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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1163542
審判番号 不服2005-4869  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2007-08-15 
事件の表示 平成 7年特許願第519419号「創傷ドレッシング」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月27日国際公開、WO95/19795、平成 9年 9月30日国内公表、特表平 9-509590〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成7年1月20日(パリ条約による優先権主張 1994年1月20日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成16年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年4月20日及び平成17年4月21日に手続補正がなされたものである。

2 平成17年4月21日にした手続補正(以下、「本件第2手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件第2手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件第2手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 5-50重量%のゲル形成繊維と50-95重量%の織物繊維の混合物からなる織成、編成又は不織シートの形の創傷に直接接触させて用いるための非付着性創傷ドレッシング。」と補正された。
上記補正は、平成16年10月27日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「シート」を「織成、編成又は不織シート」と限定し、「含む」を「からなる」と限定し、「創傷ドレッシング」について「創傷に直接接触させて用いるための」との限定事項を付加するものであり、これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書に記載されている。しかも、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件第2手続補正後の上記請求項1に記載された事項により構成される発明(以下、「本願第2補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平2-26559号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a「(1)アルギン酸短繊維の不織布からなる創傷包帯であって、……十分に前記繊維が絡み合つていることを特徴とする、前記創傷包帯。」(特許請求の範囲第1項)
b「(6)さらに、布が強化用繊維を含むことを特徴とする、請求項(1)の創傷包帯。」(特許請求の範囲第6項)
c「本発明はアルギン酸繊維(alginate fiber)の創傷包帯に関するもので、創傷床の湿りを維持するため及び深い創傷を填塞するための両方に使用される包帯に関する。」(2頁右上欄1ないし4行)
d「本発明は血液またはその他の塩分流体…で飽和された場合でさえ、単一片として創傷から取り外すのに十分な一体性を有しているアルギン酸繊維製創傷包帯を提供するものである。これは驚異的に低い基本重量…でも達成できる。改善された一体性故に、本発明のアルギン酸繊維製創傷包帯は様々な基本重量で製造できるので、所望の吸収性の包帯を選択することを可能にし、従って、創傷をかさかさに乾燥させる危険性を最小にする。また、この新規な低い基本重量のアルギン酸繊維製創傷包帯が具体的な創傷に適する場合には、包帯はアルギン酸繊維の現時点での高コストにもかかわらずコスト的に効率のよいものにできる。」(4頁右上欄16行ないし左下欄8行)
e「基本重量が低い場合には、この新規なアルギン酸繊維製創傷包帯は、塩水で飽和されている間にも容易に取り扱われることを許すようにレーヨンのような強化用繊維…を小さな割合で含有することが好ましい。」(5頁左上欄17ないし右上欄1行)
f「実質的に150g/より上の基本重量では、新規包帯も、アルギン酸繊維の現時点でのコストからすると過度に高価なものになるであろう。……20g/m2よりはるかに低い基本重量では、新規アルギン酸繊維製創傷包帯は強化用繊維を含有しないと工業上実用的な製造速度で製造されるには弱過ぎ」(5頁12ないし15行)
g「本発明の絡み合わされたアルギンサン繊維製創傷包帯の一体性の更なる改善はキトー酸短繊維のように湿潤時にアルギン酸繊維と相互作用するレーヨン短繊維のような、より強い強度の繊維を組み入れることによつて達成できる。この組み入れはウエブ形成中に繊維をブレンドすることによつて又はハイドロエンタングルに先だってアルギン酸繊維不織ウエブに強化用繊維の不織ウエブを重ねることによつて遂行できる。」(5頁左下欄14行ないし右下欄2行)
h「本発明のアルギン酸繊維製創傷包帯は深い創傷を填塞するために又は浅い創傷の上の吸収性接触 として使用される。」(5頁8ないし10行)
以上の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「アルギン酸短繊維の不織布からなり、レーヨンのような強化用繊維を小さな割合で含む、創傷に直接接触させて使用される創傷包帯。」

(3)対比
本願第2補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「創傷包帯」は本願第2補正発明の「創傷ドレッシング」に相当する。
そして、本願明細書中(2頁28行)に「ゲル形成繊維」としてアルギネート繊維が例示されているから、引用例記載の発明の「アルギン酸短繊維」は本願第2補正発明の「ゲル形成繊維」に相当する。
また、本願明細書中(2頁14行)に「織物繊維」としてビスコースレーヨンが例示されているから、引用例記載の発明の「レーヨンのような強化用繊維」は本願第2補正発明の「織物繊維」に相当する。
さらに、本願第2補正発明の「非付着性」について、本願明細書には、「本発明による創傷ドレッシングは、吸収性でありながら創傷の組織に付着せず」(2頁3行)、「本発明で使用されるゲル形成繊維は、吸湿性の繊維であり、創傷の滲出液を取り込むと、湿っぽくしかも滑りやすく又はゼラチン状になり、従って周りの繊維が創傷に付着する傾向を減少させるようになる。」(2頁20ないし22行)、「創傷ドレッシングは、創傷と接触するとき、滲出液を吸収して、ゲル形成繊維を膨張させそしてゲル形成するだろう。ゲルは、創傷ドレッシングを十分に滑りやすくさせて、新しく形成する組織へのドレッシングの付着を防止するだろう」(5頁2ないし4行)との記載がある。これらの記載を参酌すると、本願第2補正発明の「非付着性」は、創傷ドレッシングが創傷と接触したとき、ゲル形成繊維が滲出液を吸収して、湿っぽくしかも滑りやすく又はゼラチン状になって、新しく形成する組織へ創傷ドレッシングが付着しないことを意味していると解されるので、引用例記載の発明の創傷包帯も、ゲル形成繊維であるアルギン酸短繊維の不織布からなるものであり、非付着性であるといえる。
そうすると、両者は、
「ゲル形成繊維と織物繊維の混合物からなる不織シートの形の創傷に直接接触させて用いるための非付着性創傷ドレッシング」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願第2補正発明は、5-50重量%のゲル形成繊維と50-95重量%の織物繊維の混合物であるのに対して、引用例記載の発明は、織物繊維の割合が小さい混合物である点。

(4)相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
本願明細書中の「水と接触してゲルを形成できる吸収性の繊維を製造することは、当業者に周知である。これらの繊維は、高価になりがちであり、これらのゲル形成繊維からのみ製造されたガーゼ又は包帯のコストは、創傷の或るものへの介護の適用が禁止されるようなものである。
発明の開示
上記の不利益を軽減する織物繊維(…)及びゲル形成繊維の混合物品を含む創傷ドレッシングを作ることができることが分かった。従って、本発明は、織物繊維及びゲル形成繊維の混合物をシートの形で含む創傷ドレッシングを提供する。本発明による創傷ドレッシングは、吸収性でありながら創傷の組織に付着せず、そして比較的安価であるという利点を有し、さらに従来の木綿のガーゼより長い期間創傷上に保持できるという利点もさらに有する」(1頁16行ないし2頁5行)との記載によると、本願第2補正発明において、ゲル形成繊維に織物繊維を混合したのは、高価なゲル形成繊維のみで製造した包帯に比べて安価な包帯を得るためであると認められる。
引用例(記載dないしf)には、アルギン酸繊維のみからなる包帯は、アルギン酸繊維の現時点でのコストからすると高価になり、アルギン酸繊維の基本重量を低く、すなわち使用量を少なくし、レーヨンのような強化用繊維を混合すると、包帯はコスト的に効率のよいものにできることが記載されている。
そして、引用例記載の発明では、織物繊維であるレーヨンのような強化用繊維の混合割合は小さいが、ゲル形成繊維であるアルギン酸繊維の混合割合と同等あるいはそれより大きくすることを妨げる技術的理由も見受けられない。
そうすると、引用例記載の発明において、ゲル形成繊維と織物繊維との混合割合を本願第2補正発明のような割合にすることは、創傷ドレッシング(包帯)の吸収性とコストとを勘案して、当業者が容易になし得たことといえる。
しかも、本願第2補正発明が奏する効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できた範囲のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願第2補正発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件第2手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

3 平成17年4月20日にした手続補正(以下、「本件第1手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件第1手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件第1手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 5-50重量%のゲル形成繊維と50-95重量%の布帛用繊維の混合物からなる織成、編成又は不織シートの形の非付着性創傷ドレッシング。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「シート」を「織成、編成又は不織シート」と限定し、「含む」を「からなる」と限定するものであり、これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書に記載されている。しかも、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件第1手続補正後の上記請求項1に記載された事項により構成される発明(以下、「本願第1補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例及びその記載事項
引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりであり、引用例には、上記2(2)に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

(3)対比、判断
本願第1補正発明は、上記2(1)で検討した本願第2補正発明から「創傷に直接接触させて用いるための」との事項を省き、「織物繊維」を「布帛用繊維」に変更したものに相当し、本願第1補正発明において、「布帛用繊維」なる用語は、「織物繊維」の同義語として用いられているものと認められる。
そうすると、本願第1補正発明の構成に欠くことができない事項を全て含み、さらに他の構成に欠くことができない事項を付加したものに相当する本願第2補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願第1補正発明も、同様の理由により、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願第2補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本件第1手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

4 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件第1及び第2手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成16年10月27日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。
「【請求項1】 5-50重量%のゲル形成繊維と50-95重量%の織物繊維を含むシートの形の非付着性創傷ドレッシング。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び記載事項は、上記2(2)に記載したとおりであり、引用例には、上記2(2)に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

(3)対比、判断
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願第2補正発明から、「シート」についての「織成、編成又は不織シート」との限定事項、及び「創傷ドレッシング」についての「創傷に直接接触させて用いるための」との限定事項を省き、「からなる」を上位概念の「含む」としたものである。
そうすると、本願発明1の構成に欠くことができない事項を全て含み、さらに他の構成に欠くことができない事項を付加したものに相当する本願第2補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-15 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-03 
出願番号 特願平7-519419
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 575- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
石田 宏之
発明の名称 創傷ドレッシング  
代理人 斉藤 武彦  

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