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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C02F |
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管理番号 | 1163682 |
審判番号 | 不服2004-15585 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-27 |
確定日 | 2007-09-06 |
事件の表示 | 特願2001-199807「セレンの除去方法及び除去剤」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月22日出願公開、特開2002-307076〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯、本願発明 本願は、平成13年6月29日(優先権主張 平成12年12月28日)に特許出願され、平成16年1月27日付けで手続補正がなされ、平成16年6月7日付けで出願拒絶されたところ、当該拒絶につき平成16年7月27日に審判請求がなされ、そして、平成16年8月25日に手続補正がなされたものである。 II.平成16年8月25日提出の手続補正についての補正却下の決定 II-1.補正却下の決定の結論 平成16年8月25日提出の手続補正を却下する。 II-2.理由 II-2-1.補正後の本願発明 平成16年8月25日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は 「被処理水中に含まれるセレンを除去する方法において、該水中に、リン酸イオン並びに鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属の存在下で、該被処理水のpHを4?8の範囲に調整して、該セレンを難溶性物質として沈殿させることを特徴とするセレンの除去方法。」に補正された。 当該補正は、平成16年1月27日付け手続補正書の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「無害性多価金属」について、「鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の」と限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 そこで、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 II-2-2.特許法第29条第1項第3号に関する特許独立要件の有無 II-2-2-1.引用例とその記載事項 原査定の拒絶の理由(特許法第29条第1項第3号)で引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開平11-221576号公報」(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (A-1) 「セレン含有廃水もしくはセレン含有汚泥中に、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物もしくは1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物、2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物もしくはその混合物並びに溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物もしくはその混合物を添加して攪拌することにより、廃水もしくは汚泥中のセレンを不溶性化合物として沈澱させて分離除去するか、或いは固体中に不溶性化合物として固定することを特徴とするセレン含有廃水もしくはセレン含有汚泥の処理方法」(特許請求の範囲第1項) (A-2) 「一般に水中における酸解離は、高いpHほど解離が進むが本発明において処理を行なうpH範囲は2から10程度の範囲、しかも通常は5から8程度の中性域で行なうので、・・・。」(段落【0018】) (A-3) 「そこで、含有セレンのうち化学吸着された1価の陰イオンの後に残る2価の陰イオンと反応する2価のバリウムイオンと不溶性の沈澱物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物を反応に充分な量、すなわち酸またはアルカリによりpHを5から9程度に調整した後において、・・・、例えば塩化バリウムを加えると、4価のセレンにおけるHSeO32- と、6価のセレンにおけるHSeO42- とは不溶性の化合物を形成するが、廃水中のこれらセレンの濃度は多くの場合は低濃度であるため、生成した沈澱物が沈降分離し難いので、・・・、例えば硫酸を加えると、硫酸イオン(SO42- )を生成して2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する。」(段落【0021】) (A-4) 「以下、廃水の場合の1実施例について説明すると、・・・反応槽1に1000リットル程度充填されたセレン含有廃水Aに、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物として塩化第二鉄(38%溶液)を2kg程度、2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物として硫酸を7.5 kg程度、混合物並びに溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物として塩化バリウム(BaCl2・2H2O) 20kg程度を、順次或いは同時に投入すると共に、攪拌機3を回動させて攪拌する。なお、・・・廃水が充填された段階でpH計測を行い、pHを少なくとも2から10に調整しておくことにより効率よく沈澱生成反応を行うことができる。」(段落【0030】から【0031】) (A-5) 「上記の実施例では1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物として塩化第二鉄を使用したが、その他に鉄化合物もしくはその混合物の分野では1価の陰イオンを化学吸着できる化合物として、水酸化鉄、酸化鉄、四三酸化鉄、オキシ水酸化鉄等があり、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物として、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、過塩素酸鉄等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。」(段落【0040】) (A-6) 「アルミニウム化合物もしくはその混合物については、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物として、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(活性アルミナを含める)、オキシ水酸化アルミニウム等があり、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物として、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。」(段落【0041】) (A-7) 「2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンがリン酸イオンである場合にあっては、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。」(段落【0044】) II-2-2-2.引用発明の認定 引用例1には、前記(A-1)によれば、セレン含有廃水に、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物、2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物、並びに、溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物を添加して攪拌する、廃水中のセレンを不溶性化合物として沈殿させて分離除去するセレン含有廃水の処理方法が記載されており、また前記(A-4)?(A-6)によれば、上記の1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物として、塩化第二鉄や塩化アルミニウムが例示され、また、前記(A-7)によれば、上記の2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物として、リン酸が例示され、更に、前記(A-4)によれば、上記セレンを沈殿させる条件として廃水のpHを2から10に調整することを含み、また、上記化合物の添加方法として、同時添加(投入)を含むものである。 以上のことから、引用例1には 「セレン含有廃水中に、リン酸と、塩化第二鉄又は塩化アルミニウムと、溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物を、同時に添加して攪拌し、pHを2から10に調整することにより廃水中のセレンを不溶性化合物として沈殿させて分離除去する方法」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用発明」という)が記載されている。 II-2-2-3.対比、判断 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「不溶性化合物」は、本願補正発明の「難溶性物質」に相当する。 また、引用発明における廃水のpHは2?10であり、かつ、前記(A-2)及び(A-3)によれば、その数値を5?8又は5?9にする態様を含むものであるから、引用発明のpH値は本願補正発明のpH値の数値と一致する。 よって、両者は 「被処理水中に含まれるセレンを除去する方法において、該被処理水のpHを4?8の範囲に調整して、該セレンを難溶性物質として沈殿させるセレンの除去方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点1】 本願補正発明では、被処理水の該水中に「リン酸イオン並びに鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属の存在下」でセレンを難溶性物質として沈殿させているが、引用発明ではそのことが明示されていない点 以下、上記相違点につき検討する。 【相違点1】について 本願補正発明の無害性多価金属につき、本願明細書の発明の詳細な説明の項に、「前記無害性多価金属化合物には・・・。例えば、・・・、塩化第二鉄、・・・、塩化アルミニウム、・・・等が挙げられる。」(段落【0007】)と記載されるものであり、この記載によれば、本願補正発明の無害性多価金属には、塩化第二鉄を構成する第二鉄、塩化アルミニウムを構成するアルミニウムが含まれることが明白である。 そして、引用発明では、前記したとおり、廃水中に「リン酸と、塩化第二鉄又は塩化アルミニウムと、溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物を同時に添加して攪拌」するものであって、これにより、廃水中には、そのリン酸より生成したリン酸イオンと、その塩化第二鉄を構成する第二鉄又はその塩化アルミニウムを構成するアルミニウムが存在することになる。 そうであれば、引用発明では、廃水中で、本願補正発明でいうところの「リン酸イオン並びに鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属の存在下」でセレンを難溶性物質として沈殿させていることになる。 してみれば、相違点1に関する特定事項については、引用発明においても実質上具備するものであり、両者の実質上の相違点となり得ない。 以上のとおり、本願補正発明と引用発明とは実質上、同一であるといえる。 したがって、本願補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 II-2-3.請求人の主張等について 請求人は、平成16年8月25日提出の手続補正書において、引用発明は有害重金属のバリウムの添加を必須とする発明であり、本願発明とは全く異なる旨を主張している。 ところが、本願補正発明は、セレンの除去方法において「リン酸イオン並びに鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属の存在下で、・・・該セレンを難溶性物質として沈殿させること」が特定されているのみであり、廃水中に、他のどのようなものを含むか否かは限定されておらず、引例発明においても、前記II-2-2-3.で述べたとおり「リン酸イオン並びに鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属の存在下で」セレンの除去が行われている。 そうであれば、本願補正発明と引用発明は、実質上、同一であるといえる。したがって、請求人の主張を採用することはできない。 II-2-4.むすび 以上のとおり、当該補正を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について III-1.本願発明 平成16年8月25日提出の手続補正は上記のとおり却下された。 本願請求項1?11に係る発明は、平成16年1月27日提出の手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1には、以下のことが記載されている。 【請求項1】被処理水中に含まれるセレンを除去する方法において、該水中に、リン酸イオン及び無害性多価金属の存在下で、該被処理水のpHを4?8の範囲に調整して、該セレンを難溶性物質として沈殿させることを特徴とするセレンの除去方法。 (以下、必要に応じて、「本願発明」という。) III-2.引用発明の認定 引用例1に記載された発明は、前記「II-2-2-2.引用発明の認定」で記載したとおりのものである。 III-3.対比・判断 本願発明は、前記「II-2.理由」で検討した本願補正発明につき、その特定事項の「鉄及びアルミニウムから選ばれた少なくとも一種の無害性多価金属」をその上位概念である「無害性多価金属」に置き換えるものである。 そうすると、本願発明の特定事項を実質上全て含み、かつ、本願発明の下位概念である本願補正発明が、前記「II-2.理由」に記載したとおり、引用例1に記載した発明と実質上同一であることから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載の発明と実質上同一である。 III-4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-11 |
結審通知日 | 2007-07-12 |
審決日 | 2007-07-26 |
出願番号 | 特願2001-199807(P2001-199807) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 幹、櫛引 明佳 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
斉藤 信人 中村 敬子 |
発明の名称 | セレンの除去方法及び除去剤 |
代理人 | 中川 邦雄 |
代理人 | 中川 邦雄 |
代理人 | 中川 邦雄 |
代理人 | 中川 邦雄 |