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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1163146
審判番号 不服2004-25204  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-08-23 
事件の表示 平成 9年特許願第 32288号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月25日出願公開、特開平10-228170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成19年6月8日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 像担持体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記像担持体と接し現像されたトナー画像を記録媒体に転写する転写手段とを有し、トナー画像を記録媒体に転写後に生ずる未転写トナーを回収して前記現像手段に戻し再利用するようにした画像形成装置において、
前記トナー画像は、前記現像手段が対向する前記像担持体上の領域で現像されるものであり、
前記記録媒体の搬送路と該領域との間に配置され、該記録媒体を転写位置に案内する転写ガイド手段を導電部材とし、該転写ガイド手段が電気的に接地されているとともに、前記転写手段は搬送装置も兼ねる転写ベルト装置であって、該転写ベルト装置の記録媒体搬送方向上流側端部は前記像担持体とのニップよりも上流側に延設されており、前記転写ガイド手段の記録媒体搬送方向下流側端部は該転写ベルト装置の延設された部分に重なっていることを特徴とする画像形成装置。」

2.刊行物の記載事項
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平7-333896号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】静電潜像保持体上に形成された静電潜像を磁性トナーにより顕像化する現像工程と、
前記静電潜像保持体上の静電潜像を顕像化した前記磁性トナーを静電力で転写紙に移す転写工程と、
前記転写工程時に一部前記静電潜像保持体に残留する前記磁性トナーを前記静電潜像保持体から除去するクリーニング工程と、
前記クリーニング工程で除去された前記磁性トナーを再度前記現像工程に戻し再利用するトナーリサイクル工程とを有する電子写真方法であって・・・電子写真方法。」
(1b)「(実施例1)図1に本発明の電子写真方法の一実施例の電子写真装置の断面図を示す。・・・1は有機感光体で、・・・3は感光体をマイナスに帯電するコロナ帯電器、4は感光体の帯電電位を制御するグリッド電極、5は信号光である。
露光後の潜像を可視像化するための現像装置は、7は磁性一成分トナー、6は感光体1表面に磁性トナー7を供給するトナーホッパー、8は感光体1とギャップを開けて設定した非磁性電極ローラ、9は電極ローラ8の内部に設置された回転しない磁石、10は電極ローラ8に電圧を印加する交流高圧電源、11は電極ローラ上のトナーをかきおとすポリエステルフィルム製のスクレーパから構成され、電極ローラ8により非画像部の余分なトナーを回収する。・・・
13は感光体上のトナー像を紙に転写する転写ローラで、感光体1に接触するように設定されている。・・・
14は転写紙を転写ローラ13に導入する導電性部材からなる突入ガイド、15は導電性部材の表面を絶縁被覆した搬送ガイドである。突入ガイド14と搬送ガイド15は直接あるいは抵抗を介して接地している。16は転写紙、17は転写ローラ13に電圧印加する電圧発生電源である。」(段落【0097】?【0102】)

これらの記載及び第1図、第3図の記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。
「静電潜像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、現像されたトナー画像を転写紙に転写する転写ローラとを有し、トナー画像を転写紙に転写後に生ずる廃トナーを回収して前記現像手段に戻し再利用するようにした画像形成装置において、
前記トナー画像は、前記現像手段が対向する前記像担持体上の領域で現像されるものであり、
該領域と転写手段との間で、搬送路の下方に配置され、該転写紙を転写位置に案内する転写ガイド手段を導電部材とし、該転写ガイド手段を電気的に接地されている画像形成装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-124004号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項2】転写材を搬送路に導く転写材案内部材であって、前記転写材案内部材のうち少なくとも転写材が接触する面を、吸湿量に応じて高抵抗化する感湿抵抗体で構成すると共に、前記感湿抵抗体と接地との間を接続することを特徴とする転写材案内部材。」
(2b)「【0004】 図6は従来の画像形成装置の構成を示すものである。図6において、3は転写手段で、5は導電性基材5a上に光導電膜5bを形成した像担持体で、7は普通紙やハガキなどの転写材である。8は搬送ローラで、9は接地した転写材案内部材(以下ガイドと称する)である。」
(2c)「【0009】しかし、実際に実機で転写を行うと、転写手段に印加した転写電流が、普通紙を介してガイドに漏洩する。・・・
【0012】上記問題点の解決方法として、ガイドをフローティング状態にする方式や絶縁部材のガイドを使用する方式等が考えられる。しかし、ガイドをフローティングにしたり絶縁部材のガイドを使用したりすると、高湿時では転写手段からの漏洩電流がガイドに蓄積してしまう。また低湿時では通過する紙との接触により、ガイドが摩擦帯電してしまう。これらの結果、ガイドに装置内の浮遊トナーが付着して、紙の裏汚れが発生するという問題点を有していた。」
(2d)「【0035】 図1において、1はガイドである。ガイド1は、絶縁性支持板1a上に金属板1bを張り付け、吸湿性樹脂中に導電性微粉末を分散させた感湿抵抗体2を介して、金属板1bと接地との間を接続させる。また図2に示すように、絶縁性支持板1a上に設けた電極1dの上に感湿抵抗体2を塗布し、電極1dと接地との間を接続させたガイドを使用してもよい。」
(2e)【図2】には、次の図が記載されている。



当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平8-272223号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 像担持体に転写材を押圧する転写部材を有し、該転写部材にバイアスを印加し、該転写部材と像担持体との押圧部である転写部位に転写材を導入して像担持体面に形成保持されている可転写像を転写材面に転写させる構成を有する転写装置において、転写部位の転写材進入側に転写部材に近接して設置された転写材案内部材の一部又は全部の体積抵抗値を105Ωcm?1010Ωcmに設定したことを特徴とする転写装置。」
(3b)「【0012】【作用】
本発明によれば、転写材案内部材の一部又は全体の体積抵抗値を105Ωcm?1010Ωcmとすれば、転写材と転写材案内部材との接点からアースまでの実質的な抵抗値が非常に大きくなり、転写部材から転写材を経て転写材案内部材へ流れ込む漏洩電流を小さく抑えることができ、この結果、転写電流の大部分は転写材上に保持され、低湿環境、高湿環境、使用転写材の電気抵抗値の高低に拘らず、常に高い転写効率で鮮鋭度良く画像転写を安定して行うことができる。」
(3c)「【0018】 一方、感光ドラム1と転写ローラ2との押圧部である転写部位Aの転写材進入側には、転写材案内部材4が転写ローラ2に近接して配設されており、該転写材案内部材4は接地され、その一部(例えば、表面)又は全体の体積抵抗値は105Ωcm?1010Ωcmに設定されている。」
(3d)【図1】には、次の図が記載されている。


2.対比と判断
本願の請求項1に係る発明と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「静電潜像保持体」、「転写紙」、「廃トナー」は、本願請求項1に係る発明の「像担持体」、「記録媒体」、「未転写トナー」に相当し、刊行物1記載の発明の「転写ローラ」は「転写手段」の一種であるから、両者は、
「像担持体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記像担持体と接し現像されたトナー画像を記録媒体に転写する転写手段とを有し、トナー画像を記録媒体に転写後に生ずる未転写トナーを回収して前記現像手段に戻し再利用するようにした画像形成装置において、
前記トナー画像は、前記現像手段が対向する前記像担持体上の領域で現像されるものであり、
記録媒体を転写位置に案内する転写ガイド手段を導電部材とし、該転写ガイド手段が電気的に接地されている画像形成装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:記録媒体を転写位置に案内する転写ガイド手段が、請求項1に係る発明では、記録媒体の搬送路と現像領域との間に配置されているのに対し、刊行物1記載の発明では、現像領域と転写手段との間ではあるが、搬送路の下方に配置されている点。
相違点2:請求項1に係る発明では、転写手段は搬送装置も兼ねる転写ベルト装置であって、該転写ベルト装置の記録媒体搬送方向上流側端部は前記像担持体とのニップよりも上流側に延設されており、前記転写ガイド手段の記録媒体搬送方向下流側端部は該転写ベルト装置の延設された部分に重なっているのに対し、刊行物1記載の発明は転写手段が転写ローラであり、上記の構成を備えていない点。

上記相違点1について検討すると、刊行物1には転写ガイド手段を接地する理由が記載されていないが、記録媒体を転写位置に案内する転写ガイド手段が記録媒体との摩擦により帯電すると、浮遊トナー等を付着し、紙汚れが生じるおそれがあり、そのため、転写ガイド手段を導電性部材とするとともに接地して、帯電を防止することは刊行物2に記載されているように周知であり、刊行物1記載の発明の転写ガイド手段もこのような目的で接地されていると認められる。
そして、転写ガイド手段を搬送路の下側だけでなく、記録媒体の搬送路と現像領域との間にも配置し、両方の転写ガイド手段を導電性部材とするとともに接地して、帯電を防止することは、刊行物2、3に記載されているように従来から慣用されている。
そうすると、刊行物1記載の発明において、浮遊トナー等の付着による紙汚れを防止するために、転写ガイド手段を搬送路の下側だけでなく、記録媒体の搬送路と現像領域との間にも配置し、両方の転写ガイド手段を導電性部材とするとともに接地して帯電を防止することは、当業者が容易になしうることである。

相違点2について検討すると、転写手段を搬送装置も兼ねる転写ベルト装置とし、該転写ベルト装置の記録媒体搬送方向上流側端部を前記像担持体とのニップよりも上流側に延設し、転写ガイド手段の記録媒体搬送方向下流側端部が該転写ベルト装置の延設された部分に重なるように配設することは、特開平6-208306号公報、特開平4-133081号公報に記載されているように本願出願前周知であり、刊行物1記載の発明において、転写手段をローラに代えて周知の転写ベルト装置とすることは当業者が容易になしうることであり、記録媒体の搬送路と現像領域との間に転写ガイド手段を設けるに際し、転写ガイド手段の記録媒体搬送方向下流側端部が該転写ベルト装置の延設された部分に重なるように配設することも、上記周知技術に基いて当業者が容易になしうることである。

請求項1に係る発明の作用効果について検討すると、転写ガイド手段を接地することにより、転写ガイドの帯電が防止される結果、帯電した浮遊トナーだけでなく、トナーと同様に帯電される遊離外添剤や、トナー中に混在している成分の付着をも防止できることは刊行物2、3の記載から容易に予測することができる。そして、トナーを回収して使用する場合に、トナー中に紙粉等が混在することは予測でき、転写ガイドの帯電が防止されていれば、紙粉が帯電することがあっても、その付着をも防止できることは容易に予測できることである。
また、請求項1に係る発明において、転写ベルト装置の記録媒体搬送方向上流側端部を前記像担持体とのニップよりも上流側に延設し、転写ガイド手段の記録媒体搬送方向下流側端部を該転写ベルト装置の延設された部分に重ねたことによる効果については、発明の詳細な説明に全く記載されていないが、転写手段を転写ベルト装置とすると、転写手段に付着した紙粉等の付着物が搬送されること、転写ガイド手段を像担持体とのニップに近接して配置すると、記録媒体が転写手段に適切に案内されることが知られており(上記特開平6-208306号公報、特開平4-133081号公報参照)、請求項1に係る発明の効果は、全体として刊行物1ないし3に記載された発明及び上記周知の転写ベルト装置に関する技術から予測できる程度のものと認める。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-22 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-09 
出願番号 特願平9-32288
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 岡田 和加子
福田 由紀
発明の名称 画像形成装置  
代理人 藤田 アキラ  

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