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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1163154
審判番号 不服2005-1231  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-20 
確定日 2007-08-23 
事件の表示 平成 9年特許願第303156号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月28日出願公開、特開平11-143196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成9年11月5日の出願であって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成19年5月31日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 潜像担持体の周囲に配置され、トナーとキャリアを混合してなる現像剤を前記潜像担持体上に形成された静電潜像に接触させてトナーによる顕像化をするための現像手段を有する画像形成装置において、
前記現像手段と異なる箇所に別体で配置され、前記トナーとキャリアをそれぞれ収納する収納手段と、
該収納手段に収納されたトナーとキャリアの混合比を調合する現像剤調合手段と、
該現像剤調合手段により調合された現像剤を前記現像手段に移送する現像剤移送手段と、
前記現像手段内で回転軸を中心に回転して該現像剤移送手段から移送された現像剤を前記現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材と、
該攪拌部材に対向配置された現像剤の濃度を検知する濃度検知手段と、
前記攪拌部材に対向配置された壁形状からなる規制部材と、
該規制部材を挟んで前記攪拌部材と反対位置に配置され、前記規制部材を越えて流入してくる現像剤を現像手段から排出する排出部材とを具備し、
前記濃度検知手段によって定められた値以下の検知値が検知された場合には前記現像剤調合手段によって予め設定された混合比でトナーとキャリアが混合された現像剤が現像手段に移送され、
移送された現像剤は前記最初に攪拌する攪拌部材で攪拌されつつ、前記規制部材を超えて排出部材へと流入すること
を特徴とする画像形成装置。」

2.刊行物に記載された事項
(1)これに対して、当審において通知した拒絶理由に引用した、本願出願前国内で頒布された刊行物である特開平8-95362号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】トナーとキャリアを混合してなる2成分系現像剤を収容する現像部と、該現像部にて消費された現像剤量に応じて該現像部に補給される補給用現像剤を収納する現像剤収納手段と、該現像部から余剰の現像剤を該現像剤収納手段へ移送する余剰現像剤移送手段とを具備することを特徴とする現像装置。
【請求項2】上記現像部の現像剤中のトナーとキャリアの比率変化を検知して信号を発する現像剤濃度検知手段と、該信号により定量のトナーとキャリアを混合してなる現像剤を補給する現像剤補給手段と、上記現像部に所定の画像形成量に応じて所定量の現像剤を排出する現像剤排出手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項4】上記現像剤収納手段は、上記現像部に補給する新しい補給用現像剤を収納する第1の収納部と、上記現像部から移送された余剰現像剤を収納する第2の収納部とが、各々独立して配設されていることを特徴とする請求項1記載の現像装置。」(請求項1、2、4)
(1b)「この発明は、・・・、その目的は、現像装置内の現像剤の寿命を引き延ばすことによる現像装置のメンテナンスの容易化、現像剤の補給・交換の容易化、及び、現像装置の高信頼性化(ダウンタイムの低減)、を可能とした現像装置を提供することにある。また、本発明の目的は、現像装置内に複雑なキャリアやトナーの供給手段、及びこれらの排出手段を設けること無く、上記課題を解消し得る現像装置を提供することにある。」(【0008】段落、以下、「段落」の記載を省略する。)
(1c)「【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。図1に、本発明の現像装置の一実施例を示す。この現像装置が搭載された画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより画像形成される。
すなわち、図1において、潜像坦持体(感光体ドラム)1の表面には、・・・静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置100によりトナー像化(顕像化)された後、・・・転写紙(図示せず)上に転写される。・・・。
・・・。ここで、現像剤101は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤からなり、そのトナーとキャリアとの混合比率は、通常、1.5?5.0トナー重量%のものが用いられている。また、供給現像剤102は、現像剤101と同様にトナーとキャリアとからなり、そのトナーとキャリアとの混合比率は、通常、70?90トナー重量%のものが用いられている。・・・。
現像剤101は、現像容器105内で、撹拌部材106,107、・・・によって、撹拌されながら現像ローラ103へ移送・循環される。また、この現像剤101の濃度(トナーとキャリアの混合比率)は、現像剤濃度検知器120によって検知される。この現像剤濃度検知器120としては、従来公知の、現像剤101の透磁率を検知する検知器が最も知られている。
図1において、画像形成動作(コピー,プリント)が複数回進行し、現像容器105内の現像剤濃度が低下すると、・・・現像剤供給部材110が回転し、この現像剤供給部材110の周囲の一部に設けられた溝部によって、一定量の供給現像剤102が現像容器105内に供給され、現像容器105内の現像剤101の濃度が、所定の規定濃度に保たれる。ここで、貯蔵された供給現像剤102の現像剤供給部材110への移送は、移送・撹拌部材111により行われる。」(【0012】?【0017】)として、【図1】、【図2】には、潜像坦持体(感光体ドラム)1の周囲に現像装置100が配置されていること、撹拌部材106が回転軸を中心に回転すること、該撹拌部材106上に供給現像剤102が供給されること、及び、現像剤濃度検知器120は撹拌部材107に対向配置されていることが図示されている。
(1d)「ところで、この種のプリミックス現像剤を用いた画像形成装置では、前述したように、その画像形成動作(コピーもしくはプリント)を繰り返し実行していくにつれて、その現像容器105内に収容されている現像剤101中のトナーが逐次消費されて、この現像剤中のキャリアの容量が次第に増大していく。このキャリアが増大したままの状態で、その画像形成動作が引き続き実行されると、この現像容器105内のキャリアが次第に疲労して、例えば、トナーフィルミング,破砕,キャリアの表面に施されているコート被膜の破損などを生じ、現像剤101の現像能力が大幅に損なわれる。
ここで、この増大したキャリアを現像容器105外に適時排出し、常に新しい現像剤(供給現像剤102)を供給すれば、現像装置100内の現像剤101の現像能力を、常に所定のレベルに維持することが可能となる。本発明は、この基本原理に基づいて、現像容器105内の余剰、且つ、現像能力を損ないつつある現像剤101を、現像容器105外に確実に排出させることのできる現像装置を提供する。」(【0018】【0019】)
(1e)「本発明による現像装置100では、図1に示すように、現像容器105の一部に堰部(現像剤101の剤位規制部)105aが設けられており、現像容器105内に補給された現像剤101の量が増大すると、その余剰(疲労)現像剤101’が、この堰部105aを乗り越え(オーバーフローして)、現像剤回収部121に導かれる。
そして、この堰部105aを乗り越えた余剰(疲労)現像剤101’は、現像剤回収部121に付設された排出スクリュー122、及び、移送部材123により、図3に示すように、現像剤補給容器124の一部に設けられた導入孔部124aを経て、現像剤収納部材(現像剤カートリッジ)125の一部に設けられた余剰現像剤収納部126a内に収納される。」(【0020】【0021】)として、【図1】には、堰部105aが壁形状であり、撹拌部材106に対向配置されていること、及び、現像剤回収部121と排出スクリュー122とが堰部105aを挟んで撹拌部材106と反対側に配置されていることが図示されている。
(1f)「現像剤収納部材125には、図5に示すように、余剰(疲労)現像剤101’を収納するための余剰現像剤収納部126aと、補給現像剤102を収納するための補給現像剤収納部126bとの2つの収納部がそれぞれ独立して設けられており、上述の移送・撹拌部材111は、その補給現像剤収納部126b内に配設されている。・・・。
一方、この現像剤収納部材125の補給現像剤収納部126bに収納された補給現像剤102は、移送・攪拌部材111の回転により、この補給現像剤収納部126bに連通した補給孔部136を通して、現像剤供給部材110へ移送され、この現像剤供給部材110の回転によって、所定複写(プリント)量に応じて所定量だけ現像容器105内に補給される。これにより、現像容器105内の現像剤101の濃度が、所定の規定濃度に保たれる。」(【0025】?【0027】)

(2)同じく、当審において通知した拒絶理由に引用した、本願出願前国内で頒布された刊行物である特開平9-218584号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 トナーとキャリアからなる現像剤を現像器に補給する現像剤供給手段と、現像器から排出されるトナーとキャリアとからなる現像剤を回収する回収手段を備えた画像形成装置の現像装置において、現像剤供給手段は、キャリアを供給するキャリア供給部と、トナーを供給するトナー供給部と、キャリア供給部から供給されるキャリアとトナー供給部から供給されるトナーを収納する部屋を備え、キャリアとトナーを収納する部屋はキャリアとトナーを混合、撹拌する混合、撹拌手段を有し、供給されたキャリアとトナーを混合、撹拌した後に現像器に補給するよう構成してなる現像装置。」(請求項1)
(2b)「従来の装置では、キャリアとトナーは双方を混合撹拌することなく、いきなり現像槽内に供給してしまうため、アドミクス不足となり、その結果かぶり、ダート、濃度ムラ等が発生してしまった。」(【0004】)
(2c)「各現像剤供給装置100は同一の構成となっているので、第1の現像器31Bに現像剤を供給する第1の現像剤供給装置100Bを説明する。現像剤供給装置100Bはキャリア供給部110B、トナー供給部120B、現像剤混合撹拌室130Bを備えている。キャリア供給部110Bにはキャリアが収納され、トナー供給部120BにはBLACKトナーが収納されている。そして、現像剤混合撹拌室130Bにキャリア供給部、トナー供給部からキャリア、トナーが供給される構成となっている。現像剤混合撹拌室130Bはスクリュー、パドル等の混合、撹拌手段135が内装されており、供給されたトナーとキャリアを混合、撹拌する。」(【0021】)
(2d)「例えば、図3に示す現像剤供給装置は第1の現像器31Bに対応する第1の現像剤供給装置100Bが現像位置に移動した場合を示している。第1の現像剤供給装置100Bのトナー供給部120Bには第1の現像器31Bに対応すトナー(BKACKトナー)が収納されている。キャリア供給部110Bはキャリアが収納されている。そして、第1の現像器31B内に配設するトナー濃度検知器からの検知信号により一定量のトナー、およびキャリアが現像剤撹拌室130Bに供給される。現像剤混合撹拌室130Bにおいて、キャリアとBLACトナーは混合、撹拌手段により混合、撹拌される。
・・・、現像器31Bが静電潜像担持体1と対向する現像時において、第1の現像器31Bは現像剤混合撹拌室130Bから、混合撹拌されたトナーとキャリアが補給される。現像剤回収部200は第4の現像器34Cに対峙する位置に配されている。そして、第4の現像器34Cから排出される劣化した現像剤を回収する。」(【0022】【0023】)
(2e)「本発明によれば、現像器に供給される二成分現像剤のキャリアとトナーは双方を十分に混合撹拌した状態で補給されるので、アドミクス不足によりかぶり、ダート、濃度ムラ等を防止することができ、高画質を維持し、且つキャリアの適正供給を可能とする。」(【0029】)

(3)同じく、当審において通知した拒絶理由に引用した、本願出願前国内で頒布された刊行物である特開平8-123198号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】潜像坦持体上に形成された静電潜像を顕像化するための現像装置であって、トナーとキャリアを混合した現像剤を該潜像坦持体に付与する現像手段と、現像剤を適正化するための該現像手段と異なる箇所に別体で配置される現像剤適正化手段と、該現像手段及び現像剤適正化手段に現像剤と空気の混合気を移送する現像剤移送・循環手段とを具備した現像装置において、上記現像剤移送・循環手段がスクリューポンプからなり、該スクリューポンプの移送・循環スクリューの中心軸が鉛直方向であり、且つ、該移送・循環スクリューの混合気送り方向が下方向であるとともに、上記現像剤適正化手段が撹拌手段としての撹拌スクリューを具備しており、該撹拌スクリューの混合気送り方向が上方向であることを特徴とする現像装置。」(請求項1)
(3b)「【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の現像装置では、潜像坦持体としての感光体ドラムに対向して設けられる現像スリーブに現像剤を供給すべく、現像剤を貯溜しておく貯溜部分やトナーを補給するタンクが、該現像スリーブの近傍に、該現像スリーブを収めたユニットとして構成される現像手段と一体的に構成されるため、その構成部分が大型になり、装置構成が複雑になると共に、装置メンテナンス時の操作性が低下する問題があった。この発明は、上述の点に鑑みてなされたものであって、その目的は、潜像坦持体に対向して構成される現像手段の小型化、構成の簡素化、及び、メンテナンス時の操作性を向上させることのできる現像装置を提供することにある。」(【0008】)
(3c)「【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。図1乃至図3に、現像手段と、この現像手段とは異なる箇所に別体で配置される現像剤適正化手段との間で、現像剤の移送・循環を行う本発明の現像装置の実施例(請求項1に対応する実施例)の構成を、ブロック図、及び、現像手段の断面図並びに斜視図と共に示す。
図1において、現像剤適正化手段1000は、現像剤を適正化する機能を有し、また、現像剤の循環は、現像剤移送・循環手段200により行われる。現像手段10は、現像剤適正化手段1000により適正化された現像剤を受け入れる入口111aと、現像手段10により現像に用いられた余剰の現像剤を現像剤適正化手段1000に排出するための出口121aを有している。
ここで、現像剤としては、トナーとキャリアからなる2成分の現像剤が用いられる。また、現像剤を適正化するとは、現像剤のトナーとキャリアとの混合比を調整して、現像剤の剤濃度及び剤帯電量を適正化することが含まれる。また、現像剤に混入した紙粉等の異物は、現像剤の循環過程において、異物除去手段(図示せず)により除去される。
本実施例によれば、現像剤を適正化し、また、トナー補給ユニットを設けることのできる現像剤適正化手段を、現像手段と別の位置に設置することができるので、現像手段の構成が非常に簡易となるとともに、その小型化が図れ、複雑な画像形成装置の内部構成が簡素化され、そのレイアウト上の余裕も生じ、メンテナンスの容易化を図れる。」(【0010】?【0013】)
(3d)「次に、現像剤適正化手段1000、及び、現像剤移送・循環手段200としてのポンプ等の具体例について、図4を参照して説明する。図4において、符号220は現像剤撹拌ユニットを示しており、この現像剤撹拌ユニット220は、下部が筒状に形成され上部がロート状に形成された剤収納容器223と、この剤収納容器223内にて駆動モータ222により回転される撹拌スクリュー221とにより構成される。・・・。これにより、現像剤中のトナー濃度の均一化、及び、現像剤を上方に送り重力で下方に落ちるものとのずれ力を利用することによる効果的なトナー帯電量の適正化、並びに、ポンプに入る前の現像剤の流動化を促進させることができる。
剤収納容器223の上部には、トナー補給ユニット230の出口及び現像剤流入口225が開口している。トナー補給ユニット230は、上部の蓋230aを開けることにより新しいトナー231を適宜供給できるようになっており、その下部には、この下部を塞ぐようにしてトナー供給部材232が設けられている。
・・・。
一方、現像剤適正化手段1000の下部には現像剤吐出口206が位置し、・・・。
このように、現像手段10からの排出現像剤に、トナー補給ユニット230から制御されつつ補給される新規トナーが加えられ、現像剤撹拌ユニット220において、現像剤の濃度及び帯電量が現像に最適の条件を具備するように、現像剤の適正化処理が行われる。また、上述のようにして適正化処理の行われた現像剤は、現像剤撹拌ユニット220の下部に位置する現像剤移送・循環手段(粉体ポンプユニット)200に送られる。」(【0021】?【0024】)

3.対比、判断
刊行物1の記載事項(1a)?(1f)からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
「潜像坦持体の周囲に配置され、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤を収容し、前記潜像坦持体上に形成された静電潜像をトナー像化する現像装置を有する画像形成装置において、
トナーとキャリアとからなる補給用現像剤を収納する現像剤収納手段と、
前記現像剤収納手段に収納された現像剤を前記現像装置へ移送し供給する手段と、
前記現像装置内で回転軸を中心に回転して現像剤を現像装置へ移送し供給する手段から移送、供給された現像剤を前記現像装置内で最初に攪拌する攪拌部材106と、
もう一つの攪拌部材107に対向配置された現像剤の濃度を検知する現像剤濃度検知器と、
前記攪拌部材106に対向配置された壁形状の堰部と、
該堰部を挟んで前記攪拌部材106,107と反対位置に配置され、前記堰部を越えて流入してくる現像剤を現像装置から排出する現像剤回収部と排出スクリューとを具備し、
前記現像剤濃度検知器によって現像剤の濃度の低下が検知されると、予め設定された混合比率でトナーとキャリアが混合された補給現像剤が所定量供給される画像形成装置。」

本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「トナー像化」、「現像装置」、「現像剤濃度検知器」、「堰部」、「混合比率」は、それぞれ、本願発明1における「トナーによる顕像化」、「現像手段」、「濃度検知手段」、「規制部材」、「混合比」に相当し、刊行物1発明における「現像剤回収部」と「排出スクリュー」を併せたものが、本願発明1における「排出部材」に相当する。また、刊行物1発明における「移送し供給する」ことないし「移送、供給」は、本願発明1における「移送」に相当し、刊行物1発明における「現像剤を現像装置へ移送し供給する手段」は、本願発明1における「現像剤移送手段」に相当する。
そして、刊行物1発明における「現像剤濃度検知器によって現像剤の濃度の低下が検知され」たときは、「濃度検知手段によって定められた値以下の検知値が検知された場合」に他ならず、また、刊行物1発明においても、移送、供給された現像剤は、攪拌部材106で攪拌され、供給量が多いときには堰部を超えて現像剤回収部へ流入し排出スクリューで排出されることは、刊行物1発明の装置構成からみて明らかである。
してみると、両者は、
「潜像担持体の周囲に配置され、トナーとキャリアを混合してなる現像剤を前記潜像担持体上に形成された静電潜像に接触させてトナーによる顕像化をするための現像手段を有する画像形成装置において、
現像剤を前記現像手段に移送する現像剤移送手段と、
前記現像手段内で回転軸を中心に回転して該現像剤移送手段から移送された現像剤を前記現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材と、
攪拌部材に対向配置された現像剤の濃度を検知する濃度検知手段と、
前記攪拌部材に対向配置された壁形状からなる規制部材と、
該規制部材を挟んで前記攪拌部材と反対位置に配置され、前記規制部材を越えて流入してくる現像剤を現像手段から排出する排出部材とを具備し、
前記濃度検知手段によって定められた値以下の検知値が検知された場合には前記現像剤調合手段によって予め設定された混合比でトナーとキャリアが混合された現像剤が現像手段に移送され、
移送された現像剤は前記最初に攪拌する攪拌部材で攪拌されつつ、前記規制部材を超えて排出部材へと流入する画像形成装置。」
で一致し、下記の点で相違する。
(i)本願発明1は、「現像手段と異なる箇所に別体で配置され、トナーとキャリアをそれぞれ収納する収納手段と、該収納手段に収納されたトナーとキャリアの混合比を調合する現像剤調合手段と、該現像剤調合手段により調合された現像剤を前記現像手段に移送する現像剤移送手段と」を具備するのに対して、刊行物1発明は、「トナーとキャリアとからなる補給用現像剤を収納する現像剤収納手段と、前記現像剤収納手段に収納された現像剤を前記現像装置へ移送し供給する手段と」を具備するものであって、この「現像剤収納手段」は現像手段と異なる箇所に別体で配置されているものではなく、「現像剤を現像装置へ移送し供給する手段」は、異なる箇所に別体で配置された「現像剤収納手段」から現像剤を「現像装置」に移送するものではない点。
(ii)濃度検知手段が、本願発明1では、現像剤移送手段から移送された現像剤を前記現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材に対向配置されているのに対して、刊行物1発明では、現像剤移送手段から移送された現像剤を前記現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材106とは別の攪拌手段107に対向配置されている点。
なお、上記の一致点のうち「前記攪拌部材」は、「前記現像手段内で回転軸を中心に回転して供給された現像剤を前記現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材」を意味するものである。

そこでまず、相違点(i)について検討する。
刊行物2には、トナーとキャリアからなる現像剤を現像器に補給する現像剤供給手段と、現像器から排出されるトナーとキャリアとからなる現像剤を回収する回収手段を備えた画像形成装置の現像装置における、現像剤供給手段として、トナーを収納するトナー供給部とキャリアを収納するキャリア供給部を備え、さらに、トナー供給部から供給されるトナーとキャリア供給部から供給されるキャリアを混合、攪拌する現像剤混合攪拌室を設けることが、さらに、現像剤混合攪拌室で混合、攪拌されたトナーとキャリアを現像器に補給することが記載されている。
また、刊行物3には、トナー補給ユニットを備え、現像手段からの排出現像剤にトナー補給ユニットからの新規トナーを補給し現像剤攪拌ユニットで攪拌することにより、現像剤のトナーとキャリアとの混合比を調整し、現像剤を適正化する現像剤適正化手段を、現像手段と異なる箇所に別体で配置し、該手段で適正化した現像剤を現像手段に移送する手段を設けたことにより、現像手段の構成が簡易となるとともに、その小型化が図れ、複雑な画像形成装置の内部構成が簡素化されたことが記載されている。
即ち、刊行物2には、現像手段に現像剤を供給する手段として、トナーとキャリアをそれぞれ収納する収納手段と、該収納手段に収納されたトナーとキャリアの混合比を調合する現像剤調合手段を備えたものが記載されていると云え、刊行物3には、現像手段の小型化、画像形成装置の簡素化を目的として、トナーを補給し、現像剤のトナーとキャリアとの混合比を調整して適正化した現像剤を調合する手段を現像手段と異なる箇所に別体で配置し、この調合手段により調合された現像剤を現像手段に移送する手段を画像形成装置に具備することが記載されていると云える。
してみれば、刊行物1発明における現像剤の補給手段として、刊行物2に記載のトナーとキャリアをそれぞれ収納する収納手段と、該収納手段に収納されたトナーとキャリアの混合比を調合する現像剤調合手段を採用することは、当業者が適宜為し得たことであり、さらに、現像装置の小型化、画像形成装置の簡素化を目的として、それらを現像手段と異なる箇所に別体で配置し、調合された現像剤を現像手段に移送する手段を具備するようにすることは、刊行物2及び3の記載から当業者が容易に想到し得たことであると認められる。

次に、相違点(ii)について検討する。
本願発明1においても、刊行物1発明においても、「濃度検知手段」は現像手段内の現像剤の濃度を検知して、その検知値が定められた値以下の値となったことを知るためのものである。よって、本願発明1においても、「濃度検知手段」は現像装置内の現像剤の濃度を検知するに最も適した箇所に配置することが望ましいものと認められる。
ところで、本願発明1は、現像剤移送手段から移送された現像剤を現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材以外の攪拌装置の有無について特定が無く、しかも、現像剤移送手段から移送された現像剤を現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材の長手方向における、現像剤の移送位置と「濃度検知手段」の配置位置との関係についても特定がないため、断言はできないものの、刊行物1発明のように、攪拌部材が複数設けられている場合は、移送手段から移送された現像剤を現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材ではなく、潜像担持体に近いもう一つの攪拌部材に対向した位置に設けた方が、移送前に現像手段内に存在した現像剤と新たに移送された現像剤との攪拌混合が進むため、現像手段内の現像剤の濃度をより正確に検知することができるものと認められる。
しかし、画像形成装置内の他の部材との配置関係等を考慮して、濃度検知手段を、現像剤移送手段から移送された現像剤を現像手段内で最初に攪拌する攪拌部材に対向配置するようにすることも、当業者が必要に応じて適宜為し得たことであると認められる。
そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、濃度検知手段の配置位置をかかる如く特定したことによりいかなる効果が奏されるものか記載はなく、また、濃度検知手段の配置位置と現像手段内の現像剤の濃度については上述のとおりであるから、本願発明1において、濃度検知手段の配置位置の特定により格別顕著な効果が奏されたものと認めることはできない。

さらに、本願明細書及び図面の記載を検討しても、相違点(i)及び(ii)で挙げた本願発明1の発明特定事項を共に備えたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとも認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし6に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-20 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-09 
出願番号 特願平9-303156
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 下村 輝秋
山口 由木
発明の名称 画像形成装置  
代理人 藤田 アキラ  

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