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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1162155
審判番号 不服2006-5785  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-30 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 特願2004-285639「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 70799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成15年7月17日(優先権主張;平成14年9月4日)に出願された特願2003-275911号の一部を、平成16年9月30日に新たな特許出願としたものであって、平成18年2月28日付け(発送日;同年3月7日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1及び2に係る発明は、平成17年10月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「液晶表示パネルを用いて、画像を表示する液晶表示装置であって、
入力画像信号の1垂直期間前後における階調遷移の組み合わせに応じて、該入力画像信号を階調変化方向に強調変換し、強調変換信号を求める手段と、
前記入力画像信号に対する強調変換のオン・オフをユーザに選択させるための設定画面を表示する手段と、
前記設定画面を介してユーザによりなされた設定指示に基づいて、前記強調変換信号と前記入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換え、前記液晶表示パネルに供給する手段とを備えたことを特徴とする液晶表示装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-62850号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 液晶パネル、表示データを1表示周期の期間記憶するメモリ、および現表示データと上記メモリに記憶された1表示周期前の表示データとを受けて上記液晶パネルへ出力信号を供給する参照テーブルメモリを備え、上記参照テーブルメモリは、現表示データと1周期前の表示データとのレベル差に応じて、表示データによる上記液晶パネルの光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるように書き込まれた補正信号データに従って表示データのレベル補正を行い、出力信号として上記液晶パネルに供給するようにしたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 参照テーブルメモリにより補正された表示データの信号レベル幅を、補正前の表示データの信号レベル幅より小さくなるように圧縮し、これにより生じた差分の信号レベルを、表示データのレベル補正時の補正信号として利用するようにしたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】 補正された表示データの信号レベルの幅を、補正前の表示データの信号レベル幅より小さくしたことにより生じる液晶パネルの輝度の低下を、液晶パネルの背後照明の輝度を上げることにより補うようにしたことを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置。」

1b.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、液晶パネルを用いた液晶表示装置に関するものである。」

1c.「【0012】
【発明の実施の形態】はじめに、図1を用いてこの発明の概念を説明する。図1のグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は電気信号(以下単に信号と呼ぶ)波形101およびその信号が印加された液晶パネルの光学応答波形102の光透過率である。図は信号レベルが信号レベル1から信号レベル2に変化したときの液晶の光学応答変化を記録したものであり、 透過率レベル1が信号レベル1の場合の所望の透過率、透過率レベル2が信号レベル2の場合の所望の透過率である。
【0013】信号レベル3、4、5は、本来の信号レベルは信号レベル2であるが、信号レベルを1から2へ切り換える場合に、液晶を加速的に動かすために補正された信号レベルであり、1表示周期分出力したものである。この補正された信号レベルが信号レベル3のように補正が過多である場合には、光学応答波形102は応答3のようにオーバーシュートしてしまい、また、信号レベルが信号レベル4のように補正が過小である場合には、光学応答波形は応答4のように、1表示周期期間で応答が完了しない。補正信号レベルを5のように最適なるように選ぶことにより、光学応答波形は応答5のようにちょうど1表示周期内に応答が完了することができる。
【0014】この補正信号レベルは、初期の信号レベル1と表示切換後の信号レベル2の大きさによって、最適値を一意的に決めることができる。そこで、この発明の第1の手法として、表示すべきデータの変化のすべての場合の補正信号レベルを予め測定し、これをテーブルとして準備しておくことにより、表示信号レベルが切り替わった場合、切換の前と後の信号レベルから、1表示周期に過不足なく光学応答を完了することのできる補正信号レベルを選び出して液晶パネルに印加する。
【0015】例えば、n階調の表示を行うことができる液晶パネルは、表示切換の組み合わせの場合の数はn2 通りであるので、n2 個の補正信号レベルをテーブルとして、例えばROM(リード・オンリー・メモリ)に記憶させておく。
【0016】ここで、液晶パネルへ供給される元の信号レベル変化の目標値が、信号レベルの最大値もしくは最小値である場合、前述した補正信号を生成することができない。このような場合には、元の信号レベルを圧縮することにより解決できる。すなわち、この発明の第2の手法として、信号レベルを常にある割合で圧縮することで信号レベルにレベルの余裕を持たせ、最大信号レベルへの信号変化があった場合、最大信号レベルはレベルが下げられ、生じた余裕の部分を用いて補正信号レベルを発生する。
【0017】また、上記第2の手法では、圧縮変換後の信号レベルの最大値は、もとの信号レベルの最大値より小さくなってしまうため、このことによる液晶パネルの透過率の低下を、液晶パネルの背後照明の輝度を上げることにより補い、人の目に違和感を与えないようにする。」

1d.「【0024】実施の形態3.実施の形態2では液晶パネルに供給する信号レベルを圧縮するため、表示上輝度の低下が発生することになり、液晶パネルを通常の駆動と圧縮を有する駆動を切り換えて表示する場合に輝度の差が違和感をもたらす場合がある。その場合には図6に示すように、通常の駆動と圧縮を有する駆動との切換を、液晶パネルの背後照明の輝度切換と連動させ、信号圧縮を有する駆動を行う場合には、背後照明輝度を高くして信号レベル低下による輝度低下分を補うようにすることにより、望ましい輝度での表示状態を得ることができる。
【0025】図6において、S1、S2は連動する切換スイッチで、スイッチS1は通常駆動接点aと圧縮駆動接点bとを有し、スイッチS2は標準輝度接点cと高輝度接点dとを有する。スイッチS1、S2の可動接点は通常駆動のときは標準輝度を、圧縮駆動のときは高輝度を選択する。」

1e.図面の【図6】の記載から、切換スイッチS1が通常駆動接点aに切り換えられる場合には、「現表示データ」が選択されて液晶パネル10に供給され、切換スイッチS1が圧縮駆動接点bに切り換えられる場合には、参照テーブルメモリ11から出力される「補正データ」が選択されて、液晶パネル10に供給されることが読み取れる。

3.対比・判断
引用刊行物の上記「2.」の「1a.」乃至「1e.」の記載から、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「液晶パネル10を用いた液晶表示装置であって、
現表示データと1表示周期前の表示データとを受けて、1表示周期内に前記液晶パネル10の応答が完了するように、現表示データと1周期前の表示データとのレベル差に応じて表示データのレベル補正を行い、液晶を加速的に動かすために補正された補正データを出力する参照テーブルメモリ11と、
前記現表示データと前記補正データとの何れか一方を選択し、前記液晶表示パネル10に供給する切換スイッチS1と、を備えたことを特徴とする液晶表示装置。」

そこで、本願発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「液晶パネル10」及び「液晶表示装置」は、前者の「液晶表示パネル」及び「液晶表示装置」に相当する。
・後者の「現表示データと1表示周期前の表示データとを受けて、1表示周期内に前記液晶パネル10の応答が完了するように、現表示データと1周期前の表示データとのレベル差に応じて表示データのレベル補正を行い、液晶を加速的に動かすために補正された補正データを出力する参照テーブルメモリ11」は、「液晶を加速的に動かすために補正された補正データ」が前者の「強調変換信号」に相当するものと認められるから、前者の「入力画像信号の1垂直期間前後における階調遷移の組み合わせに応じて、該入力画像信号を階調変化方向に強調変換し、強調変換信号を求める手段」と、「入力画像信号の1垂直期間前後における階調遷移の組み合わせに応じて、該入力画像信号を強調変換し、強調変換信号を求める手段」である点で共通する。
・後者の「現表示データと補正データとの何れか一方を選択し、液晶表示パネル10に供給する切換スイッチS1」は、前者の「設定画面を介してユーザによりなされた設定指示に基づいて、強調変換信号と入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換え、液晶表示パネルに供給する手段」と、「強調変換信号と入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換え、液晶表示パネルに供給する手段」である点で共通する。

したがって、両者は、
「液晶表示パネルを用いて、画像を表示する液晶表示装置であって、
入力画像信号の1垂直期間前後における階調遷移の組み合わせに応じて、該入力画像信号を強調変換し、強調変換信号を求める手段と、
前記強調変換信号と前記入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換え、前記液晶表示パネルに供給する手段とを備えたことを特徴とする液晶表示装置。」
の点の構成で一致し、以下の各点で相違する。
[相違点1]
前者が、入力画像信号を階調変化方向に強調変換するものであるのに対し、後者は、この点の記載がない点。
[相違点2]
前者が、入力画像信号に対する強調変換のオン・オフをユーザに選択させるための設定画面を表示する手段を設けているのに対し、後者には、この点の記載がない点
[相違点3]
前者が、設定画面を介してユーザによりなされた設定指示に基づいて、強調変換信号と入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換えるものであるのに対し、後者には、ユーザによる設定指示に基づく切り換えについての記載がない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
入力画像信号を階調変化方向に強調変換することは、例えば、本願の明細書中に先行技術として例示されている特開平4-365094号公報(段落【0016】に「A/D変換器4から出力される画像データの階調が画像メモリ11から出力される1フレーム前の画像データの階調よりも高い場合には、階調が高い方向に変化していることとなるので、その時の実際の階調よりも若干高い階調の画像データがROM12より読出され、セグメント駆動回路6に出力される。反対にA/D変換器4から出力される画像データの階調が画像メモリ11から出力される1フレーム前の画像データの階調よりも低い場合には、階調が低い方向に変化していることとなるので、その時の実際の階調よりも若干低い階調の画像データがROM12より読出され、セグメント駆動回路6に出力される。こうして、画像データの階調が変化した場合にはその変化の方向と度合いに応じてROM12に予め格納してある画像データが読出されて液晶パネル8が駆動され、その光透過率の立上りあるいは立下がりが急峻となる。したがって、液晶パネル8の応答速度を高めることができ、急激に変化する画像に対しても迅速に追随させることが可能となる。」と記載されている。)にも示されるように従来周知であり、この点に格別の特徴は認められない。

[相違点2]について
表示装置において、OSD(オンスクリーンディスプレイ)により各種設定を行うことは従来周知であり(例えば、特開2002-91413号公報には、【従来の技術】として、段落【0004】に「このような液晶表示制御装置では、従来のCRTタイプの表示装置と同様に、画像の明るさや色合い等をユーザーの好みに合わせて調整することが可能である。例えば、図15に示すように、表示画面201の上にOSDと称される設定ウィンドウ202を表示してそこで調整を行い、設定値を変更する毎に背景の画像がその設定値を反映して変化するという構成が一般的である。」と記載され、図面の【図15】にOSDによる設定の態様が示されており、また、特開平9-55895号公報には、【従来の技術】として、段落【0003】に「欧州などでは、フルグラフィック対応OSD(オンスクリーン表示。以下、OSDという)ICを用い、図4に示すように、画面上にリモコンハンドセットとともに各操作項目をガイダンス表示するものもある。これによると、リモコンハンドセットのどの操作ボタンを操作すれば、どの機能(コントラスト,明るさ,色合いなど)を調整できるのか、非常に判り易くなっている。」と記載され、図面の【図4】に、OSDによるコントラスト,明るさ,色合いの調整の態様が示されている。さらに、2001年11月に発売された液晶カラーテレビSHARP LC-30BV3の取扱説明書の68ページ左欄に、「・OS駆動:動きの早い映像などの応答性が改善されます。設定(切、入)」と記載され、当該ページ右欄に、OSDによる設定方法が示されている。)、このような周知の事項を、引用発明に適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

[相違点3]について
一般に、画像表示の際、画質等を考慮して強調処理を行うか否かをユーザが選択することは従来周知の事項であり(ユーザーによる輪郭強調等の選択を行う一例として、2001-197450号公報[段落【0057】に「順次走査映像信号出力端子10には順次走査映像信号用テレビモニター(図示せず)が接続され、使用者はそれにより順次走査映像に変換されたビデオ素材映像を鑑賞する事ができる。また使用者は第1のスイッチ15によってこの輪郭強調の除去機能を無効にする事もできる。」と記載され、段落【0059】に「更に、使用者によって、何段階かkの値を選べるようにし、使用者の好みに応じて輪郭除去の強弱を可変できるようにする事も可能である。」と記載されている。]参照。また、上記のように、2001年11月に発売された液晶カラーテレビSHARP LC-30BV3の取扱説明書の68ページ左欄に、「・OS駆動:動きの早い映像などの応答性が改善されます。設定(切、入)」と記載され、当該ページ右欄に、OSDによる設定方法が示されている。)、引用発明に上記のような周知事項を適用して相違点3に係る構成とすることは、上記のような周知事項を知悉する当業者であれば、格別の推考力を要することとは認められない。
なお、請求人は請求書の【請求の理由】において、
(1)「本願請求項1に係る発明と引用文献1(当審注;本審決中の「引用刊行物」に相当。)に記載のものとを比較すると、本願請求項1に係る発明は、設定画面を介してユーザによりなされた設定指示に基づいて、強調変換信号と入力画像信号とのいずれか一方を選択的に切り換え、液晶表示パネルに供給するものであるのに対し、引用文献1に記載のものは、何のためにどのようにして(何に適応して)、通常の駆動と圧縮を有する駆動とを切り換えるのかが全く開示されていない点 で両者は相違しております。この点に関し、審査官もご指摘されている、引用文献1の段落[0007]には、液晶の応答速度が速い液晶パネルに対して加速駆動を行うと表示の視認性上好ましくないと記載されていることから、引用文献1に記載のものは、使用する液晶パネルに応じて、通常駆動と強調変換駆動とを切り替えて構成するものと解すべきであります。すなわち、引用文献1のものは、液晶の応答速度が速い液晶パネルを使用する場合は、スイッチS1の通常駆動接点aを選択し、液晶の応答速度が遅い液晶パネルを使用する場合は、スイッチS1の圧縮駆動接点bを選択して、液晶表示装置を構成するものであり、このようなスイッチS1の切り替え設定は、使用する液晶パネルに応じて、製品設計段階で決定される事項であります。」(主張1)
(2)「通常、この種の液晶駆動においては、標準使用時において最適化された(液晶パネルの応答特性に応じて予め最適設定された)パラメータ(補正データ)を用いて入力画像信号を強調変換し、液晶パネルに供給するものであり、この入力画像信号に対する強調変換の有無をユーザに開放する必要性はありません。すなわち、この種の強調変換駆動においては、液晶パネルの光学応答特性を補償して、最適な動画質(動画表示性能)を得ることを目的としたものであり、設計時に最適化された強調変換をユーザ(視聴者)にオフ設定させる構成は、従来では全く考えられていませんでした。また、審査官殿は、上述のとおり、「表示の視認性の判断は主観的なものであるから、ユーザーに判断させることに格別困難性があるものではない」とご指摘されておりますが、この種の強調変換駆動は、主観的な感性により判断される視認性を向上させるものではなく、1フレーム期間に入力画像信号に対応した透過率に液晶を応答させるという客観的な目的を実現すべく設計されるものであり、設計時に決定された最適設定をユーザ(視聴者)にオフさせる必要性は全く認められていませんでした。これに対して、本願発明では、強調変換駆動を行った場合に生じる可能性がある弊害の要因(すなわち、装置の故障や装置の設置状態、視聴環境或いは入力画像の性質など)を発見し、このような種々の要因による弊害を解決するための手段として、あえて強調変換の有無設定をユーザ(視聴者)に開放する構成としたものであります。従いまして、「表示の視認性の判断は主観的なものである」からといって、上記本願発明の課題すら記載されていない引用文献1のものから、上記本願請求項1に係る発明のように、設定画面を介してユーザによりなされた設定指示に基づいて、オーバーシュート駆動(強調変換駆動)を停止させる構成は、たとえ当業者であっても決して容易に想到し得るものではありません。」(主張2)
と主張しているので、これらの主張について検討する。
(主張1)について;
引用刊行物の段落【0007】の記載は、応答速度の遅いSTN液晶を加速的に動かす手法を、応答速度の比較的速いTFT-LCDにそのまま適用すると不都合が生ずる場合があることを指摘するものであり、応答速度の比較的速いTFT-LCDについては、オーバーシュート駆動が不要であることを謂うものではなく、また、TFT-LCDに対してもオーバーシュート駆動を行うことが従来普通に採用されているところからみて、請求人の主張するように「液晶の応答速度が速い液晶パネルを使用する場合は、スイッチS1の通常駆動接点aを選択し、液晶の応答速度が遅い液晶パネルを使用する場合は、スイッチS1の圧縮駆動接点bを選択して、液晶表示装置を構成する」と解するより、むしろ、スイッチS1は、応答速度の比較的速いTFT-LCDに対しても、圧縮駆動(オーバーシュート駆動)と、このようなオーバーシュート駆動を行わない通常駆動とを選択するものと解するのが相当である。
(主張2)について;
引用刊行物には、圧縮駆動と通常駆動とを切り換える点の意義について記載されておらず、また、その切換をユーザが行うとの明記もないが、引用刊行物においても、圧縮駆動はオーバーシュート駆動を行う駆動態様を意味し、通常駆動は、このようなオーバーシュート駆動を行わない駆動態様を意味することは、その記載からみて明らかであること、また、入力画像等に応じて、ユーザーが強調処理を行わないようにしたり、その強調の程度を切り換えたりして、画質の劣化を防止することは、前記のように従来周知のことであること、を勘案すれば、引用刊行物の記載に接した、このような周知事項を知悉する当業者であれば、ユーザによる設定指示に基づいて、オーバーシュート駆動(強調変換駆動)を停止させるようにすることは、その想到に格別の困難性を要するものとは認められない。
したがって、請求人の上記(1)及び(2)の主張は採用しない。

そして、本願発明による効果も、引用刊行物の記載及び上記周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-06 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願2004-285639(P2004-285639)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 小川 浩史
堀部 修平
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 小池 隆彌  
代理人 田畑 昌男  

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