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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1162029 |
審判番号 | 不服2004-21896 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-22 |
確定日 | 2007-08-10 |
事件の表示 | 特願2001- 32905「広告情報配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-236636〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年2月8日の出願であって、平成16年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月19日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年11月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 家庭用テレビジョン受信装置を用いて広告情報を配信する広告情報配信システムにおいて、 インターネット上に配設され、上記広告情報の配信を行う広告情報配信用サーバと、 上記家庭用テレビジョン受信装置に外付け接続され、上記広告情報配信用サーバと通信可能なアダプタと、 を具備し、 上記広告情報配信用サーバは、 上記広告情報を上記アダプタに配信する配信手段と、 上記配信手段により配信されたデータの数および量と情報の数に基づき広告情報配信システム利用対価を計算し、この計算結果から上記広告情報の広告主に対して指定期日に請求書を発行する課金制御手段と、 を具備し、 上記配信手段により上記アダプタへ配信される広告情報には、表示保護期間情報を含むとともに、 上記アダプタは、 上記配信手段により上記広告情報配信用サーバから配信された広告情報を受信する受信手段と、 上記受信手段で受信した広告情報を蓄積する記憶手段と、 上記記憶手段に蓄積された広告情報をユーザの選択操作に基づき上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する表示制御手段と、 上記記憶手段に蓄積された広告情報を上記表示保護期間情報の示す表示保護期間の経過により自動的に削除する削除手段と、 を具備し、 上記表示制御手段は、 上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示された広告情報を既読の広告情報、上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示されていない広告情報を未読の広告情報として記憶管理し、 上記未読の広告情報を優先して上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示する こと を特徴とする広告情報配信システム。」 と補正された。 上記補正後の請求項1は、補正前の請求項7に対応するものと認められ、その発明を特定するために必要な事項である「表示制御手段」について、「上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示された広告情報を既読の広告情報、上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示されていない広告情報を未読の広告情報として記憶管理し、上記未読の広告情報を優先して上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示する」との限定を付加し、「上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する」について、「ユーザの選択操作に基づき」との限定を付加し、「接続」に関し、「外付け」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された特表平11-514504号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が認められる。 「第1図は本発明による好ましい装置の全体的なブロック図である。メッセージ配布センタ5はネットワーク媒体17を通じて複数の加入者15(1つを示している)と通信をしている。開示したネットワークは、高速パケット・スイッチング技術、好ましくは、公知タイプの同期転送モード・スイッチング(ATM)を使用していると好ましい。当業者であれば、多数の普通の高速ネットワークのうちの任意のものを使用し得ることがわかるであろう。メッセージ配布センタ5は、放送局による放送、ディジタル的に記憶あるいは記録された映画やプログラム、コマーシャル・メッセージを含む選ばれたテレビジョン・プログラムの配布、送信を制御する。 メッセージ配布センタ5はサーバ10(後により詳しく説明する)を包含し、このサーバは送信されるプログラミング、広告情報ならびにプログラミング、広告情報の配布を制御する情報を含むデータ・ストリームを生成する。このデータ・ストリームはネットワーク媒体17を通じて送信される。サーバ10は高速プロセッサ(図示せず)上で作動すると好ましい。当業者ならば、メッセージ配布センタがネットワーク17上のコンバータの数に応じていくつかのサーバを運転するいくつかの高速プロセッサを含み得ることは了解できよう。メッセージ配布センタ5は、また、ネットワーク媒体を通じてサーバ10の生成した情報を送信する送信機12も包含する。こうして、メッセージ配布センタ5の機能はデータを作成し、ネットワーク媒体17を通じて加入者15にデータを送信することにある。 各加入者15は送信されてきたデータを受信するコンバータ14(後により詳しく説明する)を持たなければならない。コンバータ14はデータからテレビジョン受像機16に表示するに適した信号を抽出する。」 「先に述べたように、加入者はネットワーク17に接続したコンバータ14を持たなければならない。コンバータ14は、第2図に示すように、公知のアドレス指定可能なデータ受信機22を経てコンバータのネットワーク・アドレスでアドレス指定された情報を受信する。情報はアナログ、ディジタルの信号を含み得る。ディジタル信号の処理のみが第2図に示してあるが、ここでは、アナログ信号が普通のコンポーネント(図示せず)によって処理されると仮定する。この好ましい実施例では、コマーシャル・メッセージおよびそれに関連した制御情報はディジタルである。データ受信機22は、マイクロプロセッサ24による処理のために高速メモリ(図示せず)でディジタル情報を緩衝し、整理してすべての制御、フレーミング情報(ルーティング情報を含む)を剥ぎ取ると好ましい。 マイクロプロセッサ24は緩衝されたデータにアクセスし、任意のディジタル・プログラムおよびコマーシャル・データをデコンプレスし、このデコンプレスされたデータをディジタル信号としてディジタル-アナログ・コンバータ26に出力する。ディジタル-アナログ・コンバータ26はマイクロプロセッサ24からのディジタル信号をアナログ信号に変換する。モジュレータ28はプロセッサ10によって指令されたチャネルからのコマーシャル信号を適当なテレビジョン周波数に変調し、テレビジョン受像機16によって見られている或る特定のチャネルに表示させる。」 図2には、コンバータ14が、テレビジョン受像機16に接続されている点が示されている。 以上の記載から、刊行物1には、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているものと認める。 「配布センタ5はネットワーク媒体17を通じて複数の加入者15と通信をし、ネットワークは、高速パケット・スイッチング技術、好ましくは、公知タイプの同期転送モード・スイッチング(ATM)を使用していると好ましく、多数の普通の高速ネットワークのうちの任意のものを使用し得るものであり、メッセージ配布センタ5は、放送局による放送、ディジタル的に記憶あるいは記録された映画やプログラム、コマーシャル・メッセージを含む選ばれたテレビジョン・プログラムの配布、送信を制御おこない、 メッセージ配布センタ5はサーバ10を包含し、このサーバは送信されるプログラミング、広告情報ならびにプログラミング、広告情報の配布を制御する情報を含むデータ・ストリームを生成し、このデータ・ストリームはネットワーク媒体17を通じて送信され、メッセージ配布センタ5は、また、ネットワーク媒体を通じてサーバ10の生成した情報を送信する送信機12も包含し、こうして、メッセージ配布センタ5の機能はデータを作成し、ネットワーク媒体17を通じて加入者15にデータを送信することにあり、 各加入者15は送信されてきたデータを受信するコンバータ14を持たなければならず、コンバータ14(テレビジョン受像器16に接続される。)は、データからテレビジョン受像機16に表示するに適した信号を抽出し、 ネットワーク17に接続したコンバータ14は、公知のアドレス指定可能なデータ受信機22を経てコンバータのネットワーク・アドレスでアドレス指定された情報を受信し、情報はアナログ、ディジタルの信号を含み得るものであり、 データ受信機22は、マイクロプロセッサ24による処理のために高速メモリでディジタル情報を緩衝し、整理してすべての制御、フレーミング情報(ルーティング情報を含む)を剥ぎ取ると好ましく、 マイクロプロセッサ24は緩衝されたデータにアクセスし、任意のディジタル・プログラムおよびコマーシャル・データをデコンプレスし、このデコンプレスされたデータをディジタル信号としてディジタル-アナログ・コンバータ26に出力し、ディジタル-アナログ・コンバータ26はマイクロプロセッサ24からのディジタル信号をアナログ信号に変換し、モジュレータ28はプロセッサ10によって指令されたチャネルからのコマーシャル信号を適当なテレビジョン周波数に変調し、テレビジョン受像機16によって見られている或る特定のチャネルに表示させる、 通信ネットワークを通じてコマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」は、複数の加入者の各テレビジョン受像器16に広告情報を配布し、表示しているから、本願補正発明の「家庭用テレビジョン受信装置を用いて広告情報を配信する広告情報配信システム」に相当する。 また、刊行物1発明の「サーバ10」は、メッセージ配布センタ5に包含され、ネットワーク媒体17を通じて広告情報の配信を行うから、本願補正発明の「広告情報の配信を行う広告情報配信用サーバ」に相当し、ネットワーク上に配設されている点で一致する。 また、刊行物1発明の「コンバータ14」は、メッセージ配信センタ5のサーバ10が送信した広告情報をネットワーク媒体を介して受信するから、本願補正発明の「広告情報配信用サーバと通信可能なアダプタ」に相当し、さらに、刊行物1発明の「コンバータ14」は、テレビジョン受像器16に接続されるから、テレビジョン受像器16に外付け接続されることは明らかであり、本願補正発明とは「家庭用テレビジョン受信装置に接続され」る点で一致する。 また、刊行物1発明の「サーバ10」は、複数の加入者の各「コンバータ14」にネットワーク媒体17を通じて広告情報の配信を行うから、本願補正発明の「広告情報配信用サーバ」が具備する「広告情報をアダプタに配信する配信手段」を備えることは明らかである。 また、刊行物1発明の「コンバータ14」の「データ受信機22」は、サーバ10が送信した広告情報をネットワーク媒体17を介して受信するから、本願補正発明の「配信手段により広告情報配信用サーバから配信された広告情報を受信する受信手段」に相当する。さらに、刊行物1発明の「コンバータ14」は、サーバ10から送信されてきたデータを受信し、そのデータからテレビジョン受像器16に表示するに適した信号を抽出し、テレビジョン受像器16によって見られている或る特定のチャネルに表示させるとともに、各加入者はテレビジョン受像器において特定のチャネルを選択操作することによって広告情報を見ることが出来ることは明らかであるから、本願補正発明の受信した「広告情報をユーザの選択操作に基づき上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する表示制御手段」を備えることは明らかである。 したがって、両者は、 「家庭用テレビジョン受信装置を用いて広告情報を配信する広告情報配信システムにおいて、 通信ネットワーク上に配設され、上記広告情報の配信を行う広告情報配信用サーバと、 上記家庭用テレビジョン受信装置に外付け接続され、上記広告情報配信用サーバと通信可能なアダプタと、 を具備し、 上記広告情報配信用サーバは、 上記広告情報を上記アダプタに配信する配信手段、 を具備し、 上記アダプタは、 上記配信手段により上記広告情報配信用サーバから配信された広告情報を受信する受信手段と、 広告情報をユーザの選択操作に基づき上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する表示制御手段と、 を具備し、 上記表示制御手段は、 上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示すること を特徴とする広告情報配信システム。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 上記「広告情報配信用サーバ」が配設される通信ネットワークは、本願補正発明では、インターネットであるのに対して、刊行物1発明では明らかでない点。 [相違点2] 本願補正発明では、「広告情報配信用サーバ」が、「配信手段により配信されたデータの数および量と情報の数に基づき広告情報配信システム利用対価を計算し、この計算結果から上記広告情報の広告主に対して指定期日に請求書を発行する課金制御手段」を具備するのに対して、刊行物1発明では、課金制御手段を備えることについて開示はない点。 [相違点3] 本願補正発明では、「アダプタ」が「受信手段で受信した広告情報を蓄積する記憶手段」を備えるとともに、「表示制御手段」は、記憶手段に蓄積された広告情報を家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示するのに対して、刊行行物1発明では記憶手段を備えることについて開示はなく、記憶手段に蓄積された広告情報を表示していることについても開示はない点。 [相違点4] 本願補正発明では、「配信手段により上記アダプタへ配信される広告情報には、表示保護期間情報を含む」とともに、「アダプタ」は「記憶手段に蓄積された広告情報を上記表示保護期間情報の示す表示保護期間の経過により自動的に削除する削除手段」を備えるのに対して、刊行物1発明ではこのような表示保護期間情報や、削除手段を備えることについては開示がない点。 [相違点5] 本願補正発明では、「家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示された広告情報を既読の広告情報、上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示されていない広告情報を未読の広告情報として記憶管理し、上記未読の広告情報を優先して上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示する」のに対して、刊行物1発明では既読/未読の広告情報として記憶管理することや、未読の広告情報を優先して表示することが開示されていない点。 (4)判断 [相違点1]について 広告情報配信サーバから広告情報を配信して各テレビジョン受信装置で表示する広告情報配信システムにおいて、広告情報配信サーバをインターネット上に配設することは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第99/52036号パンフレット(特に、図1A,1B及び第6頁第9行?第7頁第3行参照)等参照。)である。 したがって、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」(本願補正発明の「広告情報配信システム」に相当。)の「サーバ10」(本願補正発明の「広告情報配信用サーバ」に相当。)において、当該周知技術を用いて、インターネット上に配設することは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2] 広告情報配信サーバの配信手段から広告情報を配信して各受信装置で表示する広告情報配信システムにおいて、広告情報配信システム利用対価を広告情報の広告主に対して請求する課金制御手段は周知技術(例えば、原査定の拒絶査定で引用された国際公開第00/57624号パンフレット(第8頁第19行?第9頁第5行、第12頁第18行?第30行参照)、拒絶の査定で引用された特開平11-96237号公報(第24,25,96,134段落参照)等参照。)である。 また、一般的に情報配信システムにおいて、課金を行うにあたって、配信手段により配信されたデータ/情報の数、量に基づいて利用対価を計算すること(例えば、上記国際公開第00/57624号パンフレット第12頁第18行?第30行の広告メッセージが見られた端末で表示された回数に基づき、及びそれが表示された端末の数によって徴収される点、特開平11-212995号公報第78段落のサービスプロバイダ設備が各ページャに送信した回数、送信バイト数に応じてユーザ端末に課金する点、特開平2000-78192号公報第63?65段落のプッシュ型情報配信の情報提供事業者課金における従量制、第70段落の電子メールの件数に応じて課金する点等参照。)、及び指定期日に請求書を発行すること(上記特開平11-96237号公報第134段落の月ごとなどの所定期間ごとに広告のカウントに基づいて広告料の請求を行う点、上記特開2000-78192号公報第67段落の課金形態が月単位等の一定期間に対する課金である場合点等参照。)は、いずれも周知技術である。 したがって、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」(本願補正発明の「広告情報配信システム」に相当。)の「サーバ10」(本願補正発明の「広告情報配信用サーバ」に相当。)において、当該周知技術を用いて、「配信手段により配信されたデータの数および量と情報の数に基づき広告情報配信システム利用対価を計算し、この計算結果から上記広告情報の広告主に対して指定期日に請求書を発行する課金制御手段」を設けることは、当業者が容易に想到しえたことである。 [相違点3] 情報配信手段から情報を配信して各テレビジョン受信装置で表示する情報配信システムにおいて、各テレビジョン受信装置に接続され、情報配信手段と通信可能なアダプタが、受信手段で受信した情報を蓄積する記憶手段を備えるとともに、記憶手段に蓄積された情報を表示することは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-154062号公報の【要約】のサブシステム115がネットワーク135からの情報を記憶ユニット125に記憶し、ユーザがTV情報表示モニタに、記憶ユニットの記憶内容を表示する点、原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-275123号公報第25,26段落のテレビジョン受像器1に接続される付属装置2が送信側端末Tからのデータを回線Lを介してデータを受信し、受信データを記憶する受信データ記憶手段13を備えている点、等参照。)である。 したがって、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」(本願補正発明の「広告情報配信システム」に相当。)の「コンバータ14」(本願補正発明の「アダプタ」に相当。)において、当該周知技術を用いて、「受信手段で受信した広告情報を蓄積する記憶手段」を設けるとともに、「記憶手段に蓄積された広告情報を家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する」ように表示制御を行うことは、当業者が容易に想到しえたことである。 [相違点4] 広告情報配信手段から広告情報を配信して各表示装置で表示する広告情報配信システムにおいて、広告情報配信手段により配信される広告情報に、表示保護期間情報を含めるとともに、記憶手段に蓄積された広告情報を表示保護期間情報の示す表示保護期間の経過により自動的に削除する削除手段は、周知技術(例えば、特開2000-253355号公報(放送受信端末装置が送信されてくる広告データを受信して記憶装置102に記憶し、広告データを表示装置105に表示させるにあたり(第18段落)、各広告データの含む有効期限を管理し、有効期限が過ぎた広告データを記憶装置102から削除する(第40段落)点)、特開2000-89708号公報(広告情報を各ユーザに発信したい企業等のサーバ3(広告情報発信装置)に広告情報が格納され、通信網1に接続される個人ユーザのパソコン4(広告情報受信装置)に自動受信手段である通信プログラム5内のデータ53に格納される広告メッセージを表示部61に表示するにあたり、データ53はサーバ3から最新のデータをダウンロードして既存のデータを更新して表示部61に表示される広告メッセージは更新された内容のものとし、企業は期限を決めて広告キャンペーンを行う場合、データ53に使用期限データを含ませ期限超過になるとその企業に関するデータ53のみを消去する点(第9,10段落))等参照。)である。 したがって、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」(本願補正発明の「広告情報配信システム」に相当。)において、当該周知技術を用いて、配信される広告情報には、表示保護期間情報を含むものとするとともに、「コンバータ14」(本願補正発明の「アダプタ」に相当。)に、「記憶手段に蓄積された広告情報を上記表示保護期間情報の示す表示保護期間の経過により自動的に削除する削除手段」を設けることは、当業者が容易に想到しえたことである。 [相違点5] 未読の情報を優先して表示装置の表示画面へ表示する技術は、例えば、特開平5-110593号公報(初期画面は受信専用フォルダ内の電子メールのうち、未読の電子メールの一覧(第6段落))等に示されるように周知技術であり、表示画面に表示された既読の情報と未読の情報を記憶管理する点も技術常識(例えば、特開平11-331904号公報(第14,15段落)、特開2000-217154号公報(第67段落)等参照。)である。 したがって、刊行物1発明の「コマーシャル・メッセージを選択的に配布する装置」(本願補正発明の「広告情報配信システム」に相当。)の「コンバータ14」(本願補正発明の「アダプタ」に相当。)において、当該周知技術・技術常識を用いて、「家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示された広告情報を既読の広告情報、上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示されていない広告情報を未読の広告情報として記憶管理」するとともに、「未読の広告情報を優先して上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示する」ように構成することは、当業者が容易に想到しえたことである。 以上判断したとおり、本願補正発明の上記相違点1乃至5に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり、さらに上記各相違点を総合しても相当困難な格別の事項は見いだせない。また、本願補正発明の作用効果も、刊行物1発明及び周知技術・技術常識から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著な効果は認められない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するのものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年11月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年8月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 家庭用テレビジョン受信装置を用いて広告情報を配信する広告情報配信システムにおいて、 インターネット上に配設され、上記広告情報の配信を行う広告情報配信用サーバと、 上記家庭用テレビジョン受信装置に接続され、上記広告情報配信用サーバと通信可能なアダプタと、 を具備し、 上記広告情報配信用サーバは、 上記広告情報を上記アダプタに配信する配信手段と、 上記配信手段により配信されたデータの数および量と情報の数に基づき広告情報配信システム利用対価を計算し、この計算結果から上記広告情報の広告主に対して指定期日に請求書を発行する課金制御手段と、 を具備し、 上記アダプタは、上記配信手段により上記広告情報配信用サーバから配信された広告情報を受信する受信手段と、 上記受信手段で受信した広告情報を蓄積する記憶手段と、 上記記憶手段に蓄積された広告情報を上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する表示制御手段と、 を具備することを特徴とする広告情報配信システム。 【請求項7】 上記送信手段により上記アダプタへ配信される広告情報は、表示保護 期間情報を含み、 上記アダプタは、 上記記憶手段に蓄積された広告情報を上記表示保護期間情報の示す表示保護期間の経過 により自動的に削除する削除手段、 を具備することを特徴とする請求項1記載の広告情報配信システム。」 (1)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記「2.平成16年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(2)刊行物」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.平成16年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明から、「表示制御手段」に関し、「上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示された広告情報を既読の広告情報、上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示されていない広告情報を未読の広告情報として記憶管理し、上記未読の広告情報を優先して上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面へ表示する」との限定を省き、「上記家庭用テレビジョン受信装置の表示画面に表示する」に関し、「ユーザの選択操作に基づき」との限定を省き、「接続」に関し、「外付け」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.平成16年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(4)判断」に記載したとおり、刊行物1発明及び周知技術・技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-30 |
結審通知日 | 2007-06-01 |
審決日 | 2007-06-29 |
出願番号 | 特願2001-32905(P2001-32905) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須藤 竜也 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
坂東 博司 小林 正明 |
発明の名称 | 広告情報配信システム |
代理人 | 和田 成則 |