• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1163138
審判番号 不服2004-21531  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-18 
確定日 2007-08-23 
事件の表示 特願2000-168141「紙容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月18日出願公開、特開2001-348024号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年6月5日の出願であって、平成16年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年10月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年11月16日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成16年11月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成16年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、平成16年6月28日付けで補正された明細書をさらに補正するものであり、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定する事項である「開口」及び「内フラップ」を、それぞれ「矩形形状の開口」及び「2つの相対する内フラップ」と補正し、さらに請求項1に、「前記2つの内フラップの先端部が相互に近接するとともに、中フラップの基部が連続する容器本体の開口の一辺に対向する辺に外フラップの基部を連続し、かつ中フラップの先端部を該辺に平行をなすように該辺に近接して延設した」構成を付加する補正を含んでおり、これらの補正は、補正前の請求項1に記載された事項をさらに限定して特定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、上記補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである(以下、「本願補正発明」という。)。
「容器本体の1つの矩形形状の開口を囲む各辺から延設された内フラップと中フラップと外フラップを備える紙容器であって、
容器本体の開口の一辺に連続する中フラップの基部側に複数の抜き孔状切欠部を設けるとともに、中フラップの先端部側の側部に外縁切欠部を設け、
2つの相対する内フラップの外面に中フラップを重ね合せ、中フラップの基部側であって中フラップの外面と複数の抜き孔状切欠部の下側の内フラップの外面に接着剤を塗布し、かつ中フラップの先端部側であって中フラップの外面と外縁切欠部の下側の内フラップの外面に接着剤を塗布することにより、内フラップと中フラップと外フラップをその順に重ねて互いに接着し、
前記2つの内フラップの先端部が相互に近接するとともに、中フラップの基部が連続する容器本体の開口の一辺に対向する辺に外フラップの基部を連続し、かつ中フラップの先端部を該辺に平行をなすように該辺に近接して延設した紙容器。」

3.引用発明
(1)引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-167251号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「カートン」の発明に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「胴体が4面体から構成され、順次サイドフラップ、内側フラップ、外側フラップを折り込んで両端が閉鎖される角柱状カートンにおいて、内側フラップに貫通孔が設けられ、この貫通孔は、サイドフラップが内側フラップの下側に位置したとき、外側フラップの内面に塗着された接着剤、又は貫通孔部に塗着された接着剤を、貫通孔を通して流動させて、サイドフラップ、内側フラップ、外側フラップの3者を同時に一体に接着する機能を有するものであることを特徴とするカートン。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(b)「このように内側フラップに貫通孔を設けることにより、各フラップは、同時に一体に接着されるから、従来のようなサイドフラップと内側フラップとの間に接着剤を塗着し、また内側フラップと外側フラップとの間に接着剤を塗着して折り込み成形包装するものに比して、接着剤の塗着の工程を、2回から1回に減らすことができ、成形包装の作業を短縮することにより、作業能率の向上を図ることができ、生産装置もそれだけ簡略化することができる。
しかも、確実に貫通孔を通して接着されているため、流通過程や保管中にフラップが剥離することはない。 このため、シュリンク包装のような二重包装を必要とせず、包装コストの削減が図られ、また流通過程や保管中に塵埃が混入することもない。」(段落番号【0019】)
(c)図2ないし4には、角柱状胴体(a)の矩形形状の開口部を囲む各辺から延設された2つの相対するサイドフラップ(b1、b2)と、内側フラップ(d)と、外側フラップ(c)を備えたカートン(B)が記載されており、図1ないし4には、内側フラップに各サイドフラップに対応して2個設けられる貫通孔(1)、(1)が、該内側フラップの開口辺側の基端部よりに設けられていることが示され、また、図6及び7には、接着剤が貫通孔(1)を通して、貫通孔の下側のサイドフラップ(b1、b2)の外面にも塗着されることが示されている。

以上の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「角柱状胴体の1つの矩形形状の開口を囲む各辺から延設された2つの相対するサイドフラップ(b1、b2)と内側フラップ(d)と外側フラップ(c)を備えるカートンであって、
角柱状胴体の開口の一辺に連続する内側フラップ(d)の基部側に一対の貫通孔(1)を設けるとともに、
2つの相対するサイドフラップ(b1、b2)の外面に内側フラップ(d)を重ね合わせ、外側フラップ(c)を重ね合わせたとき、外側フラップ(c)の内面に塗着された接着剤が内側フラップ(d)の外面と、内側フラップ(d)の貫通孔(1)の下側のサイドフラップ(b1、b2)の外面に接着剤が塗着されることにより、サイドフラップ(b1、b2)と内側フラップ(d)と外側フラップ(c)をその順に重ねて互いに接着したカートン。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項
また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-25000号(実開昭61-141212号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、「包装紙箱」に関して、以下の技術的事項が図面とともに記載されている。
(d)「側面板14の側縁28に連接した糊しろ片20と、側面板16とを接着、連接して四角柱を形成し、該四角柱の開口縁部の折目22,24及び26を介して側面板14、12及び16、18にそれぞれ内フラップD、外フラップA及びサイド内フラップB、Cを連接した包装紙箱において、上記サイド内フラップB、Cを包装紙箱本体10の内側方向に折曲した後、内フラップD、更には外フラップAを重合した際に、内フラップDの両側辺40側で、サイド内フラップB、Cと外フラップAが充分に重合し得るように、該内フラップDの両側辺40に切り込みを設けた内フラップDを重合させ、然る後折目22の長さと略同一の長さで、外フラップAの上辺32が重合する部分に添って上記サイド内フラップB、C及び内フラップDに接着剤を付け、上記外フラップAを重合、同時接着してなる包装紙箱。」(実用新案登録請求の範囲)
(e)第2及び3図には、矩形形状の開口を囲む各辺から延設された一対のサイド内フラップB、Cと内フラップDと外フラップAを備える紙箱において、内フラップDの先端側の両側辺に切り込みを設け、2つの相対するサイド内フラップB、Cの外面に内フラップDを重ね合せ、内フラップDの外面と上記切り込みの下側のサイド内フラップB、Cの外面に接着剤を塗布する態様が示されている。

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「カートン」、「角柱胴体」、「サイドフラップ(b1、b2)」、「内側フラップ(d)」、「外側フラップ(c)」及び「貫通孔(1)」は、それぞれ、本願補正発明の「紙容器」、「容器本体」、「内フラップ」、「中フラップ」、「外フラップ」及び「抜き孔状切欠部」に相当し、引用発明においても、外フラップ(c)の内面に塗着された接着剤は、結果として、内側フラップ(d)の貫通孔(1)を設けた基端部側の外面と、一対の貫通孔(1)の下側のサイドフラップ(b1、b2)の外面に塗付されることになり、サイドフラップ(b1、b2)と内側フラップ(d)と外側フラップ(c)がその順に重ねられて互いに接着するものといえる。
してみると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「容器本体の1つの矩形形状の開口を囲む各辺から延設された内フラップと中フラップと外フラップを備える紙容器であって、
容器本体の開口の一辺に連続する中フラップの基部側に抜き孔状切欠部を設け、
2つの相対する内フラップの外面に中フラップを重ね合せ、中フラップの基部側であって中フラップの外面と抜き孔状切欠部の下側の内フラップの外面に接着剤を塗布することにより、内フラップと中フラップと外フラップをその順に重ねて互いに接着した紙容器。」
【相違点1】
本願補正発明において、中フラップに複数の抜き孔状切欠部を設けるのに対し、引用発明において、内側フラップ(d)には、一対のサイド内フラップ(b1、b2)に各々対応して一対の貫通孔(1)が設けられている点。
【相違点2】
本願補正発明において、中フラップには、複数の抜き孔状切欠部とともに先端部側の側部に外縁切欠部を設けるのに対し、引用発明の内側フラップ(d)には外縁切欠部が設けられていない点。
【相違点3】
本願補正発明において、紙容器は、「2つの内フラップの先端部が相互に近接するとともに、中フラップの基部が連続する容器本体の開口の一辺に対向する辺に外フラップの基部を連続し、かつ中フラップの先端部を該辺に平行をなすように該辺に近接して延設した」とされているのに対し、引用発明のカートンにおいては、引用文献1の各図を参酌すると、2つのサイドフラップ(b1、b2)の先端部が相互に向き合う方向に延設され、内側フラップ(d)の先端部は外側フラップ(c)の延設される辺に向かって延設され、該辺に平行に設けられていることが示されている点。

5.相違点についての検討及び判断
そこで、相違点1ないし3について検討する。
【相違点1】について
引用発明の内側フラップの貫通孔も、本願補正発明の中フラップの抜き孔状切欠部と同様に単一の接着剤の塗布工程でサイドフラップ(内フラップ)と内側フラップ(中フラップ)と外側フラップ(外フラップ)を同時に接着できるようにするものであり、その数を増加することにより、内フラップと外フラップとの接着剤塗布面積が増加し、当該部位での両者の接着がより強固になることは、当業者にとって明白であり、該貫通孔を複数にすることは、紙容器として要求される強度等に応じて、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。(括弧内は、本願補正発明の相当する部分を表記したものである。以下同様。)

【相違点2】について
上記引用文献2に記載された包装紙箱の内フラップD(中フラップ)の先端側の両側辺に設けられた切り込みは、本願補正発明の外縁切欠部と同様に単一の接着剤の塗布工程でサイド内フラップB、C(内フラップ)、内フラップD(中フラップ)及び外フラップA(外フラップ)を同時に接着できるようにするためのものであり、さらに、本願補正発明の「抜き孔状切欠部」及び引用発明の「貫通孔」とは、その設置目的及び機能において一致するものであるから、引用発明の内側フラップ(中フラップ)に、貫通孔に加え、さらに接着を強固にするために、引用文献2に記載されたような側辺(外縁)の切り込み部を併設することは、当業者が容易に想到し得ることであり、それによって生じる効果も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項自体がそれぞれ有する効果の総和を超えるものではない。

【相違点3】について
本願補正発明における「近接」が、どの程度の配置関係を示すのか、本願明細書を参酌しても明確に定義されていないが、対向する1対の内フラップの先端部相互の間隔及び中フラップの先端と対向する辺(外フラップの基部となる)との間隔が狭い程、開口部を閉塞する部分が多くなり、それにより、閉鎖がより確実になるであろうことは、当業者にとって明白である。
したがって、該間隔の寸法をどのような値に設定するかは、容器に求められる強度や製造コスト等を勘案することにより、当業者が適宜決定し得る程度の設計的事項にすぎないものというべきである。
この点について、請求人は、本願補正発明は、引用文献に記載されていない「中フラップの基部が連続する容器本体の開口の一辺に対向する辺に外フラップの基部を連続し、かつ中フラップの先端部を該辺に平行をなすように該辺に近接して延設した」構成により、
「1-i)中フラップの先端部を外フラップの基部に突き合わせた状態で、外フラップを折り曲げ成形できるから、外フラップの折り曲げ性が良く、箱を成形したときに胴部の断面矩形形状を保持し易い。
1-ii)中フラップの先端部を外フラップの基部に突き合わせた状態で、外フラップが折り曲げ成形されるから、成形された箱の剛性が増し、胴部の側面からの圧力に対する強度が増し、胴部の断面矩形形状を保持できる。
1-iii)上述i)、ii)により、箱の胴部の断面形状を平行四辺形化することなく矩形形状に保持できるから、箱の配列性が良いし、箱の内周への内装材(印ろう)の挿入性も良い」という作用効果を奏する旨主張する(平成16年11月16日付けで補正された審判請求書第2頁第34?44行の記載参照。)
しかしながら、本願明細書を参酌しても、本願補正発明でいう「近接」が直ちに「突き合わせた状態」を意味するものとは解されず、この主張は、明細書の記載に基づかないものであり、採用することはできない。
したがって、本願補正発明は、技術常識に鑑みれば、引用発明並びに上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべきである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることのできないものであるので、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
平成16年11月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成16年6月28日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおりである(以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。)。
「容器本体の1つの開口を囲む各辺から延設された内フラップと中フラップと外フラップを備える紙容器であって、
容器本体の開口の一辺に連続する中フラップの基部側に複数の抜き孔状切欠部を設けるとともに、中フラップの先端部側の側部に外縁切欠部を設け、
内フラップの外面に中フラップを重ね合せ、中フラップの基部側であって中フラップの外面と複数の抜き孔状切欠部の下側の内フラップの外面に接着剤を塗布し、かつ中フラップの先端部側であって中フラップの外面と外縁切欠部の下側の内フラップの外面に接着剤を塗布することにより、内フラップと中フラップと外フラップをその順に重ねて互いに接着した紙容器。」

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2、並びに当該引用文献1及び2に記載された発明及び技術的事項は、上記第2【理由】3に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2【理由】2に示した本願補正発明から、紙容器を特定する事項である「矩形形状の開口」及び「2つの相対する内フラップ」から、「矩形形状の」及び「2つの相対する」という限定事項を省き、さらに、「前記2つの内フラップの先端部が相互に近接するとともに、中フラップの基部が連続する容器本体の開口の一辺に対向する辺に外フラップの基部を連続し、かつ中フラップの先端部を該辺に平行をなすように該辺に近接して延設した」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、第2【理由】4ないし6で検討したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-12 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-05 
出願番号 特願2000-168141(P2000-168141)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕溝渕 良一  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 関 信之
田中 玲子
発明の名称 紙容器  
代理人 塩川 修治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ