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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B |
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管理番号 | 1162244 |
異議申立番号 | 異議2001-72839 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-10-16 |
確定日 | 2007-07-17 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3155924号「非PVC多層フィルム」の請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3155924号の請求項1ないし16に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3155924号(平成8年4月26日出願、優先権主張1995年4月26日(ドイツ)、平成13年2月2日設定登録、請求項の数16)の請求項1ないし16に係る特許について、出光ユニテック株式会社および坂本亮から特許異議の申立があったので、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成15年12月4日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出された。 そこで、訂正拒絶理由を通知したところ、その指定期間内である平成16年6月8日付けで意見書が提出された。 II.訂正の適否についての判断 平成15年12月4日付け訂正請求書の訂正事項には、次の訂正事項が含まれる。 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項9の「【請求項9】前記外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーを含む請求項1?8のいずれか1項に記載のフィルム。」の記載を、「【請求項9】前記外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマーおよび/または高密度ポリエチレン(HDPE)、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーを含む請求項1?8のいずれか1項に記載のフィルム。」と訂正する。 訂正事項b 明細書の発明の詳細な説明の段落【0023】、【0050】の記載を、 「【0023】 [9] 前記外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマーおよび/または高密度ポリエチレン(HDPE)、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーを含む前記1?8いずれかに記載のフィルム。」、 「【0050】 好ましくは、これらにはポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低から中くらいのエチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマーおよび/または高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。ポリプロピレンランダムコポリマーが特に好ましい。上記ポリマーは、単独でまたは混合物として使用できる。」 と訂正する。 そこで、訂正事項aおよびbにおける、「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を、「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマーおよび/または高密度ポリエチレン(HDPE)」と訂正することについて、その訂正が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるかについて検討する。 願書に添付した明細書の段落【0049】及び【0050】には、外層用のものは、当業者に良く知られたポリマーまたはポリマー混合物であること、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、「低から中くらいのエチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有する」ポリプロピレンランダムコポリマーが含まれるとされ、ポリプロピレンランダムコポリマーが特に好ましいとした上で、上記ポリマーは、単独でまたは混合物として使用できることが記載され、外層に使用される高密度ポリエチレンについては、「高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」であると記載されている。そうすると、高密度ポリエチレンは、ポリプロピレンランダムコポリマーと一体組成のものとして記載されているものであるから、高密度ポリエチレンが単独に選択し得るポリマーとして記載されていたと認めることはできない。 よって、 上記訂正事項a及びbによる訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に適合しないので、訂正は認められない。 なお、この点について、特許権者は、意見書において、高密度ポリエチレンとポリプロピレンランダムコポリマーとは別異のポリマーであり、発明の詳細な説明の段落【0036】には、外層と支持層とは同一でもよい旨の記載があり、発明の詳細な説明の段落【0052】には、支持層に高密度ポリエチレンを使用する旨の記載があるから、外層の材料として、高密度ポリエチレンを用いることは明らかである旨を主張している。 仮に、特許権者が主張するように、発明の詳細な説明の段落【0036】の記載が、外層に使用されるポリマーと、支持層に使用されるポリマーとが「同一」であることを意味する記載であるとしても、発明の詳細な説明の段落【0052】には、支持層のポリマーの具体例として、外層に使用されるポリマーとしては具体的には記載されていないポリマーである、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が記載されていることから、外層に使用されるポリマーの種類と、支持層に使用されるポリマーの種類とはすべて一致するとは認められないので、発明の詳細な説明の段落【0052】に高密度ポリエチレンを使用することの記載があるとしても、特許請求の範囲の請求項の記載において、外層と支持層とを明確に区別した上で外層のポリマーについて限定している以上、支持層のポリマーについての説明の記載により、外層が高密度ポリエチレンであることの記載がされていたとは認められない。 よって、特許権者の主張を採用することはできない。 III.特許異議申立てについての判断 1.本件発明 訂正請求書による訂正は認められないから、本件請求項1ないし16に係る発明は、それぞれ、特許査定時の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 外層(2)と少なくとも1つの介在中央層(3)を備える支持層(4)を含む非PVC多層フィルムにおいて、前記外層(2)と支持層(4)は121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、低軟化温度を示す少なくとも1つの中央層(3)はポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、低密度ポリエチレン(LDPE)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)およびポリイソブチレン(PIB)から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂、または、ρ≧0.9g/cm3のポリプロピレンおよび/またはポリエチレンと上記ポリマーとのブレンドから選ばれ、70℃より低い軟化温度を有するポリマーを特徴とするフィルム。 【請求項2】 前記中央層(3)は、70℃より低い軟化温度を示すポリマーを含んで低軟化温度を示す少なくとも2つの層(6)と121℃を越える軟化温度を示すポリマーを含んで高軟化温度を示す少なくとも1層(7)とを含み、ここで、層(6)と層(7)は交互に配列されてなる請求項1に記載のフィルム。 【請求項3】 前記中央層(3)は少なくとも90μmの厚みで、前記外層(2)と支持層(4)はそれぞれ10?20μmの厚みである請求項1または2に記載のフィルム。 【請求項4】 前記多層フィルムはさらに熱封止層(5)を含む請求項1?3のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項5】 前記熱封止層(5)は、前記外層(1)、前記支持層(4)と前記少なくとも1つの層(7)の軟化温度よりも低い軟化温度を有するポリマーを含む請求項4に記載のフィルム。 【請求項6】 前記熱封止層(5)は15?30μmの厚さである請求項4または5に記載の方法。 【請求項7】 前記全ての層は、実質的な成分として、ポリオレフィンホモポリマーおよび/またはポリオレフィンコポリマーを含む請求項1?6のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項8】 前記多層フィルムは、可塑剤、抗ブロック剤、抗静電剤とその他のフィラーを実質的に含まない請求項1?7のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項9】 前記外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーを含む請求項1?8のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項10】 前記支持層(4)と高軟化温度を有する少なくとも1つの層(7)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および/またはこれらのポリマーの混合物からなる請求項2?8のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項11】 前記熱封止層(5)は、ポリプロピレンコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および/または上記ポリマーとスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン ブロックコポリマーとの混合物、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン ブロックコポリマー、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン ブロックコポリマー)および/またはα-オレフィンコポリマー、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーとSISブロックコポリマーとのブレンドから調製されたものを含む請求項4?8のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項12】 前記多層フィルムは、平坦または環状フィルムである請求項1?11のいずれか1項に記載のフィルム。 【請求項13】 前記多層フィルムは同時押出し法で製造される請求項1?12のいずれか1項に記載の非PVC多層フィルム(1)の製造方法。 【請求項14】 前記同時押出しされると得られるフィルムは水で冷却される請求項13に記載の方法。 【請求項15】 請求項1?12のいずれか1項に記載の非PVC多層フィルム(1)の医薬バッグの製造への使用。 【請求項16】 請求項15に記載の非PVC多層フィルム(1)の医薬多室バッグの製造への使用。」 2.取消理由通知の概要 当審が平成15年8月27日付けで通知した取消理由4.の概要は、 a.特許請求の範囲の請求項1の記載における「少なくとも1つの介在中央層(3)を備える支持層(4)」は、多義的に解釈され、その内容が明瞭でない記載であって、介在中央層自体を独立した層として把握することができるものではないから、非PVC多層フイルムを特定するために必要とされる構成層が明確であるとはいえず、 b.特許請求の範囲の請求項1の記載からは、「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み」の規定では、121℃を越える軟化温度を有するポリマーと他のポリマーとのポリマーブレンドからなる層では、必ずしもその軟化点が121℃を越えるとは限らないから、この規定は明確であるとはいえず、 c.ポリプロピレンコポリマーの概念の中にρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのコポリマーが包含されるから、特許請求の範囲の請求項1の記載における中央層のポリマーの例示からは、ポリプロピレンコポリマーとρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのコポリマーの境界が明確であるとはいえず、 d.高密度ポリエチレンとポリプロピレンランダムコポリマーは、別異のポリマーとして把握される物質同士であるから、特許請求の範囲の請求項9の記載の記載における「高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」の内容を把握できず、 本件請求項1、請求項9、および、請求項1を引用する請求項2ないし16には記載不備があり、また、これらの請求項に関連した明細書の段落【0015】、【0016】、【0023】、【0050】にも記載不備があるから、その特許は、特許法第36条第4項及び第6項第2号の規定を満足していない特許出願に対してされたものである、というものである。 3.当審の判断 特許権者は意見書において、訂正により明細書の記載不備は解消したとしているが、特許権者がした訂正請求はII.に記載のとおり認められないので、取消理由通知の概要で記載した明細書の記載不備は、解消しているとはいえない。 したがって、請求項1ないし16に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、また、発明の詳細な説明が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえない。 よって、取消理由通知は、妥当なものであると認められ、本件特許は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満足していない特許出願に対してされたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求項1ないし16に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第4号に該当し、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-09-13 |
出願番号 | 特願平8-107207 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
ZB
(B32B)
P 1 651・ 536- ZB (B32B) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
高梨 操 |
特許庁審判官 |
野村 康秀 石井 淑久 |
登録日 | 2001-02-02 |
登録番号 | 特許第3155924号(P3155924) |
権利者 | フレゼニウス アクチェンゲゼルシャフト |
発明の名称 | 非PVC多層フィルム |
代理人 | 石崎 剛 |
代理人 | 木下 実三 |
代理人 | 野上 敦 |
代理人 | 八田 幹雄 |
代理人 | 中山 寛二 |
代理人 | 平石 利子 |