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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1162097
審判番号 不服2003-16929  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-02 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 特願2000-356530「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月22日出願公開、特開2001-137489〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月27日に出願した特願平10-81779号の一部を平成12年11月22日に新たな特許出願としたものであって、平成14年11月8日付で拒絶理由通知がなされ、同年12月10日付で手続補正がなされ、平成15年4月9日付で最後の拒絶理由通知がなされ、同年4月30日付で手続補正がなされ、同年7月31日付で補正却下がなされ、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月2日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「遊技領域に、複数の図柄を変動・停止表示可能な図柄表示部と遊技球が入賞可能な変動入賞口を設け、前記変動入賞口への遊技球の入賞を契機として前記図柄表示部に大当たり図柄が表示された場合に、所定時間あるいは所定個数の遊技球の入賞を検知するまでの大入賞口の開成を所定回数だけ断続的に繰り返す大当たり状態が生起する遊技機であって、
前記遊技領域に、表面にそれぞれ異なる数字が記載された複数の変動入賞口を有しており、遊技球が入賞した変動入賞口の違いによって、生起し得る大当たり状態における大入賞口の断続的な開成回数が、変動入賞口の表面に記載された数字にしたがってそれぞれ異なることを特徴とする遊技機。」

と補正された。

上記補正は、平成14年12月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電動役物」を「変動入賞口」と誤記を訂正するものであって、特許法第17条の2第4項第3号の特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものに該当する。同様に、平成14年12月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「大入賞口を所定回数だけ断続的に開成させる大当たり状態」を「所定時間あるいは所定個数の遊技球の入賞を検知するまでの大入賞口の開成を所定回数だけ断続的に繰り返す大当たり状態」と限定し、同じく「複数の電動役物」を「前記遊技領域に、表面にそれぞれ異なる数字が記載された複数の変動入賞口」と限定し、同じく「開成回数が異なる」を「開成回数が、変動入賞口の表面に記載された数字にしたがってそれぞれ異なる」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-231695号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「遊技者にとって有利な第1の状態と遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置と、
打玉の入賞に基づいて前記可変入賞球装置を第1の状態に駆動するように定められた複数の始動入賞口と、
可変表示可能であって、前記可変入賞球装置が第1の状態のときに受け入れられた打玉に基づいてその表示結果を導出する可変表示装置と、
該可変表示装置が遊技者に所定の遊技価値を付与する表示結果を導出する確率を前記複数の始動入賞口毎に変更設定することが可能な確率変更設定手段と、
前記始動入賞口ヘの打玉の入賞に基づいてその始動入賞口に応じて前記確率変更設定手段によつて設定されている確率を選択する確率選択手段と該確率選択手段によって選択された確率に基づく可変表示装置の表示結果が遊技者に所定の遊技価値を付与する表示結果となったか否かを判定する表示結果判定手段と、
該表示結果判定手段の出力に基づいて遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、を備えた弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】)、
「[産業上の利用分野]
・・・、遊技盤上に設けられる始動入賞口に打玉が入賞したときに、遊技者にとって有利な第1の状態と遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置が第1の状態となり、その第1の状態のときに受け入れられた打玉に基づいて遊技者に所定の遊技価値を付与する可能性がある弾球遊技機に関するものである。」(第1頁右欄下段第9?16行)、
「[作 用]
打玉が始動入賞口に入賞すると、可変入賞球装置が打玉を受け入れ易いように第1の状態に駆動される。そして、可変入賞球装置が第1の状態に駆動されたときに打玉が可変入賞球装置に入賞しその入賞玉に基づいて可変表示装置の表示結果が導出される。この際、可変表示装置が遊技者に所定の遊技価値を付与する表示結果(以下、特定表示結果という)を導出する確率が複数の始動入賞口毎に変更設定可能となっており、このため、複数の始動入賞口毎に独自の確率が設定されているので、打玉が始動入賞口に入賞した時点で可変表示装置が特定表示結果を導出する確率が特定される。そして、特定された確率に基づいて可変表示装置の表示結果が導出され、その導出結果が特定表示結果であるときに、遊技者に所定の遊技価値を付与するようになっている。また、複数の始動入賞口毎に特定表示結果が導出される確率を変更設定することができるので、遊技者に所定の遊技価値を付与する可能性にいろいろな変化を与えることができる。」(第2頁左欄下段第17行?同頁右欄下段第17行)、
「パチンコ遊技機1の・・・前面枠2の開口には、扉保持枠3が周設され、該扉保持枠3の一側に・・・ガラス扉枠4及び前面扉板5が開閉自在に枢着される。前記前面枠2の裏面には、遊技盤10及び・・・発射レール等を取り付ける遊技盤保持枠18が固着される。」(第3頁左欄上段第14?20行)、
「遊技盤10の遊技領域12には、・・・、複数の機能の異なる始動入賞口52a、52b、53を有する始動入賞装置50、・・・、一対の玉受部材28a、28bを有する可変入賞球装置20、・・・等がそれぞれ配設される。・・・、前記始動入賞口52a、52b、53に打玉が入賞すると、・・・所定個数の景品玉が払出されるとともに、始動入賞口52a、52b、53に関連して設けられた・・・始動入賞玉検出器54a、54b、55の検出出力に応答して前記可変入賞球装置20の玉受部材28a、28bを相対的に短い時間間隔で開閉動作させるようになっている。すなわち、中央の始動入賞口53に打玉が入賞することによって、玉受部材28a、28bが2回開閉動作を行い、左右の始動入賞口52b、52cに打玉が入賞することによって、玉受部材28a、28bが1回開閉動作を行う。そして、この開閉動作中に玉受部材28a、28bによって導かれた入賞玉が可変入賞球装置20内に設けられた・・・特定入賞口43に入賞して可変表示装置としての・・・7セグメントLED36の可変表示が停止し、その停止時の表示態様が予め定めた特定表示態様であるときには、いわゆる大当り状態となり、・・・大当り処理を行う。すなわち、玉受部材28a、28bの相対的に短い時間間隔の開閉動作を18回行うか、あるいは18回の開閉動作中に可変入賞球装置20内に受入れられた入賞玉が10個検出されるまで開閉動作を行い(以下、開閉サイクルという)、更に、18回の開閉動作中に可変入賞球装置20の下部に形成された複数の入賞口のうち特定入賞口43に入賞して再度7セグメントLED36が特定表示態様を表示すると、上記した開閉サイクルを繰返すことができるようになっている。ただし、特定表示態様が表示される毎に、開閉サイクルを直ちに停止し、次の開閉サイクルに移行する。また、この開閉サイクルの繰り返しは、入賞玉が特定入賞口43に入賞して7セグメントLED36の表示態様が特定表示態様であることを条件として、最高8回に限定されている。また、この実施例においては、始動入賞口毎に・・・7セグメントLED36が特定遊技状態となる表示態様を表示する確率を変更設定することができるようになっている。具体的には、第1の始動入賞口52a、52bに打玉が入賞したときには、「7」だけが特定表示態様であると設定されると共に、その「7」が表示される確率を3段階に変更することができる。しかして、第1の始動入賞口52a、52bへの打玉の入賞に基づく玉受部材28a、28bの開閉中に受け入れられた打玉が特定入賞口43に入賞して7セグメントLED36に「7」が表示されたときに大当り状態であると判定される。一方、第2の始動入賞口53に打玉が入賞したときには、「7」に加えて「3」「5」も特定表示態様であると設定されると共にその「3」「5」「7」が表示される確率を3段階に変更することかできる。しかして、第2の始動入賞口53への打玉の入賞に基づく玉受部材28a、28bの開閉中に受け入れられた打玉が特定入賞口43に入賞して7セグメントLED36に「7」「3」「5」が表示されたときに大当り状態であると判定される。ただし、-旦大当り状態と判定されて開閉サイクルが開始した場合において、開閉サイクルの繰り返し条件の成立は、始動入賞口の種類に関係なく開閉サイクルの前半(例えば、5個の入賞玉が発生するまで又は8回の開閉動作が終了するまで)において「7」が表示されたときであり、開閉サイクルの後半において「7」「3」「5」が表示されたときである。」(第3頁左欄下段第1行?第4頁右欄上段第19行)、
「コントロール基板ボックス64には、第7図に示すように開閉蓋65が形成され、その開閉蓋65の内側に第1確率選択スイッチ66と第2確率選択スイッチ67とが設けられている。第1確率選択スイッチ66は、前記第1の始動入賞口52a、52bに対応して設けられ、第2確率選択スイッチ67は、前記第2の始動入賞口53に対応して設けられている。しかして、第1確率選択スイッチ66及び第2確率選択スイッチ67は、回転つまみ形式のものが使用されており、このため、選択スイッチ66、67が回転動作される毎に特定表示態様の発生確率が変更するようになっている。この実施例においては、・・・特定表示態様の発生確率は、それぞれ3段階に設定され、選択スイッチ66によって設定値「A」から「C」が、選択スイッチ67によって設定値「D」から「F」がそれぞれ回転操作される毎に順次選択されるようになっている。」(第4頁右欄下段第8行?第5頁左欄上段第6行)、
「可変入賞球装置20は、前記遊技盤10に取り付けられる取付基板21を有し、その取付基板21・・・には、・・・窓開口22が形成され、該窓開口22の奥側に入賞空間23が形成されている。窓開口22の上部には、入賞規制部24か突設され、該入賞規制部24の前面に上部装飾板25が固着され、この入賞規制部24の上部であって、上部装飾板25の後面に前記通常入賞口26が形成されている。また、この上部装飾板25・・・には、前記した開閉サイクルの継続回数(8回)を報知する継続回数表示LED27が前面に臨むように複数配置されている。前記窓開口22のほぼ中央左右には、一対の玉受部材28a、28bが開閉自在に軸支されている。この玉受部材28a、28bは、・・・リンク部材等を介してソレノイド29a、29b(第6図参照)に連結され、ソレノイド29a、29bの励磁、非励磁に対応して玉受部材28a、28bが打玉を受け入れる開成状態(第1の状態)と打玉を受け入れない閉成状態(第2の状態)とに交互に変化するようになっている。前記入賞空間23は、前後方向にも奥行幅を有する凹状となっており、この入賞空間23を上下に分割する玉転動板33a、33bが横臥されている。玉転動板33a、33bは、後方に向って下り傾斜するように設けられており、玉受部材28a、28bによって導かれた入賞玉であって、玉転動板33a、33b上に乗った入賞玉は、後方へ転動して前記入賞空間23の後面壁の前方であって、下方に連通ずる落下穴に落下して・・・下部玉転動板34に落下し、・・・特定入賞口43を含む複数の特定入賞口43、44a、44bのいずれかに誘導されるようになっている。・・・。玉転動板33a、33bの中央には、・・・振分装置30が設けられているこの振分装置30は、・・・上下方向に揺動するようになっている。しかして、振分装置30は、玉受部材28a、28bによって導かれた打玉を玉受部材28a、28bの回動角度との微妙な位置関係で・・・複数の入賞口43、44a、44bに向けて落下させる。より具体的には、振分部材31が下方に揺動したとき玉受部材28a、28bに導かれた打玉は、そのまま下方に向けて落下する可能性が高く、これがため複数の入賞口43、44a、44bのいずれか、特に特定入賞口43に入賞する可能性が高くなる。これに対し、振分部材31が上方に揺動した位置にあるときには、ほとんどの打玉が玉受部材28a、28bから玉転動板33a、33bへ導かれて落下穴に落下するか、あるいは僅かな打玉が玉受部材28a、28bから流下して振分部材31の側面に衝突して左右方向に反発され、これがため通常入賞口44a、44bに誘導される可能性が高くなる。したがって、・・・振分部材31を揺動動作させているときの方が、振分部材31を揺動させていないときよりも特定入賞口43に入賞する可能性が高くなる。また、前記振分装置30の下方であって入賞空間23の後面には、大当り状態となったときの1回の開閉サイクル中に入賞した入賞玉数を表示する入賞個数表示LED35と、常には、可変表示しており、玉受部材28a、28bによって受け入れられた打玉が特定入賞口43に入賞したときにその可変表示を停止する可変表示装置としての7セグメントLED36と、始動入賞時に大当りとなる特定表示態様を表示する当り目表示LED37?39とが設けられている。このうち、7セグメントLED36は、・・・大当り状態の成立や繰り返し条件の成立を遊技者に視認させるものであり、この実施例においては、第2図に示すようなパターンに従って順次可変表示されるようになっている。また、当り目表示LED37?39は、大当り状態が成立するための特定表示態様の種類や繰り返し条件が成立するための表示態様の種類を遊技者に報知するもので、各当り目表示LED37?39の下部には、特定表示態様としての対応する数字「3」「7」「5」が表示されている。具体的には、通常の遊技状態、第1の始動入賞口52a、52bに打玉が入賞した遊技状態及び開閉サイクルの前半では、中央の「7」に対応する当り目表示LED38が点灯して、大当り状態となる特定表示態様又は繰り返し条件が成立する表示態様として「7」である旨が報知され、第2の始動入賞口53に打玉が入賞した遊技状態及び開閉サイクルの後半では、すべての当り目表示LED37?39が点灯して、大当り状態となる特定表示態様又は繰り返し条件が成立する表示態様として「3」「7」「5」である旨が報知される。前記玉受部材28a、28bによって導かれた入賞玉であって、前記玉転動板33a、33b上を後方に転動して落下穴から落下した入賞玉は、後方から前方に向って傾斜する下部玉転動板34に受け止められ、前方に向って誘導される。そして、その下部玉転動板34の前方には、前記窓開口22の下方両側縁及び下方縁を囲むように入賞玉受枠40が突設され、該入賞玉受枠40の前面に下部装飾板42が取着されている。しかして、この入賞玉受枠40には、仕切部材41によって複数の入賞口が形成されている。すなわち、入賞玉受枠40のほぼ中央には、特定入賞口43が、その左右両側には、通常入賞口44a、44bがそれぞれ形成されている。そして、特定入賞口43に入賞した入賞玉は、特定入賞玉検出器45によって検出される。また、上記した3つの入賞玉口43、44a、44bに入賞した入賞玉は、遊技盤10の裏面に固着される誘導通路47によって一ケ所に集められ、入賞玉検出器46によって検出される。入賞玉検出器46によって検出された入賞玉数は、前記入賞個数表示LED35によって表示される。」(第5頁左欄上段第10行?第6頁左欄下段第8行)、
「始動入賞装置50は、遊技盤10の表面に取り付けられる取付基板51に・・・設けられる。つまり、取付基板51の前面に遊技領域12を落下する打玉を受け止める複数(3つ)の始動入賞口52a、52b、53が等間隔に突設され、それぞれの始動入賞口52a、52b、53には、入賞した打玉を検出する始動入賞玉検出器54a、54b、55が一体的に設けられている。ところで、複数の始動入賞口は、左右に配置される第1の始動入賞口52a、52bと中央に配置される第2の始動入賞口53との二種類に分けられ、それぞれ・・・機能が異なるようになっている。・・・。ところで、特定表示態様の発生確率は、例えば、第2図に示されるよう制御される。すなわち、前記第1確率選択スイッチ66の設定値が「A」である場合には、7セグメントLED36の1周期の表示態様「10」個のうち特定表示態様の「7」が1個あるため、その発生確率は、「1/10」とされ、第1確率選択スイッチ66の設定値が「B」である場合には、7セグメントLED36の1周期の表示態様「15」個のうち特定表示態様の「7」が1個あるため、その発生確率は、「1/15」とされ、第1確率選択スイッチ66の設定値が「C」である場合には、7セグメントLED36の1周期の表示態様「20」個のうち特定表示態様の「7」が1個あるため、その発生確率は、「l/20」とされる。また、前記第2確率選択スイッチ67の設定値が「D」である場合には、7セグメントLED36の1周期の表示態様「15」個のうち特定表示態様の「3」「5」「7」が3個あるため、その発生確率は、「1/5」とされ、第2確率選択スイッチ67の設定値が「E」である場合には、7セグメントLED36の1周期の表示態様「30」個のうち特定表示態様の「3」「5」「7」が3個あるため、その発生確率は、「l/10」とされ、第2確率選択スイッチ67の設定値が「F」である場合には7セグメントLED36の1周期の表示態様「45」個のうち特定表示態様の「3」「5」「7」が3個あるため、その発生確率は、「l/15」とされる。」(第6頁左欄下段第9行?第7頁左欄上段第16行)、
「第4A図の処理について・・・、電源が投入されると、第1確率選択スイッチ66についてどのスイッチが選択されているか否かにつきステップ1?ステツプS5の処理が行われ・・・終了すると、第4B図に示す処理に移行する。第4B図においては、まず、確率選択スイッチA?Cのいずれかで選択された可変表示データに基づいて7セグメントLED36が可変表示し(ステップS11)、それに基づく特定表示態様が「7」だけである旨を報知するために当り目表示LED-Bが点灯される(ステップS12)。しかして、遊技が開始されると、まず第2の始動入賞口53に対応するOPSW2がONしたか否かが判別され(ステップS13)、ONしていない場合には、第1の始動入賞口52a、52bに対応するOPSW1がONしたか否かが判別される(ステップS14)。このように、OPSW1よりもOPSW2を優先して判別しているため、第1の始動入賞口52a、52bと第2の始動入賞口53とに同時に打玉が入賞したときには、OPSW2のONに基づく処理を優先して行うようになっている。・・・、前記ステップS13でOPSW2がONしたと判別された場合には、可変表示データを確率選択スイッチD?Fのいずれかで選択された可変表示データに変換して可変表示を行い(ステップS15)、それと共に当り目変更フラグがセットされ(ステップS16)、特定表示態様が「3」「5」「7」である旨を報知すべくすべての当り目表示LED-ABCが点灯される(ステップS17)。その後、2回開閉処理が開始されて(ステップS18)、次のステップS20に進む。一方、前記ステップS14において、OSPW1がONしたと判別された場合には、1回開閉処理が開始されて(ステップS19)、次の処理に進む。ここで、ステップS18、S19の開閉処理が開始される前に1秒程の開閉準備処理を設けた方が望ましい。また、開閉処理中においては、振分部材31が駆動され(例えば、ステップS18においては2回、ステップS19においては1回)ると共に、遊技効果ランプ56a、56bやスピーカ7等も異なる態様で駆動制御される。前記ステップS18又はステップS19において、開閉処理が開始されると、VSWがONしたか否かが開閉処理が終了するまで監視される(ステップS20、S21)。しかして、開閉処理が終了するまでの間にVSWがONしたと判別されたときには、常に可変表示している7セグメントLED36の可変表示を停止しくステップS22)、その後、当り目変更フラグがセットされているか否かが判別される(ステップ523)。当り目変更フラグがセットされている場合には、7セグメントLED36の停止時の表示が特定表示態様である「3」「5」「7」のいずれかであるか否かが判別され(ステップS24)、いずれかの表示である場合には、大当り状態となって前記した大当り処理が行われる(ステップS26)。一方、ステップS23において、当り目変更フラグがセットされていないと判別された場合には、7セグメントLED36の停止時の表示が特定表示態様である「7」であるか否かが判別され(ステップS25)、「7」の表示である場合には、大当り状態となって前記した大当り処理が行われる(ステップS26)。しかし、“ステップS24又はステップS25において、7セグメントLED36の停止時の表示が特定表示態様でない場合には、7セグメントLED36の可変表示を開始させ(ステップS27)、その後、タイマT1が作動中であるか否かが判別され(ステップS28) 、作動中でない場合には、前記ステップS21に戻り、作動中である場合には、・・・ステップS30に戻る。ここで、タイマT1は、ステップS29でセットされるもので、開閉処理が終了した後に一定時間(例えば、2秒程度)の間、開閉処理によって受け入れられた打玉が特定入賞口43に入賞したか否かを監視するために設定されるものである。これは、開閉処理が終了してもその終了間際に受け入れられた打玉が可変入賞球装置20の入賞空間23内を落下している最中で特定入賞口43に入賞する可能性があるため、そのような状態を救済するために設けられるものである。なお、この実施例では、開閉処理が終了するまで、すなわちステップS21の処理が終了するまでの間に打玉が始動入賞口に入賞しても、その入賞を無効として処理し、開閉処理が終了してタイマT1が作動している間に始動入賞口に入賞した場合には、・・・ステップS29?ステツプS36でその入賞を有効として処理している。そこで、ステップS21の開閉処理が終了した後の処理について・・・、まず、開閉処理が終了したと判別された場合には、・・・タイマT1がセットされ(ステップS29)、そのタイマT1が終了するまでの間VSWがONしたか否か(ステップS30)、OPSW2がONしたか否か(ステップ531)、0PSWIがONしたか否か(ステップ532)がそれぞれ判別される(ステップS30?ステツプSV3)。しかして、タイマT1の作動中にVSWがONしたと判別された場合には、前記ステップS22に戻り、また、タイマT1の作動中にOPSW2がONしたと判別された場合には、直ちにタイマT1をリセットし(ステップS34)、その後、当り目変更フラグがセットされているか否かが判別され(ステップS35)、セットされていれば、前記ステップS18に戻り、セットされていなければ、前記ステップS15に戻る。したがって、1回開閉処理後のT1時間内に第2の始動入賞口53に打玉が入賞した場合には、当り目の変更が行われることになる。更に、タイマT1の作動中にOPSW1がONしたと判別された場合には、直ちにタイマT1をリセットし(ステップS36)、その後、前記ステップS19に戻る。この場合、前記ステップS35のように当り目変更フラグがセットされていたか否かを判別しないので、例えば、2回開閉処理後のT1時間内に第1の始動入賞口52a、52bに打玉が入賞した場合においては、引き続いて当り目表示LED-ABCが点灯した状態で特定表示態様が判断されることになる。・・・。また、この場合、ステップS36の後にステップS35のような処理を行わせてもよいし、逆に前記ステップS34の後でステップS35の処理を省略しても良い。上記したタイマT1が終了するまでの間に、VSW、OPSW2、OPSW1のいずれもONしなかった場合には、次に、当り目変更フラグがセツトされているか否かが判別され(ステップS37)、セットされていれば、当り目変更フラグをリセットし(ステップS38)、可変表示データを確率選択スイッチA-Cのいずれかで選択された可変表示データに変換して可変表示し(ステップS39)、当り目表示LED-Bを点灯し(ステップS40)、処理を終了する。また、ステップS37で当り目変更フラグがセットされていないと判別された場合には、上記ステップS38?ステツプS40の処理を行うことなく全体の処理を終了する。なお、前記ステップS1?ステツプS10までの制御は、電源投入時に1回行うだけとし、その後は、確率選択スイッチ66、67を操作しても確率の変更を行えないようにしてもよい。」(第8頁左欄上段第8行?第10頁左欄上段第15行)、
「第1の始動入賞口52a、52bに打玉が入賞すると1回開閉動作し、第2の始動入賞口53に打玉が入賞すると2回開閉動作する。それと共に、可変表示装置としての7セグメントLED36が特定表示態様を表示する確率も始動入賞口52a、52b、53毎に複数段階の確率の中から設定されたものが選択される。そして、可変入賞球装置20が1回又は2回の開閉動作で駆動されているときに打玉が特定入賞口43に入賞すると、その入賞玉に基づいて7セグメントLED36の表示結果が導出されるが、この際、複数の始動入賞口52a、52b、53毎に特定表示態様が導出される確率を変更設定することができるので、遊技者に所定の遊技価値を付与する可能性にいろいろな変化を与えることができる」(第10頁左欄上段第20行?同頁右欄上段第15行)、
「実施例の変形例、あるいは他の実施例として以下のようなものが考えられる。
(1) 上記実施例では、機能の異なる始動入賞口毎に確率の変更設定が可能なものを示したが、機能が同じ始動入賞口でも別々に変更設定できるようにしてもよい。また、上記実施例では、第1の始動入賞口と第2の始動入賞口とでは、全体的に第2の始動入賞口の方が高い確率となるようなものを示したが、これを逆に設定しても良いし、あるいは、確率の変更設定可能な段階も、2段階以上でもよいし、確率の値も任意に設定しても良い。・・・。
(2) 上記実施例では、開閉サイクルの前半と後半とで当り目が変更されるものを示したが、開閉サイクルを通じて変更されないものでもよい。また、上記実施例では、繰り返し条件が成立したときに、直ちに次の開閉サイクルに移行するものを示したが、繰り返し条件の成立を記憶しておき、所定の開閉サイクルが終了してから次の開閉サイクルに移行するものでもよい。更に、繰り返し条件の成立として、7セグメントLED36の表示が特定表示態様となるものを示したが、単に特定入賞口43への入賞だけで繰り返し条件の成立としてもよい。・・・。
(3) 上記実施例では、始動入賞から玉受部材28a、28bの開閉動作の終了まで当り目の変更を禁止しているが、この場合、始動入賞は、有効として開閉処理を行うものでもよい。例えば、始動入賞口52a、52b又は53に短期間のうちに連続して打玉が入賞した場合は、先の入賞に基づき玉受部材28a、28bを開閉処理し、その開閉処理されている途中に次の入賞に基づく信号で先の開閉処理を直ちに停止し、次の入賞に基づく開閉処理を行うように制御する。この場合、開閉動作の制御は、上記したように制御するにしても、当り目の変更は、遊技者に有利となるように変更するものでもよい。また、始動開閉前の準備時間中に始動入賞があった場合には、遊技者に与える価値の大きい方を選択して行い、その際、それに対応する確率をも選択するようにしてもよい。
(4) 始動入賞口の機能の差異として、開閉回数に代えて開時間としてもよい。例えば、第1の始動入賞口への入賞に基づく開時間を1秒とし、第2の始動入賞口への入賞に基づく開時間を2秒とする。また、始動入賞口の種類による動作上の機能の差異を設けなくてもよい。
(5) 特定表示態様が表示される確率の増加態様として、特定表示態様を1種類(例えば、「7」)とし、その1つの特定表示態様が表示される内部確率を変化(例えば、表示される時間を長くする)させるようにしてもよいし、順次可変表示される表示態様の順列の中でその1つの特定表示態様の数を増加させてもよい。・・・。
(6) 上記実施例では、可変入賞球装置20として一対の玉受部材28a、28bを開閉動作させるものを示したが、これに限らず、前方へ開閉する開閉板や左右に移動するスライド部材を用いてもよく、また、開閉動作に限らず、開きっぱなしにしておき、その開成状態の時間を制御するようにしてもよい。また、可変入賞球装置20には、特定入賞口43を含む複数の入賞口を設け、振分部材31によって特定入賞口43への振分けを行うようしているが、すべて特定入賞口として振分部材を省略するようにしてもよい。また、特定入賞口のみを設けたものでもよい。
(7) 上記実施例では、可変表示装置(7セグメントLED)が常時可変表示しており、特定入賞口43への入賞で停止するものを示したが、常時は可変表示を停止させておき、特定入賞口43への入賞に基づいて可変表示させ、一定時間後停止させるようにしたものでも良い。また、可変表示装置として7セグメントLEDを使用したが、複数の発光源(ルーレット式)、液晶表示器、表示ドラム、リーフ式表示器等を用いてもよく、また、これらを可変入賞球装置とは一体又は別体に設けてもよく、更に、可変表示装置も1個だけでなく、複数個設けてそれらの組合せを利用して、特定遊技状態を発生させるように制御しても良い。
(8) 始動入賞口毎に大当りとなる確率が変化するだけでなく、開閉サイクルの継続回数・・・を選択するようにしたものでもよい。
(9) ・・・。
(10) 弾球遊技機として、通常のパチンコ遊技機に限らず、アレンジ式パチンコ遊技機や、あるいは貸玉データが記録された磁気カード、光カード、ICカード等の記録媒体を使用して遊技するカード式遊技機であってもよい。・・・。」(第10頁右欄上段第18行?第11頁右欄下段第6行)
との記載が認められる。
また、上記摘記事項および第2図等より、可変表示可能であって、可変入賞球装置が第1の状態のときに受け入れられた打玉に基づいてその表示結果を導出する可変表示装置であること、特定入賞口43に入賞して可変表示装置としての7セグメントLED36の可変表示が停止し、その停止時の表示態様が予め定めた特定表示態様であるときには、いわゆる大当り状態となること、7セグメントLED36は、第2図に示すようなパターンに従って順次可変表示されるようになっていること、可変表示装置が常時可変表示しており、特定入賞口43への入賞で停止するものや、常時は可変表示を停止させておき、特定入賞口43への入賞に基づいて可変表示させ、一定時間後停止させるようにしたものでも良いこと、可変表示装置も1個だけでなく、複数個設けてそれらの組合せを利用して、特定遊技状態を発生させるように制御しても良いこと等から、可変表示装置は、「複数の図柄を変動・停止表示可能」であるものと認められ、
また、上記摘記事項および第1図等より、特定入賞口43に入賞して可変表示装置としての7セグメントLED36の可変表示が停止し、その停止時の表示態様が予め定めた特定表示態様であるときには、いわゆる大当り状態となり、大当り処理を行い、すなわち、玉受部材28a、28bの相対的に短い時間間隔の開閉動作を18回行うか、あるいは18回の開閉動作中に可変入賞球装置20内に受入れられた入賞玉が10個検出されるまで開閉動作を行い(以下、開閉サイクルという)、更に、18回の開閉動作中に特定入賞口43に入賞して再度7セグメントLED36が特定表示態様を表示すると、開閉サイクルは繰返すことができるようになっていて、この開閉サイクルの繰り返しは、入賞玉が特定入賞口43に入賞して7セグメントLED36の表示態様が特定表示態様であることを条件として、最高8回に限定されていること、繰り返し条件が成立したときに、直ちに次の開閉サイクルに移行するものや、繰り返し条件の成立を記憶しておき、所定の開閉サイクルが終了してから次の開閉サイクルに移行するものでもよく、更に、繰り返し条件の成立として、7セグメントLED36の表示が特定表示態様となるものや、単に特定入賞口43への入賞だけで繰り返し条件の成立としてもよいこと、始動入賞口毎に大当りとなる確率が変化するだけでなく、開閉サイクルの継続回数を選択するようにしたものでもよいこと等から、パチンコ遊技機1は、「入賞玉が特定入賞口43に入賞して前記可変表示装置の可変表示が停止し、その停止時の図柄が予め定めた特定図柄であるときには、一対の玉受部材28a、28bの短い時間間隔の開閉動作を18回あるいは18回の開閉動作中に可変入賞球装置20内に受入れられた入賞玉が10個検出されるまでの一対の玉受部材28a、28bの開閉サイクルを最高8回を限度に断続的に繰返す大当り状態が成立するものであって、遊技領域12に、第1の始動入賞口52a、52bと第2の始動入賞口53を有しており、パチンコ玉が入賞した始動入賞口52a、52b、53の違いによって、成立し得る大当り状態における一対の玉受部材28a、28bの断続的な開閉サイクルの継続回数が、それぞれ異なる」ようにできるものと認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「遊技領域12に、複数の図柄を変動・停止表示可能な可変表示装置とパチンコ玉が入賞する始動入賞口52a、52b、53を設け、前記始動入賞口52a、52b、53へのパチンコ玉の入賞により一対の玉受部材28a、28bを開閉動作し、この開閉動作中に玉受部材28a、28bによって導かれた入賞玉が特定入賞口43に入賞して前記可変表示装置の可変表示が停止し、その停止時の図柄が予め定めた特定図柄であるときには、一対の玉受部材28a、28bの短い時間間隔の開閉動作を18回あるいは18回の開閉動作中に可変入賞球装置20内に受入れられた入賞玉が10個検出されるまでの一対の玉受部材28a、28bの開閉サイクルを最高8回を限度に断続的に繰返す大当り状態が成立するパチンコ遊技機1であって、
前記遊技領域12に、第1の始動入賞口52a、52bと第2の始動入賞口53を有しており、パチンコ玉が入賞した始動入賞口52a、52b、53の違いによって、成立し得る大当り状態における一対の玉受部材28a、28bの断続的な開閉サイクルの継続回数が、それぞれ異なるパチンコ遊技機1。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「可変表示装置」、「パチンコ玉」、「入賞する」、「パチンコ玉の入賞により一対の玉受部材28a、28bを開閉動作し、この開閉動作中に玉受部材28a、28bによって導かれた入賞玉が特定入賞口43に入賞して前記可変表示装置の可変表示が停止し、その停止時の図柄が予め定めた特定図柄であるときには」、「一対の玉受部材28a、28bの短い時間間隔の開閉動作を18回」、「18回の開閉動作中に可変入賞球装置20内に受入れられた入賞玉が10個検出されるまで」、「最高8回を限度に」、「大当り状態が成立する」および「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「図柄表示部」、「遊技球」、「入賞可能な」、「遊技球の入賞を契機として前記図柄表示部に大当たり図柄が表示された場合に」、「所定時間」、「所定個数の遊技球の入賞を検知するまで」、「所定回数だけ」、「大当たり状態が生起する」および「遊技機」に相当すると認められる。
また、引用例1発明の「始動入賞口52a、52b、53」と、本願補正発明の「変動入賞口」は、「特別機能を持つ入賞口」で共通し、また、引用例1発明の「一対の玉受部材28a、28bの開閉サイクル」と、本願補正発明の「大入賞口の開成」は、「遊技者に有利な装置による遊技者に有利な動作」で共通し、また、引用例1発明の「第1の始動入賞口52a、52bと第2の始動入賞口53」と、本願補正発明の「複数の変動入賞口」は、「複数の特別機能を持つ入賞口」で共通し、また、引用例1発明の「一対の玉受部材28a、28bの断続的な開閉サイクルの継続回数」と、本願補正発明の「大入賞口の断続的な開成回数」は、「遊技者に有利な装置による断続的な遊技者に有利な動作回数」で共通する。したがって、両者は、

「遊技領域に、複数の図柄を変動・停止表示可能な図柄表示部と遊技球が入賞可能な特別機能を持つ入賞口を設け、前記特別機能を持つ入賞口への遊技球の入賞を契機として前記図柄表示部に大当たり図柄が表示された場合に、所定時間あるいは所定個数の遊技球の入賞を検知するまでの遊技者に有利な装置による遊技者に有利な動作を所定回数だけ断続的に繰り返す大当たり状態が生起する遊技機であって、
前記遊技領域に、複数の特別機能を持つ入賞口を有しており、遊技球が入賞した特別機能を持つ入賞口の違いによって、生起し得る大当たり状態における遊技者に有利な装置による断続的な遊技者に有利な動作回数が、9それぞれ異なる遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1、「特別機能を持つ入賞口」および「遊技者に有利な装置による遊技者に有利な動作」が、本願補正発明では、「変動入賞口」および「大入賞口の開成」であるのに対して、引用例1発明では、「始動入賞口52a、52b、53」および「一対の玉受部材28a、28bの開閉サイクル」であり、本願補正発明のような構成となっていない点、

相違点2、複数の特別機能を持つ入賞口の違いによって、生起し得る大当たり状態における遊技者に有利な装置による断続的な遊技者に有利な動作回数が、それぞれ異なることにおいて、本願補正発明では、「変動入賞口の表面にそれぞれ異なる数字が記載され、大入賞口の断続的な開成回数が、変動入賞口の表面に記載された数字にしたがう」ようにしているのに対して、引用例1発明では、そのような構成となっていない点、

(4)判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、パチンコ遊技機において、一般的に、遊技領域に、複数の識別情報を可変・停止表示可能な可変表示装置と打玉が入賞可能な特定入賞口としての変動入賞口を設け、前記特定入賞口としての変動入賞口への打玉の入賞を契機として前記可変表示装置において識別情報の組み合わせが所定の特定表示状態となったときに、例えば20秒の所定時間が経過するまで、あるいは、例えば10個の所定個数の入賞玉が発生するまで、可変入賞球装置の開閉板の開放(大入賞口の開成)を例えば10回の所定回数だけ、V入賞口に入賞玉が発生する毎に繰り返す特定遊技状態となるようにすることが周知(例えば、特開平2-134178号公報、特開平2-98382号公報参照)であり、特別機能を持つ入賞口や遊技者に有利な装置による遊技者に有利な動作を設計するのに、引用例1発明の「始動入賞口」および「一対の玉受部材の開閉サイクル」に代えて、前記周知技術を適用して、本願補正発明における「変動入賞口」および「大入賞口の開成」のような構成とすることに、格別の発明力を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点2について、パチンコ遊技機において、一般的に、複数の特定入賞口の表面にそれぞれ異なる数字が記され、可動部材を垂直状態からやや上向きの水平状態に回動して打球を受け入れやすい状態に開く回数が、特定入賞口の表面に記された数字に基づいて実行されることが周知(例えば、特開平1-115378号公報、特開昭63-238891号公報参照)であり、遊技者に有利な装置による断続的な遊技者に有利な動作の回数において、相違点1で述べたように、引用例1発明の「一対の玉受部材の開閉サイクル」を本願補正発明の「大入賞口の開成」とするは当業者が適宜なし得る程度の設計的事項であるから、引用例1発明の「一対の玉受部材の開閉サイクル」の継続回数を実行する、つまり、「大入賞口の開成」の回数を実行するにあたり、前記周知技術を適用して、遊技者に有利な動作の回数を本願補正発明のように構成することに格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年9月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年12月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「遊技領域に、複数の図柄を変動・停止表示可能な図柄表示部と遊技球の入賞可能な電動役物を設け、前記電動役物への遊技球の入賞を契機として前記図柄表示部に大当たり図柄が表示された場合に大入賞口を所定回数だけ断続的に開成させる大当たり状態が生起する遊技機であって、
複数の電動役物を有しており、遊技球が入賞した電動役物の違いによって、生起し得る大当たり状態における大入賞口の断続的な開成回数が異なることを特徴とする遊技機。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-30 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-26 
出願番号 特願2000-356530(P2000-356530)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 石田 喜樹  

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