ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16B 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する F16B 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16B 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する F16B |
---|---|
管理番号 | 1164339 |
審判番号 | 訂正2007-390079 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2007-06-25 |
確定日 | 2007-08-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3900374号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3900374号に係る特許請求の範囲及び明細書を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯の概要 本件審判は、特許第3900374号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲及び明細書を、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。 本件特許は、平成10年10月7日(優先権主張 1997年10月7日,1998年3月25日,米国)に出願した特願平10-285401号(以下、「原出願」という。)の一部を平成18年10月3日に新たな特許出願とした、特願2006-271861号(以下、「本願」という。)について、平成19年1月12日に設定登録がなされたものである。この本件特許について、平成19年6月25日付けで、本件審判の請求がなされた。 2.請求の趣旨 本件審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、次の(1)ないし(3)のとおり訂正しようとするものである。 (1)特許請求の範囲の【請求項1】に「前記シャンクの開口部」(本件特許公報第1頁第14行)とあるところ、その「シャンク」を「スリーブ」と訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。 (2)特許請求の範囲の【請求項2】に「締結具組立」(本件特許公報第1頁第19行)とあるを、「締結具組立体」と訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。 (3)明細書の発明の詳細な説明に「前記シャンクの開口部」(本件特許公報第3頁第13行;段落【0012】参照)とあるところ、その「シャンク」を「スリーブ」と訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。 3.当審の判断 3-1.訂正の目的の適否 まず、本件訂正の目的が適法なものであるか否かについて、検討する。 (1)訂正事項1について 本件特許の明細書には、次の記載が認められる。 (ア)「本発明は、釘等の締結具をキャリアによって一列に保持した締結具組立体に関する。」(本件特許公報第2頁第3行;【発明の属する技術分野】の欄;段落【0001】を参照) (イ)「従来技術の締結具組立体21の代表例を図12に示す。」(本件特許公報第2頁第18行;【従来の技術】の欄;段落【0004】を参照) (ウ)「キャリア22はポリプロピレン製であり、各締結具2を保持する複数のスリーブ23を有している。スリーブ23の各々は、下環状部24と、下環状部24と一体成形された上環状部25とを含んでいる。」(本件特許公報第2頁第26行-同頁第28行;【従来の技術】の欄;段落【0005】を参照) (エ)「締結具2が基体内に打ち込まれると、スリーブ23の上環状部25が凹所26において壊れて長手方向に2つに割れる。通常、この長手方向の分割はスリーブ23の下環状部24までは達せずに、 ・・・。更に、スリーブ23の2つに割れた上環状部25は、通常、下環状部24につながったまま残り、所謂「テール」として基体からはみ出す。 本発明は、一列に配置された締結具をキャリアで保持して成る締結具組立体において、キャリアの新規な構造を提供することを目的としている。」(本件特許公報第2頁第40行-同頁第49行;【発明が解決しようとする課題】の欄;段落【0007】及び【0010】を参照) (オ)「本発明では、左右の中間壁部が矩形の開口部によって形成されており、開口部の隅部に高い応力が集中することにより、締結具が基体内に打ち込まれるときのスリーブの破壊が容易になる。」(本件特許公報第3頁第30行-同頁第32行;【発明の効果】の欄;段落【0015】を参照) (カ)「(1).第1実施形態の概要 図1に示すように、締結具組立体1は、一列に配列された締結具2の群を含んでいる。各締結具2は焼入鋼から成っている。締結具2は、キャリア3により互いに平行(並列に並べた状態に)に保持されている。締結具2の各々は、尖った先端(下端)4aを有する長尺のシャンク4と、シャンク4の上端(基端)に設けた頭部5とから成っている。」(本件特許公報第3頁第49行-第4頁第3行;段落【0023】を参照) (キ)「(2).スリーブの詳細 スリーブ6は、上脆弱部としての上カラー9と、下脆弱部としての下カラー10と、上下カラー9,10の間に位置した中間壁部11とを含んでいる。」(本件特許公報第4頁第40行-同頁第42行;段落【0030】参照) (ク)「図5(A)?(C)に示すように、中間壁部11の各々は、2つの凹状矩形の境界13を有しており、これにより、上下カラー9,10の間に、キャリア3の正面視で矩形の開口部14が形成されている(換言すると、開口部14の左右両側に中間壁部11が形成されている。)。」(本件特許公報第5頁第15行-同頁第18行;段落【0033】を参照) (ケ)「既述のとおり、中間壁部11は、スリーブ6に前後2つの矩形の開口部14を形成することにより得られる。矩形の開口部14は、図1,図3,図4に示すように、好ましくは、高い応力が集中する鋭角の隅部14aを有している(換言すると、矩形の開口部14の各隅部14aは角張った鋭角になっている。)。これにより、締結具2が基体内に打ち込まれるときのスリーブ6の破壊が容易になる。」(本件特許公報第5頁第26行-同頁第30行;段落【0034】を参照) 本件特許の明細書及び図面における、上記の記載事項によれば、「従来技術」では、締結具2が基体内に打ち込まれる際、キャリア22のスリーブ23を構成する下環状部24及び上環状部25のうち、上環状部25は壊れて長手方向に割れるものの、通常、この長手方向の分割は下環状部24までは達しないため、割れた上環状部25が下環状部24につながったまま残り、「テール」として基体からはみ出す現象を生じるところ、「本発明」では、このような問題を解決しうる、キャリアの新規な構造を提供することを目的としているものと認められる。このため、「本発明」では、キャリア3のスリーブ6に開口部14を設け、もって、締結具2が基体内に打ち込まれるときのスリーブ6の破壊が容易となるよう構成しているものと認められる。スリーブ6の中にあって、開口部14の位置は、当該開口部14の左右両側に、(上カラー9及び下カラー10の間に位置する)中間壁部11が形成されているという、位置関係を有したものとなっている。そして、当該開口部14は、矩形をなすように形成されており、その各隅部14aは、角張った鋭角をなしていて、高い応力の集中による破壊の容易化が図られている。 また、本件特許の図1、図3、図4、図5、及び図9には、キャリア3のスリーブ6において、上カラー9と下カラー10との間に位置する中間壁部11の横に隣接して開口部14を形成した状態が図示されている。それらの図の中で、キャリア3の正面視を図示した、図1、図3、図4、及び図9をみると、開口部14が矩形状をなしていることが看取される。そして、キャリア3の側面視を図示した、図5(特に(B))をみると、中間壁部11の両側(「前後」方向の両側)が、開口部14の縁部において矩形の凹状(「凹状矩形の境界13」の部分を参照)をなしていることも看取される。 以上を総合すると、本件特許の明細書及び図面に記載の「本発明」の構成では、キャリア3のスリーブ6において、その前後の部位に、正面視矩形の開口部14が形成されており、当該開口部14は、スリーブ6の中間壁部11が当該開口部14を挟んで左右に分離するように位置しているものと認められる。そして、「中間壁部11の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、スリーブ6の開口部14はキャリア3の正面視で矩形に形成されている」ことも認められる。 他方、「シャンク」についてみてみると、本件特許の明細書における上記摘記事項(ア)及び(カ)によれば、シャンク4は、長尺で、尖った先端(下端)4aを有し、頭部5とともに、釘等の締結具2を構成するものである。この点と、図1の記載に照らせば、シャンク4は、釘等の締結具2において、頭部5以外の、長尺の柄状の部分ということができる。そして、かかる「シャンク」については、本件特許の明細書のいずれの部分をみても、訂正事項3に係る「前記シャンクの開口部」(本件特許公報第3頁第13行;段落【0012】参照)との記載を除いて、「シャンク」が何らかの開口部を有しているという記載も示唆も見出せない。また、本件特許の図面のいずれをみても、締結具2のシャンク4に何らかの開口部が設けられた状態の図示は、認めることができない。 ここで、本件特許の特許請求の範囲における【請求項1】に注目すると、「前記キャリアを構成する各スリーブは、 ・・・ 中間壁部とを備えており」とあり、「前記中間壁部は、 ・・・ 前後に開口した開口部を挟んで左右に分離しており」とあるから、当該「開口部」は、「キャリアを構成する各スリーブ」に形成されており、より具体的には、各スリーブの「中間壁部」を左右に分離するように位置しているものと認められる。そして、上記の「開口部を挟んで左右に分離しており」の記載に続いて、「前記中間壁部の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、前記シャンクの開口部はキャリアの正面視で矩形に形成されている」とある。してみれば、訂正事項1に係る「前記シャンクの」との記載のほかには、上記2か所の「開口部」との記載が、互いに別異のものであると解する根拠はなく、本件特許の明細書及び図面に記載された事項にもかんがみれば、「開口部14」に対応する、同一のものであると解するべきである。これについて、さらに詳述すれば、次のとおりである。 すなわち、本件特許の明細書及び図面の記載によれば、「本発明」の構成では、キャリア3のスリーブ6において、その前後の部位に、正面視矩形の開口部14が形成されており、その「開口部14」について、スリーブ6の中間壁部11が当該開口部14を挟んで左右に分離するように位置していること、さらには、「中間壁部11の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、スリーブ6の開口部14はキャリアの正面視で矩形に形成されている」ことが認められるのは、前説示のとおりであるから、【請求項1】において、「前記中間壁部は、 ・・・ 前後に開口した開口部を挟んで左右に分離しており」なる記載における「開口部」も、「前記中間壁部の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより」「キャリアの正面視で矩形に形成されている」「開口部」も、明細書及び図面に記載の「開口部14」に対応する、同一のものであると解するほかはない。しかも、本件特許の明細書、特許請求の範囲、及び図面において、シャンクに開口部を設けることを記載ないし示唆した箇所は、訂正事項1及び3に係る記載のほかに、見出すことはできないのも、前説示のとおりである。そうすると、結局、【請求項1】における「前記シャンクの開口部」との記載が「前記スリーブの開口部」の誤記であることは、本件特許の明細書、特許請求の範囲、及び図面に接した当業者には、明らかなことである。 以上より、訂正事項1は、平成15年改正前の特許法第126条第1項第2号に規定される誤記の訂正に該当するものである。 (2)訂正事項2について 本件特許における特許請求の範囲の【請求項1】は、末尾が「・・・ 締結具組立体。」となっており、また、本件特許の発明の名称も、「締結具組立体」となっている。 訂正事項2は、上記【請求項1】を引用する請求項である【請求項2】の末尾を、「・・・ 締結具組立。」から「・・・ 締結具組立体。」に変更するものであるところ、これが、被引用請求項の【請求項1】、さらには発明の名称に整合させる、誤記の訂正であることは、明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、すでに上記(1)にて検討した、【請求項1】に係る訂正事項1に対応した、明細書の訂正であるから、上記(1)にて説示した理由により、誤記の訂正であることは明らかである。 (4)小括 叙上のとおり、訂正事項1ないし3は、いずれも、平成15年改正前の特許法第126条第1項第2号に規定される誤記の訂正に該当するものであるから、それら訂正の目的は適法である。 3-2.当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か 次に、本件訂正が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、または図面に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて、検討する。 本願の願書に最初に添付した明細書(以下、「本願当初明細書」という。)には、次の記載が認められる。 (コ)「本発明は、釘等の締結具を一列に保持した締結具組立体であって、釘ガン等の動力型締結具駆動工具で使用可能な締結具組立体に関する。」(【発明の属する技術分野】の欄;段落【0002】参照) (サ)「上脆弱部が割れたときにスリーブが容易に完全に壊れるように、上脆弱部と下脆弱部は一対の中間側壁により連結されている。中間壁部は、上脆弱部および下脆弱部とは異なり、完全にはシャンクの外周に沿って形成されていない。中間壁部の最も狭い部分では、シャンクの外周の少なくとも2/3よりも少ない領域を覆っている。この構成により、中間壁部は上下脆弱部よりも構造的に弱くなり、上脆弱部が割れたときに中間壁部は下脆弱部が壊れる前に概ね水平方向にに壊れる。」(【課題を解決するための手段】の欄;段落【0013】参照) (シ)「図1を参照すると、締結具組立体50は、一列に配列された焼入鋼から成る締結具60を含んでいる。締結具60は、キャリア70により互いに平行に保持されている。締結具60の各々は、尖端66を有する長尺のシャンク64と、頭部62とを含んでいる。」(【発明の実施の形態】の欄;段落【0023】参照) (ス)「キャリア70は、複数のスリーブ72を含んでいる。スリーブ72の各々は締結具60のシャンク64を受承、包囲する。」(段落【0025】参照) (セ)「スリーブ72の各々は、好ましくは、一体成形され、上脆性部としての上カラー74と、中間壁部76と、下脆性部としての下カラー78とを含んでいる。」(段落【0030】参照) (ソ)「図2および図4から図7を参照すると、中間壁部76は2つの壁部61、63を含んでいる。壁部61、63は、上下カラー74、78とは異なり、締結具60のシャンク64を完全には包囲していない。 図5から図7に示すように、前記壁部の各々は、2つの凹状矩形の境界(65、66、67、68)を有しており、これにより、スリーブ72の上下カラー74、78の間に矩形の開口部59が形成される。矩形の開口部59の領域で、壁部61、63は締結具のシャンク64の外周面の2/3より小さい領域、好ましくは、1/2よりも小さい領域、最も好ましくは、約1/3の領域を覆うようになっている。更に後述するように、シャンク64の外周の一部を包囲する壁部61、63を設けることにより、上カラー74が分離されるとき、スリーブ72が横方向に容易に壊れるとの利点が得られる。 図示する好ましい実施形態では、壁部61、63は2つの矩形の開口部59を備えたスリーブ72を形成することにより得られる。矩形の開口部59は、好ましくは、高い応力が集中する鋭角の隅部を有しており、これにより、締結具が基体内に打ち込まれるときのスリーブの破壊が容易になる。」(段落【0032】ないし【0034】参照) また、本願の願書に最初に添付した図面(以下、「本願当初図面」という。)の図1、図2、図4ないし7、及び図12には、キャリア70のスリーブ72において、上カラー74と下カラー78との間に位置する中間壁部76の横に隣接して開口部59を形成した状態が図示されている。それらの図の中で、キャリア70の正面視を図示した、図1、図2、図4、及び図12をみると、開口部59が矩形状をなしていることが看取される。そして、キャリア70の側面視を図示した、図5ないし図7をみると、中間壁部76の両側(本件特許でいう「前後」方向の両側)が、開口部59の縁部において矩形の凹状をなしていることも看取される。 以上を総合すると、本願当初明細書及び図面には、キャリア70のスリーブ72において、その前後の部位に、正面視矩形の開口部59が形成されており、当該開口部59は、スリーブ72の中間壁部76が当該開口部59を挟んで左右に分離するように位置しているものと認められる。そして、「中間壁部76の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、スリーブ72の開口部59はキャリア70の正面視で矩形に形成されている」ことも認められる。 よって、本件訂正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、または図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、平成15年改正前の特許法第126条第2項に規定する要件を満たすものである。 3-3.特許請求の範囲の拡張・変更の有無 続いて、本件訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものであるか否かについて、検討する。 上記3-1.(1)にて検討したとおり、本件特許において、特許請求の範囲の【請求項1】の「前記シャンクの開口部」との記載が「前記スリーブの開口部」の誤記であることは、本件特許の明細書、特許請求の範囲、及び図面に接した当業者には、明らかなことである。 さらに、発明の目的の観点から検討すると、次のとおりである。同じく上記3-1.(1)にて説示したとおり、本件特許の明細書によれば、従来技術では、締結具が基体内に打ち込まれる際、キャリアのスリーブを構成する下環状部及び上環状部のうち、上環状部は長手方向に分割しても、通常、当該分割が下環状部までは達しないため、割れた上環状部が下環状部につながったまま残り、「テール」として基体からはみ出す現象を生じていた。そこで、「本発明」は、このような問題を解決しうる、キャリアの新規な構造を提供することを目的としているものと認められる。そうすると、この目的を達するためには、締結具が基体内に打ち込まれる際、キャリアのスリーブが容易に破壊されることが求められることは、当業者であれば直ちに認識できることである。そして、一般に、部材に開口部を形成することにより、その強度が低下し破壊が容易になることは、技術常識であるから、「シャンク」ではなく、キャリアのスリーブに「開口部」を形成することは、キャリアのスリーブの破壊容易化という、上記の目的に合致した事項であることも、当業者であれば、直ちに認識できることである。このように、発明の目的の観点から検討しても、訂正事項1による訂正後の請求項1に係る発明は、本件特許の明細書から把握される発明の目的の範囲内にあるものというべきである。 してみれば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 また、前説示のとおり、訂正事項3は、訂正事項1との整合のための訂正であり、さらに、訂正事項2については、【請求項2】の末尾を被引用請求項の【請求項1】、さらには発明の名称に整合させるための訂正であるから、これらも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 よって、本件訂正は、平成15年改正前の特許法第126条第3項に規定する要件を満たすものである。 3-4.独立特許要件についての判断 進んで、本件訂正後の請求項1及び2に係る各発明(以下、それぞれ「訂正発明1」及び「訂正発明2」という。)に関し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。 上記1.にて述べたとおり、本願は原出願を分割した出願であるので、当該分割が適法な分割であって、特許法第44条第2項の規定により出願の時が原出願の時に遡及するものであるか否かについて、検討する。 そこで、原出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、それぞれ、「原出願当初明細書」及び「原出願当初図面」という。)を参照すると、上記3-2.において摘記した本願当初明細書の記載事項(コ)ないし(ソ)が、原出願当初明細書の【0001】段落、【0012】段落、【0021】段落、【0022】段落、【0026】段落、【0028】段落、及び【0029】段落に記載されていることを認めることができる。そして、本願当初図面の図1、図2、図4ないし7、及び図12に記載された、同じく上記3-2.において摘記の事項は、原出願当初図面の、同じ図面番号の図面に、それぞれ記載されているものと認められる。 よって、上記3-2.での検討に照らせば、訂正発明1及び2は、原出願の出願当初において、当該原出願に包含されていたものと認められるので、適法な分割であり、本願の出願の時は、原出願の時に遡及するものと認められる。 次に、原出願は、パリ条約に基づく優先権の主張を伴うものであるから、訂正発明1及び2が、優先権の利益を享受することができるものであるか否かについても検討する。 そこで、優先権主張の基礎となった出願である、出願番号08/946,319の米国特許出願(出願日:1997年10月7日; 以下、「優先基礎出願」という。)の出願当初明細書及び図面(米国特許第5836732号明細書を参照)をみると、その出願当初明細書の第2頁第9行-同頁第11行、第5頁第10行-同頁第17行、第8頁第8行-同頁第11行、同頁第17行-同頁第18行、第10頁第5行-同頁第6行、及び第11頁第5行-同頁第19行の記載、並びに、出願当初図面の図1、図2、及び図4ないし図7の記載からして、同明細書及び図面には、キャリア(carrier)70のスリーブ(carrier sleeves)72において、その前後の部位に、正面視矩形の開口部(rectangular openings)59が形成されており、当該開口部59は、スリーブ72の中間壁部(middle wall portion)76が当該開口部59を挟んで左右に分離するように位置した構成が記載されているものと認められる。そして、「中間壁部76の前後両側を側面視矩形の凹状(“two concave rectangular boundaries (65, 66, 67, and 68)”(第11頁第8行)を参照)に形成することにより、スリーブ72の開口部59はキャリア70の正面視で矩形に形成されている」ことが記載されていることも認められる。 よって、上記3-2.での検討と同様に、訂正発明1及び2は、優先基礎出願において、その出願当初に開示されていたものと認められる。 以上より、訂正発明1及び2の特許要件の判断基準時点は、訂正によって変わるものではない。そして、訂正発明1及び2が特許出願の際独立して特許を受けることができないという新たな理由も見出されない。したがって、訂正発明1及び2は、平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に適合するものと認めることができる。 4.むすび 叙上のとおり、本件審判の請求は、平成15年改正前の特許法第126条第1項第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 締結具組立体 【発明の属する技術分野】 【0001】 本発明は、釘等の締結具をキャリアによって一列に保持した締結具組立体に関する。 【従来の技術】 【0002】 迅速動作する締結具駆動工具は建築業の分野で一般的に用いられている。釘、コンクリート貫通ピン、鉄鋼貫通ピン等の締結具は、駆動工具で用いることができるように一列に或いは帯状に配列される。この帯は本質的に平坦で、締結具はキャリアによって互いに平行に保持される。 【0003】 締結具を正しい位置に保持する1つの方法が米国特許第5069340号に開示されており、その開示内容を本明細書と一体のものとして参照する。この米国特許第5069340号に開示されているように、締結具はシャンクと頭部とを有しており、複数の締結具が、各々のシャンクと頭部とを揃えた状態に並べられて、ポリプロピレン等の高分子材料から成形されたキャリアを用いて平行に保持される。キャリアは、各締結具と組み合わせられるスリーブを有している。 【0004】 従来技術の締結具組立体21の代表例を図12に示す。締結具2は、下端(先端)2aを尖らせたシャンク4と、シャンク4の上端(基端)に形成した頭部5とから成っている。締結具2は焼入鋼から成るピンであり、亜鉛メッキされた鉄鋼チャンネル材や軌道材等のワークを貫通してコンクリートや鉄鋼製の基体に打ち込まれる(以下の説明では、ワークと基体とはまとめて「基体」と称する。)。複数の締結具2が、シャンク4と頭部5とをそろえて帯状に配列された状態でキャリア22に保持される。なお、図12では締結具2は1本しか表示していない。 【0005】 キャリア22はポリプロピレン製であり、各締結具2を保持する複数のスリーブ23を有している。スリーブ23の各々は、下環状部24と、下環状部24と一体成形された上環状部25とを含んでいる。各スリーブ23は、下環状部24によりシャンク4のうち先端4aの近傍を、そして上環状部25によりシャンク4のうち頭部5の近傍を保持する。 【0006】 スリーブ23における上環状部25の上面は、一対の凹所26を有している。隣り合ったスリーブ23は、上架橋部27と下架橋部28により互いに連結されている。締結具組立体21は動力型駆動工具のマガジンに装填される。駆動工具は、先頭に位置した締結具2の頭部5に力を作用させて、先頭の締結具2を下方へ駆動する。そのときの力により、先頭に位置したスリーブ23と次のスリーブ23の間の架橋部27,28が破断して、先頭に位置したスリーブ23がキャリア22から分離する。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 締結具2が基体内に打ち込まれると、スリーブ23の上環状部25が凹所26において壊れて長手方向に2つに割れる。通常、この長手方向の分割はスリーブ23の下環状部24までは達せずに、下環状部24は、締結具2の頭部5と、締結具12が打ち込まれる基体との間に挟まれる。更に、スリーブ23の2つに割れた上環状部25は、通常、下環状部24につながったまま残り、所謂「テール」として基体からはみ出す。 【0008】 【0009】 【0010】 本発明は、一列に配置された締結具をキャリアで保持して成る締結具組立体において、キャリアの新規な構造を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明の締結具組立体は、シャンクの上端に頭部を形成している締結具の複数本と、前記複数本の締結具を左右に並列させた状態に保持するキャリアとから成っており、前記各締結具の下端は尖っている一方、前記キャリアは一体成形品であり、このキャリアは、1本の締結具のシャンクが挿入されるスリーブを複数備えており、左右に隣り合ったスリーブは破断可能な架橋部によって連結されている。 【0012】 そして、本発明において、前記キャリアを構成する各スリーブは、前記締結具の頭部側に位置して締結具のシャンクを完全に包囲する上カラーと、前記締結具の下端側に位置して締結具のシャンクを完全に包囲する下カラーと、上下のカラーの間に位置した中間壁部とを備えており、前記中間壁部は、締結具のシャンクを完全には包囲しておらずに前後に開口した開口部を挟んで左右に分離しており、前記中間壁部の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、前記スリーブの開口部はキャリアの正面視で矩形に形成されている。 【0013】 本発明の好適な構成では、前記左右の中間壁部は、締結具におけるシャンクの外周の2/3よりも少ない領域を覆うように設定されており、更に前記矩形の開口部の各隅部は鋭角になっている。 【0014】 本願の請求項及び実施形態では構成の特定するため便宜的に「上下」「左右」「正面視」「側面視」「前後」の文言を使用している。この点について説明しておく。本願にいう「上下」は締結具を基準にしており、締結具の頭部を上にした姿勢を基準にして上下の文言を使用している。また、「左右」は、締結具の並び方向を左右方向と定義している。「正面視」とは、各締結具の並び方向と直交すると共に締結具の軸線と直交した方向から見た方向を基準にしており、「側面視」は、締結具の並び方向に向いた方向から見た方向を基準にしている。これら上下方向と左右方向、及び正面視方向と側面視方向は、図1及び図2で矢印を付して明示している。 【発明の効果】 【0015】 本発明では、左右の中間壁部が矩形の開口部によって形成されており、開口部の隅部に高い応力が集中することにより、締結具が基体内に打ち込まれるときのスリーブの破壊が容易になる。 【0016】 【0017】 【0018】 【0019】 【0020】 【0021】 【発明の実施の形態】 【0022】 次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1?図7では第1実施形態を示し、図8?図11では第2実施形態を示している。まず、第1実施形態を説明する。図1は締結具組立体の正面図、図2はキャリアの平面図、図3はキャリアの正面図、図4はキャリアの縦断正面図、図5のうち(A)は図4のVA-VA視断面図で(B)は図4のVB-VB視断面図で(C)は図4のVC-VC視右側面図、図6のうち(A)は図3のVIA-VIA視断 面図で(B)は締結具のシャンクを部分的に表示した状態での図3のVIB-VIB視断面図、図7はキャリアの底面図である。 【0023】 (1).第1実施形態の概要 図1に示すように、締結具組立体1は、一列に配列された締結具2の群を含んでいる。各締結具2は焼入鋼から成っている。締結具2は、キャリア3により互いに平行(並列に並べた状態に)に保持されている。締結具2の各々は、尖った先端(下端)4aを有する長尺のシャンク4と、シャンク4の上端(基端)に設けた頭部5とから成っている。 【0024】 キャリア3は、硬質の充填材含有ポリオレフィン材料で一体成形されている。締結具組立体1は、高速釘打ちガン等の動力型駆動工具に用いられる。動力型駆動工具の一例はTrakFast(商標名)工具であり、この工具は、鉄鋼製のチャンネル部材または「軌道(tracks)」をコンクリートの基礎に連結するため、或いは、他の建設の分野の適用例で一般的に用いられる。 【0025】 キャリア3は、複数(すなわち締結具2と同じ本数)のスリーブ6を含んでいる。スリーブ6の各々は、1本の締結具2のシャンク4を保持する。隣接する2つのスリーブ6は、上架橋部7と下架橋部8により互いに連結されている。上架橋部7及び下架橋部8はキャリア3と一体に成形される。図1,3,4から理解できるように、下架橋部8は上架橋部7よりも上下寸法が小さくなっている。これにより、下架橋部8が上架橋部7より壊れ易くなっている。 【0026】 上下架橋部7,8は、動力型駆動工具に装填する前及び装填中に隣接するスリーブ6を保持可能な強度を備えていなければならない。すなわち、架橋部7,8は、一般的な取扱いや使用に際して、一列に配置されたスリーブ6を、曲がったり、折れたり、壊れたり、破断したりしないように保持しなければならない。 【0027】 それと共に、上下架橋部7,8は、動力型駆動工具の駆動機構が先頭の締結具2の頭部5に下方への急速な力を与えたときに容易に破断して、この先頭の締結具2が締結具組立体1から分離して、目的物としての基体内に進入できるようになっていなければならない。 【0028】 上下架橋部7,8の大きさ、形状、厚さ、材料を決定する際、一定のバランスを考慮しなければならない。架橋部7,8を剪断するために必要な力が小さ過ぎると、締結具組立体1の取扱い・使用の間に架橋部7,8が破断してしまう。架橋部7,8を剪断するために必要な力が必要以上に大き過ぎると、動力型駆動工具に要求されるエネルギが大きくなり、駆動工具の動作が緩慢になり、また、締結具2の基体内への貫通量が低減される。従って架橋部7,8は、先頭の締結具2が目的物内に打ち込まれる前の通常の取扱い・使用の間に、スリーブ6を正しい位置に保持し得る強度を備えていなければならない。 【0029】 更に、上下架橋部7,8は、隣接するスリーブ6を破損することなく破断できなければならない。図3に示すように、下架橋部8は、締結具2を包囲する下スリーブ72の隣接する部分の厚さよりも薄いことが好ましい。 【0030】 (2).スリーブの詳細 スリーブ6は、上脆弱部としての上カラー9と、下脆弱部としての下カラー10と、上下カラー9,10の間に位置した中間壁部11とを含んでいる。図1?図4に示すように、上カラー9の上面には、当該上カラー9を左右2つの半体部に区分する前後一対の凹所12が形成されている。前後両凹所12は同じ形状を呈し、横方向に互いに反対位置に設けられ(すなわち、上カラー9の軸心を挟んだ前後両側に対称に設けられ)、外方に開い ており、このため、締結具2が下方に打ち込まれるときに、上カラー9が割れ易くなっている。 【0031】 図2に示すように、スリーブ6の上カラー9は、締結具2のシャンク4の外径に実質的に対応した概ね環状の断面を有し、かつ、駆動工具におけるマガジンの内側寸法に対応した八角形の外形を有している。この外形は、また、後述するように適正に壊れ易くしている。スリーブ6の上カラー9(下カラー10も同様)の内側の寸法は、締結具2のシャンク4をスライド可能に保持できる寸法としている。 【0032】 キャリア3は、締結具2の群とは独立に一体成形される。キャリア3の各スリーブ6は、その内部に締結具2のシャンク4を容易に挿入できなければならない。締結具2がスリーブ6から滑り落ちたり、或いは、締結具2が斜めになったりしないように、締結具2とスリーブ6の間の嵌め合いが緩くてはならない。上カラー9は、図4に示すように、下カラー10よりも長く、かつ、厚くなっている。これにより、締結具2を基体に打ち込む際、スリーブ6が容易に綺麗に破断する。 図3,4に示すように、中間壁部11は左右2つに分離している。従って、中間壁部11は、上下カラー9,10とは異なり、締結具2のシャンク4を完全には包囲していない。 【0033】 図5(A)?(C)に示すように、中間壁部11の各々は、2つの凹状矩形の境界13を有しており、これにより、上下カラー9,10の間に、キャリア3の正面視で矩形の開口部14が形成されている(換言すると、開口部14の左右両側に中間壁部11が形成されている。)。 矩形の開口部14の左右両側の領域において、中間壁部11は、締結具2のシャンク4の外周面の2/3より小さい領域(好ましくは1/2よりも小さい領域で、更に最も好ましくは約1/3の領域)を覆うようになっている(図6(B)参照)。 更に後述するように、中間壁部11が締結具2のシャンク4の外周の一部を包囲するように設けられていることにより、上カラー9が分離されるとき、スリーブ6が横方向に容易に壊れるとの利点が得られる。 【0034】 既述のとおり、中間壁部11は、スリーブ6に前後2つの矩形の開口部14を形成することにより得られる。矩形の開口部14は、図1,図3,図4に示すように、好ましくは、高い応力が集中する鋭角の隅部14aを有している(換言すると、矩形の開口部14の各隅部14aは角張った鋭角になっている。)。これにより、締結具2が基体内に打ち込まれるときのスリーブ6の破壊が容易になる。中間壁部11は、隣接するスリーブ6の間で、かつ、上下架橋部7,8の間に六角形の開口部15を形成することにより薄くなっている。 【0035】 図2及び図7に示すように、スリーブ6の下カラー10は、上カラー9の内周面と同様に、締結具2のシャンク4をスライド可能に保持する環状の内周面を有している。下カラー10の外形は、図7に示すように、前後一対のタブ16と左右一対のタブ17により平面視十字形を呈している。前記タブ16,17は、好ましくは、オフセットされている。例えば、前後一対のタブ16は、左右一対のタブ17の下側に延びている。このようにタブ16,17をオフセットすることにより、製造過程においてスリーブ6の成形が容易になり、かつ、締結具2を基体に打ち込む際にスリーブ6が壊れ易くなる。 【0036】 タブ16,17は、実質的に下カラー10の全体を構成する。図3に示すように、壊れ易いタブ16,17は、下カラー10の下端から矩形の開口部14の下端まで延設されており、中間壁部11を画成することを補助している。図7に示すように、前記タブ16,17は円形の壁部18により連結されている。円形の壁部18は、構造的にタブよりも薄 く弱く形成されており、締結具1が基体に打ち込まれるときに、壁部18が壊れることにより下カラー10が壊れるようになっている。 【0037】 下カラー10を構成する円形の壁部18は、可及的に薄くして必要材料を少なくすると共に、壊れ易くなっていなければならないが、一方、駆動工具により締結具2がキャリア3から分離するときに壊れないように、必要な厚さを備えていなければならない。 【0038】 図7に示す好ましい実施形態では、4つのタブ16,17が十字形に配置されている。下カラー10は他の形状とすることもできる。例えば、4つよりも多い或いは少ないタブを設けたり、全体的に下カラー10を他の形状とすることができる。 【0039】 動力型駆動工具が締結具2を基体に打ち込むとき、既述したように、先端にあるスリーブ6と、これに続いたスリーブ6の間の上下架橋部7,8が破断される。次いで、図1,図4から理解できるように、締結具2が基体に打ち込まれるとき、スリーブ6の上カラー9は凹所12から割れることにより壊れる。締結具2が更に基体内に進入すると、円形の壁部18が壊れてタブ16,17が分解することにより下カラー10が壊れる。 【0040】 締結具2の頭部5が基体の上面に対してしっかりと係合するまで、締結具60は基体内へ進入し続ける。締結具2の頭部5がスリーブ6を通過する際、頭部5に作用する外力のためにスリーブ6は完全に分解し、締結具2と共にスリーブ6の破片が基体内に進入したり、破片が締結具2の頭部5と基体の間に挟まることはない。 【0041】 図1に示すように、締結具が基体内に打ち込まれる前に、締結具2の頭部5とスリーブ6の上カラー9との間には所定の距離(間隔)が維持されている。この距離は、長さ約0.75inch以上の締結具に対して少なくとも0.105inch、長さ約0.50?0.75inchの締結具では少なくとも0.6inchとすることができる。この距離を大きくする目的は、締結具2の頭部5とマガジンの上面との間の距離をできるだけ小さくすることである。 【0042】 (3).第2実施形態 図13には、典型的な締結具駆動工具のマガジン30に保持された締結具組立体1の2つの実施形態の断面が図示されている。個々の締結具2が使用されるとき(すなわち、締結具2の打ち込みに連れて)、マガジン30の内部で締結具組立体1は左から右へ移動する。締結具2は、ピストン駆動ブレード(図示せず)を用いて1つずつ分離され、ボア31を通って基体内へ進入する。 【0043】 図13(B)に示すように、締結具2の頭部5とマガジン30の上内壁32との間の距離が大き過ぎると、最後から2つ目の締結具2が駆動されるとき、締結具組立体1は傾斜し、釘打ちプロセスが阻害される。 【0044】 図13(A)に示すように、締結具2の頭部5とマガジン30の上内壁32の間の距離が小さいと、上記の位置決めの問題は低減もしくは除去される。この距離は、0.010inchより小さく、好ましくは0.008inch、より好ましくは約0.005inchとなる。 【0045】 締結具2の頭部5の下側の距離を最適な距離としてキャリア3をしっかりと位置決めすることが難しいことがある。この場合、特に、最後の数本の締結具2が打ち出されるとき、締結具組立体1が、マガジン30内で傾く。この問題を解決するために、図8?図11に第2実施形態として示すように、キャリア3の一端または両端に円弧状の延長部を形成することができる。この第2実施形態を次に説明しておく。 図8はキャリア3の平面図、図9のうち(A)はキャリア3の端部を構成する2つのス リーブ6の正面図で(B)はキャリア3の側面図、図10のうち(A)は図9(A)のXA-XA視断面図で(B)は図9(A)のXB-XB視断面図で(C)は(図9(A)のXC-XC視断面図で(D)は図9(A)のXD-XD視断面図、図11はキャリア3の底面図である。 【0046】 第2実施形態のキャリア3は、その両端に延長部19,20が設けられている点を除いて、第1実施形態のキャリア3と同じであり、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。図8及び図11に示すように、左右の延長部19,20は異なる形状を有している。図8及び図11において右側に示す円弧形状の延長部20は、成形が簡単なために現時点で好ましい実施形態である。 【0047】 上記の両端の延長部19,20は中空(例えば矩形)となっている。延長部19,20は他の構造とすることもできる。キャリア3の両端の延長部19,20は同じ形状とすることが好ましいが、本実施形態では、便宜上、異なる形状にて図示されている。 【0048】 延長部19,20は、左右両端のタブ17から上下のタブ16に向けて延びている。或いは、タブ16,17に交差しないようにすることもできる。キャリア3の左端に表示した延長部19は、キャリア3の左端のスリーブ6の左端のタブ17に交差している。 【0049】 キャリア3の右端に表示した延長部20は、キャリア3の右端のタブ17に交差している。言い換えれば、延長部19,20は、キャリア3において先頭のスリーブと最後尾のスリーブの外側の端部に配設されており、横方向(つまり、図8,図11において上下方向)に延びるように延設されている。また、延長部19,20は、スリーブ6の下カラー10に配設されている。 【0050】 前記延長部19,20は、キャリア3において駆動工具から最後に打ち出される締結具のためのスリーブ6にのみ配設する必要はない。延長部19,20は、特に、打ち出されずに数本の締結具2が残っているときに、締結具2をマガジン内で安定させる効果がある。延長部19,20は、最後の数本の締結具を打ち出す際、マガジン内のリブ(図示せず)と係合し、締結具組立体1の傾斜を防止する。好ましくは、延長部19,20はキャリア3の左右両端に配設される。こうして、キャリア3は対称形状となり、駆動工具に装填するとき、締結具組立体1は、どちら側からでもマガジン内に挿入することができる。 【0051】 【0052】 【0053】 【0054】 【0055】 【0056】 【0057】 【0058】 【0059】 【図面の簡単な説明】 【0060】 【図1】第1実施形態に係る締結具組立体の正面図である。 【図2】第1実施形態に係るキャリアの平面図である。 【図3】第1実施形態に係るキャリアの縦断正面図である。 【図4】第1実施形態に係るキャリアの正面図である。 【図5】(A)は図4のVA-VA視断面図、(B)は図4のVB-VB視断面図、(C)は図4のVC-VC視右側面図である。 【図6】(A)は図3のVIA-VIA視断面図、(B)は図3のVIB-VIB視断面図である。 【図7】第1実施形態に係るキャリアの底面図である。 【図8】第2実施形態に係るキャリアの平面図である。 【図9】(A)はキャリアの端部を構成する2つのスリーブの正面図、(B)はキャリアの側面図である。 【図10】(A)は図9(A)のXA-XA視断面図、(B)は図9(A)のXB-XB視断面図、(C)は(図9(A)のXC-XC視断面図、(D)は図9(A)のXD-XD視断面図である。 【図11】第2実施形態に係るキャリアの底面図である。 【図12】従来技術の斜視図である。 【図13】締結具駆動工具のマガジンに締結具組立体を装填した状態の断面図である。 【符号の説明】 【0061】 1 締結具組立体 2 締結具 3 キャリア 4 締結具のシャンク 4a シャンクの下端(先端) 5 締結具の頭部 6 キャリアのスリーブ 7,8 架橋部 9 上カラー 10 下カラー 11 中間壁部 13 中間壁部を形成する凹状矩形の境界 14 矩形の開口部 14a 開口部の隅部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 シャンクの上端に頭部を形成している締結具の複数本と、前記複数本の締結具を左右に並列させた状態に保持するキャリアとから成っており、前記各締結具の下端は尖っている一方、前記キャリアは一体成形品であり、このキャリアは、1本の締結具のシャンクが挿入されるスリーブを複数備えており、左右に隣り合ったスリーブは破断可能な架橋部によって連結されている、 という締結具組立体であって、 前記キャリアを構成する各スリーブは、前記締結具の頭部側に位置して締結具のシャンクを完全に包囲する上カラーと、前記締結具の下端側に位置して締結具のシャンクを完全に包囲する下カラーと、上下のカラーの間に位置した中間壁部とを備えており、 前記中間壁部は、締結具のシャンクを完全には包囲しておらずに前後に開口した開口部を挟んで左右に分離しており、前記中間壁部の前後両側を側面視矩形の凹状に形成することにより、前記スリーブの開口部はキャリアの正面視で矩形に形成されている、 締結具組立体。 【請求項2】 前記左右の中間壁部は、締結具におけるシャンクの外周の2/3よりも少ない領域を覆うように設定されており、更に前記開口部の各隅部は鋭角になっている、 請求項1に記載した締結具組立体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2007-07-18 |
結審通知日 | 2007-07-20 |
審決日 | 2007-07-31 |
出願番号 | 特願2006-271861(P2006-271861) |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Y
(F16B)
P 1 41・ 855- Y (F16B) P 1 41・ 856- Y (F16B) P 1 41・ 852- Y (F16B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 森本 康正 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
亀丸 広司 大町 真義 |
登録日 | 2007-01-12 |
登録番号 | 特許第3900374号(P3900374) |
発明の名称 | 締結具組立体 |
代理人 | 西 博幸 |
代理人 | 東野 正 |
代理人 | 渡辺 隆一 |
代理人 | 西 博幸 |
代理人 | 東野 正 |
代理人 | 石井 暁夫 |
代理人 | 渡辺 隆一 |
代理人 | 石井 暁夫 |