)≧0.5である縦結合二重モードリーキーSAWフィルタ」 (B)特開平5-121996号公報(以下「刊行物B」という。) (B-1).「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の構造による弾性表面波フィルタでは、周波数が1GHz以上の高周波になると、広帯域化できずまたは挿入損失が増大するという問題があった。広帯域化のためには、弾性表面波の反射率の影響を小さくするために電極指の膜厚を薄くする必要がある。こうすると各電極指の電極抵抗が大きくなり、弾性表面波フィルタの挿入損失が大きくなる。このため、挿入損失を下げるためには電極指の膜厚を厚くして電極抵抗を下げる必要がある。しかし、電極指の膜厚を厚くすると電極指における反射率が大きくなり、広帯域化が困難になる。このように1GHz以上の高周波帯において低損失で広帯域な弾性表面波フィルタの実現は困難であった。」 (B-2).「【0008】なお、36°回転Y板LiTaO3 基板を用いて、リーキー波をX方向に伝搬させることが望ましく、基板のカット面及び伝搬方向は±5°程度ずれていてもよい。また、IDT及び反射器の電極指構造を同一間隔とすることが望ましい。」 (B-3).「【0014】図1のシミュレーション結果から、電極指の規格化膜厚(h/λ)が厚くなると、比帯域幅のピークが大きくなると共に全体として対数が低い方にシフトする傾向にあることがわかる。比帯域幅を約1%以上とするためには、図1から明らかなように、入力用IDT及び出力用IDTをそれぞれ5?30対の電極指とし、電極指の規格化膜厚(h/λ)を2%以上とすることが必要となる。」 (B-4).「【0019】各IDT31?35は15.5対の電極指により構成され、反射器36、37は100本の電極により構成されている。IDT31?35の電極指及び反射器36、37の電極はアルミニウムにより作られ、規格化膜厚が5%で、開口長は25λである。終端インピーダンスは50Ωである。IDT31?35及び反射器36、37は同一の周期構造であり、IDTとIDT間及び反射器とIDT間も同じ周期で形成され、電極構造列30全体として同一の周期構造である。」 (B-5).「【0021】本実施例によれば、図1のシミュレーション結果から明らかなように、2%以上の比帯域幅を有する広帯域で低損失な弾性表面波フィルタを実現できる。本発明の第2の実施例による弾性表面波フィルタを図3を用いて説明する。図2に示す弾性表面波フィルタと同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。」 (B-6).IDT31?35の電極指と反射器36、37が同一の規格化膜厚(h/λ)であることは、両者における波長λは共通であるから、両者の膜厚は同一となり、さらに、IDTと反射器の電極指構造が同一間隔であり、且つ、電極構造列全体として同一の周期構造であることは、IDT及び反射器両者の電極幅と、電極子間隔が同一となること等から、IDT31?35の電極指と反射器3の膜厚、電極幅、電極子間隔は、同一ということになる。 (B-7).以上の記載から、刊行物Bには次の発明(以下「B発明」という)が記載されている。 「36°回転Y板LiTaO3基板上に、複数組のIDTを近接配置し、当該IDTの両側に、IDTと同一の、膜厚、電極指幅、電極子間隔を備えた反射器を配設した弾性表面波フィルタにおいて、規格化膜厚を2%以上から5%に変化させて比帯域幅を約1%以上から2%以上に変更する弾性表面波フィルタ」 (C)特開平2-295212号公報(以下「刊行物C」という。) (C-1).「これら電極パターンの形成は、具体的には前記基板1上に膜厚tのAl膜を真空蒸着し、通常のホトリソグラフィ法で前記櫛形駆動電極2と反射電極3および4を同時形成した。 電極間隔はエネルギー閉じ込め構造を採用したので、櫛形駆動電極と両反射電極の間も含めて全てλ/2、すなわち、連続等ピッチ配置になるよう形成した。」(第3頁左上欄第5?12行) [2].本願発明と引用発明との対比・判断 (1).発明特定事項の対応関係 (i).引用発明における「縦結合二重モードリーキーSAWフィルタ」は、本願発明における「モード結合を利用した弾性表面波共振子フィルタ」に対応し、以下同様に「ライン幅h」は「電極指幅M」に、「ライン幅h+スペース幅a」は「電極指形成ピッチP」に各々対応する。 (ii).引用発明における「デューティ比h/(h+a)の値」と本願発明における「0.6≦M/P」とは、「所定値のM/P」で共通する。 (2).一致点 36°回転YカットLiTaO3基板上に、複数組のIDTを近接配置し、前記IDTの両側に反射器を配設してなるモード結合を利用した弾性表面波共振子フィルタであって、 前記IDTの電極指幅をM、同電極指形成ピッチをPとしたとき、所定値のM/Pである携帯電話用弾性表面波共振子フィルタ。」 (3).相違点 (a).IDTおよび反射器の構成に関して、本願発明は、IDT及び反射器の構成要素である、電極膜厚h、電極指幅M、電極指形成ピッチPについては、両者同一構造としているのに対し、引用発明は、IDTと反射器の構成要素の構造が両者同一であるか不明である点 (b).IDTと反射器の構成要素である、電極膜厚h、電極指幅M、電極指形成ピッチP相互間の関係について、本願発明は、波長をλとして、(i).0.06≦h/λ≦0.10、(ii).さらに、0.6≦M/Pの関係を有するのに対し、引用発明は、(i)h/λの関係は当然に存在するものの、その具体的関係については不明であり、(ii)さらに、0.5≦M/Pである点、 (4).相違点の検討 (a). 相違点(a)について、 IDT及び反射器を構成する、電極膜厚、電極指幅、電極指形成ピッチを同一構造とすることは、刊行物B(前記(B-5)参照)、及び、刊行物Cに見られるように周知の構成である。 してみれば、引用発明において、IDT及び反射器を構成する、電極膜厚、電極指幅、電極指形成ピッチを同一構造とすることは単なる設計変更で、格別のものではない。 (b). 相違点(b)について、 本願発明における当該M/Pの値を0.6以上とした理由は、段落【0027】、【0029】、【0036】の記載によれば、シェイプファクタを向上するためにすぎず、引用発明においてもQを大きくすればシェイプファクタが向上するから、さらにQを大きくするために、0.5≦M/Pに代えて0.6≦M/Pとすることは、要求される帯域幅の仕様に応じて適宜設定し得る設計的事項である。 また、規格化膜厚を2%以上から5%に変化させて、比帯域幅を約1%以上から2%以上に変更することが刊行物B(前記(B-3)、(B-4)参照)により公知であると認められる。 しかも、 本願発明における、当該電極膜厚比を、0.06≦h/λ≦0.10に限定した理由も、前記段落【0021】、【0022】の記載によれば、要求される比帯域幅3.3%を得るためにすぎない。 してみると、 引用発明において、刊行物Bにより公知の技術を用いて比帯域幅をさらに大きくするために電極膜厚比h/λ=0.05を本願発明のような範囲にすることは、当業者が要求される帯域幅仕様に応じて適宜為し得る程度の事項である。 (5).まとめ 以上のように、IDT及び反射器を構成する、電極膜厚、電極指幅、電極指形成ピッチを同一構造とすることが単なる設計変更であるとした引用発明において、要求される仕様に応じて、電極膜厚比h/λ、M/Pを適宜範囲の値に設定することは、当業者が刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて容易に発明できたものであり、その効果も予測の範囲内のものである。 第五.むすび したがって、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-06 |
結審通知日 | 2007-05-08 |
審決日 | 2007-05-28 |
出願番号 | 特願2002-355703(P2002-355703) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 崎間 伸洋 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
大日方 和幸 小林 正明 |
発明の名称 | 携帯電話用弾性表面波共振子フィルタ |