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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1163112
審判番号 不服2003-4111  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-13 
確定日 2007-08-23 
事件の表示 平成 8年特許願第193143号「電子線式検査方法及びその装置並びに半導体デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月12日出願公開、特開平 9-320505〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯
本願は、平成8年7月23日(優先権主張;平成8年3月29日)の出願であって、平成15年2月7日付け(発送日;同月12日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月14日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成15年4月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、この制御された加速電圧で電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項2】
被対象物の表面の高さを測定し、該測定して得た前記被対象物の表面の高さ情報に基づいて電子線ビームの焦点の位置を調整し、電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、前記焦点の位置が調整されて前記加速電圧と電界とで制御された電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号に基づいて前記被対象物について検査又は計測を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項3】
被対象物の表面の高さを測定し、該測定して得た前記被対象物の表面の高さ情報に基づいて電子線ビームの焦点の位置を調整し、前記被対象物の表面における断面構造の種類に応じて電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、前記焦点の位置が調整され前記加速電圧と電界とを制御した状態で電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号に基づいて前記被対象物について検査又は計測を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項4】
被対象物の表面の高さを測定し、該測定して得た前記被対象物の表面の高さ情報に基づいて電子線ビームの焦点の位置を調整し、電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、前記焦点の位置が調整され前記加速電圧と電界とを制御した状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該電子線ビームの照射により前記被対象物から発生して前記制御された電界を通過した二次電子又は反射電子を検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を記憶しておいた参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項5】
被対象物の表面に光を照射して前記被対象物の表面からの反射光を検出することにより前記被対象物の表面の高さを検出し、電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、この制御された加速電圧で電子線ビームを前記検出した被検査対象物の高さ情報を用いて焦点の位置を調整しながら前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生して前記制御された電界を通過した二次電子又は反射電子を検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を記憶手段に記憶しておいた参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項6】
表面に薄膜のパターンを形成した被対象物の表面の電子線ビーム照射領域における前記薄膜の種類又は前記薄膜のパターンの構造及び材質・種類に応じて電子線ビームの加速電圧と前記被対象物近傍における電界とを制御し、前記加速電圧と電界とを制御した状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項7】
被対象物の表面におけるチャージアップの現象の発生を抑制するような電子線ビームの加速電圧と前記被対象物近傍における電界とを設定し、前記加速電圧と電界とを設定した状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、前記設定された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項8】
表面に薄膜のパターンを形成した被対象物の表面の電子線ビーム照射領域における前記薄膜の種類又は前記薄膜のパターンの構造及び材質・種類に応じた前記電子線ビーム照射領域のチャージアップの現象の発生を抑制するような電子線ビームの加速電圧に制御された状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、前記設定された電界に応じて前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項9】
前記チャージアップの現象を二次電子放出効率として捉えることを特徴とする請求項7又は8記載の電子線式検査方法。
【請求項10】
前記電子線ビームの加速電圧は、0.3KV?5KVの範囲であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の電子線式検査方法。
【請求項11】
前記被対象物近傍における電界は、5KV/mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の電子線式検査方法。
【請求項12】
電子線ビームの被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御し、電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項13】
表面に薄膜のパターンを形成した被対象物の表面の電子線ビーム照射領域における前記薄膜の種類又は前記薄膜のパターンの構造及び材質・種類に応じて電子線ビームの前記被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御し、前記電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項14】
被対象物の表面にプリチャージ又はディスチャージを与えた状態で電子線ビームを前記被対象物に照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号から前記被対象物について検査または計測することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項15】
被対象物の表面にプリチャージ又はディスチャージを与えた状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号から前記被対象物の表面における構造的特徴を抽出することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項16】
被対象物の表面の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを偏向させるビーム偏向器と、前記電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被対象物の表面の高さ情報を用いて前記被対象物上に集束させる対物レンズと、電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって制御された加速電圧で電子線ビームを被対象物に対して照射して走査した際、前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出するセンサと、該センサで検出して得た信号に基づいて前記被対象物について検査または計測を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項17】
被対象物の表面の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被対象物の表面の高さの情報を用いて前記被対象物上に集束させる対物レンズと、電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって制御された加速電圧と電界が制御された状態で電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で照射・走査されて前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出するセンサと、該センサで検出して得た信号を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項18】
電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを被対象物上に集束させる対物レンズと、前記電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で電子線ビームが照射・走査されることにより前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出して前記被対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、前記画像取得手段で取得した画像を前記記憶手段に記憶した参照画像と比較することによりして,るセンサと、該センサで検出して得た信号を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項19】
被対象物の表面の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被対象物の表面の高さ情報を用いて前記被対象物上に集束させる対物レンズと、前記電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で電子線ビームが照射・走査されることにより前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出して前記被対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、前記画像取得手段で取得した画像を前記記憶手段に記憶した参照画像と比較することにより前記被対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項20】
被対象物の表面に光を照射して前記被対象物の表面からの反射光を検出することにより前記被対象物の表面の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被対象物の表面の高さ情報を用いて前記被対象物上に集束させる集束手段と、前記電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段により照射して走査された前記電子線ビームにより前記被対象物から発生して前記電位制御手段で制御された電界を通過した二次電子又は反射電子を検出する検出手段と、して前記被対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、該検出手段で検出して得た信号に基づいて前記被対象物について検査または計測を行う処理手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項21】
電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを偏向させるビーム偏向手段と、該電子線源から出射された電子線ビームを表面に薄膜のパターンを形成した被対象物上に集束させる対物レンズと、前記表面に薄膜のパターンを形成した被対象物の表面の電子線ビーム照射領域における前記薄膜の種類又は前記薄膜のパターンの構造及び材質・種類に対応したその表面のチャージアップの現象の発生を抑制するような電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって制御された加速電圧で電子線ビームを前記ビーム偏向手段で被対象物に対して照射して走査することにより前記被対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、該画像取得手段で取得した画像を前記記憶手段に記憶した参照画像と比較して前記被対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項22】
電子線ビームの加速電圧と被対象物近傍における電界とを制御し、この制御された加速電圧で電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて半導体基板から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、このセンサで検出して得た信号に基づいて半導体基板について検査または計測を行って半導体基板を製造することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項23】
電子線ビームの試料上の加速電圧、又は試料上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御し、電子線ビームを半導体基板に対して照射して走査し、半導体基板から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号から半導体基板について検査または計測を行って半導体基板を製造することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項24】
前記検査または計測結果を解析して所定のプロセスにフィードバックすることを特徴とする請求項22又は23に記載の半導体デバイスの製造方法。」
を、補正後の、
「【請求項1】
電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定ステップと、 該検査条件設定ステップで被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定ステップと、
前記被検査対象物の表面の高さ情報を得、該得られた被検査対象物の表面の高さ情報を用いて電子線ビームの焦点の位置を調整し、前記検査条件選定ステップで選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と前記被検査対象物の近傍における電界とを制御し、この制御された加速電圧で電子線ビームを前記被検査対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被検査対象物の画像を得、この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被検査対象物について検査を行う検査ステップとを有することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項2】
電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定ステップと、 該検査条件設定ステップで被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定ステップと、
前記被検査対象物の表面の高さを測定し、該測定して得た前記被検査対象物の表面の高さ情報に基づいて電子線ビームの焦点の位置を調整し、前記検査条件選定ステップで選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御し、前記焦点の位置が調整されて前記加速電圧と前記電界とで制御された電子線ビームを前記被検査対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出し、この検出して得た信号に基づいて前記被検査対象物について検査又は計測を行う検査又は計測ステップとを有することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項3】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定ステップと、 該検査条件設定ステップで被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定ステップと、
前記被検査対象物の表面の高さを測定し、該測定された被検査対象物の表面の高さ情報に前記検査条件選定ステップで選定された検査条件により決まる焦点位置オフセットを加算した焦点の位置に電子線ビームの焦点の位置を調整し、前記検査条件選定ステップで選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御し、前記焦点の位置が調整され前記加速電圧と前記電界とを制御した状態で電子線ビームを前記被検査対象物に対して照射して走査し、該電子ビームの照射により前記被検査対象物から発生して前記制御された電界を通過した二次電子又は反射電子を検出して前記被検査対象物の画像を得、この検出して得た画像を記憶しておいた参照画像と比較することにより前記被検査対象物について検査を行う検査ステップとを有することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項4】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定ステップと、 該検査条件設定ステップで被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定ステップと、
前記被検査対象物の表面に光を照射して前記被検査対象物の表面からの反射光を検出することにより前記被検査対象物の表面の高さを検出し、前記検査条件選定ステップで選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御し、この制御された加速電圧で電子線ビームを前記検出した被検査対象物の高さ情報を用いて焦点の位置を調整しながら前記被検査対象物に対して照射して走査し、該電子線ビームの照射により前記被検査対象物から発生して前記制御された電界を通過した二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被検査対象物の画像を得、この検出して得た画像を記憶しておいた参照画像と比較することにより前記被検査対象物について検査を行う検査ステップとを有することを特徴とする電子線式検査方法。
【請求項5】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定部と、該検査条件設定部で被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定部と、前記被検査対象物の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを偏向させるビーム偏向器と、前記電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被検査対象物の表面の高さ情報を用いて前記被検査対象物上に集束させる対物レンズと、前記検査条件選定部で選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって制御された加速電圧で電子線ビームを被検査対象物に対して照射して走査した際、前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出するセンサと、該センサで検出して得た信号に基づいて前記被検査対象物について検査又は計測を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項6】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定部と、該検査条件設定部で被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物に対応する検査条件を選定する検査条件選定部と、前記被検査対象物の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、前記電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被検査対象物の表面の高さ情報を用いて前記被検査対象物上に集束させる対物レンズと、前記検査条件選定部で選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを被検査対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段照射・走査されて前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出するセンサと、該センサで検出して得た信号を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項7】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定部と、該検査条件設定部で被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定部と、前記被検査対象物の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被検査対象物の表面の高さ情報を用いて前記被検査対象物上に集束させる対物レンズと、前記検査条件選定部で選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と前記被検査対象物の近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを被検査対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で電子線ビームが照射・走査されることにより前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出して前記被検査対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、前記画像取得手段で取得した画像を前記記憶手段に記憶した参照画像と比較することにより前記被検査対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項8】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定部と、該検査条件設定部で被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定部と、前記被検査対象物の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、前記高さ検出手段で検出した前記被検査対象物の表面の高さ情報に前記検査条件選定部で選定された検査条件により決まる焦点位置オフセットを加算した焦点の位置に前記電子線源から出射された電子線ビームの焦点の位置を制御して前記被検査対象物上に集束させる対物レンズと、前記検査条件選定部で選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを被検査対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で電子線ビームが照射・走査されることにより前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出して前記被検査対象物の画像を得る画像取得手段と、参照画像を記憶する記憶手段と、前記画像取得手段で取得した画像を前記記憶手段に記憶した参照画像と比較することにより前記被検査対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。
【請求項9】 電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定部と、該検査条件設定部で被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定部と、前記被検査対象物の表面に光を照射して前記被検査対象物の表面からの反射光を検出することにより前記被検査対象物の表面の高さを検出する高さ検出手段と、電子線源と、該電子線源から出射された電子線ビームを前記高さ検出手段で検出した前記被検査対象物の表面の高さ情報を用いて前記被検査対象物上に集束させる対物レンズと、前記検査条件選定部で選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と被検査対象物の近傍における電界とを制御する電位制御手段と、該電位制御手段によって加速電圧と電界とが制御された状態で前記電子線ビームを被検査対象物に対して照射して走査する照射・走査手段と、該照射・走査手段で電子線ビームが照射・走査されることにより前記電位制御手段によって制御された電界に応じて被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出手段と、該検出手段で検出して得た信号に基づいて前記被検査対象物について検査または計測を行う処理手段とを備えたことを特徴とする電子線式検査装置。」
と補正する補正事項を含むものである。
なお。アンダーラインは、補正個所を示すために請求人が付したものである。

(2)補正の適否
補正後の請求項4及び9に記載された「被検査対象物の表面に光を照射して前記被検査対象物の表面からの反射光を検出することにより前記被検査対象物の表面の高さを検出」する点の構成は、補正前の請求項5及び20に相応する記載はあるものの、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、そのような構成についての記載はなく、単に「被対象物20の高さを検出する高さセンサ13」、「高さ検出センサ13」、「13…高さ検出センサ」と記載されているのみであり、また、図面からも「13…高さ検出センサ」が光を照射し反射光を検出するものであることを確認することはできない。
したがって、本件手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第3項に規定する当初明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものとは認められない。
次に、補正の目的の適合性についても、一応検討しておく。
電子線式検査方法についての補正前の請求項1乃至15に係る発明と、補正後の請求項1に係る発明とを対比するために、補正後の請求項1に係る発明を分説して記載すると、次のようになる。
「(A)電子線源と被対象物との間に印加される電子線ビームの加速電圧及び前記被対象物の近傍における電位勾配に比例した電位差で示される電界からなる検査条件を被対象物の種類毎に設定して記憶する検査条件設定ステップと、
(B)該検査条件設定ステップで被対象物の種類毎に設定して記憶された検査条件の群から、実際に検査しようとする被検査対象物の種類に対応する検査条件を選定する検査条件選定ステップと、
(C-1)前記被検査対象物の表面の高さ情報を得、
(C-2)該得られた被検査対象物の表面の高さ情報を用いて電子線ビームの焦点の位置を調整し、
(C-3)前記検査条件選定ステップで選定された検査条件になるように電子線ビームの加速電圧と前記被検査対象物の近傍における電界とを制御し、
(C-4)この制御された加速電圧で電子線ビームを前記被検査対象物に対して照射して走査し、前記制御された電界に応じて前記被検査対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被検査対象物の画像を得、
(C-5)この検出して得た画像を参照画像と比較することにより前記被検査対象物について検査を行う
(C)検査ステップと
(D)を有することを特徴とする電子線式検査方法。」
なお、(A)等の記号は、分説個所を明示するために便宜上付したものである。
補正後の請求項1の前記(C-1)の構成要件に関連する記載として、補正前の請求項2乃至5に「表面の高さを測定する」又は「表面の高さを検出」するとの記載はあるものの、前記(C-1)の構成要件中の「表面の高さ情報を得」る点は記載がない。そして、「表面の高さを検出」することは、「表面の高さを測定する」又は「表面の高さ情報を得」ることに包含されるのであるから、この点からみて、補正後の請求項1は、補正前の請求項2乃至5を減縮するものではない。
補正前の請求項6、8及び13は、被対象物として「表面に薄膜のパターンを形成した」ものを用いるのであり、請求項7は、「チャージアップの現象の発生を抑制するような・・・加速電圧と・・・電界とを設定」するものであり、請求項9は、請求項7又は8を引用するものであり、請求項14及び15は、「被対象物の表面にプリチャージ又はディスチャージを与えた状態で・・・走査」するものであるから、これらの限定を欠く補正後の請求項1は、補正前の請求項6乃至9並びに13乃至15を減縮するものではない。
補正前の請求項1及び12と補正後の請求項1とを対比すると、前記(A)及び(B)並びに(C-1)及び(C-2)の構成要件については、加速電圧と電界の設定態様、及び電子線ビームの焦点位置の調整について、補正前の請求項1及び12に何ら記載がないところからみて、補正後の請求項1は、補正前の請求項1及び12を「限定的に減縮」したものとは認められない。
そして、補正前の請求項10及び11は、請求項1乃至8を引用する発明であるものの、その特徴とする事項は、前記(A)及び(B)並びに(C-1)及び(C-2)の構成要件に対応するものではない。
したがって、補正後の請求項1は、補正前の請求項1乃至15を限定的に減縮するものとは認められないから、上記手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められず、また、同項第3号に規定する誤記の訂正、同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
平成15年4月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至24に係る発明は、平成14年3月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至24に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる(「2(1)」の補正前の特許請求の範囲参照。以下、請求項12に係る発明を「本願第12発明」という。)。

4 引用刊行物
4-1 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭61-294748号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a 「荷電ビームを走査して照射する手段と、上記照射により被測定デバイスから発生する二次電子を検出する手段と、二次電子検出量の走査信号に対する変化を検出する手段と、上記被測定デバイスを装填する試料台またはデバイスの基板自体に電圧を加える手段と、上記試料台またはデバイスの基板に加える電圧を制御する手段とを備えた荷電ビーム照射装置。」(「特許請求の範囲」)

1b 「〔従来の技術〕
走査型電子顕微鏡(SEM)は、微細なデバイスの観察を行う手段として広く用いられている。しかしSEM像を観察する場合、材質や加速電圧等の照射条件によってチャージアップを生じると、像観察が困難になる。例えばチャージアップにより、ある部分が非常に明るくなったり、あるいは暗くなったりすると、その周辺の形状観察やレジスト・エツチング残りの検出等ができなくなる。
・・・従来から特開昭58-214259にあるように、同一材質から出る二次電子の量が電位によって異なることを利用して、電極電位の高低に対応して2値化する方式がある。すなわち、外部から0.5Vというような電圧を印加し、パタンから出る二次電子の量の違いによって、電位が異なるパタンや電位が変化したパタンを、像観察によって識別するのが目的である。この場合には外部から電圧を印加して測定しているために、チャージアップなどによるノイズが生じにくい。しかし測長を行う場合には、二次電子放出量の材質による違いを外部から電圧を印加せずに測定するので、材質や照射条件によってチャージアップが生じやすく、配線部分と下地材料とのエッジ部分を誤認識するおそれがある。例えばチャージアップがあり第9図(a)のような二次電子信号波形が得られた場合には、これを2値化すると(b)に示す信号波形になる。本来はLが配線幅であるが、lを配線幅であると誤認識してしまうおそれがある。このように、測定したい個所とは異なる間隔を測定してしまうという欠点がある。
・・・上記のように、チャージアップはSEM像観察や寸法測定の上で多くの場合大きな妨げになる。従来は、加速電圧を変化させてチャージアップを生じないようにしている。第10図はその原理を示した図であり、電子ビームを照射した場合の二次電子放出比δの加速電圧依存性を示している。一般に、δは加速電圧が数百V程度のところでピークを持ち、SEMで一般に用いられている加速電圧領域では加速電圧の増加にともなってδは減少する。δ>1ならば入射電子よりも多くの二次電子が放出されるので照射された物質は正に、またδ<1ならば負にチャージアップする。δ=1ならばチャージアップが生じない。従ってδ=1となる加速電圧を用いれば、チャージアップなしにSEM観察を行うことができるが、加速電圧を変化させると、ビームの収束状態が変り、ビーム軸調整、レンズ調整をその都度行わなければならない欠点があった。
・・・従来の寸法測定装置や走査型電子顕微鏡は、電子ビームを走査させて照射する手段と、二次電子を検出する手段と、二次電子検出量の走査信号に対する変化を検出する手段を有していた」(1ページ右下欄2行?2ページ左下欄10行)

1c 「本発明は、従来のこの種の装置に加えて、試料台もしくはデバイスの基板に電圧(基板電圧)を加える手段と、上記基板電圧を制御する手段とを加えることによって、上記基板電圧を変化させてチャージアップを抑制することにより、従来チャージアップを防止するために加速電圧を変化させ、そのために必要としたレンズ等の調整をなくしたものである。」(2ページ左下欄16行?右下欄3行)

1d 「つぎに本発明の原理を説明する。一般に二次電子放出比δは表面電位の関数になっており、表面電位が高いと表面からの離脱確率が小さくなりδは小さくなる。従って基板電圧が高いとδは減少する。電子ビーム照射によって放出された二次電子あるいは反射電子は、周囲の電界により二次電子検出器7またはウェハ4内の他の場所等に捕えられる。第3図は二次電子検出量Sの表面電位依存性を示した図である。表面電位が高いと発生した二次電子、あるいは反射電子が鏡筒にあたって発生する二次電子などが二次電子検出器7に到達しないで、ウェハ4の方へ戻ってしまうためにSが小さくなる。この場合ウェハ4に捕えられる電子の量は、表面電位が高い場所ほど多くなる。このため、表面電位が高い場所ほど電子が多く捕えられて表面電位がより多く減少するために、ウェハ面内の電位は均一化してくる。また表面電位が高いほどウェハに捕えられる全電子の量は多くなり、ウェハ面内の表面電位を均一化する効果が大きくなる。従ってウェハの表面電位を全体的にあげると、表面電位が均一化(チャージアップ抑制、コントラスト減少)する。また表面電位が高いと、二次電子検出量Sは二次電子がウェハに捕えられる分だけ減少するので、相対的に反射電子の割合が増加する。このためチャージアップなどの電位の影響が少ない像を得ることができるという効果がある。半導体、金属のウェハ表面に絶縁膜がない場合には、ウェハを装填するステージに基板電圧を加えれば、表面電位がそのまま変化する。また表面を絶縁体で覆われているウェハでも、基板電圧を加えることで表面電位を変化させることができる。すなわち、ビームの照射により表面電位が変化すると、絶縁膜内に電界が生じ、基板電圧が変ると容量結合により絶縁膜内の電界を介して表面電位が変化する。このため表面が絶縁膜で覆われているウェハに対しても基板電圧の変化によりチャージアップを抑制することができる。その効果は、表面が絶縁膜で覆われていない方が大きくなる。」(3ページ左下欄5行?4ページ左上欄3行)

1e 「上記実施例ではウェハ周辺の電界を変えることによって、ウェハに捕えられる二次電子の量を変化させてチャージアップを抑制する目的を達成するために、ステージもしくは基板にバイアス電圧を加えている。しかし、ステージもしくは基板をグランドレベルに接地し、ウェハの上方の電極を設置して、該電極に逆のバイアス電圧を加えてもよい、第8図はその例を示した図であり、(a)は電子光学鏡筒20の下に電極22を絶縁物21を介して設置し、上記電極22に電源23からバイアス電圧を加える構成である。(b)は電極22がウェハ4を覆うように配置してあり、上記電極22の一部、すなわち二次電子検出器7の方向がメッシュ状に形成されている。なおステージ5もしくは基板4はグランドレベルに接地し、電子ビームの鏡筒全体の電位を-10?10V程度浮かせることによっても同じ効果が得られることは勿論である。」(5ページ右上欄13行?左下欄9行)

4-2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭59-155941号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
2a 「表示器29の画面に表示された二次電子像で、・・・その部分の絶縁膜に欠陥があることを明白に示している。・・・絶縁膜2の欠陥箇所の解析は、・・・パターンの単純なもの・・・については、表示器29の画面を目視することによって判断できるが、複雑なパターンの場合には、・・・予め入力されたパターンを発生するパターン発生器31および比較器30を用いて、表示器29に現われる情報と比較することにより、欠陥箇所を知ることができる。」(6ページ左上欄19行?右上欄16行)

2b 「上記のパターン発生器31の代りに、電子ビームエネルギーの高い場合と低い場合のいずれかのパターンを記憶する記憶装置31を設置し、記憶装置31および比較器30を用いて表示器29に欠陥箇所の表示を行なうことができる。」(6ページ右下欄9行?13行)

5 対比・判断
刊行物1には、上記「4-1」の「1b」の記載から、「従来の技術」に相応する、以下の「引用発明1」が、また、「1a」並びに「1c」乃至「1e」の記載から、前記従来の技術を改善した発明の第8図に示される実施例に相応する、以下の「引用発明2」が記載されているものと認められる。
・引用発明1;
「電子ビームの加速電圧を変化させて試料のチャージアップを生じないようにし、試料に対して電子ビームを走査させて照射し、該照射により試料から発生する二次電子を検出手段で検出して像観察を行い、試料の検査を行う検査方法。」

・引用発明2;
「ウェハ4の上方に電極22を設置することによりウェハ4周辺の電界を変化させてウェハ4のチャージアップを抑制し、ウェハ4に対して電子ビームを走査させて照射し、該照射により試料から発生する二次電子又は反射電子を二次電子検出器7で検出して像観察を行い、ウェハ4の検査を行う検査方法。」

5-1 本願第12発明と引用発明1との対比・判断
本願第12発明(前者)と上記引用発明1(後者)とを対比する。
・後者の「電子ビーム」、「試料」は、前者の「電子線ビーム」、「被対象物」に相当する。
・後者の「電子ビームの加速電圧を変化させて試料のチャージアップを生じないように」することは、前者の「電子線ビームの被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御」する点と、「電子線ビームの被対象物上の加速電圧を制御」する点で共通する。
・後者の「試料に対して電子ビームを走査させて照射し、該照射により試料から発生する二次電子又は反射電子を二次電子検出器7で検出して像観察を行」うことは、前者の「電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得」ることに相当する。
・後者の「試料の検査を行う検査方法」は、前者の「被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法」に相当する。
したがって、両者は、
「電子線ビームの被対象物上の加速電圧を制御し、電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、それにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1A]
前者が、「電子線ビームの被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御」するものであるのに対し、後者は、「電子ビームの加速電圧を変化させて試料のチャージアップを生じないように」するものである点。
[相違点1B]
前者が、「検出して得た画像を参照画像と比較することにより被対象物について検査を行う」ものであるのに対し、後者にはこの点の記載がない点。
そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1A]について
前者は、電子線ビームの被対象物上の加速電圧のみを制御する形態を包含するものであり、その形態においては後者も同等の機能を有するものと認められるから、相違点1Aは、実質的な相違点とは認められない。
[相違点1B]について
二次電子画像を参照画像と比較することにより検査を行うことは、例えば、刊行物2に示されるように従来周知であるから、このような周知の事項を引用発明1に適用して相違点1Bに係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
そして、本願第12発明による効果も、刊行物1の記載及び刊行物2に示されるような周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。

5-2 本願第12発明と引用発明2との対比・判断
・後者の「電子ビーム」、「ウェハ4」は、前者の「電子線ビーム」、「被対象物」に相当する。
・後者の「ウェハ4の上方に電極22を設置することによりウェハ4周辺の電界を変化させてウェハ4のチャージアップを抑制」することは、前者の「電子線ビームの被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御」する点と、「電子線ビームの被対象物上の電界を制御」する点で共通する。
・後者の「ウェハ4に対して電子ビームを走査させて照射し、該照射により試料から発生する二次電子又は反射電子を二次電子検出器7で検出して像観察を行」うことは、前者の「電子線ビームを被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得」ることに相当する。
・後者の「ウェハ4の検査を行う検査方法」は、前者の「被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法」に相当する。
したがって、両者は、
「電子線ビームの被対象物上の電界を制御し、電子線ビームを前記被対象物に対して照射して走査し、該照射により前記被対象物から発生する二次電子又は反射電子をセンサで検出して前記被対象物の画像を得、それにより前記被対象物について検査を行うことを特徴とする電子線式検査方法。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2A]
前者が、「電子線ビームの被対象物上の加速電圧、又は前記被対象物上の電界、又はビーム電流、又はビーム径、又はそれらの組合せを制御」するものであるのに対し、後者は、「ウェハ4の上方に電極22を設置することによりウェハ4周辺の電界を変化させてウェハ4のチャージアップを抑制」するものである点。
[相違点2B]
前者が、「検出して得た画像を参照画像と比較することにより被対象物について検査を行う」ものであるのに対し、後者にはこの点の記載がない点。
上記各相違点について検討する。
[相違点2A]について
前者は、電子線ビームの被対象物上の電界のみを制御する形態を包含するものであり、その形態においては後者も同等の機能を有するものと認められるから、相違点2Aは、実質的な相違点とは認められない。
[相違点2B]について
二次電子画像を参照画像と比較することにより検査を行うことは、例えば、刊行物2に示されるように従来周知であるから、このような周知の事項を引用発明2に適用して相違点2Bに係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
そして、本願第12発明による効果も、刊行物1の記載及び刊行物2に示されるような周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願第12発明は、刊行物1に記載された引用発明1及び刊行物2に示される周知事項に基づいて、又は、刊行物1に記載された引用発明2及び刊行物2に示される周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第12発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-20 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-09 
出願番号 特願平8-193143
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01J)
P 1 8・ 561- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 居島 一仁
小川 浩史
発明の名称 電子線式検査方法及びその装置並びに半導体デバイスの製造方法  
代理人 小川 勝男  

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