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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1163707
審判番号 不服2005-4898  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 平成 6年特許願第122004号「鈍端の超音波套管針」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月28日出願公開、特開平 7- 51281号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月12日(パリ条約による優先権主張1993年5月12日米国)の出願であって、請求項1、2に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「カニューレハンドルとカニューレ管とを有するカニューレ;
超音波変換器と鈍端の先端部と軸とを有する穿子;及び
前記超音波変換器を収容しているハウジング
を備え、
前記軸は前記変換器に組付けられた手元側端部と前記鈍端の先端部に組付けられた末端側端部とを有し;
選定された周波数で変換器を振動させかつ軸に沿って先端部に振動を伝搬させるように変換器に電気エネルギーを供給する
ことを特徴とする套管針組立体。」

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-265136号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(1)「細長の高周波振動の伝達部材の先端側に穿刺用の刃先を設け、且つこの伝達部材の後端側頭部に形成したカバー内の密封室内に高周波振動発生手段を収納し、この高周波振動発生手段に外部の高周波発生装置からコネクタによる電気的接続手段を介して高周波電力を供給可能とした中針を形成したことを特徴とする穿刺針。」(【特許請求の範囲】第1項)
(2)「これらの図において、第1実施例の穿刺針1は先端部に穿刺、刺入用刃先2Aが設けられた細長の中針2と、この中針2を挿通する外套管3とから構成される。」(2頁左下欄12行?15行)
(3)「ところで、上記中針2はその頂部側に高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子を内蔵して高周波電力の供給により中針2の長手方向に高周波振動し、この高周波振動をホーン32及び中針2を形成する中空管状高周波振動の伝達管33を通り、先端部の刃先2Aに伝えられ、この刃先2Aを軸方向に高周波振動させることができるようにしてある。しかしてこの高周波振動によって、中針2の先端部の尖鋭な刃先2Aが押し当てられた部分の腹壁等への刺入抵抗を減らし、容易に刺入できるようにしてある。上記圧電ランジュバン型振動子は、ジルコンチタン酸鉛等の圧電体35,36を間に電極板37を介装し、中央に形成した孔に絶縁チューブ38を介したボルト39によって、ホーン32と電極板41を取付けた金属ブロック42との間で締め付けるようにして固定されている。尚、この締め付けは、例えばホーン32に螺着又はろう付け等で固定されたボルト39における金属ブロック42から上部に突出する端部を皿座金43を介装し、ナット44で締め付は固定される。」(3頁左下欄10行?右下欄10行)
(4)「このホーン32の細径側の端部は中針2の頭部に螺着され、このホーン32の端面にシール45を介装して前カバー46で覆われ、ホーン側は密封されている。またこの前カバー46の周囲から止めねじ47によって、ホーン32及び該ホーン32に緊定された圧電体35,36,金属ブロック42等は固定されている。上記前カバー46は上方に開口し、シール48を介して頭部カバー49と螺着し、これらカバー46,49内側を密封構造の室が形成されるようにしてある。」(3頁右下欄15行?4頁左上欄5行)
(5)「このような関節腔58に上記第1実施例の穿刺針1を外套管3に中針2を装着した状態で、且つコネクタ7を所定位置に装着する。しかして例えば矢印DあるいはEに示す適当な刺入位置にその先端側を設定し、高周波発生装置9の電源をオンすると、この高周波発生装置9の高周波電力によって、中針2の頭部のカバー46,49内に密封された高周波振動発生装置6は高周波振動し、中針2はその軸方向に高速度で前後に往復振動する。従って、中針2の刃先2Aが軽く押し当てられている腹壁等の部位は、先端部の刃先2Aが突き刺さり、次第に刺入されていくことになる。この刺入された状態を第6図に示し、中針2の刃先2Aを当てた部分はその中針2の軸方向、第6図では例えばD方向とかE方向に刺入されることになる。」(4頁右上欄14行?左下欄8行)
(6)第1図、第2図には、コック4を収納した収納用筒体部19と管路3Aから成る外套管3と、圧電ランジュバン型振動子とホーン32と伝達管33と刃先2Aとを有する中針2と、圧電ランジュバン型振動子を収容している前カバー46、頭部カバー49が図示されている。

上記(1)ないし(6)の記載事項及び図示内容からみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「コック4を収納した収納用筒体部19と管路3Aから成る外套管3と、高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子とホーン32と伝達管33と刃先2Aとを有する中針2と、前記圧電ランジュバン型振動子を収容している前カバー46、頭部カバー49とを備え、前記伝達管33の一端は、ホーン32を介して高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子に連結され、他端は、刃先2Aが組付けられ、高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子には、高周波発生装置9の高周波電力が供給され、この高周波電力の供給により中針2の長手方向に高周波振動し、この高周波振動は、ホーン32及び中針2を形成するの伝達管33を通り、先端部の刃先2Aに伝えられる穿刺針。」

3 対比
本願発明と引用発明を比較する。
引用発明の「コック4を収納した収納用筒体部19と管路3Aから成る外套管3」は、その機能、構造からみて、本願発明の「カニューレハンドルとカニューレ管とを有するカニューレ」に相当し、同じく「高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子」は「超音波変換器」に、「刃先2A」は「先端部」に、「伝達管33」は「軸」に、「中針2」は「穿子」に、「前カバー46、頭部カバー49」は「ハウジング」に、「穿刺針」は「套管針組立体」に各々相当する。
また、引用発明の「前記伝達管33の一端は、ホーン32を介して高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子に連結され、他端は、刃先2Aが組付けられ」と本願発明の「前記軸は前記変換器に組付けられた手元側端部と前記先端部に組付けられた末端側端部とを有し」は、前記軸(伝達管33)は、振動が伝播されるように前記変換器(高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子)に接続されている手元側端部と、前記先端部(刃先2A)に組付けられた末端側端部とを有している点で共通する。
更に、引用発明の「高周波振動発生手段を形成する圧電ランジュバン型振動子には、高周波発生装置9の高周波電力が供給される」において、高周波電力は、電気エネルギーであってその周波数は当然に選定されたものであるから、引用発明は、本願発明でいう「選定された周波数で変換器を振動させかつ軸に沿って先端部に振動を伝搬させるように変換器に電気エネルギーを供給」しているといえる。
そうすると、両者は、
「カニューレハンドルとカニューレ管とを有するカニューレ;
超音波変換器と先端部と軸とを有する穿子;及び
前記超音波変換器を収容しているハウジングを備え、
前記軸は、振動が伝播されるように前記変換器に接続されている手元側端部と、前記先端部に組付けられた末端側端部とを有し;
選定された周波数で変換器を振動させかつ軸に沿って先端部に振動を伝搬させるように変換器に電気エネルギーを供給する
ことを特徴とする套管針組立体。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
穿子の先端部の構造に関し、本願発明は鈍端であるのに対して、引用発明はそのような構造ではない点。
<相違点2>
軸の手元側端部と超音波変換器の接続に関し、本願発明は軸の手元側端部は超音波変換器に直接組付けているのに対して、引用発明は、軸の手元側端部は超音波変換器にホーン32を介して連結している点

4 当審の判断
上記相違点1、2について以下検討する。
(1)相違点1について
身体の組織を穿孔する穿子の先端部を鈍端とすることは周知の技術である(例えば、カナダ国特許出願公開第1098003号明細書、実願昭57-125235号(実開昭59-30202号)のマイクロフィルム参照)。
したがって、穿子の先端部を鈍端とし、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
軸の手元側端部と超音波変換器を直接接続するか、ホーンを介して接続するかは当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項である。
したがって、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは当業者の適宜なし得た設計的事項である。

そして、上記相違点1、2によって奏する本願発明の作用、効果は、引用発明及び上記周知の技術から予測される範囲のものであって、格別なものではない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-20 
結審通知日 2007-03-27 
審決日 2007-04-09 
出願番号 特願平6-122004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡崎 克彦土田 嘉一  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 森川 元嗣
稲村 正義
発明の名称 鈍端の超音波套管針  
代理人 小田島 平吉  

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