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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1163668
審判番号 不服2003-4695  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-20 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 平成 7年特許願第 31075号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月27日出願公開、特開平 8-215386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 一.手続の経緯
本願は、平成7年2月20日の出願であって、平成15年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

二.平成15年3月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
特許請求の範囲の請求項1、2に係る本件補正は、請求項1、2に記載された発明特定事項である「パチンコ機」について、「開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞すると、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起する」との限定を付加し、同じく発明特定事項である「特定入賞口」について、「遊技中において閉成状態であっても遊技球を入賞させ得るもの」との限定を付加して下位概念化したものであり、また、「開成状態と閉成状態と変化する特定入賞装置」を「開成状態と閉成状態とに変化する特定入賞口」に変更する補正は、軽微な誤記の訂正であって、実質的に発明特定事項を変更するものではない。
よって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件補正は出願当初明細書に記載された事項の範囲内のものでもあるから、本件補正は平成6年改正前特許法第17条の2第2項及び第3項の規定に適合する。

したがって、本件補正後の本願請求項1乃至4に係る発明は、本件補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものであると認められるところ、本件補正後の本願請求項2に係る発明は、以下のとおりである。

「【請求項2】 遊技領域に、複数の図柄を表示可能な図柄表示部と、開成状態と閉成状態とに変化する特定入賞口とが設けられており、前記図柄表示部に表示された図柄が所定の図柄である場合に特定入賞口が閉成状態から開成状態となり、開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞すると、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起するパチンコ機であって、
前記特定入賞口は、遊技中において閉成状態であっても遊技球を入賞させ得るものであって、そのような閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合にも、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起するとともに、
大当たり出力端子が設けられており、
開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞した場合と、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合とで、前記大当たり出力端子が異なった態様の信号を出力することを特徴とするパチンコ機。」

そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開平5-31232号公報(以下、「引用例」という。)の記載事項

「【0006】
【作用】本発明によれば、可変表示装置の停止時の識別情報が予め定められた特定の識別情報になった場合に、第1の可変入賞球装置が遊技者にとって有利な第1の状態に駆動され、その第1の可変入賞球装置内に打玉が入賞したことを必要最小条件として権利発生状態となる。……」

「0008】図1は、弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面を示す正面図である。遊技盤の前面側に形成される遊技領域2には、遊技者の操作によって駆動する図示しない打球発射装置により、1つずつパチンコ玉が打込まれる。この遊技領域2には、複数種類の識別情報が可変表示可能な可変表示装置5が設けられ、パチンコ機が作動口6に入賞して作動口入賞玉検出器7により検出されれば、可変表示装置5が可変開始される。この可変表示装置5は、複数種類の識別情報(たとえば数字や文字等の図柄)をそれぞれに可変表示可能な、左図柄表示部31a,中図柄表示部31b,右図柄表示部31cを含む。この各図柄表示部31a?31cは、たとえば0,1,3,5,7,9,Fの7種類の図柄を可変表示できるように構成されている。……
【0009】各図柄表示部31a?31cの停止時の識別情報が同じ図柄の組合せ(いわゆるゾロ目)となれば、第1の可変入賞球装置8が開成して遊技者にとって有利な第1の状態となる。この可変入賞球装置8の第1の状態は、所定期間(たとえば5.8秒間)の経過または所定個数(たとえば3個)のパチンコ玉の入賞のうち早い方の条件が成立することにより終了し、可変入賞球装置8が閉成して遊技者にとって不利な第2の状態に切換わる。
【0010】この可変入賞球装置8内に入賞したパチンコ玉は、通過口9を通過して振分け装置11内に落入する。この通過口9には、特定入賞玉検出器10が設けられており、通過口9を通過するパチンコ玉がこの特定入賞玉検出器10により所定個数(3個)検出されれば第1の可変入賞球装置8が閉成される。振分け装置11は、時計方向にたとえば10回転/分の速度で回転する回転体11aが備えられており、振分け装置11内に落入したパチンコ玉が、その回転体11aによって、通常入賞口36あるいは入賞口12のいずれかに振分けられて誘導される。……
【0011】入賞口12に入賞したパチンコ玉は、特別装置スイッチ13により検出され、その検出信号に応答して特別装置が作動状態となり権利発生状態となる。この特別装置とは、遊技状態を権利発生状態に切換える装置であり、具体的には図2に示す制御回路の一部によって構成されている。
【0012】遊技状態が権利発生状態となっている期間中に、パチンコ玉が始動口19に入賞すれば、第2の可変入賞球装置16が開成して遊技者にとって有利な第1の状態になる。この可変入賞球装置16内に入賞したパチンコ玉は、入賞玉検出器(10カウントスイッチ)17により検出される。この可変入賞球装置16の第1の状態は、所定期間(たとえば9.8秒間)の経過または所定個数(たとえば10個)のパチンコ玉の入賞のうちいずれか早い方の条件が成立することにより終了し、可変入賞球装置16が閉成して遊技者にとって不利な第2の状態に切換わる。なお、第1,第2の可変入賞球装置8,16は、第2の状態でパチンコ玉が全く入賞できないものを示したが、本発明はこれに限らず、第2の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しにくく、第1の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しやすいものであってもよい。……前述した権利発生状態は、パチンコ玉の入賞口12への再度の入賞またはパチンコ玉が始動口19に所定個数(たとえば16個)入賞することのうちいずれか早い方の条件が成立したことによって終了する。」

上記記載事項及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技領域2には、複数種類の識別情報が可変表示可能な可変表示装置5が設けられ、この可変表示装置5は、複数種類の識別情報(たとえば数字や文字等の図柄)をそれぞれに可変表示可能な、左図柄表示部31a,中図柄表示部31b,右図柄表示部31cを含み、各図柄表示部31a?31cの停止時の識別情報が同じ図柄の組合せ(いわゆるゾロ目)となれば、第1の可変入賞球装置8が開成して遊技者にとって有利な第1の状態となり、その第1の可変入賞球装置内に打玉が入賞したことを必要最小条件として権利発生状態となるパチンコ遊技機であって、
第1の可変入賞球装置8は、閉成して遊技者にとって不利な第2の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しにくく、第1の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しやすいものであってもよく、
可変入賞球装置8内に入賞したパチンコ玉は、通過口9を通過して振分け装置11内に落入するものであり、この通過口9には、特定入賞玉検出器10が設けられており、通過口9を通過するパチンコ玉がこの特定入賞玉検出器10により所定個数(3個)検出されれば第1の可変入賞球装置8が閉成されるパチンコ遊技機。」

3.対比
引用発明における「各図柄表示部31a?31c」は本願補正発明の「図柄表示部」に相当し、以下同様に、「第1の可変入賞球装置8」は「特定入賞口」に、「識別情報」は「図柄」に、「権利発生状態」は「特別遊技状態」に、「パチンコ遊技機」は「パチンコ機」にそれぞれ相当する。

また、引用発明の特定入賞口(第1の可変入賞球装置8)が遊技領域(遊技領域2)に設けられていることは、引用例の図1より明らかである。

そして、引用発明は、各図柄表示部31a?31cの停止時の識別情報が同じ図柄の組合せ(いわゆるゾロ目)となれば、第1の可変入賞球装置8が開成して遊技者にとって有利な第1の状態となり、その第1の可変入賞球装置内に打玉が入賞したことを必要最小条件として権利発生状態となるものであるから、本願補正発明と引用発明とは、図柄表示部に表示された図柄が所定の図柄である場合に特定入賞口が閉成状態から開成状態となり、開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞すると、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起し得る点で共通するといえる。

さらに、引用発明は、第1の可変入賞球装置8は、閉成して遊技者にとって不利な第2の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しにくく、第1の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しやすいものであってもよいものであるから、特定入賞口は、遊技中において閉成状態であっても遊技球を入賞させ得るものといえる。

そのうえ、引用発明は、特定入賞口(可変入賞球装置8)内に入賞したパチンコ玉は、通過口9を通過して振分け装置11内に落入するものであり、この通過口9には、特定入賞玉検出器10が設けられており、通過口9を通過するパチンコ玉がこの特定入賞玉検出器10により検出されるものであるから、大当たり出力端子が設けられているものといえる。

したがって、両者は、
「遊技領域に、複数の図柄を表示可能な図柄表示部と、開成状態と閉成状態とに変化する特定入賞口とが設けられており、前記図柄表示部に表示された図柄が所定の図柄である場合に特定入賞口が閉成状態から開成状態となり、開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞すると、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起し得るパチンコ機であって、
前記特定入賞口は、遊技中において閉成状態であっても遊技球を入賞させ得るものであって、
大当たり出力端子が設けられているパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明は、特定入賞口に遊技球が入賞すると、必ず、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起するものであるのに対して、引用発明は、特定入賞口に遊技球が入賞することを、必要最小条件として、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起するものである点。

<相違点2>
本願補正発明は、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合にも、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起し得るものであるのに対して、引用発明は、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起し得るものであるか否か不明な点。

<相違点3>
本願補正発明は、開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞した場合と、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合とで、大当たり出力端子が異なった態様の信号を出力するものであるのに対して、引用発明は、特定入賞口(可変入賞球装置8)内に入賞したパチンコ玉は、特定入賞玉検出器10により所定個数(3個)検出されれば第1の可変入賞球装置8が閉成されるものである点。

4.判断
<相違点1について>
特定入賞口への遊技球の入賞を契機に、引用発明のように必要最小条件として特別遊技状態を生起させるか、本願補正発明のように単純に全て特別遊技状態を生起させるかは、当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎない。

<相違点2について>
閉成して遊技者にとって不利な第2の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しにくく、第1の状態ではパチンコ玉が比較的入賞しやすいものであってもよいものであって、開成状態において特定入賞口へ遊技球が入賞した場合に特別遊技状態を生起し得る引用発明において、閉成状態においても特定入賞口へ遊技球が入賞した場合に特別遊技状態を生起し得るように構成するか否かは、当業者が適宜選択できる設計的事項である。

<相違点3について>
パチンコ機の技術分野において、特定入賞口の開成状態時に所定個数の入賞が検出されれば特定入賞口を閉成状態へと変化させるために、特定入賞口への入賞情報と特定入賞口の開閉情報を用いて、開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞した場合と、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合とで、異なる信号処理を行うものは、例えば、特開平5-285259号公報(段落番号【0082】、図21参照。)及び特開平6-86856号公報(段落番号【0062】、図7参照。)に記載されているように周知技術である。そして、この周知技術を引用発明に適用する際に、特定入賞口への入賞情報と特定入賞口の開閉情報を用いて異なる信号処理を行うか、本願補正発明のように、出力端子が異なった態様の信号を出力するように構成するかは、当業者が適宜選択できる設計的事項と認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

三.本願発明について
1.本願発明
平成15年3月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成14年5月31日付け手続補正書に記載されたとおりのものであると認められるところ、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項2】 遊技領域に、複数の図柄を表示可能な図柄表示部と、開成状態と閉成状態と変化する特定入賞装置とが設けられており、前記図柄表示部に表示された図柄が所定の図柄である場合に特定入賞口が閉成状態から開成状態となるパチンコ機であって、
開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞した場合、あるいは閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起するとともに、
大当たり出力端子が設けられており、
開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞した場合と、閉成状態の特定入賞口へ遊技球が入賞した場合とで、前記大当たり出力端子が異なった態様の信号を出力することを特徴とするパチンコ機。」

2.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用例の記載事項は、前記「二.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「二.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「パチンコ機」について、「開成状態の特定入賞口に遊技球が入賞すると、遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起する」との限定を省き、同じく発明特定事項である「特定入賞口」について、「遊技中において閉成状態であっても遊技球を入賞させ得るもの」との限定を省いて上位概念化し、また、「開成状態と閉成状態とに変化する特定入賞口」を軽微な誤記を含むものの実質的に同義の「開成状態と閉成状態と変化する特定入賞装置」に変更したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、下位概念化したものに相当する本願補正発明が、前記「二.4」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-05 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-24 
出願番号 特願平7-31075
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
藤田 年彦
発明の名称 パチンコ機  
代理人 石田 喜樹  

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