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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C01B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1163126
審判番号 不服2004-6139  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-25 
確定日 2007-08-23 
事件の表示 平成10年特許願第147617号「オゾン発生の濃縮装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月14日出願公開、特開平11-343103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月28日の出願であって、平成15年3月3日に拒絶理由を発送し、その指定期間内である同年5月2日付けで手続補正書および意見書が提出されたが、平成16年2月23日に拒絶査定され、これに対し、同年3月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年4月26日に手続補正書が提出されたものである。

2.平成16年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
2-1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の一方の開口部付近の外側に配置された酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。
【請求項2】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の両方の開口部付近の外側に対向するように配置された酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。」の記載を、
「【請求項1】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタンを含む合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の一方の開口部付近の外側に配置された酸化チタンを含む合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。
【請求項2】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタンを含む合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の両方の開口部付近の外側に対向するように配置された酸化チタンを含む合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。」
と補正することを含むものであって、「酸化チタン合金」を「酸化チタンを含む合金」(以下、「補正事項(a)という。)に補正するものである。
さらに、本願明細書の詳細な説明の項において、「放電電極12を構成する筒状電極10と針状電極11とは、酸化チタン合金によって形成されている。」(段落【0012】)を「放電電極12を構成する筒状電極10と針状電極11とは、チタンと鉄と炭素とニッケルとジルコニュームなどの金属を混合したものに酸化チタン粉末を添加し、加熱溶融した合金、つまり酸化チタンを含む合金によって形成されている」(段落【0012】)と補正(以下、「補正事項(b)」という。)するものである。

2-2.補正の適否
上記補正事項(a)及び(b)について検討する。
本件補正の補正事項(a)および補正事項(b)に関して、出願当初の本願明細書には、「酸化チタン合金」(【請求項1】、【請求項2】、段落【0001】、段落【0005】?【0006】、段落【0011】?【0013】、段落【0018】、段落【0022】?【0024】、段落【0026】、段落【0028】?【0030】、段落【0032】)および「放電電極12を構成する筒状電極10と針状電極11とは、チタンと鉄と炭素とニッケルとジルコニュームとの金属を混合したものを焼結して板状にした酸化チタン合金によって形成されている。」(段落【0012】)ことしか記載されていない。
そうすると、上記補正事項(a)の酸化チタンを含む合金の点並びに上記補正事項(b)の酸化チタン粉末を添加する点及び加熱溶融する点について、出願当初の明細書に何ら記載されておらず、また、当初明細書全体の記載および出願時の技術常識を考慮しても、これらの点が当業者に自明であるとは云えない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは云えない。
2-3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年4月26日付けの手続補正は、上記「2.」のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明(以下、順に「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成15年5月2日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであると認めれ、次のとおりのものである。

「【請求項1】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の一方の開口部付近の外側に配置された酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。
【請求項2】 一方の端部から他方の端部にかけて貫通する中空部を設けた絶縁性を有する容器の前記一端部には空気吸い込み口が、前記他端部には空気吹き出し口がそれぞれ設けられると共に、前記中空部には、酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の両方の開口部付近の外側に対向するように配置された酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極とによって構成された複数のオゾン発生器を直列に収納したことを特徴とするオゾン発生の濃縮装置。」

4.当審の判断
4-1.特許法第36条第6項第2号について
4-1-1.理由
本願特許請求の範囲の請求項1には、「・・・・酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、この筒状電極の一方の開口部付近の外側に配置された酸化チタン合金よって形成された紫外線発光機能を有する針状電極と・・・・・オゾン発生の濃縮装置。」と記載されている。また、本願特許請求の範囲の請求項2にも、「・・・酸化チタン合金によって形成された筒状電極と、・・・・酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極・・・・オゾン発生の濃縮装置。」と記載されている。
そこで、この記載中の「酸化チタン合金」の技術的意味について以下で検討する。
まず、本願明細書の詳細な説明においては、「図3に示すように、オゾン発生器6は導電性の酸化チタン合金からなる筒状電極10と、・・・導電性の酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極11」(段落【0011】)、「放電電極12を構成する筒状電極10と針状電極11とは、酸化チタン合金によって形成されている。また、前記筒状電極10と針状電極11との間には直流の高電圧が印加されたときに、この針状電極11の先端11aは紫外線発光が生じる。この場合、高電圧は5?10KVの範囲が好ましく、また周波数は5?13KHZの範囲が好ましい。また、放電は一点集中方式のコロナ放電である。」(段落【0012】)、「オゾン発生器6はこれに限るものでなく、例えば図4に示すように導電性の酸化チタン合金からなる線部材を巻いて筒状電極10を形成するようにしてもよい。」(段落【0013】)、「オゾン発生器6を成す筒状電極10と針状電極11とを導電性の酸化チタン合金によって形成したことによって、腐食性が少なく耐用年数を伸ばすことができる。」(段落【0022】)、「筒状電極10と針状電極11との間に直流の高電圧が印加されることで、前記針状電極11の先端11aは紫外線発光が生じ、この紫外線は、導電性の酸化チタン合金によって形成された前記筒状電極10内に放射され、これによって光り触媒反応が起こり、イオン及びオゾンの発生の増加と活性化が得られる」(段落【0023】)、「図5はオゾン発生の濃縮装置1の他の発明であって、この発明にあっては図6及び図7に示すようにオゾン発生器6が導電性の酸化チタン合金からなる筒状電極10aと、この筒状電極10aの両方の開口部付近の外側に対向するように配置された導電性の酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極11bとによって形成されている。」(段落【0024】)、「直流の高電圧が印加されることによって、筒状電極10aの両方の開口部付近の外側に対向するように配置された針状電極11bの先端は紫外線発光が生じて、この紫外線は導電性の酸化チタン合金によって形成された前記筒状電極10a内に放射されるため、これによって光り触媒反応が起こり、イオン及びオゾンの発生の増加と活性化が得られるため、消煙、消臭、除菌の効果をより一層倍加することができる」(段落【0026】)と記載されており、これらの記載から、「酸化チタン合金」が、「導電性」であり、筒状電極および針状電極が「酸化チタン合金」からなっていると云える。しかしながら、この「酸化チタン合金」は、合金として一般的なものではないにもかかわらず、「導電性を有する酸化チタン合金」の原材料およびその製法等に関することが具体的に記載なされていないため、酸化チタン合金の構成元素、組成割合等が不明であり、「酸化チタン合金」の意味するところが特定できない。
なお、出願当初の明細書には、「放電電極12を構成する筒状電極10と針状電極11とは、チタンと鉄と炭素とニッケルとジルコニュームとの金属を混合したものを焼結して板状にした酸化チタン合金によって形成される。」(段落【0012】)と記載されていたが、この記載は、平成15年5月2日付の手続補正書において削除されている。仮に、削除前の前記記載を採用して、「酸化チタン合金」が、「チタンと鉄と炭素とニッケルとジルコニュームとの金属を混合したものを焼結」することで形成できることが記載されていたとしても、前記記載の製法において、「酸化チタン合金」の「酸化チタン」は、チタン、鉄等の金属と一緒に最初に添加されているわけでもなく、かつチタンを含む金属混合物を焼結する時点で酸化チタンになったとも考えられないので、「酸化チタン」が存在しない「酸化チタン合金」は、技術的に意味をなさないことになる。
さらに、この「酸化チタン合金」は、「チタン合金の表面を酸化処理したもの」であるとも考えられるが、出願当初の明細書には、上述した記載以外、つまり合金にした後に酸化処理を行うことはもちろん、「酸化チタン合金」が係る意味をもつことも何ら記載されていないことからみれば、「酸化チタン合金」は、「チタン合金の表面を酸化処理したもの」であるとは、云えない。
また、この分野の技術常識に照らしても、本願請求項1、2の「酸化チタン合金」の意味するところが自明なものとして把握することができるものでもない。
そうであれば、本願請求項1、2に記載される「酸化チタン合金」との意味するところが特定できず、本願請求項1、2に記載される発明が明確であるということができない。

4-1-2.結論
したがって、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たしていない。

4-2.特許法第36条第4項について
4-2-1.理由
本願明細書の発明の詳細な説明において、「オゾン発生器6は導電性の酸化チタン合金からなる筒状電極10と・・・導電性の酸化チタン合金によって形成された紫外線発光機能を有する針状電極11とによって形成される」(段落【0011】)と記載されているが、この「酸化チタン合金」は、上記「4-1.」の理由より、「酸化チタン合金」の技術的意味が不明であるから、この技術的意味が不明な材質から形成された「針状電極」および「筒状電極」がどのようなものであるのか、この「針状電極」が「紫外線発光機能を有する」ものであるのか否か、そしてこの技術的意味が不明な材質から形成される電極から「オゾン発生」が生じるのか否か、さらに「オゾン発生の濃縮装置」としての機能を有するのか否か、「光触媒機能」を有するのか否か等、電極の材質が不明のために、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施できる程度に十分に記載されているとは云えない。
4-2-2.結論
したがって、本願特許出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願特許出願は、特許法第36条第6項第2号および特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-20 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-10 
出願番号 特願平10-147617
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C01B)
P 1 8・ 536- Z (C01B)
P 1 8・ 561- Z (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 政博平塚 政宏  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 斉藤 信人
廣野 知子
発明の名称 オゾン発生の濃縮装置  
代理人 瀬川 幹夫  

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