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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1163764
審判番号 不服2003-20500  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-22 
確定日 2007-09-03 
事件の表示 平成10年特許願第250116号「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月25日出願公開、特開平11-137842〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特願平9-240032号(出願日:平成9年9月4日)を国内優先権の基礎とする、出願日が、平成10年9月3日である、特願平10-250116号であって、平成15年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成15年10月22日付けで審判請求がなされるとともに、平成15年11月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年11月21日付けの手続き補正を却下する。
[理由] 独立特許要件
(1)補正後の本願発明
平成15年11月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「仮想空間内を移動する仮想物体を所定位置にある仮想視点から写した映像が表示手段に表示されてなる画像処理装置において、前記仮想視点が移動可能な領域を前記仮想物体から所定距離にある立体の面からなる領域に沿って設定する視点位置設定手段と、入力手段としての特定操作ボタンキーと、を備え、前記視点位置設定手段は、遊戯者が操作可能な対象である前記仮想物体が移動状態にある時には、入力手段としての方向キーからの操作信号を受けて前記仮想物体を移動させると共に前記仮想視点を仮想物体に自動的に追従させ、かつ前記仮想視点を仮想物体の移動方向に規制し、前記仮想物体がほぼ停止状態にある時に至った場合は操作可能な対象が前記仮想物体から前記仮想視点に変わり、前記方向キーからの前記仮想視点を制御するための操作信号を受けて、前記仮想視点が、前記仮想物体の注視点に向けて前記領域を連続的に移動できるように構成されてなり、遊戯者の前記特定操作ボタンキーの操作によって、移動している前記仮想物体をほぼ停止状態にし、前記視点位置設定手段は前記特性操作ボタンキーの操作を判定して遊戯者によって操作可能な対象を前記仮想物体から前記仮想視点に変えるように構成された画像処理装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1の「前記領域を連続的に移動できるように」に、「前記仮想物体の注視点に向けて」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の目的要件を満たすものであるから、次に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-117440号公報(以下、引用例1という。)には、以下の点が記載されている。

[記載事項1]
「【0014】また、請求項6の発明は、操作手段から入力される操作情報に基づいて仮想3次元空間内において見える視界画像の合成を行う画像合成方法であって、前記操作手段に含まれる第1の入力手段により、観者又は観者が搭乗する移動体の位置及び方向の少なくとも1つを連続的に変更するための操作情報を入力し、前記操作手段に含まれる第2の入力手段により、視点位置及び視線方向の少なくとも1つを連続的に変更するための操作情報を入力し、前記第1の入力手段から入力される前記操作情報に基づいて、観者又は移動体の仮想3次元空間内における位置及び方向の少なくとも1つを指定する第1の指定情報を求めると共に、前記第2の入力手段から入力される前記操作情報に基づいて、視点位置及び視線方向の少なくとも1つを指定する第2の指定情報を求め、観者又は移動体が前記第1の指定情報により指定される位置、方向にある場合に、前記第2の指定情報により指定される視点位置、視線方向において見える視界画像の合成を行うことを特徴とする。」
[記載事項2]
「【0022】図2に示すように、この各シミュレータ装置は、実際のレーシングカーの運転席と同様に形成されている。そして、プレーヤは、シート18に着座し、ディスプレイ10に映し出されたゲーム画面(レーシングカーの運転席から見える風景の視界画像)を見ながら、操作部12に設けられたハンドル14、アクセル15等を操作して架空のレーシングカーを運転してゲームを行う。そして、本発明では、更に、操作部12にロータリエンコーダ16が設けられている。このロータリエンコーダ16は、プレーヤの視点情報を、あらかじめ定められた軌道上で連続的に変更するために設けられたものである。
【0023】図3には、本3次元ゲームにおける仮想3次元空間の一例が示される。・・・(中略)・・・
【0024】図4(A)、(B)、図5(A)、(B)には、本3次元ゲームにおいてディスプレイ10上に映し出されるゲーム画面(視界画像)の一例が示される。これらのゲーム画面間では、各々視点情報(視点位置、視線方向)が異なっており、図6には、これらの各ゲーム画面に対応する視点位置20?23、視線方向24?27が示されている。」

[記載事項3]
「【0026】さて、本実施例では視点情報を連続的に変更することができる。例えば、図6では、視点情報の中の視点位置を運転席の位置からトップの位置まで(視点位置20?視点位置23まで)連続的に移動することができる。この場合、視点位置の移動する軌道30はあらかじめ定められており、プレーヤは、図2のロータリエンコーダ16を操作することで、この軌道30上で視点位置を連続的に移動させる。」

[記載事項4]
「【0028】2.装置全体の説明
図1には、本実施例に係る3次元シミュレータ装置のブロック図が示される。図1に示すように、本実施例の3次元シミュレータ装置は、プレーヤが操作情報を入力する操作部12、所定のゲームプログラムにより仮想3次元空間形成のための演算を行う仮想3次元空間演算部100、仮想3次元空間演算部100により決められた視点位置における視界画像を合成する画像合成部200、及びこの視界画像を画像出力するディスプレイ10を含んでいる。
【0029】操作部12には、例えば本3次元シミュレータ装置をレーシングカーゲームに適用した場合には、レーシングカーを運転するためのハンドル14、アクセル15等が含まれ、これにより操作情報が入力される。また、操作部12には、図2のロータリエンコーダ16に相当する入力部2が含まれ、これにより視点情報を連続的に変更するための操作情報を入力できる。
【0030】仮想3次元空間演算部100では、図3に示す仮想3次元空間における複数の表示物、例えばコース20、ビル60、アーチ62、スタンド64、崖66、プレーヤカー、相手レーシングカー、コンピューターカー等の位置あるいは位置及び方向を設定する演算が行われる。この演算は、操作部12からの操作情報や、あらかじめ設定記憶されているマップ情報等に基づいて行われる。そして、仮想3次元空間演算部100には、視点情報変更部107が含まれている。この視点情報変更部107には、入力部2から、視点情報(視点位置、視線方向)を連続的に変更するための操作情報が入力され、この操作情報に基づいて、あらかじめ定められた軌道(図6の軌道30)上で視点情報を連続的に変更する演算が行われる。そして、変更演算が施された視点情報は画像合成部200に出力される。画像合成部200では、仮想3次元空間演算部100からの演算結果に基づいて視界画像の合成が行われる。この場合、視界画像を合成する際に必要な視点位置、視線方向等の視点情報は仮想3次元空間演算部100から入力されたものを用いる。そして、合成された視界画像はディスプレイ10上に表示される。以上のようにして、あらかじめ定められた軌道上において視点情報を連続的に変更した場合の視界画像を得ることができる。」

[記載事項5]
「【0031】図7には、仮想3次元空間演算部100、画像合成部200等の具体的構成の一例を表すブロック図が示される。但し、本発明における仮想3次元空間演算手段、画像合成手段の構成は図7に示す構成に限られるものではない。
【0032】3.仮想3次元空間演算部についての説明
図7に示すように操作部12は、第1、第2の入力部4、6を含む。第1の入力部4は、ハンドル14、アクセル15等に相当するものであり、この第1の入力部4により、プレーヤカー(又はプレーヤ)の位置又は方向あるいは位置及び方向を連続的に変更する操作情報が入力される。例えば、ハンドル14を操舵すると、その操舵角により方向についての変化量が入力される。また、アクセル15の踏み具合により位置についての変化量が入力される。
【0033】また、第2の入力部6は、ロータリエンコーダ16に相当するものであり、この第2の入力部6により視点位置を連続的に変更する操作情報が入力される。また、この第2の入力部6により、視線方向を連続的に変更する操作情報を入力させることもできる。例えばロータリエンコーダ16を回転させると、その回転角により視点位置等の変化量が入力される。」

[記載事項6]
「【0048】5 .照準の連動
以上では、あらかじめ定められた軌道30上において視点位置及び視線方向を連続的に変更する場合について説明した。しかし、本実施例ではこれ以外にも、視点位置、視線方向を各々独立に任意の位置、方向に変更することも可能である。例えば、図13(A)では、移動体(又はプレーヤ)を移動させる第1の入力部として操縦レバー48が用いられ、視線方向を任意の方向に変更する第2の入力部としてジョイスティック50が用いられる。即ち、操縦レバー48を操舵することで、例えばプレーヤの搭乗する戦闘機等を所望の位置、方向に動かすことができる。また、ジョイスティック50を所望の方向へ倒すことで、視線方向を任意の方向に変更することができる。このようにすれば、移動体である戦闘機の進行方向と、プレーヤの視線方向等とを別々に独立に変更することができ、ゲームの面白味を増すことができる。」

[記載事項2]には、プレーヤが、レーシングカー(プレーヤカー51)の運転席から見える風景の視界画像が表示されたゲーム画面を見ながら、操作部12に第1の入力部4として設けられたハンドル14、アクセル15等を操作して仮想3次元空間内で架空のレーシングカー(プレーヤカー51)を運転し、操作部12に第2の入力部6として設けられたロータリエンコーダ16を操作して視点情報を変更しながらゲームを行うことがわかる。
また、運転席から見える風景の視界画像は、[記載事項3]、図4(A)、(B)及び図5(A)、(B)も参照すれば、所定位置にある仮想の視点位置から写されたものであり、前記仮想の視点位置は、運転中、プレーヤカー51の動きに自動的に追従し、かつ移動方向に規制されていることは明らかである。

[記載事項3]から、ロータリエンコーダ16から入力する視点情報を連続的に変更するための操作情報が入力されると、仮想の視点位置は【図6】に記載されているように、運転席の位置からトップの位置まで(視点位置20?視点位置23)、移動可能な軌道30に沿って連続的に設定され、視線方向の向きはプレーヤカー51に向けられていることがわかる。

[記載事項4]から、3次元シミュレータ装置は、仮想3次元空間演算部100及び画像合成部200及び視界画像を画像出力するディスプレイ10を含んだ画像処理装置であるといえる。

したがって、上記記載事項を参照すれば、引用例1には、
「仮想3次元空間内を走るプレーヤカー51を所定位置にある仮想の視点位置から映した映像がディスプレイ10に表示されてなる画像処理装置において、プレーヤカー51の運転を行う第1の入力部4としてのハンドル14及びアクセル15と、前記仮想の視点位置が移動可能な領域を軌道30に沿って設定する第2の入力部6としてのロータリエンコーダ16とを備え、プレーヤが第1の入力部4としてのハンドル14とアクセル15でプレーヤカー51の運転状態にある時には、ハンドル14及びアクセル15からの操作情報を受けてプレーヤカー51を走らせると共に、仮想の視点位置をプレーヤカー51に自動的に追従させ、かつ前記仮想の視点位置をプレーヤカー51の移動方向に規制し、ロータリエンコーダ16からの前記仮想の視点位置を制御するための操作情報を受けた場合は、前記仮想の視点位置が、その視線方向をプレーヤカー51に向けて、前記軌道30上を連続的に移動できるように構成されてなる画像処理装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である「プレイステーション完璧攻略シリーズ43 City Bravo! 完全ガイドブック」、株式会社双葉社、平成9年2月、第6頁(以下、「引用例2」という。)には、以下の点が記載されている。
[記載事項7]



[記載事項7]には、方向キーはカーソルを動かす機能を有しているが、R2ボタンを押しながら当該方向キーを押した場合には、その機能が、カーソルの位置を固定したまま画面をスクロールさせる機能に変更されることが読み取れる。
してみれば、方向キーはカーソルを動かす機能と、カーソルの位置を固定したまま画面をスクロールする機能と、の2つの機能を有するものであって(カーソルを動かす場合においても、カーソルの位置を固定したまま画面をスクロールする場合においても、同じ方向キー、というキーが共用される)、R2ボタンを押すことで上記2つの機能を切り替えているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「仮想3次元空間内」は、本願補正発明の「仮想空間内」に相当する。同様に引用発明の「プレーヤカー51」は「仮想物体」に、「仮想の視点位置」は「仮想視点」に、「ディスプレイ10」は「表示手段」に、「ロータリエンコーダ16」は「視点位置設定手段」に、「プレーヤ」は「遊戯者」に、「プレーヤカー51の運転状態にある時」は「移動状態にある時」に、「第1入力部としてのハンドル14」は「入力手段としての方向キー」に、「プレーヤカー51を走らせる」は「仮想物体を移動させる」に相当する。
本願補正発明の「注視点」は当初明細書の【0053】等の記載を参照すれば、「キャラクタの基準点(体の腰の当たりにある重心点から高さ90cm程度の位置)」であることがわかるから、引用発明の「プレーヤカー51」の一部に相当することは明らかである。
したがって、引用発明の「前記仮想の視点位置が、その視線方向をプレーヤカー51に向けて」は、本願補正発明の「前記仮想視点が、前記仮想物体の注視点に向けて」に相当する。
さらに、引用発明の「軌道30」は移動可能な領域を表すものでもあるから、本願補正発明の「前記領域」に相当することは明らかである。
そして、引用発明の「軌道30」はプレーヤカー51から所定距離にあるライン状の領域により指定される領域であるから、引用発明の「前記仮想の視点位置が移動可能な領域を軌道30に沿って設定する」と、本願補正発明の「前記仮想視点が移動可能な領域を前記仮想物体から所定距離にある立体の面から成る領域に沿って設定する」とは、ともに「前記仮想視点が移動可能な領域を前記仮想物体から所定距離にある領域に沿って設定する」点で一致している。
また、本願補正発明の「前記方向キーからの前記仮想視点を制御するための操作信号を受けて」と引用発明の「ロータリエンコーダ16からの前記仮想の視点位置を制御するための操作情報を受けた場合」とは、ともに、前記仮想視点を制御するための操作信号を受けている点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「仮想空間内を移動する仮想物体を所定位置にある仮想視点から写した映像が表示手段に表示されてなる画像処理装置において、前記仮想視点が移動可能な領域を前記仮想物体から所定距離にある領域に沿って設定する視点位置設定手段を備え、前記視点位置設定手段は、遊戯者が操作可能な対象である前記仮想物体が移動状態にある時には、入力手段としての方向キーからの操作信号を受けて前記仮想物体を移動させると共に前記仮想視点を仮想物体に自動的に追従させ、かつ前記仮想視点を仮想物体の移動方向に規制し、前記仮想視点を制御するための操作信号を受けて、前記仮想視点が、前記仮想物体の注視点に向けて前記領域を連続的に移動できるように構成されてなる画像処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「仮想物体から所定距離にある領域」が、本願補正発明は「立体の面からなる」ものであるのに対し、引用発明は「軌道30」で表されるライン状の領域である点。
[相違点2]
本願補正発明は「入力手段としての特定操作ボタンキー」を有しているのに対し、引用発明は備えていない点。
[相違点3]
本願補正発明は「仮想物体がほぼ停止状態にある時に至った場合は操作可能な対象が前記仮想物体から前記仮想視点に変わり」との記載があるのに対し、引用発明では(本願補正発明の仮想物体に相当する)プレーヤカー51がほぼ停止状態にある時に至った場合についての記載がない点。
[相違点4]
本願補正発明は「仮想視点を制御するための操作信号」が方向キーからのものであるのに対し、引用発明ではロータリエンコーダ16からのものである点。
[相違点5]
本願補正発明では「遊戯者の前記特定操作ボタンキーの操作によって、移動している前記仮想物体をほぼ停止状態にし、前記視点位置設定手段は前記特定(特性は誤記)操作ボタンキーの操作を判定して遊戯者によって操作可能な対象を前記仮想物体から前記仮想視点に変える」ように構成されているのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

(4)当審の判断
上記[相違点1]?[相違点5]について検討する。
[相違点1]について
仮想視点が移動可能な領域として設定されている「仮想物体から所定距離にある領域」の形状については、ゲーム内容及び遊戯者が操作するキャラクタの特性等に応じて、当業者が適宜設定し得る設計事項である。
したがって、本願補正発明の相違点1に係る発明特定事項を特定することは、当業者にとって格別なものではない。

[相違点2]について
本願補正発明では、入力手段として「方向キー」及び「特定操作ボタンキー」の2つのキーを有している。
本願の当初明細書【0011】?【0013】、【0062】?【0064】、及び【図5】に記載されたフローチャートを参照すれば、「方向キー」は、移動操作を行うものであって、移動操作の対象として、操作可能な2つの対象を有している(仮想物体が移動状態の時、仮想物体を移動させる機能、及び仮想物体がほぼ停止状態に至った時、仮想視点を移動させる機能)。そして、「特定操作ボタンキー」は、その操作があった場合に、移動している仮想物体をほぼ停止状態にし、かつ「方向キー」によって移動操作を行う対象を、仮想物体から仮想視点に切り換える機能を有するものである。
ところで、方向キーを移動のための方向指示と、ゲーム上の他の制御に関する方向指示とで共用し、特定のキーを用いることにより、双方の方向指示を切り換えることは、引用例2([記載事項7]参照)にも記載されているように、当該技術分野において慣用的に行われている技術である。
そして、操作キーを使用するゲームにおいて、遊戯者のキー操作の快適(容易)性を向上させることは周知の課題であり、当該課題の達成のために遊戯者が使用するキーの数を減らすという手段は、当該技術分野において広く採用されている手段である。
したがって、上記周知の課題を達成するためのキーの数を減らす手段として、上記慣用手段を採用することに何ら困難性はないから、引用発明に引用例2に記載されているような慣用手段を採用することによって、本願補正発明の相違点2に係る発明特定事項を導くことは当業者にとって格別ではない。

[相違点4]について
引用発明において上記引用例2に記載された慣用手段を採用した場合には、移動のための方向指示(ハンドル14による指示)と、視点情報の方向指示(ロータリエンコーダ16による指示)とは、(ロータリエンコーダ16を廃止して)ともにハンドル14(ロータリエンコーダ16としても同様)で共用される構成となるから、その操作信号も方向キー(ハンドル14)からの操作信号となる。
したがって、本願補正発明の相違点4に係る発明特定事項は、引用発明に引用例2に記載された慣用手段を採用することに伴い、結果的に生じる構成であるから、当業者が引用発明及び慣用手段に基づいて容易に想到したものであるといえる。

[相違点3]、[相違点5]について
上記[相違点4]について、で既に記載したように、引用例2に記載された慣用手段を採用した場合には、移動のための方向指示と、視点情報の方向指示とは、ともにハンドル14で共用される構成となるから、遊戯者が特定キーを押し、移動操作可能な対象としてプレーヤカー51から、視点情報に切り換えた場合、方向キーからはプレーヤカー51の移動のための方向指示は出力されないから、プレーヤカー51は、少なくとも走行方向に関して制御不能となり、ゲームが成立しなくなることは明らかである。したがって、そのための対策が必要となることも、当然認識されることである。そして、ビデオゲームの分野において、ゲーム中にゲームの設定等を変更する場合には、ゲームをポーズ状態として、ゲームに影響を与えないようにして設定を変更することは、広く採用されている手法であるので、上記の場合の対策として、一時的にプレーヤカー51を停止させて視点を選択させるようにすることは至極当然に想起され得ることである。
以上の通りであるから、相違点3及び相違点5に係る発明特定事項は、引用発明において、引用例2に記載された慣用手段を採用することに伴い、当然に想起され得る構成であるから、当業者が引用発明及び慣用手段に基づいて容易に想到したものであるといえる。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に予測し得る範囲内のものである。

以上のことより、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するもので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年11月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月26日付け手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「仮想空間内を移動する仮想物体を所定位置にある仮想視点から写した映像が表示手段に表示されてなる画像処理装置において、前記仮想視点が移動可能な領域を前記仮想物体から所定距離にある立体の面からなる領域に沿って設定する視点位置設定手段と、入力手段としての特定操作ボタンキーと、を備え、前記視点位置設定手段は、遊戯者が操作可能な対象である前記仮想物体が移動状態にある時には、入力手段としての方向キーからの操作信号を受けて前記仮想物体を移動させると共に前記仮想視点を仮想物体に自動的に追従させ、かつ前記仮想視点を仮想物体の移動方向に規制し、前記仮想物体がほぼ停止状態にある時に至った場合は操作可能な対象が前記仮想物体から前記仮想視点に変わり、前記方向キーからの前記仮想視点を制御するための操作信号を受けて、前記仮想視点が前記領域を連続的に移動できるように構成されてなり、遊戯者の前記特定操作ボタンキーの操作によって、移動している前記仮想物体をほぼ停止状態にし、前記視点位置設定手段は前記特性操作ボタンキーの操作を判定して遊戯者によって操作可能な対象を前記仮想物体から前記仮想視点に変えるように構成された画像処理装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、前記「2.(2)刊行物」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願発明」で述べた、本願補正発明から、「前記領域を連続的に移動できるように」に関する、「前記仮想物体の注視点に向けて」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)当審の判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成16年3月12日付けの上申書において、面接を希望する旨を記載しているが、請求人は、面接の内容について何ら具体的に記載していない。また、本件については、合議体においても、面接を受けなければならない特段の必要性は見あたらない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-02 
結審通知日 2007-07-03 
審決日 2007-07-23 
出願番号 特願平10-250116
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹榎本 吉孝  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 植野 孝郎
森口 良子
発明の名称 画像処理装置  
代理人 大賀 眞司  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  

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