ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21C |
---|---|
管理番号 | 1163330 |
審判番号 | 不服2005-11475 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-17 |
確定日 | 2007-08-23 |
事件の表示 | 特願2003- 14115「丸鋼管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日出願公開、特開2004-223568〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成15年1月23日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年6月17日付け手続補正書による補正前後の明細書の記載からみて、補正前の請求項3に係る発明に対応するものであって、前記手続補正書により請求項の削除を目的として補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という)。 「半割丸鋼管に対応した幅でかつ幅方向の両端に開先を形成した鋼板を、1回のプレス成形により、幅方向における両端部分と中央部分とにそれぞれ所望長さの直状部が残存しかつ直状部間を円弧部としてU字状に曲げ形成したのち、一対のU字状体を、その開先の部分を相当接させた状態で溶接接合して半成形丸鋼管を形成し、この半成形丸鋼管の全体を加熱したのち、その成形面を最終半径に対応する半円状とした複数の成形ロール間に通して熱間成形することを特徴とする丸鋼管の製造方法。」 2.引用文献とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本出願前に国内において頒布された刊行物である特開2000-301231号公報(以下、「引用文献1」という。)、及び、特開平9-38721号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)引用文献1:特開2000-301231号公報 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ・・・・・・ 【請求項2】 帯鋼板の幅方向における複数箇所を折り曲げて曲げ鋼板とし、複数の曲げ鋼板を、複数箇所に側縁の突き合わせ部が形成されるよう配置したのち、これら突き合わせ部の少なくとも一部を溶接することにより多角形状鋼管とし、この多角形状鋼管を、焼鈍し処理したのち、丸管成形機により丸形に成形することを特徴とする丸形鋼管の製造方法。」 (1b)「【0012】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の第一の実施の形態を、図1?図6に基づいて説明する。図1に示すように、帯鋼板1を長さ方向1Aに搬送し、開先加工機20に通して幅方向1Bにおける両側縁に開先2を加工し、この前後に所定長さに切断する。そして帯鋼板1を前段成形プレス21に入れて、下金型22に対する上金型23の昇降動により、側縁寄りの二箇所に大半径R状の隅部3,4を折り曲げ成形する。 【0013】次いで図2に示すように、後段成形プレス24に入れて、下金型25に対する上金型26の昇降動により、中間の二箇所に大半径R状の隅部5,6を折り曲げ成形する。そして仮付け溶接機27の部分で、四辺をロール28,29群(またはシリンダー)により外側から加圧整形することで、開先2どうしを突き合わせして、四角形状鋼管(多角形状鋼管)7としたのち、その突き合わせ部に対して仮付け溶接8を施工する。 【0014】次いで図3に示すように、四角形状鋼管7を内面溶接機30に移して内面溶接9を施工したのち、外面溶接機31に移して外面溶接10を施工する。その後、四角形状鋼管7をビード除去装置32に移して外側のビード除去を行うことで、突き合わせ溶接部(シーム溶接部)11を形成する。そして図4に示すように、四角形状鋼管7を前段焼鈍し部(工程)33に入れて、前段の焼鈍し処理を行う。すなわち、四角形状鋼管7を高温に加熱したのち徐冷することによって、靭性の向上や加工歪の除去などを速やかに行える。次いで四角形状鋼管7を前段の丸管成形機34に入れて(実線参照)、下型35に対する上型36の昇降動により、この四角形状鋼管7を丸形に粗成形し、以て丸形状鋼管12に成形する(仮想線参照)。その後、丸形状鋼管12を後段焼鈍し部(工程)37に入れて、後段の焼鈍し処理を行う。 【0015】そして図5に示すように、丸形状鋼管12を後段の丸管成形機38に入れて(実線参照)、下型39に対する上型40の昇降動により、この丸形状鋼管12を丸形に仕上げ成形することで、一箇所に突き合わせ溶接部11を有する大径で厚肉の丸形鋼管(製品)13を製造し得る。この丸形鋼管13は、必要に応じて矯正機41に入れて矯正される。 【0016】ここで前段の丸管成形機34や後段の丸管成形機38による成形は、全長一度に成形してもよく、また何回かに短く分けて成形してもよい。・・・」 (1c)「【0019】次に、本発明の第三の実施の形態を、図8に基づいて説明する。すなわち、帯鋼板1を長さ方向1Aに搬送し、開先加工機20に通して幅方向1Bにおける両側縁に開先2を加工し、この前後に所定長さに切断する。そして帯鋼板1を成形プレス45に入れて、下金型に対する上金型の昇降動により、側縁寄りの二箇所に大半径R状の隅部3,4を折り曲げ成形し、以てC字形状(チャンネル状)の曲げ鋼板15とする。 【0020】次いで、仮付け溶接機27の部分において、一対(複数)の曲げ鋼板15を、二箇所(複数箇所)に開先2の突き合わせ部が形成されるよう配置した状態で、四辺をロール28,29群により外側から加圧整形することで、開先2どうしを突き合わせして、四角形状鋼管(多角形状鋼管)7としたのち、その突き合わせ部に対して仮付け溶接8を施工する。その後は、前述した第一の実施の形態や第二の実施の形態と同様な工程が遂行される。」 (1d)「【0023】上記した各実施の形態では、下型35と上型36からなるプレス形式の前段の丸管成形機34や、同様の後段の丸管成形機38を示しているが、これらはロール形式の丸管成形機であってもよい。・・・」 (1e)図8には、C字形状の曲げ鋼板は、幅方向における両端部分と中央部分とに直状部を有し、直状部間に大半径R状部を有すること、四角形状鋼管は、4隅に大半径R状部を有することが示されている。 (2)引用文献2:特開平9-38721号公報 (2a)「【0003】・・・冷間成形により製造された角形鋼管は、角部およびシーム溶接部の硬さが平板部(母材)に比べてかなり高い値となるため、角部およびシーム溶接部の降伏強さが増大し、延性の低下をきたすことになり、以て機械的性質が不均一で残留応力が発生していることから、切削加工などを容易に行えない。 【0004】そこで最近では、大径の角形鋼管に見合う所定の径、板厚、長さの丸形鋼管を原管として、この原管を加熱炉で加熱し、次いで加熱した原管を丸形鋼管成形ミルで熱間成形して精製原管とし、そして精製原管を角形鋼管成形ミルで熱間成形して角形鋼管を製造することが提供されている。」 (2b)「【0014】この角形鋼管成形機18では、複数のつづみ形ロール19などを介して最終の熱間成形(成形温度、A3 変態点以上)を行う」 (2c)「【0020】・・・多角中空鋼管8は丸管成形機に通されて丸管25に冷間成形される。そして丸管25は加熱炉17に搬入され、高温加熱Aされたのち、角形鋼管成形機18に搬入されて四角形鋼管9に成形される。この、さらに別な実施の形態によると、・・・丸管25から四角形鋼管9への熱間成形も容易に精度よく行える。なお多角中空鋼管8は、加熱炉17に搬入されて高温加熱Aされたのち、丸管成形機に通されて丸管25に熱間成形されてもよい。」 3.当審の判断 3-1.引用文献1に記載の発明 (ア)引用文献1の摘記事項(1a)には、 「帯鋼板の幅方向における複数箇所を折り曲げて曲げ鋼板とし、複数の曲げ鋼板を、複数箇所に側縁の突き合わせ部が形成されるよう配置したのち、これら突き合わせ部の少なくとも一部を溶接することにより多角形状鋼管とし、この多角形状鋼管を、焼鈍し処理したのち、丸管成形機により丸形に成形することを特徴とする丸形鋼管の製造方法」が記載されている。 (イ)引用文献1の摘記事項(1b)、(1c)には、両側縁に開先を形成した帯鋼板をプレス成形し、側縁寄りの二箇所に大半径R状の隅部を折り曲げ成形して、C字形状の曲げ鋼板を形成する旨、一対の曲げ鋼板を、二箇所に開先の突き合わせ部が形成されるよう配置した状態で、開先どうしを突き合わせして、四角形状鋼管としたのち、その突き合わせ部を溶接する旨が記載されている。 (ウ)引用文献1の摘記事項(1d)には、丸管成形機は、ロール形式でもよい旨が記載されている。 (エ)引用文献1の図8には、摘示事項(1e)のとおり、C字形状の曲げ鋼板は、幅方向における両端部分と中央部分とに直状部を有し、直状部間に大半径R状部を有すること、四角形状鋼管は、4隅に大半径R状部を有することが示されている。 以上の(ア)?(エ)の事項を考慮し、前記丸管成形機がロール形式である場合について、摘記事項(1a)?(1e)を整理すると、引用文献1には、次の丸形鋼管の製造方法の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。 引用文献1発明:「両側縁に開先を形成した帯鋼板をプレス成形し、側縁寄りの二箇所に大半径R状の隅部を折り曲げ成形して、幅方向における両端部分と中央部分とに直状部を有しかつ直状部間に大半径R状部を有するC字形状の曲げ鋼板を形成し、一対の曲げ鋼板を、二箇所に開先の突き合わせ部が形成されるよう配置した状態で、開先どうしを突き合わせして、4隅に大半径R状部を有する四角形状鋼管としたのち、その突き合わせ部を溶接し、この四角形状鋼管を、焼鈍し処理したのち、ロール形式の丸管成形機により丸形に成形する丸形鋼管の製造方法。」 3-2.本願発明と引用文献1発明との対比 本願発明と引用文献1発明を対比すると、 (カ)引用文献1発明における「大半径R状部」、「C字形状の曲げ鋼板」、「丸形鋼管」は、それぞれ、本願発明における「円弧部」、「U字状体」、「丸鋼管」に相当するといえる。 (キ)引用文献1発明における「開先の突き合わせ部が形成されるよう配置した状態」は、本願発明における「開先の部分を相当接させた状態」に相当するといえる。 (ク)引用文献1発明における「両側縁に開先を形成した帯鋼板」は、一対で丸形鋼管が製造されることからみて、「半割丸形鋼管に対応した幅」であるといえる。 (ケ)引用文献1発明における「四角形状鋼管」は、丸形鋼管製造過程の半成形品であるから、「半成形鋼管」といえる。 以上の(カ)?(ケ)の事項を勘案すると、両者は、 「半割丸鋼管に対応した幅でかつ幅方向の両端に開先を形成した鋼板を、プレス成形により、幅方向における両端部分と中央部分とにそれぞれ所望長さの直状部が残存しかつ直状部間を円弧部としてU字状に曲げ形成したのち、一対のU字状体を、その開先の部分を相当接させた状態で溶接接合して半成形鋼管を形成し、この半成形鋼管を丸鋼管へ成形する丸鋼管の製造方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。 相違点1:本願発明では、鋼板をU字状に曲げ形成するプレス成形の回数が「1回」であるのに対し、引用文献1発明では、プレス成形の回数が不明である点 相違点2:一対のU字状体を溶接接合して形成される半成形鋼管が、本願発明では、「丸鋼管」であるのに対し、引用文献1発明では、「4隅に大半径R状部を有する四角形状鋼管」である点 相違点3:半成形鋼管の丸鋼管への成形が、本願発明では、“半成形鋼管の全体を加熱したのち、その成形面を最終半径に対応する半円状とした複数の成形ロール間に通して熱間成形する”ことによりなされるのに対し、引用文献1発明では、「焼鈍し処理したのち、ロール形式の丸管成形機により丸形に成形すること」によりなされる点 3-3.相違点についての検討 (1)相違点1について プレス成形において、成形回数が少ない方が作業性やコスト等の点で望ましいことは、本出願前において周知の事項であるし、また、鋼板等の板状物のU字状への曲げ形成を、1回のプレス成形により行うことも、本出願前において周知の事項であるから、引用文献1発明において、鋼板をU字状に曲げ形成するプレス成形の回数を「1回」とすることは、前示の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。 (2)相違点2について 本願発明における「半成形丸鋼管」は、“幅方向における両端部分と中央部分とにそれぞれ所望長さの直状部が残存しかつ直状部間を円弧部としてU字状に曲げ形成したU字状体”の一対から溶接接合により形成されるものであるから、その断面は、正確な「丸」(乃至「円」)ではなく、四辺の直状部と4隅の円弧部を有するものといえる。 これに対し、引用文献1発明における「4隅に大半径R状部を有する四角形状鋼管」も四辺の直状部と4隅の円弧部を有するものであるから、両者は、その断面形状において格別に相違するとはいえない。 また、製造過程の半成形品を、最終成形品に成形しやすい形状とすることは、当業者が通常考慮する程度のことであるから、仮に、半成形鋼管の断面形状の点で両者が相違するとしても、その相違は、最終成形品に成形しやすい形状とすることを課題として、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違といえないか、仮に相違であるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)相違点3について 引用文献2の摘示事項(2a)?(2c)、下記周知例1の摘示事項(周1a)、下記周知例2の(周2a)、(周2b)等の記載にみられるように、鋼管等の成形方法として熱間成形は、冷間成形、温間成形と共に、本出願前において周知のものであるし、また、熱間成形が、大きな加工圧力を必要とせず、大きな変形量が与えられ、成形後の残留応力が少ない加工法であることも、本出願前において周知である。さらに、丸断面の成形品を成形するのに、“その成形面を最終半径に対応する半円状とした複数の成形ロール”を用いることや、熱間成形前に被成形品の全体を加熱することも、本出願前において周知の事項である。 そして、熱間成形、冷間成形、温間成形のいずれを採用するかは、それらの長所、短所を考慮し、当業者が適宜決定する程度の事項であるから、引用文献1発明において、半成形鋼管の丸鋼管への成形を、“半成形鋼管の全体を加熱したのち、その成形面を最終半径に対応する半円状とした複数の成形ロール間に通して熱間成形する”ことにより行うことは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 周知例1:特開平4-339517号公報 (周1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 帯鋼板を長手方向直角断面で丸形に成形し、その両側縁を突合わせ溶接して形成した連続丸鋼管の外周全体を、ガス、油等の化石燃料を熱源とした加熱と電気エネルギーによる高周波加熱とにより複合加熱して丸鋼管全体を均等な所要温度に維持するよう温度管理しながら、前記鋼管を角形成形用ロールスタンドに移送することを特徴とする大径角形鋼管の熱間成形工法。」 周知例2:特開昭59-94522号公報 (周2a)「2.特許請求の範囲 電縫管の製造ラインにおいて、成形、溶接、サイジングをした後、溶接部熱処理を行い、その後に少くとも1スタンドの形状矯正ロールにより形状矯正することを特徴とする電縫管の製造法。」(1頁左下欄4?8行) (周2b)「この改良された製法の要点は、・・・圧下成形すなわち形状矯正を温間ないし熱間で行い、・・・」(2頁左上欄1?4行) (4)相違点検討のまとめ 以上のとおり、上記相違点1?3は、実質的な相違でないか、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の奏する効果は、引用文献1、2の記載、及び、上記周知事項から予測される範囲のものであって、格別に顕著なものとは認められない。 よって、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-20 |
結審通知日 | 2007-06-26 |
審決日 | 2007-07-09 |
出願番号 | 特願2003-14115(P2003-14115) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B21C)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國方 康伸、小谷内 章、富永 泰規 |
特許庁審判長 |
綿谷 晶廣 |
特許庁審判官 |
小川 武 前田 仁志 |
発明の名称 | 丸鋼管の製造方法 |
代理人 | 笹原 敏司 |
代理人 | 原田 洋平 |
代理人 | 森本 義弘 |
代理人 | 板垣 孝夫 |