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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1162119
審判番号 不服2004-18128  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-02 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成11年特許願第158083号「インクジェット記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-343782〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成11年6月4日の出願であって、平成16年7月27日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月2日付けで本件審判請求がされるとともに、同月27日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年9月27日付けの手続補正を却下するとともに、新たな拒絶理由を通知したところ、請求人は平成19年5月21日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年5月21日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「ノズルより噴出するインク粒子で、被印字物である商品の表面や包袋に文字や図等を印字するインクジェット記録装置において、
搬送ラインを流れる前記商品に付されているバーコードを読み取るバーコードリーダと、
印字内容、印字仕様及び印字フォーマットのデータを有する印字データ毎に識別情報が付加されて記憶されている複数の印字データと、商品メーカーコード及び商品コードを有するバーコードデータ毎に前記識別情報に対応する識別対応情報が付される複数のバーコード関連データとを記憶する記憶部と、
前記識別対応情報を含めた前記バーコード関連データを入力する入力手段と、
前記バーコードリーダで読まれたバーコード情報と前記記憶部より読み出したバーコード関連データの商品メーカーコードとを比較して、当該商品メーカーコードが一致したら、前記バーコード情報と前記読み出したバーコード関連データの商品コードとを比較して、当該商品コードが一致したら当該バーコード関連データの識別対応情報を選定し、このバーコード関連データの識別対応情報に対応する識別情報が備わる印字データを選定する制御部と、を備え、
前記印字データの印字条件で前記バーコード情報が読み取られた被印字物に対して印字することを特徴とするインクジェット記録装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物記載の発明の認定
当審における拒絶の理由に引用した特開平10-337857号公報(以下「引用例1」という。)には、
「印字データの内容や装置への動作指示など入力する入力部と、入力された印字データの内容や装置状態などを表示する表示部と、印字データを記憶する印字データ記憶部とを備え、電荷を付与した粒子状のインクを噴出し、電界中を飛行させることでインク粒子の飛行方向を制御し、被印字物に印字するインクジェット記録装置であり、印字に関するデータ(印字の内容,印字文字の高さや幅等の印字条件,印字文字のドット構成や段数等の印字フォーマット等)を記憶し、かつ、その記憶されたデータを呼び出して印字に使用する機能を備えたインクジェット記録装置であって、印字に関連するデータを呼び出しする際に既に記憶されているデータの記憶エリアの番号や名称及びデータが未記憶のエリアの番号を一覧表形式で表示する機能を備えたインクジェット記録装置において、データの呼び出しを行うために記憶エリアの番号又は名称を入力するためのエリアを該一覧表の表示エリアと同じエリアに設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。」(【請求項1】)との発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
本審決では、「発明を特定する事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
本願発明と引用発明1の「印字データ」は、「印字内容、印字仕様及び印字フォーマットのデータを有する」ことを含めて相違はなく、引用発明1においてかかる印字データが複数記憶されていること、及び印字データの印字条件で被印字物に対して印字することは明らかである。引用例1には、被印字物が商品である旨の直接記載はないが、印字内容として「賞味期限」が例示(【図3】等)されていることや、【図4】及び【図5】のニックネーム欄に「ビール(生)」等の表示があることからみて、被印字物は明らかに商品であり、当然「商品の表面や包袋に文字や図等を印字する」ものと認める。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「ノズルより噴出するインク粒子で、被印字物である商品の表面や包袋に文字や図等を印字するインクジェット記録装置において、
印字内容、印字仕様及び印字フォーマットのデータを有する複数の印字データを記憶する記憶部とを備え、
前記印字データの印字条件で被印字物に対して印字するインクジェット記録装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「搬送ラインを流れる前記商品に付されているバーコードを読み取るバーコードリーダ」を備えるのに対し、引用発明1が同構成を有するとはいえない点。
〈相違点2〉印字データを記憶するに当たり、本願発明では「印字データ毎に識別情報が付加されて記憶」しているのに対し、引用発明1ではかかる識別情報を付加していない点。
〈相違点3〉本願発明では、「記憶部」に「複数の印字データ」だけでなく「商品メーカーコード及び商品コードを有するバーコードデータ毎に前記識別情報に対応する識別対応情報が付される複数のバーコード関連データ」を記憶し、「前記識別対応情報を含めた前記バーコード関連データを入力する入力手段」を備えるのに対し、引用発明1の「記憶部」はかかるデータを記憶しておらず、かかる入力手段を備えない点。
〈相違点4〉本願発明が「前記バーコードリーダで読まれたバーコード情報と前記記憶部より読み出したバーコード関連データの商品メーカーコードとを比較して、当該商品メーカーコードが一致したら、前記バーコード情報と前記読み出したバーコード関連データの商品コードとを比較して、当該商品コードが一致したら当該バーコード関連データの識別対応情報を選定し、このバーコード関連データの識別対応情報に対応する識別情報が備わる印字データを選定する制御部」を備えるのに対し、引用発明1はそのような制御部を備えない点。
〈相違点5〉本願発明が「前記バーコード情報が読み取られた被印字物に対して印字」としているのに対し、引用発明1にはかかる限定がない点。

3.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点4について
本願発明と引用発明1との相違点は上記の5点であるが、相違点1のうち「搬送ラインを流れる」との限定を除いた部分及び相違点2,3は、後記のとおり、相違点4に係る本願発明の構成を採用する必要上生じた相違点であり、相違点5は相違点1,4に係る構成を採用したことにより必然的に生じた相違点である。すなわち、本願発明と引用発明1との中核となる相違点は相違点4であるから、相違点4の想到容易性からまず検討する。
当審における拒絶の理由に引用した特開平7-44768号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。
ア.「顧客が買い上げた商品が食品であればその調理方法や保存方法を、また関連商品があればその情報を、空き瓶,紙パック,トレイ等の回収資源物を使用した商品であれば回収方法をそれぞれ顧客に通知できると、サービスの向上につながる。」(段落【0003】)
イ.「商品によってはメッセージの一部が共通となる場合がある。例えば発泡トレイでパック売りされている生鮮食品の場合、保存方法等は各々で異なっても回収方法は共通である。」(段落【0005】)
ウ.「本発明は、各商品の間で共有されるメッセージデータは1つのみ設定すればよくメモリ容量を低減でき、低コスト化を図り得、買上商品に関わるメッセージの自動通知サービスを実用化できる商品販売データ処理装置を提供しようとするものである。」(段落【0008】)
エ.「RAM3には、商品販売データを登録処理するための記憶部エリア等の他に、特に図2に示す商品マスタテーブル20と図3に示す商品メッセージテーブル30とを形成している。・・・前記商品マスタテーブル20は、各商品にそれぞれ付される商品コードに対応してその商品の品名,単価,税等のステータス及びメッセージコード(Mコード)等の商品設定情報を予め記憶した領域である。」(段落【0019】?【0020】)
オ.「前記商品メッセージテーブル30は、食品の調理方法や保存方法,関連商品の情報,回収資源物の回収方法等のように商品に関わる顧客への各種メッセージデータをそれぞれメッセージコード(Mコード),出力方法のステータス及び属性有無識別コードとしてのリンクメッセージコード(リンクM)とともに予め記憶した領域である。」(段落【0021】)
カ.「出力方法のステータスは、該当するメッセージデータの出力無しの場合には“0”、出力先がレシート印字のみの場合には“1”・・・がそれぞれ設定される。」(段落【0023】)
キ.「バーコードスキャナ8によるバーコードスキャニング操作によって商品コードが入力されると、ST2でその入力商品コードを検索キーにして前記商品マスタテーブル20を検索し、対応する品名,単価,ステータス,メッセージコード等を呼出す(メッセージコード呼出し手段)。」(段落【0027】)
ク.「ST4にてメッセージコードが“000”以外の場合には、該当商品に関わるメッセージデータが商品メッセージテーブル30に設定されているので、ST5でそのメッセージコードを検索キーにして上記商品メッセージテーブル30を検索し、対応する・・・メッセージデータを呼出す(第1のメッセージ呼出し手段)。」(段落【0030】)

引用例2記載の「メッセージデータ」は、商品に印字されるわけではないが、商品に関連した情報であること及び印字される情報である点で、本願発明及び引用発明1の「印字データ」と一致する。また、引用例2記載の「メッセージコード」は、「入力商品コード」(バーコードである。)を検索キーにして呼び出されるコードであり、本願発明の「識別対応情報」も結局のところ「バーコード情報」により呼び出される情報であることは明らかである(引用例2記載の「商品マスタテーブル20」(記載エ)が、本願発明の「バーコード関連データ」に該当するデータを記憶している。)。さらに、本願発明の「識別情報」と「識別対応情報」とは、前者が「印字データ」に附属した情報、後者が「バーコード関連データ」に附属した情報の点で区別されているが、その内容においてまで異なる必要はない(例えば、本願明細書に「ステップ107で、その識別対応情報の呼び出し番号と対応する識別情報としての呼び出し番号が備わる印字データをHDD19より読み込み」(段落【0032】)と記載されているとおりである。)から、これらコード又は情報は、「印字データ」(引用例2の表現では「メッセージデータ」)を選定するに必要な情報である点で一致する。
このように、商品に付されたバーコード情報を手掛かりとして、識別対応情報(=識別情報。引用例2ではメッセージコード)、印字データ(引用例2ではメッセージデータ)の順にデータを取得する点で本願発明(相違点4に係る構成部分)と引用例2記載の技術は一致している。
そして、引用例2記載の技術においては、バーコードスキャナ(本願発明の「バーコードリーダ」に相当)によって読み取られたデータ(バーコードである商品コード)により、自動的に印字データ(メッセージデータ)が印字され、操作者の操作負担が軽減されるのだから、引用発明1においても、操作負担を軽減するために引用例2記載の技術を採用することは当業者にとって想到容易である。なお、商品に印字するに際し、商品毎に異なる印字データを印字するのであれば、引用例2記載の「メッセージコード」(本願発明の「識別対応情報」及び「識別情報」)を介在させる必要はないが、引用例1に例示されている「賞味期限」は本願明細書の段落【0001】にも例示されているばかりか、当審における拒絶の理由に引用した特開平10-324347号公報に「所要の文字, 記号等を表示するインク層を介在させる・・・所要の文字, 記号等とは、製造年月日, 時刻, 製造場所, 使用設備,ロット番号, シリアル番号, 賞味期限などの他、連続包装袋の事後的な切断のための光電管マーク, 包装袋の開封位置, 開封方向の表示、その他に関する一種もしくは二種以上についての文字, 記号等を含むものとする。」(段落【0005】)との記載があることからみて、複数の商品に同一印字データを印字することは十分想定でき、そうである以上、「メッセージコード」も含めて採用すべきである。なにより、引用例2に例示された調理方法、保存方法、回収方法等も、商品自体に印字するにふさわしい(ただし、例えば商品が食品であれば、包装されたものに限られる。)情報である。
引用発明1に引用例2記載の技術を採用した場合に、なお残る検討項目は次の点である。
「本願発明では「バーコード情報と前記記憶部より読み出したバーコード関連データの商品メーカーコードとを比較して、当該商品メーカーコードが一致したら、前記バーコード情報と前記読み出したバーコード関連データの商品コードとを比較して、当該商品コードが一致」することにより、識別対応情報を選定している点。」
そこで検討するに、商品に付されるバーコード情報として、「商品メーカーコード」及び「商品コード」を有するものは例をあげるまでもなく周知であり、そのようなバーコード情報であれば、「商品メーカーコード」及び「商品コード」の両方によって1つの商品が特定される。すなわち、商品を特定するためには、「商品メーカーコード」及び「商品コード」の両方が一致するものを特定しなければならない。ところで、データベースを用いて、2つの条件の両方に一致するものを検索又は照会するに当たり、一方の条件と一致するかどうかを調べ、一致したものを対象として、他方の条件に一致するかどうかを調べることは周知である。そのことは、例えば、本件出願前に頒布された特開平6-291825号公報に「発信者名称表示データは、発信者の加入者番号である発番号51と、発信側の機器によって付加される発サブアドレス52と、それらの番号に対応しプラズマディスプレイに発信者名称として表示される発信者名称データ53から成り、発番号ならびに発サブアドレスに対応して複数個が記憶される。」(段落【0013】)及び「発信者名称表示データの発番号51をステップS3→ステップS12→ステップS4→ステップS3の検索ループで順次検索し、前記ステップS11で一時記憶装置27に記憶した発番号との一致をみる。ステップS11で一時記憶装置(RAM)27に記憶した発番号と発信者名称表示データの発番号51がステップS4で一致すると、次に、発サブアドレス同志が一致しているか否かをステップS5で判別し、発サブアドレスが一致しているとき、一致している発番号と発サブアドレスに対応する発信者名称表示データ53が決定される。」(段落【0016】)と記載があること、特開平3-80367号公報に「テーブル検索において、ファイル名が一致するか否かの判別は、ファイル名の先頭文字より終端文字に向かって一文字ずつの比較により行う。」(2頁右上欄1?3行)と記載があること、並びに特開平8-16603号公報に「利用者がキーワードA?Dを含むファイルを検索しようとして、キーワードA?Dの論理積の検索条件を図示されていない検索装置に入力すると、まずキーワードAについて検索が開始され、ファイル1?11の中から、ファイル1?7の7個のファイルが抽出される。続いて、前記ファイル1?7に対してキーワードBの検索が行われ、これらの中からキーワードBが使用されているファイル3?6の4個のファイルが抽出される。次に、該ファイル3?6に対してキーワードCの検索が行われ、これらの中からファイル6の1個のファイルが抽出される。最後に、該ファイル6の中に、キーワードDが使用されているか検索され、ファイル6が抽出されると、該ファイル6がキーワードA?Dの論理積の検索条件を満たすものとして、検索されたことになる。」(段落【0004】)と記載があることによって裏付けられる。
そうである以上、「商品メーカーコード」及び「商品コード」を有するバーコードに対して、上記周知技術を採用し、さらに先に調査すべき条件を「商品メーカーコード」と特定する程度のことは設計事項というべきである。
以上のとおりであるから、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。
なお請求人は「本願発明の構成要件(ロ)(ハ)(ホ)(ヘ)は引用例3(審決注;審決の引用例2)には記載されておりません。」(平成19年5月21日付け意見書3頁19?20行)及び「本願発明のインクジェット記録装置は搬送ライン上を連続的に搬送されて行く商品に印字する都合上、印字の遅れは許されません。・・・そのため、記憶部のバーコード関連データとバーコードリーダで読み取ったバーコード情報との比較する時間を短縮するために、バーコード関連データのうち一部のデータとバーコード情報とを比較処理することで、バーコード情報全体と比較するのに対して処理量を減らすことができ、短時間でバーコード情報を得た商品の印字データを選定することを可能としたものであります。」(同頁32?40行)と主張している。請求人が主張する構成要件(ホ)とは、相違点4に係る本願発明の構成であり、そのすべてが引用例2に記載されているわけではないことは認める。しかし、本願明細書には出願当初から一貫して、商品メーカーコード及び商品コードを有するバーコード情報から識別対応情報を選定する手順として、「バーコードデータとバーコード関連データとの比較照合は、まずステップで商品メーカーコードが一致するか否かが見られる。・・・ステップ104で商品メーカーコードが一致すると判断されたときは、ステップ105に移行する。このステップ105では商品コードが一致するか否かが問われる。」(段落【0030】?【0031】)と記載され、商品メーカーコード及び商品コードを一括して比較することは記載されていないにもかかわらず、「バーコードリーダ13による読み取りは、被印字物8を搬送ライン7で流す前に行なう。」(段落【0034】)と記載されているのだから、「連続的に搬送されて行く商品に印字する」ことを意図して採用された手順ではない。そればかりか「搬送ラインを流れる前記商品に付されているバーコードを読み取るバーコードリーダ」との記載において、「搬送ラインを流れる」は直後の「前記商品」を修飾するだけであって、搬送中に「バーコードを読み取る」ことが特定されているわけではない。さらに、印字するに当たって、商品メーカーコード及び商品コードを一括して比較した場合に識別対応情報を選定するに要する時間が、印字速度全体を左右するほどの時間であると認めることもできない(明細書に記載されていないことはいうに及ばない。)。そして、本件出願当時の周知技術を踏まえれば、相違点4に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易なことは前示のとおりであるから、上記の判断に誤りはなく、請求人の主張を採用することはできない。

(2)相違点1について
引用発明1に引用例2記載の技術を採用することの容易性は前示のとおりであり、引用例2記載の技術には「バーコードを読み取るバーコードリーダ」が備わっているから、検討すべきでは、そのバーコードリーダにて「搬送ラインを流れる前記商品に付されているバーコードを読み取る」ことの容易性である。
引用例1には「図2において、被印字物18は、コンベアによって搬送されているものとする。被印字物検出のセンサー17が被印字物18を検出すると、被印字物検知部5は、被印字物検知信号を印字制御部4へ送信する。文字信号発生部6は、受信した印字内容を文字信号に変換し、帯電電極12へ送る。供給ポンプ9は、インク容器16から配管チューブ10を通して、ノズル11よりインクを噴出する。噴出されたインクは帯電電極12内で粒子化し帯電を受け、偏向電極13により偏向され、コンベヤによって搬送される被印字物18へインク粒子が飛行,付着し印字される。」(3欄2?12行)との記載があり、搬送ラインを流れる商品に印字することは、引用発明1においても予定されている。
(1)でも述べたように、「搬送ラインを流れる」は「前記商品」を修飾するにとどまり、「バーコードを読み取る」に際して商品が搬送ラインを流れていることまでは限定されていないから、「搬送ラインを流れる前記商品に付されているバーコードを読み取る」ことには何の困難性もない。
百歩譲って、搬送中にバーコードを読み取る趣旨であるとしても、当審における拒絶の理由に引用した特開平8-282056号公報(以下「引用例3」という。)には、「識別記号21はバーコード形態で記録されている。」(段落【0020】)及び「識別記号21に対応する情報が記録された光記録媒体1は、プリント装置31の搬送トレイ2に保持される。そして、光記録媒体1が原点位置に位置しているとき、または光記録媒体1が搬送トレイ2と共に原点位置から矢印Y1方向に移動することによって、センサ16が識別記号21を読み取る。」(段落【0029】)との各記載があり、要するに光記録媒体に記録されたバーコードを搬送中に読み取ることが記載されているばかりか、引用例3によらずとも、搬送中にバーコードを読み取ることが困難であると解すべき理由はない。
そうであれば、引用発明1に引用例2記載の技術を採用して、もともと予定されているとおり、搬送ラインを流れる商品に印字するに際し、「搬送ラインを流れる商品に付されているバーコードを読み取る」程度のことは設計事項というべきであり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(3)相違点2について
引用例2記載の「商品メッセージテーブル30」(記載エ)には、メッセージデータ(印字データ)毎にメッセージコード(識別情報)が付加されて記憶されている。引用発明1に引用例2記載の技術を採用することの容易性は(1)で述べたとおりであるが、その際には当然「商品メッセージテーブル30」に相当するものを採用しなければならない。そうである以上、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、相違点4に係る本願発明の構成を採用するに当たっての前提であり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(4)相違点3について
引用例2記載の「商品マスタテーブル20」(記載エ)に「バーコード関連データ」に相当ものを記憶することは(1)で述べたとおりである。したがって、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、相違点4に係る本願発明の構成採用をするに当たっての必然的結果にすぎず、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(5)相違点5について
相違点1及び相違点4に係る本願発明の構成を採用すれば、印字される被印字物は「前記バーコード情報が読み取られた被印字物」とならざるを得ない。
すなわち、相違点5に係る本願発明の構成を採用することは、相違点1,4に係る本願発明の構成を採用するに当たっての必然的結果にすぎず、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(6)本願発明の進歩性の判断
相違点1?5に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術(及び、搬送中にバーコードを読み取る趣旨であるとすれば引用例3記載の技術)並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-05 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平11-158083
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥桐畑 幸▲廣▼畑井 順一  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 尾崎 俊彦
長島 和子
発明の名称 インクジェット記録装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
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