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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1163570
審判番号 不服2005-1905  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-03 
確定日 2007-08-29 
事件の表示 平成 7年特許願第339107号「静電荷潜像現像用トナー、トナーの製造方法とそれを用いた現像剤及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-179349〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成7年12月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年5月15日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】感光体上に形成された静電荷潜像を顕像化しトナー像とする画像形成方法に於いて、前記トナーがスチレン系重合体及びトルエンに対する溶解度が0.01重量%以上で水に対する溶解度が0.1重量%以下である油溶性染料を含有し、BET値比表面積が5m2/g以上であり、定着ローラの表面温度が110?220℃でニップ幅1.5?7mm且つ定着線速度が40?400mm/secで定着することを特徴とする画像形成方法。」

2.刊行物に記載された事項
2-1.これに対して、当審において通知した拒絶理由に引用した本願出願前国内において頒布された刊行物である特開平6-329947号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「複数個の重合体微粒子が会合してなる非球状粒子であって、該粒子が重合体微粒子分散液の臨界凝集濃度以上の凝集剤及び水に対して無限溶解する有機溶媒で処理されたことを特徴とする非球状粒子。」(特許請求の範囲 請求項1)
(1b)「形状を表す指標としては幾つかの係数が提案されている。例えば、非球形化度として下記に示される値がある。
非球形化度=(非球状粒子のBET比表面積)/(非球状粒子の平均粒径から真球とし計算した時の表面積)
本発明の非球状粒子は、上記非球形化度が1.1以上である。特に、電子写真用トナーとして用いる場合は、非球形化度が約1.1?5.0、好ましくは1.2?3.5である。」(【0044】)
(1c)「〔電子写真用トナー〕本発明の非球状粒子は、電子写真用トナーとして用いることが出来る。電子写真用トナーとして用いる場合、その平均粒径は約3?25μmが好ましい。特に、本発明の非球形粒子は、小粒径になっても粒度分布に変化が無く、小さいままであり、分級操作等の後処理がなくとも収率高く得ることができる為、小粒径トナーとして用いるのに好ましい。特に、平均粒径約5μm程度が好ましく用いられる。本発明の非球形粒子は着色剤である顔料及び/又は染料を含有している。・・・。これら非球形粒子は単独でもトナーとして用いられるが、流動化剤としてシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム及びこれらの疏水化処理物等を併用できる。流動化剤はトナー100重量部に対し0.01?20重量部添加されることが好ましく、0.1?10重量部添加されることが更に好ましい。」(【0045】【0046】)
(1d)「〔着色剤複合重合体微粒子の合成〕イオン交換水50mlにドデシル硫酸ナトリウム0.346gを溶解した水溶液に、カーボンブラック(リーガル330、キャボット社製)1.62gを加え、分散を行った。分散液中のカーボンブラックの平均粒径は0.08μmであった。
この分散液を500mlの冷却管、温度形、攪拌装置、窒素導入管を付けた四頭フラスコに入れ、脱気済みイオン交換水150mlを加え、窒素気流下で攪拌速度500rpmで攪拌を行いつつ、内温を70℃に昇温した。70℃において脱気済みイオン交換水50mlに過硫酸カリウム1.125gを溶解した重合開始剤水溶液を添加し、7時間重合を行った後内温を室温まで下げ、No.3ガラスフィルターで濾過を行った。
上記反応において、モノマー、顔料等をかえて同様に重合を行った。結果は前記重合体の合成と併せて下記の表-1に示す。
表-1
モノマー組成 顔料(wt%) 平均粒径 Mw Mw/Mn
P-3 St/BA/MAA=80/15/5 CB(8wt%) 0.16μm 6.9×104 2.98
P-4 St/BA/MAA=80/15/5 PB-15:3(8wt%) 0.21μm 7.2×104 3.18
P-5 St/BA/MAA=80/15/5 PR-122(8wt%) 0.22μm 7.0×104 3.06
P-6 St/BA/MAA=80/15/5 PY-17(8wt%) 0.24μm 7.1×104 3.28
P-7 St/BA/DMAEA=80/15/5 CB(8wt%) 0.18μm 6.8×104 3.42
P-8 St/BA/CMSt=65/20/15 CB(8wt%) 0.17μm 7.6×104 4.02
表中St:スチレン、BA:n-ブチルアクリレート、MAA:メタクリル酸、AA:アクリル酸、DMAEA:N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、CMSt:クロルメチルスチレン(ビニルベンジルクロリド)、CB:カーボンブラック、PB-15:3:ピグメンブルー15:3、PR-122:ピグメントレッド122、PY-17:ピクメントイエロー17
〔非球状粒子の合成1〕前記着色粒子P-3を用い、これを1N-水酸化ナトリウム水溶液を用い、電導度測定装置で重合体微粒子中のMAAが一定量のナトリウム塩になるように調整した。この時の解離の程度を5,20,50,75,100%にした。この時の臨界凝集濃度を塩化カリウムを用いて測定した。更に、この状態の重合体微粒子分散液100mlを、攪拌装置、冷却管、温度計付き四頭フラスコに入れ、室温下で250rpmで攪拌しつつ、塩化カリウム2.98gを水50mlに溶解した塩水溶液を添加した後、iso-プロパノール50mlを添加し、更に水250mlを添加した。更に、内温を85℃まで昇温し、このまま6時間加熱攪拌した。」(【0052】?【0054】)
(1e)「〔非球形粒子の合成3〕 重合体微粒子分散液P-3?7を用い、これを1N-水酸化ナトリウム水溶液を用い、電導度測定装置で重合体微粒子中のMAAが一定量のナトリウム塩になるように調整した。この時の解離度を75%にした。この時の塩化カリウムによる臨界凝集濃度を測定した処、P-3は0.07mol/l、P-4?6は0.09mol/lであった。この後、攪拌装置、冷却管、温度計付き四頭フラスコに各重合体微粒子分散液100mlを入れ、室温下で250rpmの速度で攪拌しつつ塩化カリウム6.04gを水50mlに溶解した金属塩水溶液を添加し、iso-プロパノール50mlを加え、更に水250mlを添加した後、85℃で3時間及び6時間加熱し、平均粒径(d50)、粒度分布(CV)及び非球形化度を測定したので、その結果を下記の表-4に示す。
表-4
加熱時間(3時間) 加熱時間(6時間)
d50 CV 非球形化度 d50 CV 非球形化度
PR-10 5.12μm 0.43 2.35 6.24μm 0.41 1.23
PR-11 4.18μm 0.42 3.15 5.68μm 0.45 1.51
PR-12 4.89μm 0.48 3.44 5.89μm 0.51 1.42
PR-13 4.99μm 0.44 2.83 5.75μm 0.48 1.78」
(【0058】【0059】)
(1f)「〔実施例-2〕本発明の非球形粒子PR-10?13(但し、3時間及び6時間反応後を使用し、3時間反応品はPR-14?17とした。)及び比較非球形粒子-1,2を用い、これらを100重量部に対し疏水性シリカ2重量部、酸化チタン1重量部を添加混合し、この外添処理トナー5重量部とメタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MMA/St=7/3重量比)で表面被覆したフェライト粒子(キャリア、平均粒径60μm)95重量部を混合し、本発明の現像剤1?8及び比較現像剤1,2とした。・・・・・。 上記現像剤を熱ローラ定着器とクリーニングブレードを備えた電子写真複写機「U-Bix-3028」を用い、解像度、カブリ、耐オフセット性(ホットオフセット発生温度)、トナー着色度(着色度)、クリーニング性、粒度分布変化を調べたので、その結果を下記の表-6に示す。尚、評価方法は次の通りである。
(1)解像度
細線チャートのコピー画像を形成し、識別可能な細線の1mm当たりの本数で判定した。
(2)カブリ
連続して形成されたコピー画像について、「サクラデンシトメータPDA-60」(コニカ(株)製)を用いて白地部分の各色の反射濃度を測定し、この反射濃度が0.02を超えた場合をカブリ発生とし、この時点におけるコピー回数で評価した。
(3)耐オフセット性(ホットオフセット発生温度(H温度)、℃)
定着用熱ローラの設定温度を段階的に変化させてコピー画像を形成し、ホットオフセットに起因するトナー汚れが発生した時点の定着ローラの設定温度を測定し、この温度をオフセット発生温度とした。
(4)トナーの着色度(トナーの反射濃度)
白色ラベルにトナーを単層に貼り付け、このトナー層を「サクラデンシトメータPDA-60」を用い、各色の反射濃度を測定した。
(5)クリーニング性(CL性)
感光体の表面を目視で観察し、クリーニング不良が発生した時点のコピー回数で評価した。
(6)粒径分布の経時的変化(体積%)
体積平均粒径の1/3以下の粒径を有するトナー粒子の個数割合(個数%)を、初期(実写テスト開始時)及びカブリ発生時もしくは5万回コピー時(後期)においてそれぞれ測定した。」(【0061】?【0065】)として、【0066】に表-6が記載されている。

2-1.同じく当審において通知した拒絶理由に引用した本願出願前国内において頒布された刊行物である特開昭62-295069号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(2a)「(1)着色剤として有機溶剤に可溶な有機染料を用いたことを特徴とするカラートナー。
(2)前記有機溶剤がベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン又はハロゲン系溶剤である特許請求の範囲第1項記載のカラートナー。」(特許請求の範囲 第1、2項)
(2b)「(発明の目的) 本発明の目的は、オフィスコピー用として高濃度で色調鮮明なカラー画像が得られると共に、特にOHP用として色調鮮明なカラートラペンコピーが得られるカラートナーを提供することにある。」(第2頁右下欄第13?17行)
(2c) 第4頁左下欄6行?第15頁上欄には、この発明に有用な染料が例示されており、A-22としてC.I.Solvent Red 3、A-24として同17、A-26として同22、A-27として同18、A-32として同23、B-7としてC.I.Solvent Blue 4、B-48として同55が示されている。
(2d) 実施例1には、調製したカラートナーを、キャリアと90:10の割合で混合して現像剤とし(第19頁左上欄第1?20行)、画像形成装置(第17頁右下欄第15行?第18頁右下欄第19行)に適用して画像形成した(第19頁右上欄第15?20行)ことが記載され、特に、画像形成装置における定着機構に関し、「分離搬送された前記フィルムP上の多色トナー像は定着器20の熱ロール21により180℃?190℃の範囲で加熱定着されて排紙部22より排紙され赤、青、黒の3色から成るOHP用トラペンカラーコピーが得られる。」(第18頁左下欄第14?18行)との記載と、第19頁の第3表の定着の項に「熱ロール定着180℃?190℃」との記載がある。
(2e)「(実施例2)
カラートナーの製法として下記重合造粒法を用い、かつ着色剤として第7表の赤染料、青染料、赤顔料、青顔料を用いた他は実施例1と同様にしてトラベンカラーコピーを作成し、実施例1の場合と同様にして画像評価を行ない、その結果を第7表に示した。
カラートナーの製法:
スチレン 85重量部
n-ブチルアクリレート 10重量部
着色剤(モノマー中に溶解) 8重量部
サルチル酸誘導体(負荷電制御) 5重量部
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4重量部以上の材料を撹拌混合して重合組成物を作成した。
一方容量2lのセパラブルフラスコにコロイダルシリカ0.8重量部を採って蒸留水を加えたものに、前記重合組成物を加え、T.Kホモミキサーにより回転数3,000r.p.mで撹拌しながら60℃に昇温保持した。このとき平均粒径は約10μmであった。その後通常の撹拌器に代えて300r.p.mで攪拌しながら6時間重合反応を継続して完結しカラートナーを得た。
前記実施例1及び実施例2の第6表及び第7表から明らかなように本発明のカラートナーは透明性にすぐれ、かつ色調鮮明であり、OHP用としてすぐれていることがわかる。」(第21頁左上欄第2行?左下欄第4行)

3.対比、判断
刊行物1の記載事項1cには、非球形粒子を単独で、また流動化剤を外添して電子写真用トナーとして用いることが、また、記載事項1fには、この電子写真用トナーを用いて熱ローラ定着器とクリーニングブレードを備えた電子写真複写機により画像形成をしたことが記載されているから、記載事項1a?1fからみて、刊行物1には下記の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子写真複写機による画像形成方法において、複数個のスチレン系樹脂粒子が会合してなり、顔料及び/又は染料を含む、小粒径の非球状粒子単独からなるトナー、又は、該非球状粒子に流動化剤を外添したトナーを用い、熱ローラ定着により定着をする画像形成方法。」
本願発明と刊行物1発明を比較すると、後者における「スチレン系樹脂粒子」はスチレン系重合体から構成されていることは明らかであり、また、後者における「電子写真複写機による画像形成方法」は、感光体上に形成された静電荷潜像を顕像化しトナー像とする画像形成方法であることは明らかである。さらに、後者における「顔料及び/又は染料」と前者の「油溶性染料」は「着色料」である点で共通しており、前者における「定着」は、熱ローラ定着と云えるものである。
してみると、両者は、
「感光体上に形成された静電荷潜像を顕像化しトナー像とする画像形成方法に於いて、前記トナーがスチレン系重合体及び着色料を含有し、熱ローラ定着する画像形成方法。」
で一致し、下記の点で相違する。
(i)着色料が、本願発明は、トルエンに対する溶解度が0.01重量%以上で水に対する溶解度が0.1重量%以下である油溶性染料であるのに対し、刊行物1発明は、顔料及び/又は染料であり、上記の特定はない点。
(ii)トナーが、本願発明は、BET値比表面積が5m2/g以上であるのに対し、刊行物1発明は、かかる特定はない点。
(iii)熱ローラ定着の条件が、本願発明は、定着ローラの表面温度が110?220℃でニップ幅1.5?7mm且つ定着線速度が40?400mm/secと特定されているのに対し、刊行物1発明は、かかる特定はない点。

そこで先ず、相違点(i)について検討すると、刊行物2には、着色剤として有機溶剤に可溶な有機染料を用いることにより、透明性に優れたカラートナーが得られることが示されており(2a,2b,2e)、具体的に例示された有機染料(2c)には、本願明細書で「本発明に使用される染料」として例示されたもの、また実施例において使用されたものも含まれている。また、着色成分として顔料を使用することにより、画像の透明性が低いことに関する認識もなされている(2e)。
そうであれば、小粒径かつ、透明性の良いカラートナーの製造を意図して、刊行物1発明において、着色料として、刊行物2に記載の有機溶剤に可溶な有機染料を採用することは当業者が容易に想起することである。
そして、刊行物2には、有機溶剤の一つとしてトルエンが記載されているところ(2a)、刊行物1発明がスチレン系樹脂粒子を会合したものであることから、有機染料がスチレン系樹脂中に良好に溶解する必要を考慮すれば、化学構造的にスチレンと近似性の高いトルエンに対する溶解度を規定すること、及び、具体的にその溶解度を0.01重量%以上と特定することは、当業者が適宜為し得たことである。
また、形成された画像の耐水性を考慮して、着色料を油溶性のものとすることは当業者が通常配慮することであるから、刊行物1発明において着色剤として有機溶剤に可溶な有機染料を用いるに際し、有機染料を油溶性のものとし、水に対する溶解度が低いものとすることは当業者が通常配慮することにすぎない。
そして、本願明細書の記載を検討しても、油溶性染料のトルエンに対する溶解度を0.01重量%以上、水に対する溶解度が0.1重量%以下と特定したことにより、当業者が予測し得ない格別な効果が奏されたものとは認められない。

次に、相違点(ii)について検討する。
確かに、刊行物1にはトナーあるいはトナーを構成する小粒径の非球状粒子のBET値比表面積は明記されていない。しかし、刊行物1発明におけるトナーを構成する小粒径の非球状粒子は、複数個のスチレン系樹脂粒子が会合してなるものであり、非球形化度=(非球状粒子のBET比表面積)/(非球状粒子の平均粒径から真球とし計算した時の表面積)で定義される非球形化度が約1.1?5.0(1b)、平均粒径が約3?25μm、特に、約5μm程度が好ましい(1c)というものであり、BET値比表面積の高いものであると認められる。
そして、会合法により作成されたトナーにおいて、5m2/g以上のBET値比表面積を示すものも、通常得られる範囲(例えば、特開平6-27732号公報【0020】、【0021】参照)に含まれるものであるから、刊行物1発明において、小粒径の非球状粒子単独からなるか、又は、該非球状粒子に流動化剤を外添したトナーのBET値比表面積を5m2/g以上と特定することは当業者が適宜為し得たことである。
そして、本願明細書の記載を検討すると、本願発明においてトナーのBET値比表面積がいかなる意義を有するものか、全く記載が無く、それを5m2/g以上とすることによりいかなる作用、効果が得られるのか何等の記載もない。しかも、実施例及び比較例には、外添剤として疎水性シリカ(一次数平均粒子径=12nm)を1重量%添加したトナーのBET値比表面積が記載されているものの、実施例及び比較例のいずれについてもBET値比表面積は5m2/g以上である。
よって、かかる本願明細書及び図面の記載を検討しても、トナーのBET値比表面積を5m2/g以上としたことにより当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。

最後に、相違点(iii)について検討する。
熱ローラ定着の諸条件のうち、定着温度については、刊行物2にも熱ロール定着を180℃?190℃で行ったことが(2d)記載されている。また、例えば、特開平7-36300号公報の【0018】段落には、この公報に記載された定着ローラと加圧ローラを備えた定着装置において、定着に必要な定着速度は通常10?160mm/s、好ましくは20?120mm/sであり、定着温度は、用いるトナーの種類により異なるが、通常60?220℃、好ましくは70?160℃であり、ニップ幅は通常0.1 ?10mmとするのが好ましいことが記載され、特開平5-333740号公報には、【0017】段落及び図3(c)に、定着温度を185℃、定着ローラのシート搬送速度(定着速度)を120mm/secとした時の、シート温度に対応して設定されるニップ幅が4?2mm程度の範囲であること、【0021】段落及び図4(c)に、定着温度を185℃、定着ローラのニップ幅を3mmとした時の、シート温度に対応して再設定される定着ローラのシート搬送速度(定着速度)が90?120mm/sec程度であることが記載されていることからみて、本願発明において特定された範囲の定着ローラの表面温度、ニップ幅、定着線速度は、本願出願前、熱ローラ定着において通常用いられていたものであると認められる。
してみれば、本願発明において、定着ローラの表面温度が110?220℃でニップ幅1.5?7mm且つ定着線速度が40?400mm/secと特定する程度のことは、当業者が適宜為し得たことと認められる。
そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、定着ローラの表面温度、ニップ幅、定着線速度を上記の如く特定したことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が得られたものとは認められない。

さらに、本願明細書及び図面の記載を検討しても、上記相違点(i)?(iii)で挙げた本願発明の各構成を組み合わせたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたとも認められない。

よって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-13 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-02 
出願番号 特願平7-339107
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 中澤 俊彦
阿久津 弘
発明の名称 静電荷潜像現像用トナー、トナーの製造方法とそれを用いた現像剤及び画像形成方法  

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