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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1162207
審判番号 不服2004-24228  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2007-08-06 
事件の表示 特願2001- 65590「ゲル状疑似餌」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月17日出願公開,特開2002-262721〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,出願日が平成13年3月8日である特願2001-65590号であって,平成16年10月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成16年11月25日付けで審判請求がなされるとともに,平成16年12月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
1)補正却下の決定の結論
平成16年12月27日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

2)補正却下の理由
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】ゲル状疑似餌100重量部に対して、下記(1)?(3)を配合することを特徴とするゲル状疑似餌。
(1)ゼラチン 15?25重量部
(2)トランスグルタミナーゼ 0.001?0.01重量部
(3)キサンタンガム及びローカストビーンガムの7:3?3:7配合物を0.2?0.6重量部。」
から,
「【請求項1】ゲル状疑似餌100重量部に対して、下記(1)?(3)を配合するゲル状疑似餌であって、ゼラチン、キサンタンガム及びローカストビーンガムを加え、70?90℃で5?20分間加熱攪拌溶解した後、50℃程度まで冷却し、トランスグルタミナーゼを添加し、50℃前後で1時間程度保持、その後、80?90℃で10?30分間加熱後、成型し、冷却することを特徴とするゲル状疑似餌の製造法。
(1)ゼラチン 15?25重量部
(2)トランスグルタミナーゼ 0.001?0.01重量部
(3)キサンタンガム及びローカストビーンガムの7:3?3:7配合物を0.2?0.6重量部。」
と補正された。

補正前の請求項1に係る発明の対象は,請求項1の末尾からみて「ゲル状疑似餌」であり,その発明のカテゴリーは,「物」である。
一方,補正後の請求項1に係る発明の対象は、請求項1の末尾からみて「ゲル状疑似餌の製造法」であり,その発明のカテゴリーは,「方法」である。
つまり,本件補正は,特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーが変更するものであって,「変更」と「限定」とは共通の概念を有しない異なる概念であるから、本件補正は,「物」である補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。すなわち,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「ゲル状疑似餌」,「ゼラチン」,「トランスグルタミナーゼ」あるいは「キサンタンガム及びローカストビーンガム」を更に限定するものではない。
してみると,本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の括弧書きに規定される要件を充足するものではないので、同第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また,請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とする補正ともいえないことは明らかである。
したがって,この補正は,同第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
1)本願発明
平成16年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は,平成16年9月27日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ゲル状疑似餌100重量部に対して、下記(1)?(3)を配合することを特徴とするゲル状疑似餌。
(1)ゼラチン 15?25重量部
(2)トランスグルタミナーゼ 0.001?0.01重量部
(3)キサンタンガム及びローカストビーンガムの7:3?3:7配合物を0.2?0.6重量部。」

2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願日前に頒布された特開平6-319414号公報(以下,「引用例1」という。)には,以下の点が記載されている。
(1)「【請求項1】タンパク質架橋重合酵素により架橋されたタンパク質と、水溶性多糖類とを主成分とすることを特徴とする魚釣り用ゲル状擬似餌。」(【特許請求の範囲】)
(2)「【産業上の利用分野】本発明は、魚釣り用のゲル状の擬似餌、さらに詳しくは、自然環境下で容易に分解可能であって、使用後に放置されても環境を汚染しないという特徴を有する魚釣り用擬似餌に関するものである。」(段落【0001】)
(3)「より詳しくは、釣果を著しく向上せしめるために、その感触、挙動、すなわち擬似餌表面のぬめり感、弾力性が生き餌に酷似し、誘引作用にも優れていて、釣りの対象となる多くの種類の魚類を誘引することができ、しかも、生き餌の性質に応じてその物性の調整が可能で、生き餌が有する性質を一層引き立てながら、擬似餌特有の誘引作用を発揮することができる擬似餌を提供し、同時に、実際の使用条件に耐えるに充分な耐水性・耐膨潤性・耐熱性・強度等の物性を有し、さらに、それを食した魚にとって無害であり、使用後自然環境下に放置された場合でも周囲の環境を汚染しない擬似餌を提供することを目的とするものである。」(段落【0013】)
(4)「(実施例)ゼラチン(宮城化学工業製APK-250 、JIS法でゼリー強度250Bloom、粘度42mpの酸性法ゼラチン)3500重量部と、アラビアガム(三栄薬品貿易製アラビックコールSS、粘度90?150cst、pH値4.0 ?4.5 )830 重量部とを混合し、よく攪拌した。これに精製水6200重量部を加え、60分間放置し、ゼラチンとアラビアガムとを膨潤した後、60℃の温浴中で加熱し、ゼラチンとアラビアガムとを完全に溶解した。溶解後、真空ポンプで吸引し、溶解液の脱泡処理を充分に行った。この溶解液に、トランスグルタミナーゼ(SIGMA CHEMICAL CO.製 1.9units/mg)1.0 重量部を水100 重量部に溶解した酵素溶液を添加し、よく攪拌した後、素早く所定形状の擬似餌作製容器に流し込み、これを60℃の温水中で5時間加温し、酵素による架橋重合反応を進行させ、ゲル化を促進させた。このゲル状の擬似餌は、表面のぬめり感・弾力性が生き餌に酷似したものであり、強度的にも充分なものであった。」(段落【0024】)
(5)「【発明の効果】本発明によれば、理想的な擬似餌として同時に満たすべき3つの条件、すなわち、釣果を著しく向上せしめ、また、簡便な使用を可能とする物性を有し、さらに、その使用が自然環境に対して悪影響を及ぼさないことを、同時に充足する擬似餌を提供することができる。すなわち、釣果を著しく向上せしめるために、その感触、挙動、すなわち擬似餌表面のぬめり感・弾力性が生き餌に酷似し、誘引作用にも優れていてあらゆる種類の魚類を誘引することができ、しかも、生き餌の性質に応じてその物性の調整が可能で、さらに、生き餌が有する性質を一層引き立てながら、擬似餌特有の誘引作用を発揮することができる擬似餌を提供し、同時に、実際の使用条件に耐えるに充分な耐水性・耐膨潤性・強度等の物性を有し、さらには、それを食した魚にとって無害であり、使用後自然環境下に放置された場合でも周囲の環境を汚染しない、理想的なゲル状の疑似餌を提供することができる。」(段落【0028】)

したがって,上記記載事項(1)?(5)からみて,引用例1には,
「タンパク質架橋重合酵素により架橋されたタンパク質と,水溶性多糖類とを主成分とする魚釣り用ゲル状擬似餌であって,
(1)タンパク質としてゼラチンを3500重量部
(2)タンパク質架橋重合酵素としてトランスグルタミナーゼ1.0重量部を溶解した水100重量部
(3)水溶性多糖類としてアラビアガムを830重量部
(4)精製水6200重量部
を配合する魚釣り用ゲル状疑似餌。」(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また,同様に引用され,本願出願日前に頒布された特開平9-28312号公報(以下,「引用例2」という。)には,以下の点が記載されている。
(6)「・・・ゼラチンを含む本発明の動物用食餌材を製造する工程において、ゼラチンが添加された後の工程でトランスグルタミナーゼを添加し、酵素反応を働かせることによって、本発明の動物用食餌材をより一層弾力性があり、噛み応えがあるものとする・・・」(段落【0007】)
(7)「・・・ゼラチンの使用量は、原材料中に5?50重量%、好ましくは10?30重量%である。・・・」(段落【0013】)
(8)「本発明におけるトランスグルタミナーゼの使用量は、原材料中に0.0015?10.0重量%(0.15?1000U)、好ましくは0.002?1.0重量%(0.20?100U)である。・・・」(段落【0017】)

3)対比
そこで,本願発明と引用発明とを比較すると,「ゲル状疑似餌」は,上位概念として「魚釣り用ゲル状疑似餌」を含むものであるから,引用発明の「魚釣り用ゲル状疑似餌」と本願発明の「ゲル状疑似餌」は,「ゲル状疑似餌」として共通する。また,引用発明の「水溶性多糖類としてアラビアガム」と本願発明の「キサンタンガム及びローカストビーンガム」とは,「水溶性多糖類」として共通する。そして,引用発明の「タンパク質としてゼラチン」および「タンパク質架橋重合酵素としてトランスグルタミナーゼ」が,本願発明の「ゼラチン」および「トランスグルタミナーゼ」に、それぞれ対応し,また,引用発明においては,ゲル状疑似餌100重量部に対する割合に換算すれば,ゼラチンが32.9重量部であり,トランスグルタミナーゼが0.0094重量部となり,該0.0094重量部が「0.001?0.01重量部」に含まれることは,明らかである。
したがって,本願発明と引用発明とは,
「ゼラチン,トランスグルタミナーゼおよび水溶性多糖類とを含み,ゲル状疑似餌100重量部に対して,トランスグルタミナーゼを0.0094重量部配合するゲル状疑似餌。」
である点で一致し,以下の各点で相違している。

(相違点1)
「ゼラチン」が,本願発明では「15?25重量部」であるのに対し,引用発明では「32.9重量部」である点。

(相違点2)
「水溶性多糖類」が,本願発明では「キサンタンガム及びローカストビーンガムの7:3?3:7配合物を0.2?0.6重量部」であるのに対し,引用発明では「アラビアガムを7.8重量部」である点。

4)判断
(1)相違点1について
本願明細書に記載された実施例1?3は,「ゼラチン」が17.5部のみのものであるところ,その重量部の増減が弾力性(引っ張り強度)に対してどの様な影響があるのか示されていない。そして,「15?25重量部」の上限値と下限値の臨界的意義も示されていない。
他方,引用例1において,その特許請求の範囲に記載されている発明は,たんぱく質の種類だけではなく,その配合量も特定されているわけではなく,引用発明の「32.9重量部のゼラチン」が単なる一実施例として示されているのみである。そして,本願発明の上限値である「25重量部」と引用発明の「32.9重量部」とは,量的に差異があるといえるものの,引用例1の前述した記載事項における作用効果の記載からみて,その差異により両者の作用効果に格別の相違があるともいえない。
ところで,引用例2に記載された「動物用食餌材」は,本願発明あるいは引用発明と同じ「ゲル状疑似餌」ではないが,それと類似の技術分野に属するものであるところ,本願発明と同様にその弾力性が求められているものである。そして,引用例2には,前述したように「ゼラチンの使用量は、原材料中に5?50重量%、好ましくは10?30重量%である」とすることが記載されており,該範囲が上記「15?25重量部」と同程度であり,かつ,それを含むことからみて,本願発明の「ゼラチン」の数量範囲は,当業者が通常選択し,採用を試みる範囲内の数量であるといえる。
してみると,引用発明の「ゼラチン」を「32.9重量部」から「15?25重量部」として,相違点1における本願発明の構成とすることは,引用例2に記載された事項に基づいて,当業者ならば容易になし得る程度の事項に過ぎないといわざるを得ない。

(2)相違点2について
水溶性多糖類として,本願発明の「キサンタンガム及びローカストビーンガム」は,引用発明の「アラビアガム」と同様に,例を示すまでもなく本願出願前周知である。
そして,下記に例示したように,「キサンタンガム及びローカストビーンガム」を増粘材として使用する場合には,「キサンタンガム」と「ローカストビーンガム」とを略等重量部とすること,および,これらの合計配合量を「0.1?2.0重量%」の範囲程度とすることも周知・慣用の事項である。
例えば,特開昭62-186784号公報には,
「この発明の培地は、ゲル化させるためには両材料の混合割合は、任意であるが、培地の最適固状を得るためには両者をほぼ等重量にするのがよい。
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合物を水性系とする。その際両者の合計重量が水にたいし、約0.5?1.0%(重量、以下同じ)になるように配合し、均質にする。この系を加熱してゾル化させ、これを冷却してゲル化させ、室温にし固化させる。」(第2頁左上欄第5?13行)と記載されている。(下線は,当審が付与する。)
また,特開平6-30714号公報には,
「【請求項3】キサンタンガムとローカストビーンガムの混合重量比が4:6?6:4である請求項1、2に記載のゼリー生地の調製方法。
【請求項4】キサンタンガムとローカストビーンガムの最終配合物中のそれぞれの濃度が、0.3?1.6重量%である請求項1、2に記載のゼリー生地の調製方法。」
と記載されている。(下線は,当審が付与する。)
更に,特開平8-308527号公報には,
「【請求項4】キサンタンガムが0.05?1.0重量%、ローカストビーンガムが0.05?1.0重量%及び水溶性ヘミセルロースが0.05?1.0重量%含有されてなる請求項1記載のゲル状調味料。」
と記載されている。(下線は,当審が付与する。)
そして,上記周知・慣用の「略等重量」が本願発明の「7:3?3:7」に含まれ,同上周知・慣用の「0.1?2.0重量%」が本願発明の「0.2?0.6重量部」を含み,本願発明における上限値・下限値に格別の意義(臨界的意義)が有るとはいえないから,これらの範囲は,当業者ならば適宜設定し得る設計的事項であるといわざるを得ない。
なお,本願明細書の【0026】には,「表3より、キサンタンガム60%,ローカストビーンガム40%含有組成物・・・・・の添加量を多くしすぎると、かえって引っ張り強度が減少し、ゲルの強度が弱くなることが判った。」と記載されているものの,これは,実施例2(0.5重量部)と比較例2(0.75重量部)との比較のみを根拠とするものであって,キサンタンガムとローカストビーンガムの配合比を変化させた他の実施例も示されていないことから,その上限値である「0.6重量部」に臨界的意義があることを示しているとはいえない。
したがって,前記周知・慣用の事項に基づいて,引用発明の「アラビアガムを7.8重量部」を「キサンタンガム及びローカストビーンガムの7:3?3:7配合物を0.2?0.6重量部」に置き換え,相違点2における本願発明の構成とすることは,当業者ならば容易になし得た程度のことであるといえる。

そして,本願発明の作用・効果も,引用発明,引用例2に記載された事項および前記周知・慣用の事項から予測される範囲内のもので格別のものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1,2に記載された発明および前記周知・慣用の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-31 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-19 
出願番号 特願2001-65590(P2001-65590)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西田 秀彦
岡田 孝博
発明の名称 ゲル状疑似餌  

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