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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1163719
審判番号 不服2005-11842  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-23 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 特願2001-121170「フラットケーブル、その配索構造及び配索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日出願公開、特開2002-320318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年4月19日の出願であって、平成17年5月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23に拒絶査定に対する審判が請求されたものである。

2.本件発明
本願の請求項1?5に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、平成16年10月28日付け手続補正書の特許請求の範囲請求項1?5に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項2に係る発明は次のとおりである。(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項2】 並設された複数条の導体がフラット絶縁被覆で一括して覆われたフラットケーブルに折曲げ部が設けられ、所定の接続位置間に配索されているフラットケーブルの配索構造において、前記フラットケーブルに設ける折曲げ部は、該折曲げ部を支点として該フラットケーブルをその幅方向に所要の範囲で移動できる曲率半径0.2 ?2mmの折曲げ曲率で折曲げて、フリーな状態に形成され、前記フラットケーブルは前記折曲げ部で配索方向を調整して配索されていることを特徴とするフラットケーブルの配索構造。」

3.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願平2-63169号(実開平4-21131号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.従来の技術について
「近年、偏平導体を絶縁性の可撓シートにより被覆した所謂FFCと称するフラットケーブルが各種電気配線に使用され、最近では自動車の電装配線への適用等も提案されている。このようなフラットケーブルは偏平面内での曲げの自由度が殆どないので、第6図に示すような曲線経路Cに沿設する場合には、フラットケーブル1を捩って折り畳む場合が一般的である。」(第1頁第18行?第2頁第6行)

イ.考案が解決しようとする課題について
「しかしながら、上述のようにフラットケーブル1を折り畳んだ場合には、折返部2,2’で絶縁体1aが破損易く漏電等の危険性がある。」(第2頁第8?10行)

ウ.第6図には、併設された複数条の偏平導体1bが絶縁体1aで一括して覆われたフラットケーブル1に折返部2,2’を設けて、所定の接続位置間に配索されているフラットケーブルの配索構造が、示されていると認められる。

上記摘記事項「ア.」と「ウ.」から、上記引用例には、
「併設された複数条の偏平導体1bが絶縁性の可撓シートで一括して覆われたフラットケーブル1に折返部2,2’を設けて、所定の接続位置間に配索されているフラットケーブル1の配索構造において、前記フラットケーブル1に設ける折返部2,2’はフリーな状態に形成されたフラットケーブル1の配索構造。」(以下、「引用例発明」という。)が、開示されていると認められる。

4.本願発明と引用例発明との対比
そこで、本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「偏平導体1b」、「絶縁性の可撓シート」、「フラットケーブル1」、「折返部2,2’」は、それぞれ本願発明の「導体」、「フラット絶縁被覆」、「フラットケーブル」、「折曲げ部」に相当することが明らかである。
また、上記摘記事項「ア.」に「このようなフラットケーブルは偏平面内での曲げの自由度が殆どないので、第6図に示すような曲線経路Cに沿設する場合には、フラットケーブル1を捩って折り畳む場合が一般的である。」と記載されていることから、フラットケーブル1は折返部2,2’を設ける位置によって配索方向を調整しているものと認められるから、引用例発明の「フラットケーブル1」は、「折返部2,2’で配索方向を調整して配索されている」ことは明らかである。
そうすると、両者は、「併設された複数条の導体がフラット絶縁被覆で一括して覆われたフラットケーブルに折曲げ部が設けられ、所定の接続位置間に配索されているフラットケーブルの配索構造において、前記フラットケーブルに設ける折曲げ部はフリーな状態に形成され、前記フラットケーブルは前記折曲げ部で配索方向を調整して配索されているフラットケーブルの配索構造。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)折曲げ部の構造について、本願発明は、折曲げ部を支点として該フラットケーブルをその幅方向に所用の範囲で移動できる曲率半径0.2?2mmの折曲げ曲率で折曲げているのに対して、引用例発明では、折返部の曲率半径は明確には記載されていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
一般に、フラットケーブルを折り畳んだ場合に、折曲げ部で破損しやすくなることは、上記摘記事項「イ.」に記載されているように本願出願前に周知の課題であって、折曲げ部の曲率半径が小さいほど折曲げ部に過度の応力が生じ、破損しやすくなることは、当業者にとって技術常識である。また、折曲げ部の曲率半径を大きくすると折曲げ部におけるフラットケーブルを配索するに際に収容するために必要とするスペースも大きくなってしまうことも当業者にとって技術常識である。
一方、本願発明の曲率半径に関する発明の詳細な説明の記載を見てみると、出願当初の明細書の【0032】に「例えば、折曲げ曲率R2は、0.2?2mm程度である。」との記載しかなく、折曲げ曲率を該範囲内にしたものが、それ以外の範囲にしたものと比べて格別の作用効果を裏付けるデータについて何ら記載されておらず、自明な事項であるとも認められないから、本願発明の折曲げ部を曲率半径を0.2?2mmとしたことに何ら臨界的意義は認められない。
そうすると、引用例発明の折返部を形成する際に、上記技術常識を考慮して、過度な応力がかからず、しかも所定のスペースに収まるように曲率半径を設計することは当業者が普通に行うことであって、その折返部の曲率半径を0.2?2mmとすることは当業者が適宜行う設計事項であると認められる。
そして、その際、「該折曲げ部を支点として該フラットケーブルをその幅方向に所用の範囲で移動できる」点は、折曲げ部の曲率半径を極端に小さくした場合以外、すなわち、上記曲率半径とした場合には当然に奏されることである。
また、本願発明の効果は、上記引用例発明及び技術常識から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものであるとは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、請求項1、請求項3?5を検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-04 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-23 
出願番号 特願2001-121170(P2001-121170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 隆雄赤川 誠一  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 黒田 浩一
秋田 将行
発明の名称 フラットケーブル、その配索構造及び配索方法  
代理人 松本 英俊  
代理人 松本 英俊  

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