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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61N |
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管理番号 | 1162966 |
審判番号 | 不服2004-13841 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-05 |
確定日 | 2007-08-14 |
事件の表示 | 特願2000-204012号「電気により体組織を治療するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月13日出願公開、特開2001-61972号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年7月5日(パリ条約による優先権主張1999年7月26日、米国)の出願であって、平成16年3月26日付け(発送日:平成16年4月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月4日受付けの手続補正書により補正がなされたものである。 第2 平成16年8月4日受付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月4日受付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、平成15年10月31日受付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲「 【請求項1】 体組織を治療するための装置において、 a)体組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)体組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、 c)超音波振動を選択的に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記体組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項2】 体組織を治療するための装置において、 a)体組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)前記電気刺激装置上に配置され超音波振動を選択に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、 c)体組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記体組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項3】 前記センサ手段は前記電気刺激装置上に配置される請求項1又は2記載の装置。」を 「 【請求項1】 脳組織を治療するための装置において、 a)脳組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)脳組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、 c)超音波振動を選択的に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記脳組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項2】 脳組織を治療するための装置において、 a)脳組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)前記電気刺激装置上に配置され超音波振動を選択に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、 c)脳組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記脳組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項3】 前記センサ手段は前記電気刺激装置上に配置される請求項1又は2記載の装置。 【請求項4】 筋肉組織を治療するための装置において、 a)筋肉組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)神経又は脳組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、 c)超音波振動を選択的に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記神経又は脳組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項5】 筋肉組織を治療するための装置において、 a)筋肉組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)前記電気刺激装置上に配置され超音波振動を選択に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、 c)神経又は脳組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記神経又は脳組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。 【請求項6】 前記電気刺激装置は電源を必要とすることなく超音波振動に反応して電圧および電流の発生が可能なピアゾ電気効果素子を含む請求項1乃至5記載の装置。 【請求項7】 前記セピアゾ電気効果素子は小型振動セラミックモータを含む請求項6記載の装置。」と補正するものである。 2.補正の目的 本件補正は、請求項を3項から7項に増加するものであって、引用形式請求項を独立形式請求項に変更するものに該当するものでもないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、また、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年10月31日受付けの手続補正書で補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。 「体組織を治療するための装置において、 a)体組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置と、 b)体組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段と、 c)超音波振動を選択的に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段と、を含み、 d)前記センサ手段は前記体組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている、装置。」 第4 引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-245215号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。 1.「心臓ペースメーカ本体は、心電図情報を検出する少なくとも2つの電極と、該心電図情報を変調・送信する送信部とからなる心電図情報検出部と、該心電図情報検出部より送信された心電図情報を受信復調する受信部と、該受信された心電図情報に基づいてパルスを出力制御する制御部と該パルスを変調送信する送信部とを有するペースメーカ本体に分割されていることが好ましい。心電図情報検出部とペースメーカ本体が分割されているために、心電図情報を取り出す位置が自由に設定できる。このため、ペースメーカ本体ではなく、心内膜に心電図情報検出部を設けることもでき、直接心内膜から心電図情報を検出することができる。 心内膜に固定されるペーシング電極及び心電図情報検出部の固定位置は被装着者の症状に応じて異なり、心室と心房にペーシング電極の双方に固定する場合、それぞれ一方にのみペーシング電極を固定する場合、心室に心電図情報検出部を固定し、心房にペーシング電極を固定する場合などがある。」(段落【0012】?段落【0013】) 2.「パルス信号として超音波を用いた場合は、送信部と受信部に圧電トランスデューサを設ける必要があるが、電波を用いたときに比べ、変調する必要がなくなるなどの利点がある。この場合、送信部から送波された超音波は、受信部内の圧電トランスデューサにて電圧に変換され、増幅されて電極部に印加され、心筋へ刺激を与えることになる。パルス信号は被装着者に最適なものが選ばれると良い。」(段落【0014】) 3.「体内の生理的変化に基づいて、ペーシングを行う場合にも本発明は応用できる。すなわち、被装着者に体温や血圧を測定するセンサーを取り付け、このセンサーからの生体情報をペースメーカ本体に送信し、これらの生体情報に基づいてペーシングを行うものである。」(段落【0015】) 4.「【実施例2】図5に本発明の第2の実施例の概念図を示す。心電図測定用電極部130とペーシング電極120が一体化された電極ユニット150が心房の心内膜に固定され、また、ペーシング電極110が心室に固定されている。心電図情報は心電図測定用電極部130から心電図情報信号200としてをペースメーカ本体100に送信され、ペースメーカ本体100は胸部に埋め込まれており、この心電図情報信号200を受信し、受信された心電図情報に基づいてペースメーカ本体はそれぞれのペーシング電極110,120にパルス信号を送信し、このパルス信号に基づき、ペーシング電極は心内膜に刺激を与えている。 図6は電極ユニット150の心内膜15への固定した状態を示す。電極ユニットは心電図測定用電極部130とペーシング電極120からなり、ペーシング電極部は実施例1で用いたものと同様で、ペースメーカ本体100より送信されるパルス信号を受信する受信部122、復調部123、心筋に刺激を与える電極部125とから構成されており、さらに心内膜への固定具127を有している。また、心電図測定用電極部130は心電図測定用電極135,125(ペーシング電極120の電極部と共用)を有しており、この心電図測定用電極135,125は数cm離れている。心電図測定用電極135と125の間で測定された心内心電図は電極ユニット150からペースメーカ本体100に向けて送信されるものである。 次にブロック図を用いて、動作原理を説明する。 図7はペースメーカ本体100のブロック図である。ペースメーカ本体100は受信部160、復調部162、制御部155、メモリ部156、通信部157、送信部158、電源159よりなり、受信部160で受信した心電図情報信号200を復調部162で復調して制御部155に入力する。制御部155では入力された心電図情報とメモリ部156に記憶されたペーシングプログラムに基づき、心臓ペーシングのためのタイミングパルスが形成され、この形成されたタイミングパルスは送信部158により所定のパルス信号105に変換され送信される。通信部157は外部に設けられたプログラマ500との通信に使用されるもので、メモリ部分156に記憶されたペーシングプログラムを変更する時に使用される。プログラマ500により被装着者に適したペーシングプログラムがメモリ部157に記憶でき、必要に応じて変更することも可能である。また電源159はペースメーカ本体100の各部に電源供給を行っている。心電図測定用電極を分離した以外の機能は、実施例1と同様であり、同一の符号を用いている。 図8は電極ユニット150のブロック図である。受信部122、復調部123、電極部125(心電図測定用電極を兼ねる)、心電図測定用電極135、増幅部136、送信部137、電池部139からなり、心電図測定用電極135,125で測定された心内心電図は増幅部136にて増幅され、送信部137で心電図情報信号200として、ペースメーカ本体100に送信される。一方、受信部122では、ペースメーカ本体100から送信された送信波(パルス信号)105を受信し、復調部123に入力する。復調部123では復調増幅され電極部125へペーシング電圧として出力される。電池部139から電極ユニットの各部に電源が供給されている。」(段落【0032】?段落【0036】) 5.「本発明の心臓ペースメーカは、心臓ペースメーカ本体は、心電図情報を検出する少なくとも2つの電極と、該心電図情報を変調・送信する送信部とからなる心電図情報検出部と、該心電図情報検出部より送信された心電図情報を受信復調する受信部と、該受信された心電図情報に基づいてパルスを出力制御する制御部と該パルスを変調送信する送信部とを有するペースメーカ本体に分割されているために、心電図情報を取り出す位置が自由に設定できる。このため、ペースメーカ本体ではなく、心内膜に心電図情報検出部を設けることもでき、直接心内膜から心電図情報を検出することができ、心室に心電図情報検出部を設け、心房にペーシング電極を設けるなど被装着者の症状に応じて種々の形態をとることができる。」(段落【0039】) これらの記載と図面の記載を総合すれば、引用例には、 「心臓ペースメーカにおいて、 a)送信部から送波された超音波が、受信部内の圧電トランスデューサにて電圧に変換され、増幅されて印加され、心筋へ刺激を与える刺激電極と、 b)心電図情報を検出する少なくとも2つの電極と、心電図情報を変調・送信する送信部とからなる心電図情報検出部と c)超音波を出力制御する制御部と該超音波を送信する送信部とを有する心臓ペースメーカ本体と、を含み、 d)心電図情報検出部より送信された心電図情報を受信復調する受信部を有する心臓ペースメーカ本体であって、該心臓ペースメーカ本体は受信された心電図情報に基づいて超音波を出力制御する 、心臓ペースメーカ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 第5 対比・判断 1.引用発明において、心臓ペースメーカは、被装着者の症状に応じてペーシング電極及び心電図情報検出部の固定位置は異なるものであり(第4 1.及び5.)、また、生体情報に基づいてペーシングを行い(第4 3.)、さらに、心臓ペーシングのためのタイミングパルスを設定するペーシングプログラムは必要に応じて変更することも可能である(第4 4.)ことから、心臓すなわち体組織を治療するための装置ということができる。 2.引用発明において「送信部から送波された超音波が、受信部内の圧電トランスデューサにて電圧に変換され」るということは、超音波を電圧に変換させるということであるから、超音波振動に反応して電圧が発生するといえる。また、その電圧は「増幅されて印加され、心筋へ刺激を与える」ことから、心筋を治療するための治療電圧といえる。さらに、心筋へ治療電圧で刺激を与える際には、同時に所定のアンペア数で電流も流れることは明らかである。 したがって、引用発明の「送信部から送波された超音波が、受信部内の圧電トランスデューサにて電圧に変換され、増幅されて印加され、心筋へ刺激を与える刺激電極」は、本願発明の「体組織を治療するために超音波振動に反応して治療電圧およびアンペア数で電流の発生が可能な電気刺激装置」に相当するということができる。 3.引用発明の「心電図情報」は「体組織により発生される予め選択された刺激」ということができ、「心電図情報検出部」は「センサ手段」に相当するといえるから、引用発明の「心電図情報を検出する少なくとも2つの電極と、心電図情報を変調・送信する送信部とからなる心電図情報検出部」は、本願発明の「体組織により発生される予め選択された刺激を受けるように適合されたセンサ手段」に相当するということができる。 4.引用発明において、「超音波を出力制御する」ことは「超音波振動を選択的に発生」させることであり、「超音波を送信する」ことは超音波を刺激電極へ送信することであるから、「電気刺激装置に伝達する」ことといえる。 したがって、引用発明の「超音波を出力制御する制御部と該超音波を送信する送信部とを有する心臓ペースメーカ本体」は、本願発明の「超音波振動を選択的に発生し前記電気刺激装置に伝達するための超音波振動発生手段」に相当するということができる。 5.引用発明の「心電図情報検出部」は、「心電図情報」を「心臓ペースメーカ本体」に送信するものであるから、「体組織により発生される予め選択された刺激」に反応して「超音波振動発生手段」と連絡するものといえる。また、引用発明において「心臓ペースメーカ本体は受信された心電図情報に基づいて超音波を出力制御する」ということは、「心臓ペースメーカ本体」が心電図情報に基づいて超音波の出力を制御するということであるから、「心臓ペースメーカ本体」、すなわち、「超音波振動発生手段」が心電図情報検出部の心電図情報により「選択的に刺激されるように適合されている」といえる。 したがって、引用発明の「心電図情報検出部より送信された心電図情報を受信復調する受信部を有する心臓ペースメーカ本体であって、該心臓ペースメーカ本体は受信された心電図情報に基づいて超音波を出力制御する」は、本願発明の「前記センサ手段は前記体組織により発生される予め選択された刺激に反応して前記超音波振動発生手段と連絡し該超音波振動発生手段が選択的に刺激されるように適合されている」に相当するということができる。 6.してみると、本願発明は、引用発明と同一であり、何ら相違するところはない。 なお、請求人は、審判請求書において「バッテリーが不要であることが、引例との比較上必須であると判断される場合には、独立項の中にその要件を加える用意がある」旨主張している。出願当初の明細書及び図面の記載から、本願発明の電気的刺激装置が、バッテリーを不要としたものをも含むと解釈する余地があるとしても、体内に埋め込まれる機器のバッテリーを不要とすることは周知(特開平2-19147号公報、特開平5-220222号公報参照。)であり、さらに進んで外界との接続をなくして超音波を利用してエネルギーを供給することも周知(特開昭63-209649号公報、特開平2-19147号公報参照。)であるから、バッテリーを不要とすることは、当業者が適宜採用し得る程度の設計的事項にすぎない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-28 |
結審通知日 | 2007-03-06 |
審決日 | 2007-03-22 |
出願番号 | 特願2000-204012(P2000-204012) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(A61N)
P 1 8・ 113- Z (A61N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 稲村 正義 |
発明の名称 | 電気により体組織を治療するための装置 |
代理人 | 松原 伸之 |
代理人 | 松嶋 さやか |
代理人 | 村木 清司 |
代理人 | 橋本 千賀子 |
代理人 | ▲高▼部 育子 |