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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1163803
審判番号 不服2005-22807  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-25 
確定日 2007-09-05 
事件の表示 特願2002-286153「オフライン診断システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-126688〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1. 手続の経緯
本件出願は、平成14年9月30日の出願であって、平成17年8月10日付けで手続補正がされたところ、平成17年9月7日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成17年11月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

第2. 平成17年11月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正後の本願発明
(1) 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「プロセスの制御を実行し、オフライン時に診断を実行し、その診断結果を送信するフィールド機器と、ディジタル通信バスを介して、この診断結果を受信する上位側アプリケーションとを備えるオフライン診断システムにおいて、
前記診断を行う信号入力範囲を時間軸または入力軸に対して複数領域に分割し、各領域の診断結果を順次前記上位側アプリケーションに送信し、
前記フィールド機器は、前記複数領域の一領域の診断結果を所定メモリ容量の第1のデータ記憶手段に保持し、この保持データを前記上位側アプリケーションに通信しつつ次の領域の診断結果を前記第1のデータ記憶手段に保存し、前記上位側アプリケーションに通信する測定制御手段を備え、
前記第1のデータ記憶手段の保持能力に基づいて前記信号入力範囲を複数領域に分割することを特徴とするオフライン診断システム。」
と補正された。

(2) 上記補正は、請求項1に記載された発明を特定する事項である「診断を行う信号入力範囲を時間軸または入力軸に対して複数領域に分割」する点に関し、「第1のデータ記憶手段の保持能力に基づいて前記信号入力範囲を複数領域に分割する」との限定を付加するものあって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち、本件補正が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものでないかにつき以下に検討する。

2. 引用刊行物
刊行物1:特開2002-55712号公報

(1) 原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、「調節弁保全装置および調節弁保全プログラムを記録した記録媒体」と題する発明について、図面とともに次の(ア)、(イ)の記載がある。
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】 この発明は、流体が流れる管路の途中に設けられた調節弁を自動的に保全する調節弁保全装置および調節弁保全プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 例えば、管路内を流れる流体の流量を一定の設定値になるように制御する場合、管路の途中に調節弁を設け、実際に計測した流量Qpvと設定値Qspとの差に応じて操作量を演算し、操作信号(開度設定値θsp)を調節弁へ与え、実際の開度θpvと比較しながら調節弁の開度を制御する。
【0003】 図8に従来の運転制御システムの要部を示す。同図において、1は調節弁、2は調節弁1に付設されたポジショナ、3は制御コントローラ、4は監視装置であり、監視装置4と制御コンローラ3とはネットワーク5を介して相互に接続されている。
【0004】 制御コントローラ3は、センサにより計測した調節弁1を通る流体の計測流量Qpvを入力とし、この計測流量Qpvとネットワーク5を介して送られてくる設定流量Qspとの差に応じた操作量を演算し、操作信号(開度設定値θsp)をポジショナ2へ与える。
【0005】 ポジショナ2は、制御コントローラ3からの開度設定値θspと調節弁1からのフィードバック値(実際の開度)θpvとを比較し、θpv=θspとなるように調節弁1への空気圧を調整(弁開度を調整)する。ポジショナ2には電気信号を空気圧に変換する電空変換部が設けられている。なお、1-1は調節弁1に付設された空気圧計である。
【0006】 このような運転制御システムにおいて、調節弁1の開閉動作が正常に行われないとすると、フィードバック値θpvを指示された開度設定値θspに合わせ込むことができず、流量制御が正しく行われないことになる。さらに、緊急停止時、全開又は全閉要求に対応できないこともある。
【0007】 調節弁1の開閉動作の不良原因には、調節弁1自体の故障や空気圧の異常など様々な原因がある。中でも、固形物を含む流体や堆積又は固着し易い物質を含む気体により、調節弁1の内側に詰まりや固着などが生じることを原因とするものは比較的発生の頻度が高い。この詰まりや固着などは、強制的に調節弁1の開閉動作を行うことにより、簡単に除去される場合が多い。
【0008】 そこで、従来の運転制御システムでは、制御コントローラ3における運転モードを定期的に自動運転から手動運転に切り替えて、すなわち設定流量Qspと計測流量Qpvとの差に従う調節弁1の開度制御を一時的に中断し、オペレータからの操作指令をネットワーク5を介してポジショナ2へ与えて、調節弁1の強制開閉動作を行う。」

(イ) 「【0026】〔スティック診断〕 スティック診断とは、調節弁1の自動運転中のぎくしゃくした動きなど、細かい動きに着目した診断である。
スティック診断手段6Aは、調節弁保全用プログラム中のスティック診断サブプログラムに従い、パラメータ格納手段6Fから1データ作成の開度サンプリング個数などのパラメータを取り出し、これらのパラメータを通信手段6Iよりネットワーク7を介して調節弁1に付設されたポジショナ2へ送信する(図3の(1))。なお、データ収集開始時刻、データ収集周期、警報検出しきい値(データあたりの偏差しきい値、異常データ個数しきい値)は、ポジショナ2へは送信しない。
【0027】 ポジショナ2は、調節弁保全装置6からのパラメータを受信し、自己の有するスティック診断メインプログラムに従って、自動運転中の調節弁1からのスティック診断データの採取を行う。例えば、細かいサンプリングタイム(例えば、40msec )で10000個の開度をサンプリングし、この10000個の開度を1データとし特開平10-047313号公報などに示された方法によって解析処理し、その解析処理結果(スティック診断データ(x,y))を定期的に調節弁保全装置6へ送る。」

(ウ) 上記(ア)に記載の従来技術は、これを診断システムと捉えることができるので、主にこの記載を参照すれば、刊行物1には、
「運転モードを定期的に自動運転から手動運転に切り替えて調節弁の強制開閉動作を行い、その診断結果を送信する制御コントローラと、
ネットワークを介してこの診断結果を受信する監視装置とを備える診断システム。」との発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

3. 対比
(1) 本願補正発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。
(ア) 後者の「調節弁の強制開閉動作を行」うとは、前者の「診断を実行」することに相当する。同様に、「制御コントローラ」は「フィールド機器」に、「監視装置」は「上位側アプリケーション」に相当する。
(イ) 前者の「ディジタル通信バス」と後者の「ネットワーク」とはともに、「通信伝送路」という点で概念上共通する。
すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(2) 一致点
「診断を実行し、その診断結果を送信するフィールド機器と、
通信伝送路を介して、この診断結果を受信する上位側アプリケーションとを備える診断システム。」

(3) 相違点
(ア) 本願補正発明が、「プロセスの制御を実行し、オフライン時に診断を実行」するものであり、「オフライン診断システム」であるのに対して、引用発明のものは、定期的に自動運転から手動運転に切り替えて行うものであって、オフラインとされるか明確でない点。
(イ) 本願補正発明のものが、診断結果を「ディジタル通信バスを介して」送受信しており、「診断を行う信号入力範囲を時間軸または入力軸に対して複数領域に分割し、各領域の診断結果を順次前記上位側アプリケーションに送信し、フィールド機器は、前記複数領域の一領域の診断結果を所定メモリ容量の第1のデータ記憶手段に保持し、この保持データを上位側アプリケーションに通信しつつ次の領域の診断結果を前記第1のデータ記憶手段に保存し、前記上位側アプリケーションに通信する測定制御手段を備え、前記第1のデータ記憶手段の保持能力に基づいて前記信号入力範囲を複数領域に分割する」こととしているのに対して、引用発明のものは、ネットワークを介するが診断結果をどのように送受信しているのか明確ではない点。

4. 相違点についての判断
(1) 相違点(ア)について
引用発明は、運転モードを定期的に自動運転から手動運転に切り替えて調節弁の強制開閉動作を行うものであるが、これは通常は自動運転を行っていて、調節弁の診断のときに手動運転に切り替えるということである。ここで、オフライン診断というものはごく普通の技術であるから、引用発明において、手動運転としたときに他の機器類と切り離して診断を行うようにすることは当業者に容易である。そしてこのようにしたときには、引用発明の診断システムを「オフライン診断システム」と呼ぶことができる。

(2) 相違点(イ)について
一般に通信伝送路として、「ディジタル通信バス」を採用することは当業者にとって格別のことではない。
また、伝送するデータ量が大きい場合に、バッファメモリの容量を勘案して1回に送るべきデータ分量を決める、即ちデータを分割するということは周知の技術である。例えば、特開昭50-109621号公報には、1ブロック単位で送るので1ブロック分程度のバッファメモリ容量でよい旨の記載(公報2頁左下欄6行から9行を参照)があり、特開昭62-126738号公報には、従来技術の説明で、一度に転送できるデータ量はメモリサイズによって決まるので、バッファメモリのサイズに区切って何度も転送しなければならなかった旨の記載がある(公報2頁左上欄10行から17行を参照)。さらに、特開平9-331370号公報には、記憶手段のデータ記憶容量に応じて転送データを分割して送受信する旨の記載がある(請求項1を参照)。
さらに、刊行物1についての前記「第2 2.(1)(イ)」の段落【0027】には、「スティック診断」に関するが、「例えば、細かいサンプリングタイム(例えば、40msec )で10000個の開度をサンプリングし、この10000個の開度を1データとし特開平10-047313号公報などに示された方法によって解析処理し、その解析処理結果(スティック診断データ(x,y))を定期的に調節弁保全装置6へ送る。」との記載がある。この記載に接した当業者は、伝送するデータ量が大きい場合に、一定時間ごとあるいは一纏まりの診断結果データを得ては順次送信するというようなデータ送受信の仕方に思いが至るであろう。
そうすると、引用発明において、通信伝送路として、ネットワークに代えてディジタル通信バスを採用し、データの送受信については、前記周知の技術及び前記刊行物1段落【0027】の記載を参照して、前記相違点(イ)に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到できたものと認めることができる。

(3) そして、本願補正発明の作用効果についても、刊行物1に記載された発明及び周知の技術から当業者が予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5. むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3. 本願発明について
1. 本願発明
平成17年11月25日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年8月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「プロセスの制御を実行し、オフライン時に診断を実行し、その診断結果を送信するフィールド機器と、ディジタル通信バスを介して、この診断結果を受信する上位側アプリケーションとを備えるオフライン診断システムにおいて、
前記診断を行う信号入力範囲を時間軸または入力軸に対して複数領域に分割し、各領域の診断結果を順次前記上位側アプリケーションに送信し、
前記フィールド機器は、前記複数領域の一領域の診断結果を所定メモリ容量の第1のデー
タ記憶手段に保持し、この保持データを前記上位側アプリケーションに通信しつつ次の領域の診断結果を前記第1のデータ記憶手段に保存し、前記上位側アプリケーションに通信する測定制御手段を備えた
ことを特徴とするオフライン診断システム。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその開示事項は、前記「第2.2.」に記載されたとおりである。

3. 対比・判断
本願発明は、前記「第2」において検討した本願補正発明から、前記「第2.1.(2)」について検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明についても、本願補正発明と同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-29 
結審通知日 2007-04-03 
審決日 2007-04-16 
出願番号 特願2002-286153(P2002-286153)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G05B)
P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 豊英西村 泰英  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 丸山 英行
渋谷 善弘
発明の名称 オフライン診断システム  
代理人 下平 俊直  
代理人 下平 俊直  
代理人 井出 直孝  
代理人 井出 直孝  

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