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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1163724
審判番号 不服2005-14615  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-29 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 特願2004- 77841「3-5族化合物半導体の結晶性向上方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-200723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年10月27日に出願した特願平7-280232号の一部を平成16年3月18日に新たな特許出願としたものであって、平成17年7月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年7月29日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年8月23日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月23日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。

「【請求項1】
サファイア基板上に、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるn型層、発光層、及びp型層をこの順に有する積層構造の3-5族化合物半導体を製造するに当り、n型ドーパントをドーピングしたn型層のキャリア濃度を5×1017cm-3以上とし、かつ該n型層とサファイア基板とのあいだに、該n型層よりもキャリア濃度の低い厚みが5μm未満の下地層を積層することを特徴とする3-5族化合物半導体の結晶性向上方法。」

そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「基板」について、「サファイア」との限定を行うものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用刊行物記載の事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開平6-216409号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 気相成長法により、基板上に一般式InXAlYGa1-X-YN(但し、X<0<1、Y<0<1)で表される窒化物半導体単結晶層を成長させる方法であって、前記基板に、サファイアの上にGaZAl1-ZN(0≦Z≦1)よりなるバッファ層と、該バッファ層の上にGaNよりなる単結晶層とを形成した基板を使用し、該GaN単結晶層の上に前記窒化物半導体単結晶層を成長させることを特徴とする窒化物半導体単結晶層の成長方法。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は紫外、青色発光ダイオード、レーザーダイオード等の発光デバイスに利用される窒化物半導体単結晶層の成長方法に係り、特に、四元混晶の窒化インジウムアルミニウムガリウム(以下InAlGaNという)単結晶層の成長方法に関する。」

(ウ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】基板上に、まず結晶性に優れた四元混晶のInAlGaNを成長させることができれば、その上に二元混晶、三元混晶、四元混晶の窒化物半導体を成長することは、窒化物半導体の格子定数不整が極めて小さくなるため容易となり、従来極めて困難であったダブルヘテロ構造の発光デバイスを実現することができる。従って、本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであり、窒化物半導体を利用した発光素子をダブルヘテロ構造とするため、基板上にまず結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を成長する方法を提供することを目的とする。」

(エ)「【0006】
【課題を解決するための手段】四元混晶InAlGaNの単結晶層を成長させるにあたり、本発明者は、結晶性に優れたGaNを有する基板の上に成長させることにより、上記課題が解決できることを見いだした。即ち、本発明の成長方法は、気相成長法により、基板上に一般式InXAlYGa1-X-YN(但し、X<0<1、Y<0<1)で表される窒化物半導体単結晶層を成長させる方法であって、前記基板に、サファイアの上にGaZAl1-ZN(0≦Z≦1)よりなるバッファ層と、該バッファ層の上にGaNよりなる単結晶層とを形成した基板を使用し、該GaN単結晶層の上に前記窒化物半導体単結晶層を成長させることを特徴とする。
【0007】本発明の成長方法において、気相成長法には、前記したように有機金属化合物気相成長法(以下、MOCVD法という。)、分子線エピタキシー法を好ましく用いることができ、例えばMOCVD法を用いる方法では金属元素源として、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム等の有機金属化合物ガスと、窒素源としてアンモニア、ヒドラジン等のガスを、反応容器内の加熱された基板上に供給することによってInAlGaNを成長することができる。成長温度は700℃?1100℃の範囲が好ましく、700℃以下であるとInAlGaNが多結晶になりやすく、1100℃以上であると同じくInNが分解してしまうため、四元混晶のInAlGaNができにくい傾向にある。
【0008】バッファ層GaZAl1-ZN(0≦Z≦1)は、バッファ層の上に成長するGaN単結晶の結晶性を向上させるために必要である。このバッファ層については特公昭59-48794号公報、また特開平4-297023号公報に開示されたバッファ層と特に変わるものではないが、好ましくはZ=0のAlNバッファ層よりも、Z=1のGaNバッファ層を選択する方が結晶性に優れたGaN単結晶層を得ることができる。
【0009】バッファ層の上に形成する単結晶層はGaNとする必要がある。特に、そのGaNの結晶性は優れたものでなければならず、結晶性を評価する手段として、X線二結晶法によるX線回折測定(以下、X線ロッキングカーブ測定という。)において、(0002)面の回折ピークの半値幅が15分以下、さらに好ましくは10分以下であることが好ましい。その半値幅が15分より大きくても、GaN単結晶の上にInAlGaN単結晶層を成長させることができるが、15分以下のGaN単結晶層を選択することによりさらに優れたInAlGaN単結晶層を成長させることができる。しかし、従来のように、このGaN単結晶層のGaの一部をAl、In等で置換することはGaN単結晶層の結晶性が悪くなるので好ましくない。」

(オ)「【0010】
【作用】従来の方法では、サファイア基板上に、サファイアと窒化物半導体との格子定数不整を緩和するためのAlNバッファ層を形成し、その上に直接、四元混晶のInAlGaNを形成するか、または基板を窒化物半導体と格子定数の近い基板に変えて、その基板の上に同じく直接InAlGaNを成長しようとするために多結晶のInAlGaNしか得られなかった。
【0011】一方、本発明では、サファイアの上にバッファ層を形成し、そのバッファ層の上に、まず第一に結晶性に優れたGaNの単結晶層を形成する点が、従来と異なるところである。次に、サファイアとバッファ層とGaN単結晶層とを一つの基板と考え、この基板上で最も結晶性に優れたGaN単結晶面に、格子定数不整が小さく、GaNと同じ窒化物半導体からなる四元混晶のInAlGaNを成長させることにより、初めてその成長に成功することができた。これは結晶性の優れた窒化物半導体上に、同一の窒化物半導体を積層するために可能になったことであると推察される。」

(カ)「【0012】
【実施例】以下、図面を元に実施例で本発明の成長方法を詳説する。図1は本発明の成長方法に使用したMOCVD装置の主要部の構成を示す概略断面図であり、反応部の構造、およびその反応部と通じるガス系統図を示している。1は真空ポンプおよび排気装置と接続された反応容器、2は基板を載置するサセプター、3はサセプターを加熱するヒーター、4はサセプターを回転、上下移動させる制御軸、5は基板に向かって斜め、または水平に原料ガスを供給する石英ノズル、6は不活性ガスを基板に向かって垂直に供給することにより、原料ガスを基板面に押圧して、原料ガスを基板に接触させる作用のあるコニカル石英チューブ、7は基板である。TMG(トリメチルガリウム)、TMI(トリメチルインジウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)等の有機金属化合物ソースは微量のバブリングガスによって気化され、メインガスであるキャリアガスによって反応容器内に供給される。なお、特に図示していないが、各原料ガス、キャリアガスの流量は、各ガスラインに設置されたマスフローコントローラ(MFC)によって制御されている。
【0013】[実施例1]まず、よく洗浄したサファイア板7をサセプター2にセットし、反応容器内を真空排気した後、水素を供給して反応容器内を水素で十分置換する。次に、石英ノズル5から水素を流しながらヒーター3で温度を1050℃まで上昇させ、20分間保持してサファイア板7のクリーニングを行う。
【0014】続いて、温度を510℃まで下げ、石英ノズル5からアンモニア(NH3)4リットル/分と、TMGを27×10-6モル/分と、キャリアガスとして水素を2リットル/分とで流しながら、1分間保持してGaNバッファー層を約200オングストローム成長する。この間、コニカル石英チューブ7からは水素を10リットル/分と、窒素を10リットル/分とで流し続け、サセプター2をゆっくりと回転させる。
【0015】GaNバッファ層成長後、TMGのみ止めて、温度を1020℃まで上昇させる。温度が1020℃になったら、同じく水素をキャリアガスとしてTMGを60×10-6モル/分で流して30分間成長させ、GaN単結晶層を約2μm成長させる。GaN単結晶層成長後、装置を冷却し、基板を反応容器から取り出しGaN単結晶層のX線ロッキングカーブ測定を行うとその半値幅は5分であり、結晶性に優れていることを確認した。
【0016】X線ロッキングカーブ測定後、基板を再度反応容器内のサセプターに設置し、サセプター内を真空排気し、窒素で置換した後、アンモニアガスを流しながら温度を800℃まで上昇させる。800℃になったら、窒素を2リットル/分、TMGを2×10-6モル/分と、TMIを1×10-5モル/分と、TMAを2×10-7モル/分と、アンモニアを4リットル/分とで流しながら、InAlGaN層を60分間成長させる。
【0017】成長後、反応容器からウエハーを取り出し、得られたInAlGaN単結晶層のX線ロッキングカーブを測定すると、In0.2Al0.1Ga0.7Nの組成を示すところにピークを有しており、そのピークの半値幅は6分であった。これより、このIn0.2Al0.1Ga0.7Nの結晶性が非常に優れていることを示している。またIn0.2Al0.1Ga0.7N層に、常温でHe-Cdレーザーを照射して、フォトルミネッセンススペクトルを測定すると、360nm付近にピークを有する強い紫外発光を示した。
・・・ (中略) ・・・
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の成長方法によると、結晶性に優れたGaN単結晶層を有する基板上に成長させることにより、従来では困難であった結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を得ることができる。そのためこのInAlGaNの上に二元混晶、三元混晶、四元混晶の窒化物半導体を容易に積層することができ、ダブルへテロ構造の窒化物半導体の発光素子を得ることができ、その産業上の利用価値は大きい。」

上記(ア)?(カ)から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「気相成長法により、基板上に一般式InXAlYGa1-X-YN(但し、0<X<1、0<Y<1)(注:『X<0<1、Y<0<1』は誤記と認め、当審で修正)で表される窒化物半導体単結晶層を成長させる方法であって、前記基板に、サファイアの上にGaZAl1-ZN(0≦Z≦1)よりなるバッファ層と、該バッファ層の上にGaNよりなる単結晶層とを下記の手順で形成した基板を使用し、基板上で最も結晶性に優れたGaN単結晶面に、格子定数不整が小さく、GaNと同じ窒化物半導体からなる四元混晶のInAlGaNを成長させることにより、従来では困難であった結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を得ることができ、このInAlGaNの上に二元混晶、三元混晶、四元混晶の窒化物半導体を容易に積層することができ、ダブルへテロ構造の窒化物半導体の発光素子を得ることができる、窒化物半導体単結晶層の成長方法。
1.よく洗浄したサファイア板をサセプターにセットし、反応容器内を真空排気した後、水素を供給して反応容器内を水素で十分置換する。次に、石英ノズルから水素を流しながらヒーターで温度を1050℃まで上昇させ、20分間保持してサファイア板のクリーニングを行う。
2.続いて、温度を510℃まで下げ、石英ノズルからアンモニア(NH3)4リットル/分と、TMGを27×10-6モル/分と、キャリアガスとして水素を2リットル/分とで流しながら、1分間保持してGaNバッファー層を約200オングストローム成長する。この間、コニカル石英チューブ7からは水素を10リットル/分と、窒素を10リットル/分とで流し続け、サセプターをゆっくりと回転させる。
3.GaNバッファ層成長後、TMGのみ止めて、温度を1020℃まで上昇させる。温度が1020℃になったら、同じく水素をキャリアガスとしてTMGを60×10-6モル/分で流して30分間成長させ、GaN単結晶層を約2μm成長させる。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

(a)引用発明の「サファイア板」が、本願補正発明の「サファイア基板」に相当することは明らかである。

(b)引用発明の「一般式InXAlYGa1-X-YN(但し、0<X<1、0<Y<1)で表される窒化物半導体単結晶層」は基板上に成長されるのであるから、「サファイア基板上に、一般式InxGayAlzN(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される層を有する構造の3-5族化合物半導体」である点で、本願補正発明の「一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるn型層、発光層、及びp型層をこの順に有する積層構造の3-5族化合物半導体」と一致する。

(c)引用発明の「GaN単結晶層」は「結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を得る」ための層であり、サファイア板とInAlGaN単結晶層との間に形成され、その厚みも約2μmであるから、本願補正発明の「厚みが5μm未満の下地層」に相当する。

(d)引用発明は「従来では困難であった結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を得ることができ」る「窒化物半導体単結晶層の成長方法」に関するものであり、結晶性に優れた3-5族化合物半導体を形成することを目的としているので、「3-5族化合物半導体の結晶性向上方法」であるということができる。

したがって、両者は、
「サファイア基板上に、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される層を有する構造の3-5族化合物半導体を製造するに当り、3-5族化合物半導体とサファイア基板とのあいだに、厚みが5μm未満の下地層を積層する3-5族化合物半導体の結晶性向上方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明は「n型層、発光層、及びp型層をこの順に有する積層構造の」3-5族化合物半導体であり、「n型ドーパントをドーピングしたn型層のキャリア濃度を5×1017cm-3以上とし」ているのに対し、引用発明は、3-5族化合物半導体の構造及びキャリア濃度について明らかでない点。

相違点2:
本願補正発明の下地層は「n型層よりもキャリア濃度の低い」のに対し、引用発明の下地層であるGaN単結晶層のキャリア濃度は明らかでない点。

(4)判断
上記相違点1につき検討すると、引用発明は「従来では困難であった結晶性に優れた四元混晶のInAlGaN単結晶層を得ることができ、このInAlGaNの上に二元混晶、三元混晶、四元混晶の窒化物半導体を容易に積層することができ、ダブルへテロ構造の窒化物半導体の発光素子を得る」ことを目的とするものであり、また、ダブルへテロ構造の窒化物半導体が、n型層、発光層、及びp型層をこの順に有する積層構造であることは周知である(例えば、特開平7-162038号公報(【請求項1】、【請求項2】、【0005】?【0009】、【0014】?【0018】)、特開平7-15041号公報(【0008】?【0010】)参照。以下、それぞれ「周知例1、2」という。)。
また、上記積層構造とする際に、n型層のキャリア濃度を5×1017cm-3以上程度とすることは、該数値に格別の臨界的意義が認められないこと、及び上記周知例1、2に開示されたn型層のキャリア濃度の例示から見ても格別な値とはいえないことから、当業者が必要に応じて適宜選択しうる設計事項にすぎない。

上記相違点2につき検討すると、引用発明において「GaN単結晶層」は「温度が1020℃になったら、同じく水素をキャリアガスとしてTMGを60×10-6モル/分で流して30分間成長させ、GaN単結晶層を約2μm成長させる」の記載から見て、ドーピングについて特に記載されていないこと、及び技術常識から見てもドーピングを必ずしなければならない格別の事由はないことから、ノンドープのGaN層と見ることが相当である。
そして、ダブルへテロ構造の窒化物半導体において、n型層はドーピングして形成することが一般的であり(例えば、上記周知例1、2)、また、ノンドープに比較してドーピングすることによりキャリア濃度がより高くなることは技術常識である。この点は、例えば、本願補正発明の実施例1?4において、下地層をノンドープのGaN層とし、n型ドーパントをドーピングしたn型層よりもキャリア濃度の低い層としていることからも明らかである。
したがって、引用発明は、ノンドープのGaN単結晶層の上にダブルへテロ構造の窒化物半導体を積層することを想定しているのであるから、引用発明のGaN単結晶層はダブルへテロ構造の窒化物半導体のn型層よりキャリア濃度が低くなっているものと容易に推認することができる。

しかも、本願補正発明によってもたされる効果は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年8月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年2月14日付の手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。

「【請求項1】
基板上に、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるn型層、発光層、及びp型層をこの順に有する積層構造の3-5族化合物半導体を製造するに当り、n型ドーパントをドーピングしたn型層のキャリア濃度を5×1017cm-3以上とし、かつ該n型層と基板とのあいだに、該n型層よりもキャリア濃度の低い厚みが5μm未満の下地層を積層することを特徴とする3-5族化合物半導体の結晶性向上方法。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用刊行物記載の事項
原査定の拒絶理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「基板」について、「サファイア」であるとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項の全てが含まれる本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記引用刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-04 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-24 
出願番号 特願2004-77841(P2004-77841)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 井上 博之
山村 浩
発明の名称 3-5族化合物半導体の結晶性向上方法  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  

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