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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1163099
審判番号 不服2004-26122  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2007-08-22 
事件の表示 平成 8年特許願第343391号「線状光源装置、およびこの線状光源装置を備える画像読み取り装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月21日出願公開、特開平10-190956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月24日の出願であって、平成16年11月11日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年1月21日付で手続補正がなされている。
これに対して、当審において平成19年1月15日付で審尋が行われ、平成19年3月22日付で回答書が提出されたものである。

2.平成17年1月21日付の手続補正について
平成17年1月21日付の手続補正は、補正前の請求項1ないし14を削除するものであって、特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであるから、適法である。

3.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成17年1月21日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「一定長さを有する透明部材の外面に、この透明部材の長手方向に延びる複数の外周側面が形成されており、それら複数の外周側面の第1側面が、上記透明部材内に入射してその長手方向に進行する光を上記透明部材の外部に射出する光出射面とされており、上記透明部材内に光を入射させるための光入射部が、上記第1側面と上記透明部材の厚み方向に対向する第2側面の長手方向端部に設けられている導光部材と、この導光部材の光入射部に対向する光源と、を具備している線状光源装置であって、上記透明部材の長手方向端部には、上記光入射部に対して上記透明部材の厚み方向に対向し、かつ、上記第1側面の長手方向端部に連接されているとともに、上記透明部材の長手方向中央部へ向かうにつれて上記第2側面から遠ざかるように傾斜している凸面状の曲面とされた傾斜面が形成されており、上記光源は、LEDであるとともに、上記傾斜面は、上記長手方向における寸法が上記光源の上記長手方向における寸法よりも大きいことを特徴とする線状光源装置。」

4.引用例
[第1引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭63-3935号(実開平1-108501号)のマイクロフィルム(以下、「第1引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「本考案は、車載用電装品、例えばヒーターコントロールユニット等の中に設けられ、その下部に配置されるもの、例えばラジオ等を照光する装置に用いられ、照明用光源を照明範囲の極端に端の部分にしか設置できない場合の照明用導光体に関するものである。」(1頁13行?18行)

(b)「前記照明用導光体2はガラスやアクリル樹脂等の光透過率の良い材料からなり、長方形に成形されたもので、その一端はホルダー部1aに収容された光源3に近接に配設されており、該光源3と対向する受光部2bには光源3からの光を照明用導光体2中に導くための反射面2cが、又該受光部2bから遠ざかった他端には前記反射面2c(審決注:「2a」は誤記)とほぼ平行して傾斜した照光部2aが形成されている。又前記照光部2aには多数の鋸歯状の溝2eが形成されていて、照明用導光体2中に導かれた光は、前記鋸歯状の溝2eより反射され、全面パネルAの開口部5から前記開口部5を覆う色板4を通して被照明物6を照光するようになっている。」(2頁8行?20行)

(c)「しかしながら、上記の従来例のように、照明用導光体2中に導かれた光を鋸歯状の溝2eによって外方に放射するようにしたものにあっては、反射面2cによって照明用導光体2中に導かれた光が照光部2aの傾斜面2dに至るまでに照明用導光体2の上面2f及び下面2g間にて反射を繰り返えし乱反射をともなって、複雑な入射角度で鋸歯状の溝2eに到達するので、あらゆる角度からの光を平面で受けて開口部5に向けて照射するようにした鋸歯状の溝2eでは光の乱反射が効果が不足し、照明にムラが生じたり、光源から離れるにつれて光量が不足するという欠点がある。」(3頁2行?13行)

[第2引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-295002号公報(以下、「第2引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(d)「本発明は、線状光源に係り、特に複写機、ファクシミリ、スキャナ機器等の情報読取り装置に用いられる線状光源に関する。」(段落【0001】)

(e)「以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
[実施例1]図1は本発明の線状光源の第1実施例を示す斜視図である。図1において、1は長尺透明部材、2は基板、3は基板2に設けられたLEDチップ、5は光を放出する方向である。長尺透明部材1の側面1aは光放出面(光を放出する一部領域)、側面1b,1c,1dは鏡面処理等がなされ、反射面となっている。
長尺透明部材1の両端には光源であるLEDチップ3が配置されており、LEDチップ3から放出された光は、長尺透明部材1の端部から入射され、入射光は直接側面1aを透過するか、又は側面1b,1c,1dで反射されて側面1aを透過して方向5に放出される。本実施例では、長尺透明部材1の中央部の断面を小さくするように、側面1dをテーパ形状としており、効率良く光を方向5に反射させることができる。なお、本実施例では、側面1dは一定角度に傾けているが特に一定角度とする必要はない。」(段落【0012】?【0013】)

[第3引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-203333号公報(以下、「第3引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(f)「本発明は、LCD等を照明するバックライトに関するものであり、特に小型化を図ったバックライトに関するものである。」(段落【0001】)

(g)「次に本発明の第4の実施例に係るバックライト1Cは、図4に示すように、入光部M5,M6からの光線を曲面形状にした反射部N5,N6である面10C,11Cに当てて、所謂乱反射した光を導光体4C、5C内に供給する構造となっており、左眼用及び右眼用導光体4C,5Cと、光源部6Cとから構成されている。
左眼用及び右眼用導光体4C、5Cは、長方形状をした短手側の一辺を曲面形状に形成し、曲面形状にした夫々の面10C,11C同士をつき合わせて配設した構造となっている。」(段落【0046】?【0047】)

5.対比
(ア)第1引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)の「照明用導光体2」及び「光源3」は、本願発明の「導光部材」及び「光源」にそれぞれ相当する(前掲(b))。

(イ)引用発明の「照明用導光体2」は、ガラスやアクリル樹脂等の光透過率の良い材料からなり(前掲(b))、第1引用例の第1図及び第2図(以下、単に「第1図及び第2図」という。)から明らかなように、一定の長さを有しており、本願発明の「一定長さを有する透明部材」に相当する。

(ウ)引用発明の「照明用導光体2」は、長方形に成形されており(前掲(b))、第1図及び第2図から明らかなように、長手方向と、それに直交する厚み方向とを持つ。
さらに、前記「照明用導光体2」は、上面、下面を含めた複数の面からなり(前掲(c))、これら複数の面が、前記照明用導光体2の外周側面を形成していること、及び前記複数の面の一部が前記長手方向に延びていることは、第1図及び第2図からも明らかであるから、前記「照明用導光体2」は、本願発明の「透明部材の外面に、この透明部材の長手方向に延びる複数の外周側面が形成されて」いる「導光部材」に相当する。

(エ)引用発明の「照明用導光体2」は、光源3からの光を反射面2cにより中に導き、導いた光を照光部2aに形成された鋸歯状の溝2eにより反射し、全面パネルAの開口部5から色板4を通して被照明物6を照光している(前掲(b))。
ここで、第1図及び第2図を参照すると、前記開口部5及び被照明物6は、前記照明用導光体2に対して下側に位置しているから、前記照明用導光体2中に導かれた光は、該照明用導光体2の下面(前掲(c))のうち、少なくとも照光部2aに含まれる部分から外部に射出されていることは明らかであり、前記「下面」は、本願発明の「第1側面」及び「光出射面」に相当する。
また、光源3から反射面2cによって照明用導光体2中に導かれた光は、照光部2aの傾斜面2dに至るまでに前記照明用導光体2の上面及び下面間にて反射を繰り返し、鋸歯状の溝2eに到達しており(前掲(c))、第1図及び第2図を参照すると、光が前記照明用導光体2に対して概ね長手方向に進行していることは明らかである。
したがって、引用発明の「照明用導光体2」は、本願発明の「複数の外周側面の第1側面が、透明部材内に入射してその長手方向に進行する光を上記透明部材の外部に射出する光出射面とされて」いる「導光部材」に相当する。

(オ)引用発明の「照光用導光体2」は、その一端が光源3に近接に配置されており、該光源3と対向して受光部2bが形成されている(前掲(b))。
ここで、第1図及び第2図を参照すると、前記受光部2bのうち、照光用導光体2の上面に相当する部分(以下、「上面部分」という。)に対し、光源3からの光が入射していることは明らかであるから、前記上面部分は、本願発明の「光入射部」に相当する。
また、前記照光用導光体2の上面及び下面が、該照光用導光体2の厚み方向に対向していることも、第1図及び第2図から明らかであり、前記照光用導光体2の上面は、本願発明の「第1側面と透明部材の厚み方向に対向する第2側面」に相当する。
さらに、前記受光部2bが前記照光用導光体2の長手方向端部に設けられていることも、第1図及び第2図から明らかであるから、前記照光用導光体2は、本願発明の「透明部材内に光を入射させるための光入射部が、第1側面と上記透明部材の厚み方向に対向する第2側面の長手方向端部に設けられている導光部材」に相当する。

(カ)引用発明の「光源3」は、第1図及び第2図を参照すると、照明用導光体2の上面部分に対向していることは明らかであるから、本願発明の「導光部材の光入射部に対向する光源」に相当する。

(キ)引用発明は、照明用光源を備えた装置であるから(前掲(a))、「光源装置」であるといえる。

(ク)引用発明の「反射面2c」は、照明用導光体2のうち、光源3と対向する受光部2bに形成されている(前掲(b))。
ここで、第1図及び第2図を参照すると、前記受光部2bが前記照明用導光体2の長手方向端部に設けられていること、前記反射面2cが前記受光部2bの上面部分に対して前記照明用導光体2の厚み方向に対向していること、前記反射面2cが前記照明用導光体2の下面の長手方向端部に連接されていること、及び前記反射面2cが、前記照明用導光体2の長手方向中央部へ向かうにつれて該照明用導光体2の上面から遠ざかるように傾斜していることは明らかである。
したがって、前記「反射面2c」は、本願発明の「光入射部に対して上記透明部材の厚み方向に対向し、かつ、第1側面の長手方向に連接されているとともに、上記透明部材の長手方向中央部へ向かうにつれて第2側面から遠ざかるように傾斜している傾斜面」に相当するとともに、「透明部材の長手方向端部に」形成されているといえる。

(ケ)第1図及び第2図を参照すると、前記照明用導光体2の長手方向において、反射面2cの寸法が、光源3の寸法よりも大きいことは明らかであるから、引用発明の「反射面2c」は、本願発明の「上記長手方向における寸法が光源の上記長手方向における寸法よりも大きい」「傾斜面」に相当する。

以上を踏まえ、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「一定長さを有する透明部材の外面に、この透明部材の長手方向に延びる複数の外周側面が形成されており、それら複数の外周側面の第1側面が、上記透明部材内に入射してその長手方向に進行する光を上記透明部材の外部に射出する光出射面とされており、上記透明部材内に光を入射させるための光入射部が、上記第1側面と上記透明部材の厚み方向に対向する第2側面の長手方向端部に設けられている導光部材と、この導光部材の光入射部に対向する光源と、を具備している光源装置であって、上記透明部材の長手方向端部には、上記光入射部に対して上記透明部材の厚み方向に対向し、かつ、上記第1側面の長手方向端部に連接されているとともに、上記透明部材の長手方向中央部へ向かうにつれて上記第2側面から遠ざかるように傾斜している傾斜面が形成されており、上記傾斜面は、上記長手方向における寸法が上記光源の上記長手方向における寸法よりも大きいことを特徴とする光源装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「線状光源装置」であり、光源がLEDであるのに対し、引用発明においては、照明用光源が線状であるか否か、また光源3がLEDであるか否か明らかでない点。

[相違点2]
本願発明の「傾斜面」が、「凸面状の曲面とされた」傾斜面であるのに対し、引用発明の「反射面2c」は、直線状に傾斜しており、曲面を形成していない点。

6.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1について]
長尺透明部材の端部に光源であるLEDを配置した線状光源は、例えば第2引用例にみられるように、当業者に周知である(前掲(d)、(e))。
引用発明も、長方形に成形された照明用導光体2の一端に光源3を近接して配設する構成となっており(前掲(b))、前記照明用導光体2の光出射面である下面を線状に形成すること、及び前記光源3として周知のLEDを用いることは、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。

[相違点2について]
第3引用例には、照明用のバックライトに関し、入光部からの光線を曲面形状にした反射部である面に当て、乱反射した光を導光体内に供給することが、公知の技術として開示されている(前掲(f)、(g))。
引用発明においても、照明用導光体2中に光源3からの光を導くための反射面2cが、前記照明用導光体2の受光部2bに形成されており、光が外部に出射する割合を少なくするために、引用発明に上記公知技術を適用し、曲面形状に形成された反射面に光源3からの光を当て、照明用導光体2中に導く構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、これらの相違点を総合的に考慮しても、本願発明は当業者が想到し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の奏する作用効果も、引用発明の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。

なお、集光用のレンズを備えたLED光源は周知であり(例えば特開昭61-25362号公報の第2図及び第3図、特開昭61-73389号公報の第1図(C)、及び特開平3-159362号公報の第2図参照)、引用発明において、集光レンズを備えたLEDを光源3に用いることは、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎず、審判請求人が回答書において提示した本願の請求項1の補正案も、上記判断に影響を与えるものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例ないし第3引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-12 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-02 
出願番号 特願平8-343391
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 隆夫木方 庸輔  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 井上 健一
伊知地 和之
発明の名称 線状光源装置、およびこの線状光源装置を備える画像読み取り装置  
代理人 吉田 稔  
代理人 塩谷 隆嗣  
代理人 古澤 寛  
代理人 田中 達也  

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