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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1163121 |
審判番号 | 不服2004-706 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-08 |
確定日 | 2007-08-23 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第342756号「レンズ装置、カメラ装置及び撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 2日出願公開、特開平11-174308〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成9年12月12日の出願であって、平成15年12月1日付けで拒絶査定がなされ、この拒絶査定に対して平成16年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成16年2月9日付けで手続補正がなされ、その後、平成19年1月15日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成19年3月19日付けで手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成19年3月19日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 フォーカス動作を行うフォーカス手段と、 ズーム動作を行う変倍レンズ手段と、 上記変倍レンズ手段を操作するレンズ側ズーム操作手段と、 上記レンズ側ズーム操作手段からのレンズ側ズーム操作情報と上記変倍レンズ手段がテレ端にあるか否かを示す光学テレ端情報とを出力するレンズ側情報出力手段と、 外部からの情報を入力するレンズ側情報入力手段と、 上記変倍レンズ手段のズーム動作と上記フォーカス手段のフォーカス動作とを制御する制御手段とを有するレンズ装置と、 上記レンズ側情報出力手段から上記レンズ側ズーム操作情報と上記光学テレ端情報とを入力する撮像装置側情報入力手段と、 上記変倍レンズ手段に対する撮像装置側ズーム操作情報を入力する撮像装置側ズーム操作手段と、 上記変倍レンズ手段のズーム動作を制御する光学ズーム制御情報を作成し上記レンズ側情報入力手段に出力する撮像装置側情報出力手段とを有する撮像装置とを備え、 上記光学ズーム制御情報は上記レンズ側ズーム操作情報と上記撮像装置側ズーム操作情報と、上記光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報とに基づいて作成され、 当該光学ズーム制御情報に基づいて上記変倍レンズ手段を移動させる場合に上記制御手段が上記変倍レンズ手段の移動速度と上記フォーカス手段の移動速度および移動方向を計算し駆動させ、上記光学ズーム制御情報として上記ズーム停止情報を受信した場合には上記変倍レンズ手段を停止させるとともに上記計算を行わないことを特徴とする撮像システム。」 3 刊行物に記載された発明 当審からの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-243899号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「撮影レンズ及びそれを用いた光学機器」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は撮影レンズ及びそれを用いた光学機器に関し、特にビデオカメラ,スチルカメラ,監視カメラ等の光学機器においてズーム操作を適切に行ったものである。」 <記載事項2> 「【0048】図24は交換レンズシステムのブロック構成を説明する為の図である。ここでは前述と同様にビデオカメラで多用されている被写体側から順に正,負,正,正の屈折力のレンズ群より成る4群構成のズームレンズでの実施の形態を説明するが、これ以外のレンズ構成であってもよい。 【0049】被写体からの光は固定されている第1のレンズ群111、変倍を行なう第2のレンズ群であるバリエーターレンズ群112、絞り136、固定されている第3のレンズ113、ピント調整機能と変倍に伴うピント面の移動を補正するコンペ機構とを兼ね備えた第4のレンズ群であるフォーカスレンズ群114を通って3原色中の赤の成分はCCD等の撮像素子303?305の上にそれぞれ結像される。」 <記載事項3> 「【0051】本体マイコン409が読み出したこれらの情報は、カメラ側のズームスイッチ等の各操作スイッチの情報(図示せず)と合わせて、カメラ側接点307、レンズ側接点318を通り、レンズマイコン410へ転送される。レンズマイコン410は本体マイコン409から送られた自動焦点調節の為の各種情報に基づいてモーター制御プログラムを実行し、モータードライバ162でモーター137を駆動して、フォーカスレンズ群114を光軸方向に移動させてピント合わせを行う。 【0052】又、レンズマイコン410は、本体マイコン409より送られたズームスイッチの状態の情報によっても動作が必要な場合には、レンズマイコン410内に納められた、前述の被写体距離に応じたピントを維持する為のバリエーターレンズ群112とフォーカスレンズ群114の位置データを元に、ズーム中ピント面を維持する動作をする様、ズームモータードライバ161とフォーカスモータードライバ162に信号を与える。 【0053】ズームモータードライバ161とフォーカスモータードライバー162は、レンズマイコン410からの信号に基づき、それぞれズームモータ145とフォーカスモーター137を駆動し、バリエーターレンズ群112、フォーカスレンズ群114を光軸方向に移動させて、ピント位置が動くことなくズーム動作を行う。」 <記載事項4> 「【0055】この様にカメラ側の本体マイコン409とレンズマイコン410の2つのマイコンと、この2つのマイコンの通信路に着脱可能にカメラ側とレンズ側の両方に接点307と318を設けることにより、カメラ本体419に対してレンズユニット418を着脱可能にすると同時に、レンズとカメラが一体となった一般的なビデオカメラと同様な自動焦点調節、自動露光調節、ズーム動作を何んら問題なく行うことができる。 【0056】又、この様な交換レンズ方式のカメラ装置においてレンズマイコンと本体マイコン(又はカメラマイコン)との間は接点どおしの接触により通信路が形成される。この構成を図25,図26に示す。」 <記載事項5> 「【0063】 【発明が解決しようとする課題】前述したインナーフォーカスタイプのズームレンズにおいて、いかにズーミング速度の高速化を可能にしても図21の157で示す様なズームスイッチでは画角設定をきめ細かく、かつ速く行うことが達成しずらく、インナーフォーカスレンズにおいても前玉フォーカスレンズ同様、レンズ光軸を回転中心としたリングの回動動作によるズーム操作が望まれていた。」 <記載事項6> 「【0084】 【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態1の要部ブロック図である。図中、418は撮影レンズであり、マウント面を介してカメラ本体419に着脱可能に装着されている。 【0085】111は固定の正の屈折力の第1群、112は変倍用の負の屈折力の第2群(バリエーター,変倍群)136は絞り、113は固定の正の屈折力の第3群、114は変倍に伴う像面変動を補正すると共にフォーカス(合焦)を行う為に光軸上移動する正の屈折力の第4群(フォーカス群,コンペンセーター)である。 【0086】本実施形態では第1群111?第4群114より、所謂リヤーフォーカス式のズームレンズを構成している。」 <記載事項7> 「【0092】410はレンズマイコン(レンズ制御手段,レンズCPU)であり、ズームレンズの各種の駆動を制御している。」 <記載事項8> 「【0094】151は撮像素子であり、CCD等から成っており、その面上にはズームレンズZLによる被写体像が形成されている。152はカメラ信号処理回路であり、CCD151からの信号を処理している。503はA/D変換器であり、カメラ信号処理回路152からのアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換している。504はメモリ(記憶手段)であり、A/D変換器503からのデジタル映像信号を記憶している。157はズーム操作手段であり、撮影者がズーム操作によりワイド側からテレ側へ又はテレ側からワイド側へのズーミングを行っている。409はカメラマイコン(カメラ本体マイコン,カメラ用CPU)であり、ズーム操作手段157からのズーム操作信号に基づいて電子ズーム又は光学ズームを行っている。」 <記載事項9> 「【0096】前述の各要素502,504等は電子ズーム手段の一要素を構成している。レンズマイコン410とカメラマイコン409は接点ブロックを介して各種の信号の授受を行っている。」 <記載事項10> 「【0108】ここで図5の縦軸には第2群の移動速度としたが、実際には第2群の位置(ズーム位置)に応じて異なる速度としても良い。例えば図7に示すように広角端(ワイド端)から望遠端(テレ端)への変倍に際して望遠端を含む所定範囲で第2群の移動速度を低速化するようにしても良い。」 <記載事項11> 「0110】図7の例では一点鎖線→破線→2点鎖線→実線の順に図5の時間Δtが短くなる方向で速度を高速化して対応させている。これによりフォーカスレンズとしての第3群を駆動手段(フォーカスモーター)で駆動させるときの高速化を適切に制御している。このようにリング部材506の回転方向と回動速度をもって変倍を行う場合に操作者に極力違和感を与えない様にする為に本実施形態では図5の速度Cのときのテレ端からワイド端への変倍に必要な時間(ズーム時間)を例えば1秒以下にする等、リニアモーターやステップモーター等を用いて実現している。」 <記載事項12> 「【0120】次に本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は図1で示したのと同様のブロック構成より成り、リング部材を有する交換レンズを用い、カメラ本体側に電子ズームを設けて、ズーミング操作により光学ズームと電子ズームを行う場合を示している。 【0121】本実施形態は表-1の動作S2に相当している。 【0122】図9は本実施形態においてレンズマイコン410でズーミング動作を行うときのフローチャートである。 【0123】まず、ステップ601でスタートする。ステップ602でリング部材506の回動が操作者によって行われたかどうかを判別し、行われていなければステップ604にてカメラ本体側のズーム操作手段157からの状況を判別する。この際にはカメラ(本体)マイコン409より接点部(接点ブロック)を介してレンズマイコン410に送られたカメラ側のズームスイッチ157の操作状況が必要となる。ここでもズーム操作が行われていなければNとなり、スタートへ戻る。又仮にリング部材506とカメラ本体側のズームスイッチ157が両方操作されているような場合では、この例のフローチャートではリング部材506の操作が第1優先となる。この順位付けはステップ602とステップ604を入れ換えることによって対応している。 【0124】どちらかのズームスイッチが操作されている場合にはステップ603にてその操作がテレ端からワイド端へ向かう(短焦点距離側へ向かう)操作なのか又はワイド端からテレ端へ向かう(長焦点距離側へ向かう)操作なのかを判別する。ワイド端へ向かう場合はステップ606へ、テレ端へ向かう場合はステップ610へ進む。 <記載事項13> 【0125】ここではまずワイド端へ向かう場合のフローを説明する。ステップ606では電子ズームがONかOFFかが判別される。ここで電子ズームがOFFとは電子ズームによりズーミングが成されていない状態、即ち所定の撮像サイズのまま所謂トリミングに相当する切り出しを行なっていない状態をいい、電子ズームがONとは何倍かの電子ズームがかかっている領域にあることを示す。 【0126】電子ズームがON(OFFでない)時はステップ606の判定はNとなり、ステップ607へ進み、操作者の操作に対応して、まず電子ズームにて倍率を小さくしていく様にカメラマイコン409へ通信,指示する。この通信も前述の接点ブロックを介して行なわれる。 【0127】次にステップ608にてこの電子ズームがOFFのところ(X1)まで引かれたかどうか判別される。Nであればスタートに戻り操作が継続すれば同じルートを繰り返すので電子ズームによる変倍が続く。 【0128】一方、この結果、ついには電子ズームがOFFとなるとステップ608の判定はYとなり、ステップ609に進む。ステップ609では第2群をワイド方向へ(ここで例として挙げてきた4群ズームレンズの例では第2群を被写体側に繰り出す)移動させることで光学ズームを行い、操作者の意図に対応するものとなる。ステップ606でY(即ち電子ズームが既にOFFにある)時にはステップ609にて光学ズームによりワイド側へズームする。 【0129】一方、ステップ603の判別の結果がN、即ちワイド側からテレ側方向へのズーミング指示であった場合は、ステップ610に進む。ここでステップ606と同じくカメラマイコン409より通信されてきた電子ズームの状況が判別される。電子ズームがONしていればステップ611で電子ズームによりテレ側にズームする。又電子ズームOFFであればステップ612にて第2群を光軸方向へ移動することで光学ズームによる変倍を行い、光学ズームのテレ端に達したら(ステップ613がY)電子ズームへ引き渡す。」 <記載事項14> 「【0133】尚、本実施形態においてズーミング動作を撮影レンズ418側のレンズマイコン410の代わりにカメラ本体419側のカメラマイコン409で行っても良い。このときの動作は図9のフローチャートの一部を次のとおり変更すれば良い。」 <記載事項15> 「【0134】・ステップ602,604の変更はないが、ステップ602の判別はレンズマイコン410よりカメラマイコン409へ通信してくる操作結果をもとに判別する。 【0135】・ステップ606,610の判別はカメラ本体側で単独となり、通信は不用となる。 【0136】・ステップ607,611は単に「電子ズームでワイドへ」となり通信は不用となる。 【0137】・ステップ608の判別もカメラ本体側で単独で行え、通信は不用となる。 【0138】・ステップ609,612の動作カメラマイコンより接点を介し、レンズマイコンへ通信して行う。 【0139】・ステップ613の判別はレンズマイコン410よりカメラマイコン409へ通信してくる結果から判別する。」 そして、引用刊行物1には、実施形態2において、レンズマイコン410でズーミング動作を行うときのフローチャートが図9に図示されているが、ズーミング動作をカメラマイコン409で行ったものは、図9のフローチャートを段落【0134】?【0139】に記載のように変更すると記載されている。 してみると、上記フローチャートを説明した段落【0120】?【0124】及び上記段落【0134】?【0139】の記載を併せてみれば、カメラマイコン409は、以下のステップを有することになる。 (1)「ステップ601」でスタートする。 (2)レンズマイコン410よりカメラマイコン409へ通信してくる操作結果をもとに「ステップ602」でリング部材506の回動が操作者によって行われたかどうかを判別し、行われていなければステップ604にてカメラ本体側のズーム操作手段157からの状況を判別する。この際にはカメラ(本体)マイコン409より接点部(接点ブロック)を介してレンズマイコン410に送られたカメラ側のズームスイッチ157の操作状況が必要となる。ここでもズーム操作が行われていなければNとなり、スタートへ戻る。又仮にリング部材506とカメラ本体側のズームスイッチ157が両方操作されているような場合では、この例のフローチャートではリング部材506の操作が第1優先となる。この順位付けはステップ602とステップ604を入れ換えることによって対応している。 (3)どちらかのズームスイッチが操作されている場合にはステップ603にてその操作がテレ端からワイド端へ向かう(短焦点距離側へ向かう)操作なのか又はワイド端からテレ端へ向かう(長焦点距離側へ向かう)操作なのかを判別する。ワイド端へ向かう場合はステップ606へ、テレ端へ向かう場合はステップ610へ進む。 また、図1の記載からみて、レンズ撮影レンズに設けられたレンズマイコン410は、 ・カメラマイコン409にレンズ撮影レンズ側の情報を出力する ・カメラマイコン409からカメラ本体側の情報を入力する ・変倍部(112,114)のズーミング(変倍)を制御する ことを読み取ることができる。 同じく、図1の記載からみて、カメラ本体419に設けられたカメラマイコン409は、 ・レンズマイコン410からレンズ撮影レンズ側の情報を入力する ・情報をレンズマイコン410に出力する ことを読み取ることができる。 次に、図9のフローチャートにおける<カメラ本体側ズーム操作?>604、<MZ環操作?>602、<変倍レンズ群テレ端か?>613のそれぞれの判断について検討する。 なお、「MZ環」は「リング部材506」のことである。 (ア)<カメラ本体側ズーム操作?>604の判断について <カメラ本体側ズーム操作?>604の判断を、カメラ本体側のズーム操作手段157の操作情報に基づいてカメラマイコン409で行っていることは自明である。 (イ)<MZ環操作?>602の判断について 引用刊行物1には、「【0123】(略)又仮にリング部材506とカメラ本体側のズームスイッチ157が両方操作されているような場合では、この例のフローチャートではリング部材506の操作が第1優先となる。この順位付けはステップ602とステップ604を入れ換えることによって対応している。 【0124】どちらかのズームスイッチが操作されている場合にはステップ603にてその操作がテレ端からワイド端へ向かう(短焦点距離側へ向かう)操作なのか又はワイド端からテレ端へ向かう(長焦点距離側へ向かう)操作なのかを判別する。ワイド端へ向かう場合はステップ606へ、テレ端へ向かう場合はステップ610へ進む。」と記載されている。 この記載によれば、レンズ側の「MZ環」すなわち、リング部材506は、カメラ本体側のズームスイッチ157(ズーム操作手段157)と同じくズーム操作手段である。 そして、<MZ環操作?>602の判断を、MZ環、すなわちレンズ側のリング部材506の操作情報に基づいてカメラ本体側のカメラマイコン409で行っていることは自明である。 また、それ故に上記レンズ側のリング部材506の操作情報は、レンズマイコン410からカメラマイコン409に通信された情報であることも自明である。 (ウ)<変倍レンズ群テレ端か?>613の判断について <変倍レンズ群テレ端か?>613の判断のためには、変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報に基づいて判断していることは自明である。また、該判断をカメラマイコン409で行っているから、該テレ端情報は、レンズマイコン410からカメラマイコン409に通信された情報であることも自明である。 したがって、リング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報とをレンズマイコン410からカメラマイコン409に通信することは自明である。 そして、引用刊行物1に記載された光学機器は、撮影レンズ418とカメラ本体419とを備えている(記載事項1、図1)。 したがって、上記記載事項1ないし15及び図面の記載に基づけば、 撮影レンズ418は、以下の構成を有することが分かる。 ・第4のレンズ群であるフォーカスレンズ群114(記載事項2) ・第2のレンズ群であるバリエーターレンズ群112(記載事項2) ・回転方向と回動速度をもって変倍を行うリング部材506(記載事項11) ・リング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報とをカメラマイコン409に通信するレンズマイコン410(図9) ・カメラマイコン409からカメラ本体側の情報を入力する レンズマイコン410(図1) ・バリエーターレンズ群112、フォーカスレンズ群114を光軸方向に移動させる信号を生成するレンズマイコン410(記載事項3) また、カメラ本体419は、以下の構成を有することが分かる。 ・レンズマイコン410から撮影レンズ側の情報を入力するカメラマイコン409(図1) ・ワイド側からテレ側へ又はテレ側からワイド側へのズーミングを行なう電子ズーム又は光学ズームを行うズーム操作手段157(記載事項8) ・変倍レンズ群(バリエーターレンズ群112)ワイド側又はテレ側へ駆動するための情報を、カメラマイコン409からレンズマイコン410に通信する手段(図9、記載事項15) よって、上記記載事項1ないし15及び図面の記載に基づけば、引用刊行物1には、 「 第4のレンズ群であるフォーカスレンズ群114と、 第2のレンズ群であるバリエーターレンズ群112と、 回転方向と回動速度をもって変倍を行うリング部材506と、 上記リング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報とをカメラマイコン409に通信するレンズマイコン410と、 カメラマイコン409からカメラ本体側の情報を入力するレンズマイコン410と、 上記バリエーターレンズ群112、フォーカスレンズ群114を光軸方向に移動させる信号を生成するレンズマイコン410とを有する撮影レンズ418と、 上記レンズマイコン410から撮影レンズ側の上記リング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報とを入力するカメラマイコン409と、 ワイド側からテレ側へ又はテレ側からワイド側へのズーミングを行なう電子ズーム又は光学ズームを行うズーム操作手段157と、 上記変倍レンズ群(バリエーターレンズ群112)をワイド側又はテレ側へ駆動するための情報を、カメラマイコン409からレンズマイコン410に通信する手段とを有するカメラ本体419とを備えた光学機器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 同じく、当審からの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-33793号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「撮像装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項16> 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レンズ脱着交換可能なビデオカメラに関するものである。」 <記載事項17> 「【0009】そこで本願の課題は、光学ズームと電子ズームの引き継ぎ動作を円滑にかつ違和感なく行えるようにするとともに、特に交換レンズシステムにおいて、いかなるレンズユニトが装着されても、光学ズームと電子ズームとの引き継ぎ動作を円滑に、かつ違和感なく行えるようにした撮像装置、レンズユニット、カメラを提供することにある。」 <記載事項18> 「【0025】 【発明の実施の形態】以下、各図を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。 【0026】まず光学ズームと電子ズームのコンビネーションについて説明する。 【0027】図9は、近年、小型化が可能なことから、広く使用されているインナーフォーカスタイプレンズシステムの基本構成を示すものである。同図において1は固定されている第1のレンズ群、2は変倍を行う第2のレンズ群(以下変倍レンズと称す)、3は固定されている第3のレンズ群、4は焦点調節機能と変倍による焦点面の移動を補正するいわゆるコンペンセータ機能とを兼ね備えた第4のレンズ群(以下コンペレンズと称す)、5は撮像素子、5aは撮像素子の撮像面、6は入射光量を調節する絞りである。」 <記載事項19> 「【0130】図5は、レンズマイコンLMCの動作の一部であるズーム動作を説明するための制御フローチャートである。尚、本制御フローチャートは、マニュアルズームを例にとって説明を行う。 【0131】同フローチャートにおいて、S61は、処理の開始を示している。S62はカメラマイコンCMCからデータ通信によつて受け取った情報が「ズームレンズ停止」なのかどうかの判別処理であり、「ズームレンズ停止」ならば、S70へと移行し、変倍レンズを停止させる処理を行う。またそうでなければS63の処理へと進む。」 <記載事項20> 「【0135】S66では、現在の変倍レンズの位置が、レンズマイコンLMC内に記憶している代表軌跡データを所有する変倍レンズ位置(この位置を境界位置と呼ぶ)であるかどうかの判別を行い、もし境界位置上z(n)にない場合は、軌跡計算が出来ないとしてS69へと移行し、前回計算された変倍レンズ、コンペレンズの移動方向及び移動速度を保持する。 【0136】一方、もしS66で、変倍レンズ位置が境界位置上z(n)である場合、すなわち軌跡計算可能な場合には、S67に移行し、前記(1)式で求まる隣の境界上の追従先フォーカス位置p(n+1)を算出する。 【0137】S68では、変倍レンズの移動速度Vzを算出する。これは、レンズマイコンLMC内に記憶されたズーム速度テーブルから変倍レンズ位置をパラメーターとして読み出した値にVzを設定する処理である。このテーブルは、図2に示した方法と同様な方法で求められる。 【0138】さらにS68では、追従先フォーカス位置p(n+1)、変倍レンズ移動速度Vzを用いて、前記(2)式からコンペレンズ移動速度Vfを算出し、S69へと移行する。 【0139】S69ではコンペレンズ、変倍レンズを駆動させる。ズーム時のコンペレンズの移動方向は、Vfが正なら至近方向、負なら無限方向であり、Vf=0ならば停止である。」 5 対比 本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「撮影レンズ418」は本願発明の「レンズ装置」に相当し、引用発明の「撮影レンズ418」の有する構成についてみるに ・引用発明の「第4のレンズ群であるフォーカスレンズ群114」は、本願発明の「フォーカス動作を行うフォーカス手段」に相当する。 ・引用発明の「第2のレンズ群であるバリエーターレンズ群112」は、本願発明の「ズーム動作を行う変倍レンズ手段」に相当する。 ・引用発明の「回転方向と回動速度をもって変倍を行うリング部材506」は、撮影レンズ418に設けられるので、本願発明の「変倍レンズ手段を操作するレンズ側ズーム操作手段」に相当する。 ・引用発明の「リング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報」は、本願発明の「レンズ側ズーム操作手段からのレンズ側ズーム操作情報と上記変倍レンズ手段がテレ端にあるか否かを示す光学テレ端情報」に相当する。 ・引用発明の「カメラマイコン409に通信するレンズマイコン410」は、本願発明の「出力するレンズ側情報出力手段」に相当する。 ・引用発明の「カメラマイコン409からカメラ本体側の情報」は、撮影レンズ418にとって外部の情報であるから、引用発明の「カメラマイコン409からカメラ本体側の情報を入力するレンズマイコン410」は、本願発明の「外部からの情報を入力するレンズ側情報入力手段」に相当する。 ・引用発明の「レンズマイコン410」は本願発明の「制御手段」に相当するから、引用発明の「バリエーターレンズ群112、フォーカスレンズ群114を光軸方向に移動させる信号を生成するレンズマイコン410」は、本願発明の「変倍レンズ手段のズーム動作とフォーカス手段のフォーカス動作とを制御する制御手段」に相当する。 引用発明の「カメラ本体419」は本願発明の「撮像装置」に相当し、引用発明の「カメラ本体419」の有する構成についてみるに ・引用発明の「レンズマイコン410からレンズ撮影レンズ側のリング部材の操作情報と変倍レンズ群112がテレ端にあるか否かを示すテレ端情報とを入力するカメラマイコン409」は、本願発明の「レンズ側情報出力手段からレンズ側ズーム操作情報と光学テレ端情報とを入力する撮像装置側情報入力手段」に相当する。 ・引用発明の「ワイド側からテレ側へ又はテレ側からワイド側へのズーミングを行なう」「光学ズーム」は、カメラ本体419のズーム操作手段157によって行われるから、本願発明の「変倍レンズ手段に対する撮像装置側ズーム操作」に相当する。そして、引用発明の「光学ズームを行うズーム操作手段157」は、光学ズームの操作情報を入力することは明らかである。 したがって、引用発明の「ワイド側からテレ側へ又はテレ側からワイド側へのズーミングを行なう電子ズーム又は光学ズームを行うズーム操作手段157」は、本願発明の「変倍レンズ手段に対する撮像装置側ズーム操作情報を入力する撮像装置側ズーム操作手段」に相当する。 ・引用発明の「変倍レンズ群(バリエーターレンズ群112)をワイド側又はテレ側へ駆動するための情報」は、上記変倍レンズ群(バリエーターレンズ群112)のズーム動作を制御する情報であることは明らかであり、該情報の内容からみて、本願発明の「光学ズーム制御情報」と呼称し得るものである。 したがって、引用発明の「変倍レンズ群(バリエーターレンズ群112)ワイド側又はテレ側へ駆動するための情報を、カメラマイコン409からレンズマイコン410に通信する手段」は、本願発明の「変倍レンズ手段のズーム動作を制御する光学ズーム制御情報を作成しレンズ側情報入力手段に出力する撮像装置側情報出力手段」に相当する。 引用発明の対象である「光学機器」は「撮影レンズ418」と「カメラ本体419」からなるシステムといえるから、本願発明の対象である「カメラシステム」に相当する。 したがって、両者は、 「フォーカス動作を行うフォーカス手段と、 ズーム動作を行う変倍レンズ手段と、 上記変倍レンズ手段を操作するレンズ側ズーム操作手段と、 上記レンズ側ズーム操作手段からのレンズ側ズーム操作情報と上記変倍レンズ手段がテレ端にあるか否かを示す光学テレ端情報とを出力するレンズ側情報出力手段と、 外部からの情報を入力するレンズ側情報入力手段と、 上記変倍レンズ手段のズーム動作と上記フォーカス手段のフォーカス動作とを制御する制御手段とを有するレンズ装置と、 上記レンズ側情報出力手段から上記レンズ側ズーム操作情報と上記光学テレ端情報とを入力する撮像装置側情報入力手段と、 上記変倍レンズ手段に対する撮像装置側ズーム操作情報を入力する撮像装置側ズーム操作手段と、 上記変倍レンズ手段のズーム動作を制御する光学ズーム制御情報を作成し上記レンズ側情報入力手段に出力する撮像装置側情報出力手段とを有する撮像装置とを備えたことを特徴とする撮像システム。」の点で一致するが、以下の点で相違する。 [相違点1] 光学ズーム制御情報について、本願発明は、レンズ側ズーム操作情報と撮像装置側ズーム操作情報と、光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報とに基づいて作成されるのに対して、引用発明は、そのように限定されていない点。 [相違点2] 本願発明は、光学ズーム制御情報に基づいて変倍レンズ手段を移動させる場合に上記制御手段(上記の内容を補足して記載すると、変倍レンズ手段のズーム動作とフォーカス手段のフォーカス動作とを制御する制御手段)が変倍レンズ手段の移動速度とフォーカス手段の移動速度および移動方向を計算し駆動させ、上記光学ズーム制御情報としてズーム停止情報を受信した場合には変倍レンズ手段を停止させるとともに上記計算を行わないのに対して、引用発明は、そのように限定されていない点。 6 当審の判断 (1)相違点1 ア ズーム停止情報について 引用刊行物1において、レンズマイコン410でズーミング動作を行うときのフローチャートが記載された図9の説明個所である段落【0129】には、「ステップ612にて第2群を光軸方向へ移動することで光学ズームによる変倍を行い、光学ズームのテレ端に達したら(ステップ613がY)電子ズームへ引き渡す。」と記載されている。 引用刊行物1に記載されたものは、ズーミングを光学ズームと電子ズームを併用して行っており、上記「光学ズームのテレ端に達したら」「電子ズームへ引き渡す」との記載は、光学ズームである変倍レンズ手段(バリエータレンズ群112)からみると、光学ズームのテレ端に達したら変倍レンズ手段のズーム動作を禁止することが読み取れる。 また、引用刊行物1には、「なお、第2群の位置がワイド端からテレ端へのズームでテレ端にテレ端からワイド端へのズームでワイド端に達した以降は、リング部材506の回転が行われても各レンズ群は停止している。更に電子ズームを有する場合、この回転検出結果により図8に示すような光学ズームと電子ズームの連続的制御を行うことも可能である。」(段落【0115】)との記載もあり、この記載からも、光学ズームのテレ端に達したら変倍レンズ手段のズーム動作を禁止することが読み取れる。 る。 そして、カメラマイコン409でズーミング動作を行う場合でも、光学ズームのテレ端に達したら変倍レンズ手段のズーム動作を禁止することが、引用刊行物1の記載から同様に読み取れる。 してみると、引用発明において、光学ズームのテレ端に達したとき、本願発明の「光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報」に相当する情報をカメラ本体側(カメラ装置側)から撮影レンズ側(レンズ装置側)に出力することは自明である。 そして、光学ズーム制御情報は、撮像装置側情報出力手段からレンズ側情報入力手段に出力し、変倍レンズ手段のズーム動作を制御するための情報であるから、光学ズーム制御情報に、本願発明の「光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報」を含ませることも自明である。 イ レンズ側ズーム操作情報と撮像装置側ズーム操作情報について 引用発明も有する本願発明でいう「光学ズーム制御情報」は、撮像装置側情報出力手段からレンズ側情報入力手段に出力し、変倍レンズ手段のズーム動作を制御するための情報であるから、光学ズーム制御情報には、レンズ側のリング部材506の操作情報(本審決の第8ページの「(イ)」)(レンズ側ズーム操作情報)とカメラ本体側のズーム操作手段157の操作情報(同ページ「(ア)」)(撮像装置側ズーム操作情報)が含まれることは明らかである。 ウ 本願発明の「光学ズーム制御情報」について「基づいて作成される」の意味について検討する。 請求項1の下から2行目に「上記光学ズーム制御情報として上記ズーム停止情報を受信した場合」と記載されていることから、光学ズーム制御情報が、レンズ側ズーム操作情報と撮像装置側ズーム操作情報と、光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報を含む以上に格別な技術的な意味があるとはいえない。 したがって、上記「ア」ないし「ウ」で検討したことから、相違点1に係る本願発明の発明特定事項、すなわち、光学ズーム制御情報には、レンズ側ズーム操作情報と撮像装置側ズーム操作情報と、光学テレ端情報から変倍レンズ手段の駆動を停止させるズーム停止情報とに基づいて作成することは、引用刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (2)相違点2 引用刊行物1には、レンズマイコン410は、ズームレンズの各種の駆動を制御している旨記載され(段落【0092】)、かつ、レンズマイコン410の出力が、変倍レンズ群112を駆動する変倍群駆動手段145、フォーカス群114を駆動する第4群駆動手段162に入力されている。 したがって、レンズマイコン410に、変倍レンズ群112の位置を制御する演算及びフォーカス群114に位置を制御する演算をさせようとすることは、格別なことではない。 そこで、以下のア及びイの場合について、さらに検討する。 ア 光学ズーム制御情報に基づいて変倍レンズ手段を移動させる場合について検討する。 引用刊行物2には、 (ア)引用発明と同じ技術分野に属する撮像装置に関する発明について記載されている。 (イ)レンズマイコンLMCは、変倍レンズ2及びコンペレンズ4の駆動を制御する(全体のブロック図である図1,レンズマイコンLMCの動作の一部であるズーム動作を説明する制御フローチャートである図5参照)ことが記載されている。 (ウ)変倍レンズの移動速度(S68)、コンペレンズ移動速度(S68)、ズーム時のコンペレンズの移動方向(S69)を算出することが記載されている(上記制御フローチャートの説明個所である【0137】?【0139】) してみると、引用発明において、光学ズーム制御情報に基づき、変倍レンズ手段(バリエータレンズ群112)を移動させる場合に、レンズ装置の制御手段(レンズマイコン410)に、変倍レンズ手段の移動速度とフォーカス手段の移動速度および移動方向を計算し駆動させることは、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 イ 光学ズーム制御情報としてズーム停止情報を受信した場合について検討する。 ズーム停止情報を受信した場合、本願発明のように、変倍レンズ手段を停止させることは自明である。 また、上記の場合には、変倍レンズ手段及びフォーカス手段を駆動する必要がないので、レンズ装置の制御手段(レンズマイコン410)が、変倍レンズ手段の移動速度とフォーカス手段の移動速度および移動方向を計算しないことも自明である。 したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項、すなわち、光学ズーム制御情報に基づいて変倍レンズ手段を移動させる場合に上記制御手段が変倍レンズ手段の移動速度とフォーカス手段の移動速度および移動方向を計算し駆動させ、上記光学ズーム制御情報としてズーム停止情報を受信した場合には変倍レンズ手段を停止させるとともに上記計算を行わないことは、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の効果は、引用刊行物1及び引用刊行物2の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-20 |
結審通知日 | 2007-06-26 |
審決日 | 2007-07-10 |
出願番号 | 特願平9-342756 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
青木 和夫 辻 徹二 |
発明の名称 | レンズ装置、カメラ装置及び撮像システム |
代理人 | 國分 孝悦 |