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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1162828
審判番号 不服2004-12525  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2007-08-16 
事件の表示 平成 6年特許願第290700号「出力装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月21日出願公開、特開平 8-129465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成6年10月31日の出願であって、平成15年4月28日付けの拒絶の理由の通知に対して、その指定された期間内の同年7月4日付けで意見書及び補正書が提出されたが、平成16年5月13日付けで拒絶の査定がなされ、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.本願発明について

1.本願発明
本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月4日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「双方向性インタフェースを介してコンピュータネットワーク又はホストコンピュータに接続された出力装置において、
ホストコンピュータからのコマンド又は操作パネルによる指示により、前記コンピュータネットワーク又はホストコンピュータに接続された他の出力装置のアドレスを記憶する記憶手段と、
登録操作が行われた場合は、該登録操作による登録情報をメモリに登録する登録手段と、
前記登録手段による登録後、前記記憶手段に記憶されたアドレスを読み出し、該アドレスの出力装置に対して前記メモリに登録された登録情報を送信する送信手段とを有することを特徴とする出力装置。」

2.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-110625号公報(平成6年4月22日出願公開。以下、「刊行物1」という。)には、印刷制御装置に関して、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a.ホスト装置からの印刷指令コードをネットワークより受信するためのインタフェース手段及び制御手段を備えた印刷制御装置において、
印刷指令中の文字コードを文字等のイメージに展開するためのフォントの一部または全部をネットワーク上のデバイスに置き、文字コードを受信した時に必要なフォント資源が当該装置上及び該装置に接続される補助記憶装置上にもなく且つ予め前記デバイスのフォント資源が指定されている場合には、該デバイスにフォント資源の送出要求を発行して、該フォント資源を正常に受信した場合には該フォント資源を用いて文字等のイメージを生成し、
前記デバイスのフォント資源が指定されていない場合あるいは前記送出要求に対するフォント資源の受信が正常に終了しなかった場合には、印刷指令の発行元であるホスト装置に対して所定のエラー通知を発行することを特徴とする制御方式。(公報、第2頁、第1欄、第18乃至34行、特許請求の範囲【請求項2】の記載。)

b.図8は、印刷制御装置20によるこの発明に係わるまたさらに他の処理を示すフローチャートである。このルーチンはホスト装置1からフォントファイルの更新を指示する指令とフォントデータを受信した時にスタートし、まずステップ60でそのフォントファイルを保管すべき補助記憶装置23上のファイルを更新する。この処理が正常に終了した場合にはステップ61,62,63と処理が移行し、自動更新指定の有無を判断する。正常に終了しなかった場合にはステップ61,69と処理が移行し、ホスト装置1に否定応答を返送して処理を終了する。
ここで、上記自動更新指定の有無は、不揮発性メモリ10に予め記憶させた情報により判断する方式やホスト装置1からの指令に依存する方式など自由に設定すればよい。自動更新の指定がある場合にはステップ63,64,65と処理が継続し、指定がない場合には処理を終了する。
ステップ64では更新通知を発行すべき宛先のリストを作成する。この宛先は、このフォント更新の指令が発行される以前に外部からの要求に呼応して送出したフォントファイルのファイル名と宛先を記憶しておき、それまでに該当ファイルを送った図2の印刷制御装置5とすることが好適であるが、不揮発性メモリ10に予め記憶させた情報やホスト装置1の指定に従うといった方式でも構わない。
ステップ65においては、先にリストアップされた印刷制御装置に対してフォントの更新通知を発行する。(公報、第7頁、第12欄、第21乃至48行、段落【0058】?段落【0061】の記載。)

c.図9は、情報処理システムの一例を示すブロック構成図であり、ネットワーク30を介して第1のホスト装置31から第4のホスト装置34までの4台のホスト装置と、第1の印刷制御装置35から第3の印刷制御装置37までの3台の印刷制御装置とが接続され、その各印刷制御装置35,36,37にそれぞれ印刷装置38,39,40が接続されている。通常の利用形態ではさらに多くのホスト装置が接続されることが多いと考えられる。
3台の印刷制御装置35?37のうち第3の印刷制御装置37は図4の印刷制御装置20と同様の機能を有しており、印刷制御のための制御プログラムファイル群とフォントファイル群を格納する補助記憶装置37a,37bと、外部装置の要求に呼応してそのファイル群の入出力を行なう手段とを備えたものである。
第1の印刷制御装置35及び第2の印刷制御装置36は図2の印刷制御装置5と同様の機能を有しており、それぞれ適切な時点で必要になったプログラム資源あるいはフォント資源をロードするためのRAM35a,36aと、そのロードのための制御手段とを備えている。
この例からも明らかなように、同一のネットワーク上に第3の印刷制御装置37の機能を有するデバイスを1台設置することにより、第1の印刷制御装置35あるいは第2の印刷制御装置36の機能を有する印刷制御装置をさらに追加してゆくことが可能になり、それらの印刷制御装置間では制御プログラムやフォントといった資源を共有することができる。
(公報、第8頁、第13欄、第9乃至36行、段落【0063】?段落【0066】の記載。)

ここで、刊行物1の記載aにおける「ネットワーク上のデバイス」は、印刷指令中の文字コードを文字等のイメージに展開するためのフォントの一部または全部を置くものであり、同記載cによれば「3台の印刷制御装置35?37のうち第3の印刷制御装置37は、印刷制御のための制御プログラムファイル群とフォントファイル群を格納する補助記憶装置37a,37bと、外部装置の要求に呼応してそのファイル群の入出力を行なう手段とを備え」るから、上記「ネットワーク上のデバイス」は「第3の印刷制御装置37」である。

また、刊行物1の記載aにおける「ネットワーク」は、同記載cによれば「ネットワーク30を介して第1のホスト装置31から第4のホスト装置34までの4台のホスト装置と、第1の印刷制御装置35から第3の印刷制御装置37までの3台の印刷制御装置とが接続され」るものである。

また、刊行物1の記載aにおける「印刷制御装置」は、同記載cによれば、「印刷制御装置間では制御プログラムやフォントといった資源を共有」し、「各印刷制御装置35,36,37にそれぞれ印刷装置38,39,40が接続されている」ものである。

また、刊行物1の記載aにおける「ネットワーク上のデバイス」は、同記載bによれば「ホスト装置1からフォントファイルの更新を指示する指令とフォントデータを受信した時に」、「そのフォントファイルを保管すべき補助記憶装置23上のファイルを更新」し、「更新通知を発行すべき宛先のリストを作成」し、「フォントの更新通知を発行する」ものであって、「この宛先は、このフォント更新の指令が発行される以前に外部からの要求に呼応して送出したフォントファイルのファイル名と宛先を記憶しておき」、「それまでに該当ファイルを送った印刷制御装置5」である。
また、同記載cによれば、「第1の印刷制御装置35及び第2の印刷制御装置36は図2の印刷制御装置5と同様の機能を有して」いるから、印刷制御装置35、36も宛先としている。

上記記載事項によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されている。

「ホスト装置1からの印刷指令コードをネットワークより受信するためのインタフェース手段及び制御手段を備えた印刷制御装置において、ネットワーク30を介して4台のホスト装置と、3台の印刷制御装置35,36,37とが接続され、各印刷制御装置にはそれぞれ印刷装置38,39,40が接続されており、3台の印刷制御装置35?37のうち第3の印刷制御装置37は、印刷制御のための制御プログラムファイル群とフォントファイル群を格納する補助記憶装置37a,37bと、外部装置の要求に呼応してそのファイル群の入出力を行なう手段とを備え、印刷制御装置間では制御プログラムやフォントといった資源を共有し、また、当該第3の印刷制御装置37は、ホスト装置1からフォントファイルの更新を指示する指令とフォントデータを受信した時に、そのフォントファイルを保管すべき補助記憶装置上のファイルを更新し、更新通知を発行すべき宛先のリストを作成し、フォントの更新通知を発行するものであって、このフォント更新の指令が発行される以前に外部からの要求に呼応して送出したフォントファイルのファイル名と宛先を記憶しておき、該当ファイルを送った印刷制御装置35、36を宛先とする印刷制御装置37」

3.対比
本願発明と刊行物1記載発明とを比較すると、刊行物1記載発明の「ホスト装置1」、「補助記憶装置」は、本願発明の「ホストコンピュータ」、「メモリ」にそれぞれ相当する。

また、刊行物1記載発明の「印刷制御装置37」と「印刷装置40」とからなる構成は、ホスト装置1からの印刷指令コードをネットワーク30より受信し、ネットワーク30を介して4台のホスト装置と、3台の印刷制御装置とが接続され、印刷制御装置間では制御プログラムやフォントといった資源を共有し、外部からの要求に呼応してフォントファイルを送出するから、本願発明における「双方向性インタフェースを介してコンピュータネットワーク又はホストコンピュータに接続された出力装置」に相当する。

また、刊行物1記載発明の「印刷制御装置37」は、ネットワーク30を介して4台のホスト装置と、3台の印刷制御装置とが接続され、フォント更新の指令が発行される以前に印刷制御装置35、36からの要求に呼応して送出したフォントファイルのファイル名と宛先を記憶するから、本願発明における「ホストコンピュータに接続された他の出力装置のアドレスを記憶する記憶手段」を備えている。

また、刊行物1記載発明の「印刷制御装置37」は、フォントファイルの更新を指示する指令とフォントデータを受信した時に、そのフォントファイルを保管すべき補助記憶装置上のファイルを更新するから、本願発明における「登録操作が行われた場合は、該登録操作による登録情報をメモリに登録する登録手段」を備えている。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「双方向性インタフェースを介してコンピュータネットワーク又はホストコンピュータに接続された出力装置において、
前記コンピュータネットワーク又はホストコンピュータに接続された他の出力装置のアドレスを記憶する記憶手段と、
登録操作が行われた場合は、該登録操作による登録情報をメモリに登録する登録手段と、
を有する出力装置。」である点。

[相違点1]
本願発明では、ホストコンピュータからのコマンド又は操作パネルによる指示により他の出力装置のアドレスを記憶するのに対して、刊行物1記載発明では、ファイルを更新する以前に、外部からの要求に呼応してフォントファイルを送った印刷制御装置35、36の宛先を記憶しておく点。

[相違点2]
本願発明では、登録手段による登録後、記憶手段に記憶されたアドレスを読み出し、該アドレスの出力装置に対してメモリに登録された登録情報を送信する送信手段とを有するのに対し、刊行物1記載発明では、更新通知は発行するが、登録情報を送信するような手段が明らかでない点。

4.判断
[相違点1]について
操作パネル(コンソール)による指示によりネットワークを介して接続された他の端末機のアドレスを記憶手段に、記憶することは周知のことである(例えば、特開昭62-92543号公報の記載参照)。

したがって、刊行物1記載発明において、上記周知技術を採用して、操作パネルによる指示により他の出力装置のアドレスを記憶して、本願発明を構成することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

[相違点2]について
刊行物1記載発明においては、フォントファイルの更新を指示する指令とフォントデータを受信した時に、そのフォントファイルを保管すべき補助記憶装置上のファイルを更新し、このフォント更新の指令が発行される以前に要求に呼応してフォントファイルを送出した宛先に更新通知を発行するから、更新後も当該宛先からの要求に呼応して補助記憶装置上の更新されたフォントファイルを送出するものである。

したがって、更新通知後に宛先からの要求に呼応してフォントファイルの送出を行う際に、記憶されている宛先を読み出して、フォントファイルの更新後(本願発明における「登録手段による登録後」)、記憶されている宛先を読み出し(本願発明における「記憶手段に記憶されたアドレスを読み出し」)、宛先へフォントファイルの送出を行う(本願発明における「アドレスの出力装置に対してメモリに登録された登録情報を送信する」)手段を設けて、本願発明のように構成することは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物1記載発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-15 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-02 
出願番号 特願平6-290700
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨吉 伸弥  
特許庁審判長 川嵜 健
特許庁審判官 重田 尚郎
和田 志郎
発明の名称 出力装置及びその制御方法  
代理人 村松 聡  
代理人 別役 重尚  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 二宮 浩康  
代理人 池田 浩  

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