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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1163575
審判番号 不服2005-4377  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-11 
確定日 2007-08-27 
事件の表示 平成11年特許願第 82783号「現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 6日出願公開、特開2000-275968〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年3月26日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。
「内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、第1の規制部材により掻き落とされた前記現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部に隣接し、前記現像剤担持体にトナーを供給するトナー収容部とを備え、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度の変化により、該現像剤と前記トナーとの接触状態を変化させて、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー取り込み状態を変化させる現像装置であって、前記現像剤収容部は、第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設された第2の規制部材を有し、第2の規制部材は、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度が上昇し、該現像剤の層厚が増加した場合に該現像剤の増加分の通過を規制すべく、前記現像剤担持体との間隙が設定されている現像装置であって、該磁性キャリアの比抵抗が107?1014Ω・cmであることを特徴とする現像装置。」

2 引用刊行物の記載
2-1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-197833号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に下記の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、
第1の規制部材により掻き落とされた前記現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部に隣接し、前記現像剤担持体にトナーを供給するトナー収容部とを備え、
前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度の変化により、該現像剤と前記トナーとの接触状態を変化させて、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー取り込み状態を変化させる現像装置であって、
前記現像剤収容部は、第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設された第2の規制部材を有し、
第2の規制部材は、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度が上昇し、該現像剤の層厚が増加した場合に該現像剤の増加分の通過を規制すべく、前記現像剤担持体との間隙が設定されていることを特徴とする現像装置。」(特許請求の範囲、請求項1)
(1b)「本発明は・・・、部品点数を低減させ、機能の集約化を行うことにより、小型化及び低コスト化を図りつつ品質の安定化を行うことができる現像装置の提供を目的とする。」(段落【0004】)
(1c)「【実施例】 図1は、本発明の第1の実施例を採用した画像形成装置の現像装置要部の概略構成図である。・・・」(段落【0021】)として、段落【0021】?【0035】、【図1】?【図4】には、刊行物1に記載の発明の第1の実施例を採用した画像形成装置の現像装置の構造、画像形成に伴う現像剤の挙動について記載されている。そして段落【0048】、【0049】には、「現像領域でトナー18が消費されると、界面X上のトナー濃度が減少することにより、界面Xでのトナー搬送力が増加する。この搬送力の増加に伴い、厚くなった現像剤22の層を引き戻そうとする力が作用して、現像剤22の状態が図4に示す状態から図3に示す状態へと変化する。図3に示す状態となると、トナー18の取り込みが再び開始され、これが所定のトナー濃度となるまで行われる。
上述のように、現像剤収容部16aが、現像スリーブ15の磁力が及ぶ範囲で現像剤22を移動させるに十分な空間を有することにより、現像剤収容部16a内の現像剤22がトナー濃度の如何に拘らず1mm/s以上の速度で常時循環が可能であり、第1ドクターブレード17あるいは現像領域を通過した現像剤22と現像剤収容部16a内の現像剤22との入れ替えが徐々に行われ、現像剤収容部16a内にセットした現像剤22を全て使用することができる。これにより、現像剤22にかかるストレスを分散させることができ、磁性キャリアの膜削れの防止、あるいはトナースペント化の進行を遅らせることができる。すなわち現像剤22の寿命を延ばすことができるため、小型でありながら画像形成枚数の多い高速域までもカバーすることが可能な現像装置を実現することができる。」との記載がある。
(1d)「【発明の効果】 請求項1記載の発明によれば、第2の規制部材が増加した現像剤の通過を規制し、規制された現像剤がトナーの取り込みを制御することにより、トナー供給を常時一定に自己制御することができるので、簡易な構成でトナー濃度の調整を容易に行うことができる。」(段落【0065】)、

2-2 さらに、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-51562号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に下記の事項が記載されている。
(2a)「【請求項2】 キャリアは比抵抗108 ?1013Ω・cmを有する請求項1の電子写真用キャリア。」
(2b)「【産業上の利用分野】本発明は、トナーと混合されて静電荷像現像用現像剤を構成する電子写真用キャリアに関する。」(段落【0001】)
(2c)「従来、フルカラー画像を出力するには、二成分系現像剤が用いられてきた。一般にかかる二成分系現像剤を構成するキャリアは、鉄粉に代表される導電性キャリアと、鉄粉、ニッケル、フェライト等の粒子の表面を絶縁性樹脂により被覆したいわゆる絶縁性キャリアとに大別される。高画質化を計るために交番電界を印加する場合、キャリアの抵抗が低いと潜像電位をキャリアがリークし、良好な現像画像が得られなくなるため、キャリアとしてはある程度以上の抵抗が必要である。」(段落【0005】)
(2d)「本発明のキャリアの比抵抗は108 ?1013Ω・cmの範囲が好ましい。108 Ω・cm未満では、バイアス電圧を印加する現像方法では現像領域においてスリーブから感光体表面へと電流がリ-クしやすく、良好な画像が得られにくい。また、1013Ω・cmを越えると、低湿の如き条件下でチャージアップ現象を引き起こしやすく、濃度ウス、転写不良、カブリ等の画像劣化の原因となりやすい。」(段落【0038】)
(2e)「なお、本発明において、比抵抗の測定には、図4の如き測定方法を用いる。すなわち、セルAに、キャリアを充填し、該充填キャリアに接するように電極1及び2を配し、該電極間に電圧を印加し、そのとき流れる電流を測定することにより比抵抗を求める方法を用いる。上記測定方法においては、キャリアが粉末であるために充填率に変化が生じ、それに伴い比抵抗が変化する場合があり、注意を要する。本発明における比抵抗の測定条件は、充填キャリアと電極との接触面積S=約2.3cm2 、厚みd=約1mm、上部電極2の荷重275g、印加電圧100Vとする。」(段落【0038】)
(2f)段落【0050】?【0082】には、実施例1、2、3、4として、比抵抗が8.3×1012Ω・cm、4.8×1012Ω・cm、8.5×1012Ω・cm、8.3×1012Ω・cmのキャリアにトナーを混合した2成分現像剤を用い、現像器および感光ドラムの現像領域部分の模式図が【図5】に示されているキヤノン製フルカラーレーザー複写機CLC-500を改造した改造機を用いて画像出しを行ったことが記載されている。

3 対比、判断
上記2-1で摘記した刊行物1の記載事項からみて、刊行物1には下記の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、第1の規制部材により掻き落とされた前記現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部に隣接し、前記現像剤担持体にトナーを供給するトナー収容部とを備え、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度の変化により、該現像剤と前記トナーとの接触状態を変化させて、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー取り込み状態を変化させる現像装置であって、前記現像剤収容部は、第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設された第2の規制部材を有し、第2の規制部材は、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度が上昇し、該現像剤の層厚が増加した場合に該現像剤の増加分の通過を規制すべく、前記現像剤担持体との間隙が設定されている現像装置。」
そこで、本願発明1と刊行物1発明を対比すると、両者は、
「内部に磁界発生手段を有し、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、第1の規制部材により掻き落とされた前記現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部に隣接し、前記現像剤担持体にトナーを供給するトナー収容部とを備え、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度の変化により、該現像剤と前記トナーとの接触状態を変化させて、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー取り込み状態を変化させる現像装置であって、前記現像剤収容部は、第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設された第2の規制部材を有し、第2の規制部材は、前記現像剤担持体上の現像剤のトナー濃度が上昇し、該現像剤の層厚が増加した場合に該現像剤の増加分の通過を規制すべく、前記現像剤担持体との間隙が設定されている現像装置。」
である点で一致し、下記の点で相違する。
(i)本願発明1は、磁性キャリアの比抵抗が107?1014Ω・cmであると特定されているのに対して、刊行物1発明では、磁性キャリアの比抵抗値について特定がない点。

そこで、以下相違点(i)について検討する。
刊行物2には、「トナーと混合されて静電荷像現像用現像剤を構成する電子写真用キャリア」(2b)、即ち、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤の磁性キャリアとして、比抵抗108 ?1013Ω・cmのものが記載されている(2a)。
刊行物2に記載の磁性キャリアの比抵抗値の測定方法(2e)は、本願明細書段落【0024】に記載された方法と、測定条件において差異があるものの、刊行物2に記載された磁性キャリアの比抵抗値と本願発明1における磁性キャリアの比抵抗値とは、重複する部分があるのは明らかである。
そして、刊行物2には、磁性キャリアの比抵抗値の範囲を108 ?1013Ω・cmと限定した理由として、108 Ω・cm未満では、バイアス電圧を印加する現像方法では現像領域においてスリーブから感光体表面へと電流がリ-クしやすく、良好な画像が得られにくく、1013Ω・cmを越えると、低湿の如き条件下でチャージアップ現象を引き起こしやすく、濃度ウス、転写不良、カブリ等の画像劣化の原因となりやすいことが記載されている(2d)。
確かに、刊行物2に記載された画像形成装置の現像器は刊行物1発明の現像装置とは構造が異なるものである。しかし、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を用いるものである以上、刊行物1発明の現像装置も、刊行物2に記載された現像器の如き本願出願前周知の2成分現像剤を用いる現像装置と同様、トナーとキャリアが混合撹拌され、トナーに電荷が付与されるという基本機能を有することは明らかである。
そして、画像むらのない良好な画像を形成することは静電潜像をトナー像とする現像装置を備えた画像形成装置において共通した課題であり、上述の現像領域におけるスリーブから感光体表面への電流のリ-クに起因する画像不良やチャージアップ現象に起因する画像劣化の問題は、刊行物2において使用される現像器に固有の問題ではなく、上記の基本機能を利用して静電潜像をトナー像とする現像装置を備えた画像形成装置に共通した問題である。
さらに、刊行物2に従来技術として記載されているとおり(2c)、トナー及び磁性キャリアを含有する2成分現像剤を用いる画像形成において、良好な画質を得るためには、磁性キャリアとしてある程度以上の抵抗を有するものを使用する必要があることは本願出願前周知の事項であり、かかる磁性キャリアとして比抵抗が107?1014Ω・cm程度の範囲のものを用いることは、本願出願前広く行われているところである。例えば、特開平7-77841号公報の段落【0044】、特開平7-84413号公報の段落【0087】には、磁性キャリアの比抵抗は107Ω・cm?1014Ω・cmの範囲が適当であることが記載されており、また、特開平7-301956号公報の段落【0043】、特開平7-181723号公報の請求項5、段落【0049】、特開平7-175266号公報の請求項5、段落【0075】には、比抵抗が108Ω・cm?1013Ω・cmの磁性キャリアを用いることが、特開平9-190040号公報の請求項1、段落【0030】には、比抵抗が105Ω・cm?1012Ω・cmの磁性キャリアを用いることが、特開平9-281805号公報の請求項10、段落【0028】には、比抵抗が105Ω・cm?1014Ω・cmの磁性キャリアを用いることが、記載されているところである。
してみれば、刊行物1発明において、画像むらのない良好な画像を得ることを目的として、磁性キャリアの比抵抗を107?1014Ω・cmと特定することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

そして、比抵抗値の範囲が107?1014Ω・cm程度の磁性キャリアを用いることにより良好な画像が得られることは、上述のとおり、既に知られていたことであるから、刊行物1発明において磁性キャリアの比抵抗を107?1014Ω・cmと特定することにより、画像むらがない良好な画像が得られることは当業者が予測し得た効果にすぎず、本願明細書及び図面の記載を検討しても、刊行物1発明の現像装置と比抵抗が107?1014Ω・cmの磁性キャリアとを組み合わせたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。

よって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載の発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる。

4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1及び2に記載の発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-22 
結審通知日 2007-06-28 
審決日 2007-07-11 
出願番号 特願平11-82783
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 六車 江一  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 小宮山 文男
中澤 俊彦
発明の名称 現像装置  
代理人 武井 秀彦  

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