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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1163560
審判番号 不服2004-7553  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-15 
確定日 2007-08-29 
事件の表示 平成 9年特許願第330725号「情報処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 8日出願公開、特開平10-326178〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成9年12月2日(優先権主張 平成9年3月21日)の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1、2に係る各発明は、平成16年2月16日付け、平成16年5月17日付け、平成19年4月13日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、上記各請求項にそれぞれ記載されるとおりのものと認められるところ、これら発明のうち、請求項1に係る発明(以下これを「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「ネットワークを介して送信されてくる規定のフォーマット形式の掲示情報を受信する情報処理装置において、
前記受信した掲示情報に含まれるリンク情報の持つリンク項目を抽出し、この抽出にあたって、リンク項目がファイル名である場合にあって、そのファイルに文字列が割り付けられていない場合には、そのファイル名をリンク項目として抽出し、一方、文字列が割り付けられている場合には、ファイル名に代えて、その文字列をリンク項目として抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出した各リンク項目に対して、リンク項目の識別に用いるリスト番号を付与して、リンク項目と該リンク項目に付与したリスト番号と該リンク項目のリンク先の情報とを関連付けてリストとしてメモリ域に記録する記録手段と、
前記メモリ域に記録されたリスト情報を出力対象として、前記リスト番号と前記リンク項目との組み合わせを順番に音声出力する音声出力手段と、
前記リスト番号が入力される場合に、その入力されたリスト番号に関連付けられるリンク先情報の指定する掲示情報の取得要求を発行する発行手段とを備える
ことを特徴とする情報処理装置。」

2.引用例
これに対して、当審における拒絶の理由で引用した、吉田琢也著,テクノロジの宝庫、日経コンピュータ,日本,日経BP社,1996年11月11日,第404号,p.128-129(以下「引用例」という。)には、次のことが記載されている。
(a)A:(東京大学の概要を知りたいな)「“東大について”を見せてください」。
B:「ハイ、オマチクダサイ」。
A:(キャンパスはどんな感じかな)「“本郷”が見たい」。
B:「ハイ」-。
WWWブラウザで東大のホームページを見ているAさんが、ワークステーションの画面の中でほほ笑むBさんとこんな会話を交わしている。
Bさんの正体は、音声による指示を認識してWWWサーバーから目的のホームページを探し出してくるビジュアル・ソフトウエア・エージェント(VSA)。東京大学工学部電子情報工学科の石塚満教授と土肥浩助手が生みの親だ。Aさんがマイクで話しかけると、VSAが指示にマッチしたホームページを探し出し、Netscape Navigatorに次々と表示していく。
石塚研究室は、ユーザーと音声で会話するだけでなく表情の変化も見せて人間らしい対話を実現するVSAを開発。この延長線上で「膨大な知識データベースと言えるWWWから、データを自動抽出するインタラクティブなエージェント」(土肥助手)としてVSAを利用できないかと考えた。その成果が今回完成した「VSA-Netscapeインタフェース」だ(第128頁左欄1行ないし右欄10行)。
(b)VSA-Netscapeインタフェースは大きく分けて3つのモジュールからできている。1つは利用者の音声入力を認識し、要求されたホームページのURLアドレスをWWWブラウザに伝える「インタフェース・マネジャ」。2つめの「ハイパーテキスト・ビューワ」は、ホームページのHTML(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲッジ)データから、ほかのホームページにリンクされている「アンカー」の情報を抽出する。3つめが、音声を合成したり、表情を作り出す「VSAサーバー」だ(第128頁右欄下から2行ないし第129頁左欄7行)。
(c)インタフェース・マネジャは、新しいホームページがダウンロードされるたびにハイパーテキスト・ビューワからアンカーの情報を受け取り、アンカーの名前とそれに対応したURLアドレスを管理する(写真2)。アンカーの名前を音声で指示すると、URLアドレスがインタフェース・マネジャからWWWブラウザに渡され、該当するホームページがダウンロードされる仕組みだ。
ホームページには写真データのように、名前がないアンカーもある。写真2のリストの「0:[画像](NO NAME)〈ichou.html〉」の部分がそうだ。この場合、ユーザはファイル名(ichou.html)などから目的のアンカーを特定し、「0番をお願いします」というようにアンカーの番号を読み上げればよい(第129頁左欄8行ないし右欄1行)。
(d)写真2について、ホームページをダウンロードするたびにリンク先を示す“アンカー”の一覧を表示する。「6:“本郷”」は通常のホームページ、「0:[画像]」は写真などの画像データを示すとの説明が記載されている(第129頁の写真2及びその説明)。

3.対比
本願発明と上記引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、次のことが認められる。
(イ)両者はいずれも「情報処理装置」に係るものであって、引用発明の情報処理装置(VSA-Netscapeインタフェース)も、本願発明と同じく、ネットワークを介して送信されてくる規定のフォーマット形式の掲示情報(引用発明でいうホームページ)を受信するものといえることは、引用例の前掲記載(a)ないし(d)から明らかである。
(ロ)引用例の前掲記載(b)ないし(d)によれば、引用発明のインタフェース・マネジャは、新しいホームページがダウンロードされるたびにハイパーテキスト・ビューワからアンカーの情報(本願発明でいうリンク情報)を受け取り、アンカーの名前(本願発明でいうリンク項目)とそれに対応したURLアドレス(本願発明でいうリンク項目のリンク先の情報)を管理し、また、これらのアンカーの名前それぞれに対してリスト番号を付与して一覧表示するのであるから、引用発明は、本願発明と同様に、受信した掲示情報に含まれるリンク情報の持つリンク項目を抽出する抽出手段と、前記抽出手段にて抽出した各リンク項目に対して、リンク項目の識別に用いるリスト番号を付与して、リンク項目と該リンク項目に付与したリスト番号と該リンク項目のリンク先の情報とを関連付けてリストとしてメモリ域に記録する記録手段と、前記メモリ域に記録されたリスト情報を出力対象として、前記リスト番号と前記リンク項目との組み合わせを出力する出力手段を備えているものといえる。
(ハ)もっとも、本願発明では、上記抽出手段が、リンク項目の抽出にあたって、リンク項目がファイル名である場合にあって、そのファイルに文字列が割り付けられていない場合には、そのファイル名をリンク項目として抽出し、一方、文字列が割り付けられている場合には、ファイル名に代えて、その文字列をリンク項目として抽出しているのに対し、引用発明ではそのような点についての開示はない。
(ニ)また、本願発明では、上記出力手段が、リスト番号とリンク項目との組み合わせを順番に音声出力するのに対し、引用発明では、リスト番号とリンク項目との組み合わせを一覧表示するために文字出力している。
(ホ)引用例の前掲記載(c)によれば、引用発明では、一覧表示されたアンカーの番号(本願発明でいうリスト番号)を読み上げれば、それに対応したURLアドレスが、インタフェース・マネジャからWWWブラウザに渡され、該当するホームページがダウンロードされるのであるから、引用発明は、本願発明と同様に、リスト番号が入力される場合に、その入力されたリスト番号に関連付けられるリンク先情報の指定する掲示情報の取得要求を発行する発行手段を備えているものといえる。

以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明とは、
「ネットワークを介して送信されてくる規定のフォーマット形式の掲示情報を受信する情報処理装置において、
前記受信した掲示情報に含まれるリンク情報の持つリンク項目を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出した各リンク項目に対して、リンク項目の識別に用いるリスト番号を付与して、リンク項目と該リンク項目に付与したリスト番号と該リンク項目のリンク先の情報とを関連付けてリストとしてメモリ域に記録する記録手段と、
前記メモリ域に記録されたリスト情報を出力対象として、前記リスト番号と前記リンク項目との組み合わせを出力する出力手段と、
前記リスト番号が入力される場合に、その入力されたリスト番号に関連付けられるリンク先情報の指定する掲示情報の取得要求を発行する発行手段とを備える
ことを特徴とする情報処理装置。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。

相違点(1)
上記抽出手段が、本願発明では、リンク項目の抽出にあたって、リンク項目がファイル名である場合にあって、そのファイルに文字列が割り付けられていない場合には、そのファイル名をリンク項目として抽出し、一方、文字列が割り付けられている場合には、ファイル名に代えて、その文字列をリンク項目として抽出しているのに対し、引用発明ではそのようなことについての開示はない点。
相違点(2)
上記出力手段が、本願発明では、リスト番号とリンク項目との組み合わせを順番に音声出力するのに対し、引用発明では、リスト番号とリンク項目との組み合わせを文字で出力し、一覧表示している点。

4.判断
そこで以下、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
引用発明は、上記のとおり、新しいホームページがダウンロードされるたびにアンカーの情報を受け取り、アンカーの名前とそれに対応したURLアドレスに番号を付して一覧表示するものであり、前記アンカーが画像データや写真データのように名前がないアンカーの場合は、ファイル名に番号を付して表示し、ユーザは当該ファイル名などから目的のアンカーを特定して画像データ等をダウンロードするようにしたものであるところ(引用例の前掲記載(c)、(d)を参照)、本願発明や引用発明の情報処理装置が処理の対象とするHTML文書(本願発明でいう規定のフォーマット形式の掲示情報)において、画像データのファイルにALT(本願の明細書中でいうalt)と呼ばれる画像データの内容を説明した文字列を割り付けておいて、必要に応じて当該文字列を表示することにより、画像の内容を知ることができるようにすることは、例えば、「望月安吾著、“HTMLで親ばかホームページ作成 第2回 イメージデータを作成しよう”、ASCII、株式会社アスキー、1996年8月1日、第20巻第8号、p.439-442」(特に第441頁中欄、右欄、第442頁のリスト1、中欄参照)、「川崎優著、“BMネットワークTODAY”,マイコン BASIC Magazine、電波新聞社、1996年6月1日、第15巻第6号、p.34-39」(特に第36頁左欄、中欄、リスト4、写真10参照)、「松浦武範著、“インターネット本格活用ガイド”、The Windows、ソフトバンク株式会社、1996年7月1日、第6巻第7号、p.114-121」(特に第120頁左欄参照)等で開示されるように周知の事項であることからすると、引用発明においてアンカーの情報を一覧表示するに当たって、アンカーが画像データや写真データであって、当該画像データ等のファイルにALTと呼ばれる画像データの内容を説明した文字列が割り付けされている場合には、当該画像データの内容を説明した文字列を抽出して表示するようにして、ユーザが目的のアンカーを特定しやすくすることは、当業者であれば格別の困難性なくなし得たことと認められる。
したがって、引用発明において、リンク項目の抽出にあたり、リンク項目がファイル名である場合にあって、そのファイルに文字列が割り付けられていない場合には、そのファイル名をリンク項目として抽出し、一方、文字列が割り付けられている場合には、ファイル名に代えて、その文字列をリンク項目として抽出するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであると認められる。

相違点(2)について
視覚障害者等が情報処理装置を利用しやすくするために、情報処理装置において、表示する情報を順番に音声出力することは、例えば、当審における拒絶の理由で引用した特開平8-263260号公報等で開示されるように周知の事項であることからすると、引用発明において、リスト番号とリンク項目との組み合わせを文字出力して一覧表示することに加えて、当該一覧表示するリスト番号とリンク項目との組み合わせを順番に音声出力するようにして、視覚障害者等が情報処理装置を利用しやすくすることは、当業者が容易に想到し得たことであると認められる。

以上のとおり、本願発明における前記相違点(1)、(2)に係る構成は、当業者が容易に想到し得たといえるものであり、また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-19 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-09 
出願番号 特願平9-330725
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎奥村 元宏井出 和水  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 小林 正明
和田 志郎
発明の名称 情報処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 森田 寛  
代理人 岡田 光由  

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