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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C |
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管理番号 | 1163448 |
審判番号 | 不服2005-21344 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-04 |
確定日 | 2007-08-30 |
事件の表示 | 特願2001-377331「燃料集合体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-177188〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成13年12月11日の出願であって、平成17年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年11月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年12月5日付けで手続補正がなされたものである。 2 平成17年12月5日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年12月5日付け手続補正を却下する。 [理由]独立特許要件違反 平成17年12月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、補正前の特許請求の範囲の請求項1が、 「【請求項1】 9行9列の正方格子状に配列された4本の短尺燃料棒と複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドとを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したことを特徴とする燃料集合体。」から 「【請求項1】 9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け、前記デブリティルター付燃料集合体の圧力損失とインベントリを、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備 えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失とインベントリと同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とし、前記燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したことを特徴とする燃料集合体。」と補正された。 そして、この補正は、 (1)原子炉用の燃料集合体について、「燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け」たものに限定し、 (2)短尺燃料棒について、 「前記デブリティルター付燃料集合体の圧力損失とインベントリを、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失とインベントリと同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とし」と限定するものである。 したがって、この補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 (1)本件補正後の本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書及び図面からみて、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け、前記デブリフィルター付燃料集合体の圧力損失とインベントリを、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失とインベントリと同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とし、前記燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したことを特徴とする燃料集合体。」 なお、補正後の請求項1には、「前記デブリティルター付燃料集合体」と記載されているが、前記デブリフィルター付燃料集合体の誤記であることは明らかであるので、上記のとおりに、本願補正発明を認定した。 (2)引用刊行物に記載された発明 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-296694号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「沸騰水型原子炉用燃料集合体」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 9行9列の正方格子状配列に燃料棒をバンドル形状に保持し、該配列の中央部の複数の燃料棒を一本の角型ウォータチャンネルに置換えた沸騰水型原子炉用燃料集合体において、前記燃料棒の一部を該燃料棒に対して短尺化した短尺燃料棒に置換え、前記格子状配列のうち前記角型ウォータチャンネルに隣接する内周列と、該内周列の外側に隣接する中間列とに前記短尺燃料棒を点在させて配置し、最外周列の燃料棒と、燃料集合体を被覆するチャンネルボックスとの間隙を3.8mm以上に広げたことを特徴とする沸騰水型原子炉用燃料集合体。 【請求項2】 前記短尺燃料棒の長さを前記燃料棒の有効長の約2/3を越えない長さとしたことを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉用燃料集合体。 【請求項3】 前記角型ウォータチャンネルの面積を3行3列の正方格子配列の桝目を占める面積の85%以上の面積とした請求項1又は2の何れかに記載の沸騰水型原子炉用燃料集合体。」 <記載事項2> 「【0010】一方、燃料棒本数の増加と集合体内部の中性子減速材の体積増加という二つの特徴を組合せた高燃焼度化9行9列の型燃料集合体は、冷却材流れに対する圧損の増加という新たな問題があった。即ち、燃料棒表面積の増加による摩擦圧損の増加、並びに大口径ウォータロッド又はウォータチャンネルに占有される分だけインチャンネル冷却材流路面積が縮小されて冷却材流速が増加することに伴う圧損の増加である。 【0011】沸騰水型原子炉では、周知のように冷却材は水と蒸気の二相流となるため、特に水力学的不安定性に配慮する必要がある。一般に二相流部は単相流部と比べて冷却材流速が大きいため、上記の圧損の増加は二相流部に対して影響が大きく、そのため水力学的不安定性が助長されることが知られていた。 【0012】このように9行9列燃料集合体では、8行8列の燃料集合体に比べて高圧損化しているため、チャンネル安定性と炉心安定性が水力学的に悪化するという不都合を生じる。水力学的不安定性が悪化すると冷却材の流量が振動し、この振動の振幅が大きくなった最悪の場合は除熱不足による燃料の破損に至る。更に、流量の振動は冷却材蒸気体積率(ボイド率)の振動と、それによる核反応率の振動による炉心全体、または局所的な中性子束の振動を引き起こし、遂には原子炉スクラムに至る。」 <記載事項3> 「【0024】 【実施例】図1は本発明の一実施例の配置を示す燃料集合体の断面図、図2は本発明の別の実施例の配置を示す燃料集合体の断面図である。図1は8本の短尺燃料棒40を用いる場合、図2は4本の短尺燃料棒40を用いる場合を示し、いずれも、少なくとも4本の短尺燃料棒40がウォータチャンネル41の4辺の各辺の中央部に隣接している。また、図中のウォータチャンネル41は3行3列の正方格子配列の面積の85%とした例である。」 <記載事項4> 「【0026】本発明の基準となる燃料集合体は、前述の図10に示す72本の全長燃料棒を有する集合体であり燃料棒直径約11mmとした。尚図中、45はチャンネルボックスである。図1又は図2の燃料集合体は、短尺燃料棒40を8本又は4本用いるが、その短尺燃料棒40の長さは全長燃料棒42の有効長の約2/3とした。 短尺燃料棒40の採用により集合体当たりの燃料物質の装荷量が低下することを補償するため、燃料棒の直径は、全長燃料棒42および短尺燃料棒40ともに基準の約11mmに対し、8本の短尺燃料棒40を用いる場合、約2%、4本の短尺燃料棒40を用いる場合、約1%、それぞれ大きい直径とした。」 また、本願の出願前に頒布された特開2000-171579号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「燃料集合体」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項5> 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、沸騰水型原子炉用の燃料集合体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来の沸騰水型原子炉用の燃料集合体を図13?図15を用いて説明する。(略)図13に示すように、燃料棒2は8行8列の正方格子状に配列され、中央部の4本の燃料棒が配置可能な領域に1本の円筒状の水ロッド3が配置されている。」 <記載事項6> 「【0005】9行9列型の第2の燃料集合体は、ジャーナル オブ ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー 第34巻5号(1997年)、510?520頁(Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY,Vol.34,No.5(1997),pp510?520)に記載されている。この燃料集合体の横断面を図9に、下部タイプレートの概略構造を図10に示す。以下、この燃料集合体をB型と呼ぶ。B型の場合、図9に示すように、中央部の9本の燃料棒が配置可能な正方領域に1本の四角筒状の水ロッド3が配置されている。図10のように、B型の下部タイプレート1は、流路面積に対して構造物の占める割合が小さい。このため、B型の下部タイプレートは、A型の下部タイプレートに比べて、流路面積が大きく、流動抵抗が小さくなっている。) <記載事項7> 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】近年、燃料集合体内への異物(デブリ)の流入を防止するため、デブリを捕捉するデブリフィルタを設けた下部タイプレートが提案されている。これにより、燃料集合体の健全性の向上を図っている。」 <記載事項8> 「【0012】ウラン装荷量を減らさずに燃料集合体の圧力損失を低減する方法として、水ロッドの横断面積を小さくして、燃料集合体内を流れる冷却材の流路面積を増大させる方法がある。しかしながら、水ロッドの横断面積の過度の縮小は、後述する設計上の重要な指標の一つである炉心安定性を悪くするという問題がある。 【0013】本発明の目的は、平均取出燃焼度が45GWd/t以上の条件で、B型の燃料集合体にA型の燃料集合体と同等の異物の捕捉性能を有するデブリフィルタを設けた場合でも、従来と同程度の燃料集合体の圧力損失を維持でき、且つ許容される炉心安定性を維持できる燃料集合体を提供することである。」 したがって、上記記載事項1ないし4及び図面に基づけば、引用刊行物1には、 「9行9列の正方格子状配列の燃料棒、及び該配列の中央部の複数の燃料棒を一本の角型ウォータチャンネルに置換え、角型ウォータチャンネルの面積を3行3列の正方格子配列の桝目を占める面積の85%以上の面積とした角型ウォータチャンネルを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体において、8行8列の型の燃料集合体から9行9列の燃料集合体にした場合の冷却材流れに対する圧損の増加という問題を解決するため、前記燃料棒の一部を該燃料棒に対して短尺化した4本の短尺燃料棒に置換え、短尺燃料棒の長さは全長燃料棒の有効長の約2/3とした沸騰水型原子炉用燃料集合体。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを比較する。 ア 引用発明の「9行9列の正方格子状配列の燃料棒」は、本願補正発明の「9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒」に相当する。 イ 引用発明の「該配列の中央部」は、本願補正発明の「前記正方格子中央」に相当し、以下同様に「3行3列の正方格子配列の桝目を占める面積の85%以上の面積」は「3行3列の領域」に、「一本の角型ウォータチャンネル」は「1本の四角筒状の水ロッド」に相当する。 したがって、引用発明の「該配列の中央部の複数の燃料棒を一本の角型ウォータチャンネルに置換え、角型ウォータチャンネルの面積を3行3列の正方格子配列の桝目を占める面積の85%以上の面積とした角型ウォータチャンネル」は、本願補正発明の「前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッド」に相当する。 ウ 引用発明の「圧損」は本願補正発明の「圧力損失」に相当し、以下同様に、「前記燃料棒の一部を該燃料棒に対して短尺化した4本の短尺燃料棒に置換え」は「前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とし」に、「全長燃料棒」は「燃料棒」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「圧損の増加という問題を解決するため」と本願補正発明の9行9列の燃料集合体の「圧力損失とインベントリ」が8行8列の燃料集合体の「圧力損失とインベントリと同程度になる」とは、圧力損失が同程度になる点で一致する。 したがって、引用発明の「8行8列の型の燃料集合体から9行9列の燃料集合体にした場合の冷却材流れに対する圧損の増加という問題を解決するため、前記燃料棒の一部を該燃料棒に対して短尺化した4本の短尺燃料棒に置換え、短尺燃料棒の長さは全長燃料棒の有効長の約2/3とした」と、本願補正発明の「前記燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け、前記デブリフィルター付燃料集合体の圧力損失とインベントリを、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失とインベントリと同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とし」とは、本願補正発明は「前記燃料集合体」の基本構成として、9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒を有するので、9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒を有する燃料集合体の圧力損失を、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失と同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒とした点で一致する。 エ 引用発明の対象である「沸騰水型原子炉用燃料集合体」は、本願補正発明の対象である「燃料集合体」に相当する。 したがって、両者は、 「9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒を有する燃料集合体の圧力損失を、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体の圧力損失と同程度になるように、前記燃料棒の内4本を短尺燃料棒としたことを特徴とする燃料集合体。」の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 沸騰水型原子炉用燃料集合体の比較対象である8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒を有する燃料集合体(以下「8行8列の燃料集合体」という。)、及び9行9列の複数の燃料棒を有する燃料集合体(以下「9行9列の燃料集合体」という。)について、 本願補正発明は、9行9列の燃料集合体において、燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け、また、8行8列の燃料集合体において、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えるのに対して、 引用発明は、9行9列の燃料集合体において、デブリフィルターを設ける点について限定されておらず、また、8行8列の燃料集合体において、水ロッドに関して限定されていない点。 [相違点2] 8行8列の燃料集合体の有する物理量と同程度とする9行9列の燃料集合体における物理量が、本願補正発明は、圧力損失とインベントリであるのに対して、引用発明は、圧力損失の他にインベントリも含む点が明らかではない点。 [相違点3] 本願補正発明は、燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したのに対して、引用発明は、そのような限定がされていない点。 (4)当審の判断 ア 相違点1について 燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設けた、9行9列の燃料集合体は、引用刊行物2に記載されている(記載事項6ないし8)。 同じく引用刊行物2には、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた8行8列の燃料集合体が、記載されている(記載事項5及び図13)。 そして、引用発明も引用刊行物2に記載された発明も、8行8列の燃料集合体から9行9列の燃料集合体にかえた場合でも、燃料集合体におけるウラン装荷量、すなわちウランインベントリ、及び圧力損失を変えないという課題を共通にしている。 したがって、9行9列の燃料集合体の引用発明が比較対象とする8行8列の燃料集合体として、引用刊行物2に記載された上記8行8列の燃料集合体を採用し、また、引用発明の9行9列の燃料集合体に、同じく引用刊行物2に記載されたデブリフィルターを適用することに困難性はない。 してみると、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。 イ 相違点2について 引用刊行物1には、 「【0026】本発明の基準となる燃料集合体は、前述の図10に示す72本の全長燃料棒を有する集合体であり燃料棒直径約11mmとした。尚図中、45はチャンネルボックスである。図1又は図2の燃料集合体は、短尺燃料棒40を8本又は4本用いるが、その短尺燃料棒40の長さは全長燃料棒42の有効長の約2/3とした。 短尺燃料棒40の採用により集合体当たりの燃料物質の装荷量が低下することを補償するため、燃料棒の直径は、全長燃料棒42および短尺燃料棒40ともに基準の約11mmに対し、8本の短尺燃料棒40を用いる場合、約2%、4本の短尺燃料棒40を用いる場合、約1%、それぞれ大きい直径とした。」(記載事項4)。 つまり、引用刊行物1には、9行9列の燃料集合体において、全長燃料棒42の一部を短尺燃料棒40の採用した場合に起こる集合体当たりの燃料物質の装荷量、すなわち、インベントリが低下することを補償することが記載されている。また、引用刊行物1の上記記載から、燃料集合体の燃料物質の装荷量は、燃料集合体内の燃料棒の配列形態及び本数、換言すれば、9行9列、8行8列に拘わらず、所定の値であることが望ましいことは明らかである。 そして、「相違点1」で検討したように、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項、すなわち、8行8列の燃料集合体及び9行9列の燃料集合体を本願補正発明のように構成することが容易である以上、上記9行9列の燃料集合体のインベントリを、上記8行8列の燃料集合体のインベントリと同程度とすべきであることは、引用刊行物1及び引用刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用刊行物1の記載及び引用刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。 ウ 相違点3について (ア)ウランインベントリX(cm3)を、X≧18500cm3とした点について検討する。 本願明細書には、ウランインベントリXの下限値である「18500cm3」が如何なる燃料集合体のウランインベントリXであるか説明されていない。 しかしながら、本願補正発明の目的、課題からみて、18500cm3は、9行9列の燃料集合体の比較される燃料集合体、すなわち、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体のウランインベントリXであると推察される。 そして、「相違点2について」で検討したように、引用発明である9行9列の燃料集合体において、そのウランインベントリが、従来の8行8列の燃料集合体のウランインベントリと同程度とすべきであることは自明である。 してみると、引用発明において、比較対象とする8行8列の燃料集合体のウランインベントリに応じて、ウランインベントリX(cm3)をX≧18500cm3とすることは、設計事項である。 (イ)燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)との間に、 D≦-0.0014L+11.84の関係が成立するように構成した点について検討する。 引用刊行物1には、8行8列の燃料集合体から、9行9列の燃料集合体に変えた場合、燃料棒表面積の増加による摩擦圧損の増加する旨が記載されている(記載事項2)。 すなわち、燃料棒及び短尺燃料棒を有する燃料集合体における圧力損失の問題を検討するに当たって、少なくとも、燃料集合体を構成する燃料棒及び短尺燃料棒の表面積の値に留意する必要があることが分かる。 そして、燃料棒の表面積は、その外径と長さで決まり、燃料集合体において、(全長)燃料棒の長さは、8行8列の燃料集合体も9行9列の燃料集合体でも通常は同じである。 以上のことを踏まえてみれば、引用発明のように、8行8列の燃料集合体から、4本の短尺燃料棒を有する9行9列の燃料集合体に変えた場合、圧力損失を同程度とするためには両燃料集合体の燃料棒(短尺燃料棒も含む)の表面積の合計に留意しつつ、(全長)燃料棒及び短尺燃料棒の外径D及び短尺燃料棒の長さLを決めればよいことは明らかである。 一方、本願補正発明において、D≦-0.0014L+11.84 なる、関係式があるが、この式は、本願明細書の記載からみて、 「8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体」の圧力損失に対して、「9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け」たデブリフィルター付燃料集合体の圧力損失の差が2%のときを「同程度」とし、その際の燃料棒及び短尺燃料棒の外径D及び短尺燃料棒の長さLに基づいて、短尺燃料棒の長さ「L」の係数及び定数項が算出されている。 そして、上記「同程度」の値が2%と異なった場合には、本願明細書の記載からみて、上記式の係数及び定数項の値も変化すると推察できる。 以上のことからみて、本願補正発明において、上記8行8列の燃料集合体の圧力損失と同程度とすべく、上記9行9列の燃料集合体の燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と短尺燃料棒の長さL(cm)について、 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成することは、設計事項である。 そして、「相違点1」で検討したように、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項、すなわち、8行8列の燃料集合体及び9行9列の燃料集合体を本願補正発明のように構成することが容易である以上、上記9行9列の燃料集合体の圧力損失を、上記8行8列の燃料集合体の圧力損失と同程度とするために、9行9列の燃料集合体の燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と短尺燃料棒の長さL(cm)について、D≦-0.0014L+11.84の関係が成立するように構成することは、引用刊行物1の記載及び引用刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。 したがって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用刊行物1の記載及び引用刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願補正発明の効果は、引用刊行物1の記載及び引用刊行物2の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物1記載された発明及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3 本願発明について 平成17年12月5日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年6月21日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のものと認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 9行9列の正方格子状に配列された4本の短尺燃料棒と複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドとを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したことを特徴とする燃料集合体。」 4 引用刊行物に記載された発明 引用刊行物1に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載されたとおりである。 5 対比 本願発明と引用発明とを比較すると、 「9行9列の正方格子状に配列された4本の短尺燃料棒と複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドとを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体。」の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)とウランインベントリX(cm3)との間に、 X≧18500cm3 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成したのに対して、引用発明は、そのような限定がされていない点。 6 判断 (ア)ウランインベントリX(cm3)を、X≧18500cm3とした点について検討する。 本願明細書には、ウランインベントリXの下限値である「18500cm3」が如何なる場合のウランインベントリXであるか説明されていない。 しかしながら、本願発明の目的、課題からみて、18500cm3は、9行9列の燃料集合体の比較される燃料集合体、すなわち、8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体のウランインベントリXであると推察される。 一方、引用刊行物1には、 「【0026】本発明の基準となる燃料集合体は、前述の図10に示す72本の全長燃料棒を有する集合体であり燃料棒直径約11mmとした。尚図中、45はチャンネルボックスである。図1又は図2の燃料集合体は、短尺燃料棒40を8本又は4本用いるが、その短尺燃料棒40の長さは全長燃料棒42の有効長の約2/3とした。 短尺燃料棒40の採用により集合体当たりの燃料物質の装荷量が低下することを補償するため、燃料棒の直径は、全長燃料棒42および短尺燃料棒40ともに基準の約11mmに対し、8本の短尺燃料棒40を用いる場合、約2%、4本の短尺燃料棒40を用いる場合、約1%、それぞれ大きい直径とした。」(記載事項4)。 つまり、引用刊行物1には、9行9列の燃料集合体において、全長燃料棒42の一部を短尺燃料棒40の採用した場合に起こる集合体当たりの燃料物質の装荷量、すなわち、インベントリが低下することを補償することが記載されている。 してみると、引用発明である9行9列の燃料集合体において、そのインベントリが、従来の8行8列の燃料集合体のインベントリと同程度とすべきであることは、記載事項4から自明である。 したがって、引用発明において、比較対象とする8行8列の燃料集合体のウランインベントリに応じて、ウランインベントリX(cm3)をX≧18500cm3とすることは、設計事項である。 (イ)燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と前記短尺燃料棒の長さL(cm)との間に、 D≦-0.0014L+11.84の関係が成立するように構成した点について検討する。 引用刊行物1には、8行8列の燃料集合体から、9行9列の燃料集合体に変えた場合、燃料棒表面積の増加による摩擦圧損の増加する旨が記載されている(記載事項2)。 すなわち、燃料棒及び短尺燃料棒を有する燃料集合体における圧力損失の問題を検討するに当たって、少なくとも、燃料集合体を構成する燃料棒及び短尺燃料棒の表面積の値に留意する必要があることが分かる。 そして、燃料棒の表面積は、その外径と長さで決まり、燃料集合体において、(全長)燃料棒の長さは、8行8列の燃料集合体も9行9列の燃料集合体でも通常は同じである。 以上のことを踏まえてみれば、引用発明のように、8行8列の燃料集合体から、4本の短尺燃料棒を有する9行9列の燃料集合体に変えた場合、圧力損失を同程度とするためには両燃料集合体の燃料棒(短尺燃料棒も含む)の表面積の合計に留意しつつ、(全長)燃料棒及び短尺燃料棒の外径D及び短尺燃料棒の長さLを決めればよいことは明らかである。 一方、本願発明において、D≦-0.0014L+11.84 なる、関係式があるが、この式は、本願明細書の記載からみて、 「8行8列の正方格子状に配列された複数の燃料棒および前記正方格子中央の2行2列の領域に配置された1本の円筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用燃料集合体」の圧力損失に対して、「9行9列の正方格子状に配列された複数の燃料棒、及び前記正方格子中央の3行3列の領域に配置された1本の四角筒状の水ロッドを備えた沸騰水型原子炉用の燃料集合体において、前記燃料集合体の下部タイプレートにデブリフィルターを設け」たデブリフィルター付燃料集合体の圧力損失の差が2%のときを「同程度」とし、その際の燃料棒及び短尺燃料棒の外径D及び短尺燃料棒の長さLに基づいて、短尺燃料棒の長さ「L」の係数及び定数項が算出されている。 そして、上記「同程度」の値が2%と異なった場合には、本願明細書の記載からみて、上記式の係数及び定数項の値も変化すると推察できる。 以上のことからみて、本願発明において、上記8行8列の燃料集合体の圧力損失と同程度とすべく、上記9行9列の燃料集合体の燃料棒及び短尺燃料棒の外径D(mm)と短尺燃料棒の長さL(cm)について、 D≦-0.0014L+11.84 の関係が成立するように構成することは、設計事項である。 したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用刊行物1の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願発明の効果は、引用刊行物1の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用刊行物1記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-02 |
結審通知日 | 2007-07-03 |
審決日 | 2007-07-18 |
出願番号 | 特願2001-377331(P2001-377331) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G21C)
P 1 8・ 121- Z (G21C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今浦 陽恵、青木 洋平 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
辻 徹二 森内 正明 |
発明の名称 | 燃料集合体 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |