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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1162107
審判番号 不服2004-8456  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-23 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成 9年特許願第 90610号「LCD表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開、特開平10-240202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年4月9日(優先権主張;平成8年12月24日)の出願であって、平成16年3月22日付け(発送日;同月30日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲、
「【請求項1】LCDモジュールの表示モードを入力画像信号に基づいて自動的に切り換えることができるLCD表示装置であって、前記表示モードが切り換わった時、前記LCDモジュールの表示をOFF状態にしたままで、前記表示モードに合致するようにパラメータを設定するLCD表示装置において、
複数の階調ごとのディザパターンを1画面ごとに変化させて発生するパターン発生回路と、入力画像データの階調を検出する検出回路と、前記検出回路の出力に基づいて前記パターン発生回路からのディザパターンを選択する選択回路とを備え、前記パラメータの設定の終了後に、前記LCDモジュールをON状態にしたままで、前記選択回路で選択されたパターンにより、前記LCDモジュールに画像表示させるようになっているとともに、
前記1画面は入力画像信号の垂直周波数をfとしたとき1/2f秒間だけ表示されることを特徴とするLCD表示装置。
【請求項2】前記ディザパターンの1画面ごとの変化はデータが画面ごとに1ビットずつ縦方向へシフトすることによって成されることを特徴とする請求項1に記載のLCD表示装置。
【請求項3】前記ディザパターンは前記階調が異なっていても基本パターンのサイズは同一であり、前記階調に応じて点灯するドット数が異なることを特徴とする請求項1に記載のLCD表示装置。」
を、
「【請求項1】LCDモジュールの表示モードを入力画像信号に基づいて自動的に切り換えることができるLCD表示装置であって、前記表示モードが切り換わった時、前記LCDモジュールの表示をOFF状態にしたままで、前記表示モードに合致するようにパラメータを設定するLCD表示装置において、
複数の階調ごとのディザパターンを1画面ごとに変化させて発生するパターン発生回路と、入力画像データの階調を検出する検出回路と、前記検出回路の出力に基づいて前記パターン発生回路からのディザパターンを選択する選択回路とを備え、前記パラメータの設定の終了後に、前記LCDモジュールをON状態にしたままで、前記選択回路で選択されたパターンにより、前記LCDモジュールに画像表示させるようになっているとともに、
前記1画面は入力画像信号の垂直周波数をfとしたとき1/2f秒間だけ表示され、 前記ディザパターンは前記階調が異なっていても基本パターンのサイズは同一であり、前記階調に応じて点灯するドット数が異なることを特徴とするLCD表示装置。
【請求項2】前記ディザパターンの1画面ごとの変化はデータが画面ごとに1ビットずつ縦方向へシフトすることによって成されることを特徴とする請求項1に記載のLCD表示装置。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正個所を示すために請求人が付したものである。

(2)補正の目的の適合性
上記手続補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項3を独立請求項として補正後の請求項1とし、また、補正後の請求項2は、補正後の請求項1を引用することにより、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「ディザパターン」について、「ディザパターンは階調が異なっていても基本パターンのサイズは同一であり、階調に応じて点灯するドット数が異なる」との限定が付加されたものと認められる。
したがって、上記手続補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号及び第2号の規定に該当するものである。
そうすると、「特許請求の範囲」全体についての減縮があったことになるから、「特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明」について独立特許要件の判断が必要となるものである(*注)。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明について、それが、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(*注)知財高裁判決(平成18年2月16日言渡:平成17年(行ケ)第10266号)は、以下のように判示している。
<<改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法17条の2第3項は,「前項において準用する前条第2項に規定するもののほか,第1項第4号及び第5号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は,次に掲げる事項を目的とするものに限る。」と規定した上,その2号において,「特許請求の範囲の減縮(前号に規定する一の請求項に記載された発明(‥‥‥以下この号において「補正前発明」という。)と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。)」と規定している。そして,同条4項は,「第126条第3項の規定は,前項の場合に準用する。この場合において,同条3項中『第1項ただし書第1号』とあるのは,『第17条の2第3項第2号』と読み替えるものとする。」と規定し,改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法126条3項は,「第1項ただし書第1号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」
と規定している。
上記によれば,改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法17条の2第3項2号において問題とされているのは,「特許請求の範囲」全体について減縮があったか否かであって,「特許請求の範囲」全体に減縮があれば,同条4項により,「特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」について独立特許要件の判断が必要となるものと解するのが相当である。独立特許要件の判断の要否を「特許請求の範囲」に含まれる個々の請求項ごとに考えるべきである旨の原告の主張は,採用できない(原告の指摘する同条3項2号括弧書きの規定は,補正が許される場合を,「特許請求の範囲の減縮」のうち一定の場合に限定することを規定したにすぎず,原告の上記主張を裏付けるものではない。)。>>

(3)独立特許要件
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(3-1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平6-130906号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【請求項1】 演算処理情報を表示する表示部と、
前記表示装置を使用した所定の表示モードから、この表示モードと異なる別の表示モードに切り換えられる際のモード切り換え処理の開始を検出するモード切り換え検出部と、
このモード切り換え検出部がモード切り換え処理の開始を検出したときから、前記モード切り換え処理中における前記表示装置の表示画像の乱れが発生する時間を越える所定の表示抑制時間を経過するまでの間、表示抑制信号を出力する計時部と、
前記表示抑制信号の出力されている間、前記表示部への演算処理情報の表示を強制的に停止する表示抑制処理部とを備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】 表示抑制処理部は、表示制御信号の出力されている間、表示部のバックライトをオフすることを特徴とする請求項1記載の表示制御装置。」(【特許請求の範囲】)

1b.「【0006】図4に、そのようなパーソナルコンピュータにおける従来の表示装置切り換え例タイムチャート(その2)を示す。この例では(a)に示すように、時刻t1、t2、t3にそれぞれその表示画面モードを画面モードA、B、Cというように順に切り換えた場合、やはりその切り換え時t1、t2、t3の前後で、水平、垂直同期信号の同期合わせ処理を実行することになる。この場合にも、図3で示したと同程度の時間、表示画像に乱れが発生する。この場合にも、特に演算処理操作自体には支障がなく、従来特別な処理は施されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような表示モードの切り換え操作を行なった場合、ごく短時間でも表示画像に乱れが発生すると、瞬時に正常な画面に切り換わる場合に比べれば、その表示品位は劣るものとなる。また、ユーザーはこのような画像の乱れが発生した場合、表示装置の故障ではないかと考えて修理依頼が多発するといった問題も生じる。本発明は以上の点に着目してなされたもので、より高い品質の表示画像を維持し、同期合わせ処理中の画像の乱れを故障と誤解されないような対策を施した表示制御装置を提供することを目的とするものである。」

1c.「【0011】また、パーソナルコンピュータ1の出力する同期信号22は、モード切り換え検出部13に入力し、モード切り換え検出部13の出力は計時部14に入力して、更に計時部14の出力は表示抑制処理部15に入力するよう構成されている。表示部12は、液晶ディスプレイ12-1及びバックライト制御部12-2から構成されており、表示制御部11の出力は、液晶ディスプレイ12-1に入力するよう構成されている。また、バックライト制御部12-2には、表示抑制処理部15から制御信号が入力するよう構成されている。上記表示制御部11は、画像信号21と同期信号22を受け入れて、液晶ディスプレイ12-1に対し画像信号を所定のタイミングで出力し、演算処理情報の表示を制御するよく知られた回路である。
【0012】モード切り換え検出部13は、同期信号22を受け入れて、その同期信号の乱れを検出する回路である。同期信号22には、例えば水平、垂直同期信号が含まれており、これらは先に説明したように、表示モード切り換えの際に一定時間乱れを生じる。この場合、モード切り換え検出部13に入力する同期信号の周波数成分が正常な画像を表示する場合と比べて異なったものになる。モード切り換え検出部13は、例えば周波数フィルタ等を用いて異常な周波数成分を抽出し、モード切り換え処理の開始を検出する回路である。なお、このモード切り換え検出部13は、このような周波数の乱れを検出し、計時部14に対しトリガを出力するためのフィルタやゲート回路から構成してもよいし、またワンチップマイクロコンピュータ等から構成することもできる。」

1d.「【0023】本発明は以上の実施例に限定されない。上記モード切り換え検出部13は、実質的に表示部の表示モードの切り換え処理開始を検出できるものであればよく、例えば水平同期信号のみあるいは垂直同期信号のみを監視するようなものであってもよいし、また同期信号以外の、モード切り換えのための指示信号を監視するような構成のものであってもよい。また、モード切り換え検出部13や計時部14等は必ずしも別々に構成せず、一体に構成されてもよい。更に表示抑制処理部16は、例えばバックライト制御部12-2や表示制御部11の中に一体に組み込まれてもよく、その制御信号の内容や構成も自由に設定して差し支えない。」

(3-2)対比・判断
刊行物1には、(3-1)の「1a.」乃至「1d.」の記載から次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「同期信号22を受けて、表示画面モード切換の際の前記同期信号22の乱れを検出し、その乱れを検出したときから、表示画面モード切り換え処理中における表示画像の乱れが発生する時間を越える所定時間を経過するまでの間、液晶ディスプレイ12-1の表示を、バックライトをオフすることにより強制的に停止することを特徴とする表示制御装置。」

そこで、本願補正発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
・前者の「入力画像信号」は、本願明細書の段落【0096】の「CPU1はパーソナルコンピュータ等から送られてきた入力画像信号中のVSYNC、HSYNCの周波数及び極性から、その入力画像信号がどの表示モード(XGA、SVGA、VGA)のものであるかを判定する。」との記載からみて、垂直同期信号や水平同期信号を含むものであり、これらの同期信号に基づいて表示モードの判定がなされるのであるから、後者の「同期信号22」は、前者の「入力画像信号」に相当する。
・後者の「表示制御装置」は、同期信号22を受けて、表示画面モード切り換え処理を行うとともに、液晶ディスプレイ12-1の表示を制御するものであり、また、液晶ディスプレイや駆動回路を一体化してLCDモジュールとして構成することも普通に行われていることを勘案すれば、後者の「表示制御装置」は、前者の「LCDモジュールの表示モードを入力画像信号に基づいて自動的に切り換えることができるLCD表示装置」に相当する。
・前者の「LCDモジュールの表示をOFF」は、「液晶ディスプレイの表示を視認できない状態とすること」を包含するものと解されるから、後者の「液晶ディスプレイ12-1の表示を、バックライトをオフすることにより強制的に停止すること」を包含するものであること、また、後者の「表示画面モード切り換え処理」には、表示モードに応じたパラメータの設定も含まれるものと解されることから、後者の「同期信号22を受けて、表示画面モード切換の際の前記同期信号22の乱れを検出し、その乱れを検出したときから、表示画面モード切り換え処理中における表示画像の乱れが発生する時間を越える所定時間を経過するまでの間、液晶ディスプレイ12-1の表示を、バックライトをオフすることにより強制的に停止する」点は、前者の「表示モードが切り換わった時、前記LCDモジュールの表示をOFF状態にしたままで、前記表示モードに合致するようにパラメータを設定する」点に相当する。
したがって、両者は、
「LCDモジュールの表示モードを入力画像信号に基づいて自動的に切り換えることができるLCD表示装置であって、前記表示モードが切り換わった時、前記LCDモジュールの表示をOFF状態にしたままで、前記表示モードに合致するようにパラメータを設定するLCD表示装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、「複数の階調ごとのディザパターンを1画面ごとに変化させて発生するパターン発生回路と、入力画像データの階調を検出する検出回路と、前記検出回路の出力に基づいて前記パターン発生回路からのディザパターンを選択する選択回路とを備え、前記パラメータの設定の終了後に、前記LCDモジュールをON状態にしたままで、前記選択回路で選択されたパターンにより、前記LCDモジュールに画像表示させるようになっているとともに、前記1画面は入力画像信号の垂直周波数をfとしたとき1/2f秒間だけ表示され、前記ディザパターンは前記階調が異なっていても基本パターンのサイズは同一であり、前記階調に応じて点灯するドット数が異なる」ものであるのに対し、後者には、この点の記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
以下の検討に当たり参照される周知例1及び2、並びにその記載事項は、次のとおりである。
<周知例1(特開平5-113767号公報)>
2a.「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本発明では、表示すべきビデオ信号に関し、フレーム(又はフィールド)毎に各画素の表示階調を周期的に変えることにより(その中間調を視覚的に実現して)多階調表示を行う場合のフリッカを抑制するために、フレームメモリにより、表示すべき入力ビデオ信号を一旦記憶し、より高いフレーム周波数で読み出すことにより、各画素の輝度変化の周期を短くするようにした。
【0009】また、前記フレームメモリによりビデオ信号のフレーム周波数を高くし、フレーム毎に各画素の表示階調を周期的に変えるようにすることに加えて、より多階調な表示を行うために、複数の画素を組合せて新たな画像表示の1単位とし、該1単位中の各画素の表示階調を変えることによって視覚的に中間調を表現し、且つ1単位を構成する画素の取り方を空間的、又は時間的、あるいは空間的、且つ時間的に共にずらすようにした。
【0010】
【作用】フレームメモリにより表示すべきビデオ信号のフレーム周波数を高くし、フレーム毎に、各画素の表示階調を周期的に変えることによって視覚的に多階調表示を行うようにしたため、前記各画素の輝度変化の周期が短くなり、画面におけるフリッカを抑制できる。
【0011】前記フレームメモリにより、表示すべきビデオ信号のフレーム周波数を高くし、フレーム毎に各画素の表示階調を周期的に変え、さらに複数の画素を組合せて新たな画像表示の1単位とし、該1単位中の各画素の表示階調を変えることによって中間調を視覚的に表現し、且つ1単位を構成する画素の取り方を空間的、又は時間的、あるいは空間的、且つ時間的に共にずらして組合せるようにしたため、解像度劣化及びフリッカを抑制しつつ、多階調な表示を得ることができる。」
2b.「【0027】例えば、入力ビデオ信号のフレーム周波数が60Hzで、フレームメモリにより倍の120Hzに変換(例えば90Hzでも効果有りであるが)したとする。そのようなビデオ信号によりFRCを行うと、図5の(b)の中段に示したようになり、輝度変化の周期は、60Hzと十分早くなり、フリッカが目立たなくなる。また、更にフレーム周波数を高く変換すれば、数フレーム毎のFRCを行ってもフリッカは抑制できる。」
2c.「【0039】図9は、本発明の第3の実施例を示すブロック図である。同図において、43は画素ずらしディザ回路である。図10は、図9において多階調化回路を構成している画素ずらしディザ回路43とアドレス発生回路51の詳細を示したブロック図である。
【0040】図10において、40は画素ずらしディザ回路43を構成するROM、52は水平同期信号HDをカウントし走査位置を判別するHDカウンタ、53,54は後述する多階調化方式を実現するためにROM40にアドレス信号を与えるための2分周回路、50はVDカウンタ(表示すべきビデオ信号の奇数フィールドと偶数フィールドを判別するために、垂直同期信号VDの2倍の周期の2VD信号をカウントしているVDカウンタ)、である。
・・・
【0044】図11は、図9、図10に示す本発明の第3の実施例の多階調化方式の動作原理説明図、図12は同じく第3の実施例の多階調化方式の表示例を示す説明図である。本実施例の多階調化方式では、表示画像の解像度劣化を抑制するために、画素ずらしディザ回路43及びアドレス発生回路51により、表示すべき入力ビデオ信号を操作し、図11に見られるように、1単位を構成する画素の組合せを、走査ラインの2行おきに水平方向に1画素分ずらし、さらにフィールド毎に、垂直方向に1画素分ずらすようにした。
【0045】例えば、図12の左上の(a)に示すような濃度階調分布の原画像を表示する場合、予め(b)に示すような第13階調のデイザパターンと、(c)示すような第7階調のデイザパターンと、を決めてROM40に書込んでおく。そして、奇数フィールドでは、左側の図(d)に示した破線の組合せとし、ROM40に入力される原画像の階調と、1単位を構成する4画素の位置情報(左上、左下、右上、右下のいづれか)とにより、1単位を構成する各画素の表示階調を決定し出力する。
【0046】次に、偶数フィールドでは、右側の図(e)に破線で示したように、1単位の取り方をずらして同様の操作を行う。例えば今、(a)の原画像で左上(1行,1列)の1画素は第13階調であり、奇数フィールドの組合せ(d)では、1単位中で左上の位置になるため、ROM40は、(b)に示す第13階調のディザパターンの左上の階調を選択し出力する。従って、奇数フィールドの表示階調は第16階調になる。
【0047】同様に偶数フィールド(e)では、(a)の原画像で左上(1行,1列)の1画素は1単位中で右下になるため、ROM40は(b)に示す第13階調のディザパターンの右下の階調を選択し出力する。従って、偶数フィールドの表示階調は第12階調になる。これにより空間的にはディザ法になっており、さらに1単位中の画素の取り方をずらすことにより、各画素を時間的にみるとFRCになっている。
【0048】従って最終的に人間の目に見える表示は、(d)と(e)の各対応画素の平均階調として、下段の(f)に示す様になり、原画像(a)に近い階調表示ができる。このとき予め図9のフレームメモリ2により、表示すべき入力ビデオ信号のフレーム周波数を高くしてあるためフリッカは発生しない。
【0049】尚、図12の、例えば(b)に示す如き、第13階調目を視覚的に表すための1単位を構成する4画素の組合せにおいて、第16階調目の画素位置を、左上に固定すること無く、例えばフィールド、又はフレーム周期毎に左上、右上、右下、左下のように、その位置を変更することにより、視覚的に更に滑らかな画像表示をさせることもできる。
【0050】以上、本実施例によれば、フィールド毎に1単位を構成する画素の組合せ方を変えることで、解像度劣化の少ない多階調表示ができ、さらにフレームメモリにより入力ビデオ信号のフレーム周波数を高くしているため、フリッカが抑制できる。」

<周知例2(特開平7-273993号公報)>
3a.「【0079】以上の内容から、第1フィールドに対応する本実施例の擬似中間調処理装置の出力画像に関しては、図4のROM出力45に示すように、Bayer型の基本パターンそのもの(図5(a1)参照)を用いて、上述したディザ変換を施したところの結果と同じになる(図5(b1)参照)。
【0080】次に、第2フィールドに対応する出力画像に関しては、図4のROM出力45に示すように、Bayer型の基本パターンをX方向(行方向)へ一画素分シフトして形成された変形パターン(図5(a2)参照)を用い、その変換結果は、図5(b2)に示す出力パターンとなる。
【0081】更に、第3フィールドに対応する出力画像に関しては、図5(a2)に示す変形パターンを更にX方向(行方向)へ一画素分シフトして形成された変形パターン(図5(a3)参照)を用い、その変換結果は、図5(b3)に示す出力パターンとなる。
【0082】更に又、第4フィールドに対応する出力画像に関しては、図5(a3)に示す変形パターンを更にX方向(行方向)へ一画素分シフトして形成された変形パターン(図5(a4)参照)を用い、その変換結果は、図5(b4)に示す出力パターンとなる。」

以下、(A)ディザパターン及び表示周期について、(B)画像表示のための回路構成について、(C)刊行物1記載の発明との組み合わせの容易性について、の3つの観点から相違点を検討する。
(A)ディザパターン及び表示周期について;
階調が異なっていても基本パターンのサイズは同一であり、前記階調に応じて異なるディザパターンを、所定の表示周期で切り換えて用いることは、周知のことであり(例えば、周知例2参照。また、周知例1の段落【0049】に「第13階調目を視覚的に表すための1単位を構成する4画素の組合せにおいて、第16階調目の画素位置を、左上に固定すること無く、例えばフィールド、又はフレーム周期毎に左上、右上、右下、左下のように、その位置を変更することにより、視覚的に更に滑らかな画像表示をさせることもできる。」との記載(「2c.」の記載参照。)があり、所定表示周期毎にディザパターンの切り換えを行うことが示唆されている。)、また、表示周期を入力画像の更新周期の1/2とすることも、所謂倍速駆動として周知の液晶駆動手法(例えば、周知例1の段落【0027】に、「例えば、入力ビデオ信号のフレーム周波数が60Hzで、フレームメモリにより倍の120Hzに変換(例えば90Hzでも効果有りであるが)したとする。そのようなビデオ信号によりFRCを行うと、図5の(b)の中段に示したようになり、輝度変化の周期は、60Hzと十分早くなり、フリッカが目立たなくなる。また、更にフレーム周波数を高く変換すれば、数フレーム毎のFRCを行ってもフリッカは抑制できる。」との記載(「2b.」の記載参照。)がある。)にすぎないから、本願補正発明のディザパターン及び表示周期について、格別の特徴は認められない。

(B)画像表示のための回路構成について;
ディザパターン発生回路、入力階調の検出回路、ディザパターンの選択回路等を設ける点は、ディザ制御に必要な回路構成を記載したものであって、その構成に格別の特徴は認められない。また、「(表示モードに合致する)パラメータの設定の終了後に、LCDモジュールをON状態にしたままで、選択回路で選択されたパターンにより、前記LCDモジュールに画像表示させる」点についても、パラメータの設定が完了し、表示の乱れが収まれば、ディザ制御を用いた画像表示を行うことが可能なことは明らかであり、「LCDモジュールをON状態にしたままで」の点は、表示を行うために当然必要となる事項を記載したものにすぎないから、この点にも格別の特徴は認められない。

(C)刊行物1記載の発明との組み合わせの容易性について;
液晶の表示制御において、ディザ制御や倍速駆動制御を行うことは上記のように従来周知のことであり、刊行物1記載の発明に、これらの周知の表示制御手法を適用することも、当業者であれば、適宜なし得るところと認められる。

そして、本願補正発明による効果も、刊行物1の記載及び上記周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年4月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成9年12月9日付け、平成15年7月18日付け、及び平成15年12月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び3に係る発明は、「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載されたとおりのものである。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
本願の請求項3に係る発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明と同一の発明である。
そうすると、本願の請求項3に係る発明と同一の発明である本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願の請求項1に係る発明は、本願の請求項3に係る発明と同一の発明である本願補正発明から、請求項3に記載された特徴点の構成の限定を省いたものであり、本願補正発明が、上記のように、刊行物1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1及び3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1及び3に係る発明が特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-06 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平9-90610
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 小川 浩史
堀部 修平
発明の名称 LCD表示装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 藤綱 英吉  

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