• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
管理番号 1162125
審判番号 不服2004-25532  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-15 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成 8年特許願第295496号「パターン検査方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-141932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成8年11月7日の出願であって、平成16年11月5日付け(発送日;同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであるところ、当審において、平成平成19年3月15日付け(発送日;同月27日)で拒絶の理由を通知し、それに対して同年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1乃至9に係る発明は、平成19年5月28日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「設計パターンを表す設計データを記録装置に複写する複写工程と、
前記設計パターンのどの部分のデータが前記記録装置のどこに記録されているのかを表すインデックスデータを作成し、該記録装置に記録するインデックスデータ作成工程と、
ステージ上の実パターンを撮像し、実画像データを作成する撮像工程と、
前記実パターン上の位置に基づき、前記インデックスデータを介して前記設計データを読み出す読出工程と、
読み出した前記設計データに基づき、設計画像データを作成する設計画像データ作成工程と、
前記実画像データを前記設計画像データと比較し、前記実画像データ中の欠陥を検出する欠陥検出工程と
を含み、前記撮像工程が、前記実パターン上の小区画を単位として行われ、前記読出工程は該小区画に相当する分の前記設計データのみを読み出すパターン検査方法。」

3.引用刊行物
当審において、平成19年3月15日付けで通知した拒絶の理由には、本願出願前に頒布された以下の刊行物が引用されており、各刊行物の記載事項は、後述する「3-1.」及び「3-2.」に記載のとおりである。

刊行物1;特開平4-125916号公報
刊行物2;特開昭61-180432号公報

3-1.刊行物1
刊行物1(特開平4-125916号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
1a.「(3)被検査物体の階層化された設計パターンデータを検査装置用フォーマットデータに変換するデータ変換部(14)と、前記被検査物体に形成されたパターンを画像情報に変換する変換手段(15)と、前記データ変換部(14)から順次送出される前記検査装置用フォーマットデータを該変換手段(15)からのパターン画像情報と逐次比較照合して検査結果を得る比較手段(16)とを有し、該比較手段(16)のデータ取り込みよりも高速に該データ変換部(14)による変換処理を行ない記憶装置を介在することなく該検査装置用フォーマットデータを該比較手段(16)へ供給することを特徴とするデータ変換処理装置。
(4)前記データ変換部(14)は1回の検査過程で必要な前記検査装置用フォーマットデータを分割処理しながら前記比較手段(16)へ供給することを特徴とする請求項3記載のデータ変換処理装置。」(「特許請求の範囲」)

1b.「大規模集積回路(LSI)の製造に際して、従来のデータ変換処理装置は、露光装置用の場合、コンピュータ支援設計(CAD)システムによりレイアウト設計して得られた設計パターンデータを、露光装置で描画できる露光装置用フォーマットデータに大型のホストコンピュータによりフォーマット変換した後、露光装置の外部記憶装置に露光に必要な全データ記憶する。露光装置はこの外部記憶装置に記憶されている露光装置用フォーマットデータを順次読み出しながら、それに従い露光を行なう。
また、LSI製造に用いられるレチクル、マスク、ウェーハなどに所望のパターンが正確に形成されているか否かを検査する検査装置の外部記憶装置に対して、検査装置用データ変換処理装置は設計パターンデータをフォーマット変換して検査装置用フォーマットデータを生成してそれを記憶している。記憶装置はこの検査装置用フォーマットデータを外部記憶装置から順次読み出しながら画像情報に変換し、光センサからのパターン画像情報と比較照合して検査結果を得る。・・・
しかるに、近年、LSIが益々高集積化、微細化されるに伴い、上記のデータ変換処理装置によって設計パターンデータから変換処理出力されるフォーマットデータのデータ量が飛躍的に増大し、そのデータ量に見合って外部記憶装置も記憶容量が大なるものが必要とされるに到った。
しかし、外部記憶装置の大容量化には限界があり、露光装置等の外部記憶装置に全データ量を格納するのが困難になってきたので、従来は前記容量のフォーマットデータを分割して複数のファイルに夫々格納し、上記外部記憶装置に格納できる分だけずつ外部記憶装置へ転送している。
しかし、この場合は外部記憶装置に格納されているフォーマットデータに基づく露光あるいは検査が終了すると、次のファイルから外部記憶装置に転送されてきたフォーマットデータによる露光あるいは検査の開始まで露光あるいは検査が中断し、その中断の期間ステージが周囲の振動等をひろって微小変位してしまうなどの理由から、ファイル間の露光パターン等のつなぎ目が生じ、つなぎ目付近では粗い精度でしか露光等できないという問題が生じている。
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、大容量の記憶装置を用いることなくデータ変換処理を行ない得るデータ変換処理装置を提供することを目的とする。」(2ページ左上欄下から7行?3ページ左上欄2行)

1c.「第3図は本発明の第1実施例の構成図を示す。同図中、第1図(A)と同一構成部分には同一符号を付してある。第3図において、31は設計データ格納部で、前記階層化された設計パターンデータ10を格納している。この設計パターンデータは後述のデータ変換部11でフォーマット変換されて露光装置用フォーマットデータに変換された後、データコントローラ32に入力される。ここで、データ変換部11は露光装置12の1フィールド(メインフィールド)の描画過程で必要な露光装置用フォーマットデータを分割処理しながら送出する。この分割処理は露光領域及びデータの構造上の分割処理を意味する。
データコントローラ32は入力された露光装置用フォーマットデータが、露光領域の分割処理されているものの場合は所定順に並べ換え、またデータの構造上の分割処理が施されているものの場合は所定のデータ同士を組み合わせるなどの処理を行なって得たデータを制御部33へ供給する。
制御部33は出力データを電子銃制御部34に供給し、これにより電子銃35から放射される電子ビームのオン/ オフ制御を行なわせる一方、出力データをステージコントローラ36に供給し、これによりステージ37を移動制御する。
ステージ37には試料38が戴置されており、ステージ37と共に一体的に移動制御される試料38上に、電子銃35からの電子ビームにより所望のパターン39が描画される。
ここで、データ変換部11は例えば第4図に示す如き構成とされている。同図中、41は制御用中央処理装置(以下、制御CPUという)、421?428は夫々図形処理プロセッサ、431及び432は大容量メモリ、44は画像メモリで、これらはシステムバス45に夫々接続されている。更に図形処理プロセッサ421?428,大容量メモリ431,432及び画像メモリ44はローカルパス46を介して互いに接続されている。また、47は陰極線管(CRT)で、画像メモリ44からの画像デー夕を表示する。
制御CPU41はフォーマット変換処理の制御を行なうプロセッサで、8台の図形処理プロセッサ421?428を並列作動させるべく必要な処理を行なう。
図形処理プロセッサ421?428は夫々同一構成で、演算用中央処理裝置(以下、演算CPUという)421,キャッシュメモリ422及びデータメモリ423より構成される。演算CPU421はフォーマット変換に必要な演算処理を行ない、このとき必要なデータはキャッンュメモリ422に有るときはキャッシュメモリ422から取り込み、キャッシュメモリ422に無いときはデータメモリ423をアクセスしてデータメモリ423から取り込む。
データメモリ423は少なくとも1フィールド領域分のデータを格納可能な容量を持ち、例えば16Mバイトで構成されている。また、キャッシュメモリ422は128Kバイト程度の容量を持つよう構成されている。
大容量メモリ431及び432は設計パターンデータをフォーマット変換に必要な量格納できる容量を持ち、例えば64Mバイトのものが用いられる。大容量メモリ431及び432は、キャッシュメモリ422及びデ一タメモリ423と共にフォーマット変換データの記憶手段として階層化されており、演算CPU4lからアクセス可能な構成とされている。従って、大容量メモリ431,432の記憶内容は図形処理プロセッサ421?428から参照、更新可能である。
また、データメモリ423と大容量メモリ431及び432との間では、フィールド領域単位でデータを転送できるよう構成されており、大容量メモリ431,432から図形処理プロセッサ421?428に対しては設計パターンデータが転送され、図形処理プロセッサ421?428から大容量メモリ431及び432に対しては1フィールド領域分のフォーマット変換データが転送される。
かかる構成のデー夕変換部11によれば、キャッシュメモリ422,データメモリ423及び大容量メモリ431,432の階層化が適切に行なわれると共に、制御CPU41による8台の図形処理プロセッサ421?428の並列演算制御が行なわれ、しかも図形処理プロセッサ421?428の各々は各フィールド毎の処理を無駄なく並列に実行できるため、デー夕変換処理効率が大幅に高まり、データ変換処理時問が、露光裝置l2のデータ取り込みに要する時間よりも短縮化することができる。従って、データ変換部12からの露光装置用フォーマット変換データは記憶装置に記憶せずともそのまま露光裝置12へ供給することができ、このことから近年の高密度化、微細化パターンのLSI製造工程に用いた場合、露光装置付属の記憶裝置の大容量化を排除できる。
また、本実施例によれば、従来のような複数のファイルから順次フォーマットデータを得るものではなく、露光の中断はないから、従来に比べて高精度な露光ができる。」(3ページ左下欄下から6行?4ページ右下欄11行)

1d.「次に本発明の第2実施例について第5図の構成図と共に説明する。同図中、第1図(B)と同一構成部分には同一符号を付してある。第5図において、設計データ格納部51には被検査物体の階層化された設計パターンデータが格納されており、この設計パターンデータがデータ変換部14に入力されて検査装置用フォーマットデータにフォーマット変換される。このデータ変換部14は前記したデータ変換部11と同様の第4図に示す如き構成とされており、ここでl回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータを分割処理しながらデータコントローラ52へデータを送出する。
データコントローラ52は前記したデータコントローラ32と同様の信号処理を行ない、これにより得られるデータを制御部53へ供給する。制御部53は出力データをステージコントローラ54に供給し、これによりステージ55を移動制御する。ステージ55上にはパターンが形成されたレチクル等の被検査物体56が載置され、ステージ55とー体的に移動するようになされている。・・・
被検査物体56上に形成されたパターン画像は光センサ58で撮像された後、メモリを有する画像信号変換部59に入力され、ここで被検査物体56のパターン画像情報を有するディジタルデータに変換される。
一方、制御部53から取り出される前記検査装置用フォーマット変換データは被検査物体56に形成されたパターンの本来の正しいデータであって、このデータは画像信号変換部60に入力されて、本来の正しいパターン画像を示すディジタルデータに変換される。
比較回路61は上記の画像信号変換部59及び60より夫々取り出される両ディジタルデータを比較照合し、一致するか否かに応じて検査結果を出力する。
このように、本実施例によれば、データ変換部14が第4図と同じ構成であり、階層化された設計パターンデータを、変換手段15を構成する画像信号変換部59から比較回路61へ取り込まれるパターン画像情報の取り込み速度よりも高速に、データ変換部14において検査装置用フォーマットデータに変換できるから、検査裝置用フォーマットデータを予め蓄積しておくための記憶装置を不要にできる。」(4ページ右下欄12行?5ページ右上欄20行)

3-2.刊行物2
刊行物2(特開昭61-180432号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
2a.「1.複数種類の単位パターンから構成されるパターンの検査において、検査すべきパターンに対する標準パターンの構成要素となる複数種類の単位パターン及び該単位パターンの接続情報を記憶し、該接続情報に基づいて再構成して該標準パターンを得、該標準パターンと、被検査パターンを比較することを特徴とするパターン検査方法。
2.複数の層からなる被検査パターンに対して、単位パターンデータを層別に記憶することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のパターン検査方法。」(「特許請求の範囲」)

2b.「本発明の要点は、・・・必要最小限の単位パターンのみをメモリに格納し、該単位パターンを一定の規則で読出すことによつて被検査パターンと同一のパターンを発生させ、これを基準として、被検査パターン走査信号と比較照合するところにある。」(2ページ左上欄9行?14行)

2c.「本発明の根幹である層別・領域別のパターンデータの発生部について詳しく説明する。・・・これらの繰り返しの単位となるパターンは、鏡像パターンも同一パターンと見倣せばさらに小さい部分パターンから構成されている。・・・したがつて基本的な考え方として、メモリには繰り返しの単位となる部分パターンのみを層別に記憶し、これらを一定の規則にしたがつて繰り返し読み出すこととする。以上の考え方にもとづくパターンデータ発生部の具体的実施例を第10図?第11図を用いて説明する。・・・第10図において、101はパターンメモリ読出しテーブルメモリであり、アドレスカウンタ102によつて指し示されたアドレスの内容が読出される。各アドレスには、パターンメモリの先頭アドレス、最終アドレス・・・のデータを予め格納しておく。・・・計算機から読出回路内部のレジスタへ読出しテーブルメモリ先頭アドレス・・・が与えられる。・・・ステージ移動方向が正のときは、指定した読出しテーブルメモリ先頭アドレスをアドレスカウンタ102にセツトし、・・・アドレスカウンタの更新は、ステージ移動方向が正ならば順次増加させ・・・ステージ移動方向、パターンメモリ読出方向が共に正の場合について説明する。・・・検査開始信号S15が立上がるタイミングで、パターンメモリ読出開始テーブルメモリ101に格納してあるパターンメモリ先頭アドレスを初期値としてアドレスカウンタ106にセツトし、以後ライン同期信号S162に同期して逐次増加出力されることとなる。このようにして、ラインセンサのライン画素数単位にアドレス付けされている層別パターンメモリへの指定アドレスを得ることができる。・・・パターンメモリ指定アドレスS131がパターンメモリ最終アドレスに一致する迄更新したとき、ワンシヨツトパルスを出力し、・・・アドレスカウンタ102ではこの信号を受けてそのカウントデータを更新し、パターンメモリ読出しテーブルメモリ101の読出しアドレスを変更するとともに、前述したパターンメモリ指定アドレスの発生動作を繰り返す。」(4ページ左下欄13行?5ページ右下欄14行)

4.対比・判断
上記刊行物1の上記「2-1.」の「1a.」乃至「1d.」の記載から、装置の制御動作等に着目すれば、以下のことが読み取れる。
・ステージ55上に載置された被検査物体56に形成されたパターンを撮像し、パターン画像情報を得ること。
・設計データ格納部51には設計パターンデータ13が格納されており、この設計パターンデータ13は、データ変換部14により分割処理されて、1回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータが得られること。
・パターン画像情報と検査装置用フォーマットデータとを比較照合し、所望のパターンが正確に形成されているか否かを検査すること。
したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ステージ55上に載置された被検査物体56に形成されたパターンを撮像し、パターン画像情報を得る工程と、
設計データ格納部51に格納されている設計パターンデータ13を、分割処理して、1回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータを得る工程と、
パターン画像情報と検査装置用フォーマットデータとを比較照合し、所望のパターンが正確に形成されているか否かを検査する工程とを含むパターン検査方法。」

そこで、本願発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
・後者の「ステージ55上に載置された被検査物体56に形成されたパターンを撮像し、パターン画像情報を得る工程」は、前者の「ステージ上の実パターンを撮像し、実画像データを作成する撮像工程」に相当する。
・後者の「設計データ格納部51に格納されている設計パターンデータ13を、分割処理して、1回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータを得る工程」と、前者の「実パターン上の位置に基づき、インデックスデータを介して設計データを読み出す読出工程と、読み出した設計データに基づき、設計画像データを作成する設計画像データ作成工程」とを対比すると、前者の「読出工程」は、検査に必要な部分の設計データを読み出し、「設計画像データ作成工程」におけるデータ変換を小規模とするものであるから、両者は、「検査に必要な部分の設計データを読み出す読出工程と、読み出した設計データに基づき、設計画像データを作成する設計画像データ作成工程」である点において共通する。
・後者の「パターン画像情報と検査装置用フォーマットデータとを比較照合し、所望のパターンが正確に形成されているか否かを検査する工程」は、前者の「実画像データを設計画像データと比較し、実画像データ中の欠陥を検出する欠陥検出工程」に相当する。
したがって、両者は、
「ステージ上の実パターンを撮像し、実画像データを作成する撮像工程と、
検査に必要な部分の設計データを読み出す読出工程と、
読み出した設計データに基づき、設計画像データを作成する設計画像データ作成工程と、
実画像データを設計画像データと比較し、実画像データ中の欠陥を検出する欠陥検出工程とを含むパターン検査方法。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、設計パターンを表す設計データを記録装置に複写する複写工程と、設計パターンのどの部分のデータが記録装置のどこに記録されているのかを表すインデックスデータを作成し、該記録装置に記録するインデックスデータ作成工程を設け、実パターン上の位置に基づき、インデックスデータを介して設計データを読み出し、また、撮像工程が、前記実パターン上の小区画を単位として行われ、読出工程は該小区画に相当する分の前記設計データのみを読み出すようにしているのに対し、後者には、この点の記載がない点。

上記相違点について検討する。
刊行物2には、「パターンメモリの先頭アドレス等が予め格納されているパターンメモリ読出しテーブルメモリ101のアドレス指定を、アドレスカウンタ102で行い、該当するアドレスに格納されているパターンメモリの先頭アドレス等を読み出し、(次のパターン検査のために)アドレスカウンタ102を更新して次のパターンメモリの読み出しを行う。」旨(「2c.」の記載参照。)の記載があり、このようなパターンの読み出しは、「被検査パターンと同一のパターンを発生させ、これを基準として、被検査パターン走査信号と比較照合する」(「2b.」の記載参照。)ためのものであるから、刊行物2には、被検査パターン、即ち、実パターン上の位置に相応して、アドレスカウンタ102によるパターンメモリ読出しテーブルメモリ101のアドレス指定がなされ、該当するアドレスに格納されているパターンデータを読み出すためのアドレスを取得することが示されているものと認められる。したがって、刊行物2には、実パターン上の位置に基づき、インデックスデータを介して設計データを読み出すことが実質的に示されているものと認められ、また、このようなパターンメモリ読出しテーブルメモリ101は、検査を実施する前に作成しておかなければならないものである。そして、一般に、ファイルを作成する際、ファイルを構成する各レコードのキーと格納アドレスの対応表であるインデックスデータを作成し、このインデックスデータをレコードの読み出しに使用することにより、インデックスデータを介して読み出しを行うことは周知のことであり、また、原データのファイルを別の記憶装置に複写してワークファイルとして用いることも普通に用いられているところである。
さらに、撮像工程が、実パターン上の小区画を単位として行われ、読出工程は該小区画に相当する分の前記設計データのみを読み出す点についてみると、刊行物1記載の発明においても、ステージ55に載置された被検査物体56に形成されたパターンを撮像しており、設計パターンデータ13を分割処理して、1回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータを得ていることからみて、ステージを順次所定量移動させて所定の範囲のパターンを撮像し、所定範囲の画像データを順次得ているものと認められ、また、本願発明の「小区画」に関しても、実パターンを分割した区画を意味するものであって、特段の意味を有するものとは認められず、さらに、相応する設計データのみを読み出すことも、対比に不要な設計データまで読み出す必要がないことは明らかであり、刊行物1記載の発明においても同様の配慮はなされているものと解されるから、上記の点は実質的な差異とは認められない。また、仮に、刊行物1記載の発明が上記の点に関する構成を有するとまではいえないとしても、刊行物1には、ステージ55に載置された被検査物体56に形成されたパターンを撮像し、設計パターンデータ13を分割処理して、1回の検査過程で必要な検査装置用フォーマットデータを得ることが記載されているのであるから、上記構成は、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことといえる。
そうすると、刊行物1記載の発明に、刊行物2に記載された事項及び周知事項を適用して、本願発明のように構成することは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

なお、請求人は、平成19年5月28日付け意見書において、「実パターン上の小区画を単位として撮像を行い、実画像データを作成し、実パターン上の位置に基づき、インデックスデータを介して設計データの相当する小区画分のみを読み出し、設計画像データを作成し、実画像データと設計画像データとを比較して欠陥を検出することを特徴とします。撮像工程、読出工程、設計画像データ作成工程、欠陥検出工程が実パターン上の位置、インデックスデータを介して有機的に関連しております。刊行物1記載の発明は、レチクル検査装置に必要な記憶容量を縮小化するために、データ変換部で設計パターンデータをフォーマットデータに変換し、変換手段で被検査物体のパターンを画像情報に変換し、比較手段でフォーマットデータと画像情報を逐次比較照合して検査結果を得るデータ変換処理装置であり、一回の検査に必要なフォーマットデータを分割処理しながら比較手段に供給することを含みます。設計パターンデータをフォーマットデータに変換することに重点があり、・・・本願発明1の上記特徴、有機的関連は開示されません。刊行物2記載の発明は、メモリのように繰り返しパターンからなるデバイスに用いられるレチクルの検査において、繰り返しパターンの繰り返し単位となる単位パターンのみを記憶装置に記憶することによって、小規模の検査装置を実現するというものです。複数の単位パターンをパターンメモリ35,45に格納し、単位パターンの接続情報をパターン読出し部36,46に記憶し、「被検査パターン走査信号に同期して、パターンメモリ35,45からパターン接続情報にしたがってパターンデータを発生する」(第2頁、右上欄)ことが開示されています。すなわち、刊行物2において、設計パターンの形状は接続情報によって決定されます。例えば2層パターンの場合、層別パターンメモリはラインセンサのライン画素数単位にアドレス付けされており、アドレスカウンタによって指し示されたアドレスの内容が読み出されると説明されています。層別パターンの位置合わせにアドレスが用いられていると考えられます。読み出されるパターンは複数の単位パターンの1つです。審判官殿は、刊行物2のアドレスデータが本願発明のインデックスデータといえるものであると述べられていますが、本願発明のインデックスデータは設計パターンのどの部分のデータが記録装置のどこに記録されているのかを表わすものであるのに対し、刊行物2のアドレスデータは単位パターンが層別パターンの場合、各層のデータ読出しを同期させるものであると考えられ、審判官殿の解釈には同意できません。また、上述のように刊行物1は設計パターンデータをフォーマットデータに変換することが優先するのに対し、刊行物2は被検査パターン走査信号に同期してパターン接続情報にしたがってパターンデータを発生するものであり、優先順位が異なる両者の組み合わせに対する動機付け、理由付けを見出せません。」と主張しているので、その主張について検討する。
前記のように、小区画の点については、実パターンを分割した区画以上の意味を有するものとは認められず、また、インデックスデータを介して設計データの読み出しを行う点に関しても、刊行物2の記載事項や周知事項を勘案すれば、格別の特徴とは認められず、さらに、刊行物1記載の発明においても、設計パターンデータが分割されて読み出されていることからみて、分割単位毎に相応する設計パターンデータの読出しアドレスの指定がなされること、直接読出しアドレスの指定を行う代わりにインデックスデータを介して読出しアドレスの指定を行うことも周知であること、等を勘案すれば、刊行物1記載の発明にインデックスデータを組み合わせる点に、請求人の主張するような阻害要因があるものとは認められず、その想到に格別の困難性は認められない。
したがって、請求人の前記主張は採用しない。

そして、本願発明による効果も、刊行物1及び2の記載並びに周知事項等から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2記載の発明並びに周知事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-08 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平8-295496
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司白石 光男  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 中村 直行
下中 義之
発明の名称 パターン検査方法と装置  
代理人 高橋 敬四郎  
代理人 高橋 敬四郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ