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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E03F
審判 全部無効 特29条特許要件(新規)  E03F
管理番号 1164343
審判番号 無効2005-80024  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-01-25 
確定日 2007-08-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2879021号発明「管渠の布設方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2879021号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

平成 8年 9月27日 出願(特願平8-277516号)
平成11年 1月22日 特許登録
平成17年 1月25日 本件無効審判請求
平成17年 4月15日 審判事件答弁書・訂正請求書
平成17年 5月24日 審判事件弁駁書

2.当事者の主張

2-1 請求人の主張
請求人は、本件の請求項1、2に係る発明の特許を無効とする理由として次のように主張し、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
無効理由1:本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、また、本件の請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
無効理由2:本件の請求項1に係る発明は、特許法第29条柱書の発明に相当しない未完成発明であって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

甲第1号証 特開平7-259169号公報
甲第2号証 実願昭60-131436号(実開昭62-44999号)のマイクロフィルム
甲第3号証 特開平8-98476号公報

2-2 被請求人の主張
被請求人は、平成17年4月15日付け審判事件答弁書において、訂正請求書により訂正後の請求項1及び2に係る発明に、請求人主張の無効理由はないと主張した。

3.訂正事項
平成17年4月15日付けの訂正請求書による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正するものである。

3-1.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1
「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。」を
「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。」
と訂正する。

3-2.訂正事項b
明細書の段落0007
「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。」を
「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。」

3-3.訂正事項c
明細書の段落0011
「図4各図は摩擦低減手段の変形例を示したものである。同図(a)は基礎コンクリート13内にH形鋼の下半部を埋設し、このH形鋼をレール20としたものである。H形鋼の上側フランジ20aの両端にはフラットバー(平鋼)からなるガイドバー22が設けられている。このガイドバー22間の上側フランジ20a上に複数個のベアリングボール12を配置するようにしたものである。同図(b)には、工場製作時にH形鋼等のソリ25が底面に埋設されたボックスカルバート1と、基礎コンクリート13上面に溝形鋼を埋設して形成したレール溝26とが示されている。このレール溝26内に多数のベアリングボール12を敷き並べ、さらにベアリングボール12上にボックスカルバート1のソリ25を載置するようにした。この変形例によれば、H形鋼で作られたソリ25にベアリングボール12やローラー16の落下防止用のガイドバーを設ける必要がなく、従来の鋼材をそのまま使用でき、部品点数を減らすことができる。なお、この溝形鋼は図示したように、ほぼ全体を基礎コンクリート13内に埋設させるようにしてもよいし、フランジ26aの高さの1/2程度を埋設させたり、溝形鋼全体を基礎コンクリート13の面上に載置し、図示しないボルト等によりコンクリート面に固定するようにしてもよい。図4(c)は同図(b)に示したソリ25と同等の機能を有するソリ27を後付けした例を示している。この変形例では同図(d)に示したように、ボックスカルバート1の底面の4箇所にあらかじめ埋設されているアンカープレートPに固定ボルト28を介してH形鋼形状からなるソリ27が取り付けられている。このソリ27のフランジ27aには同図(e)に示したような長円形状の長孔27bが形成されている。この長孔27bを介してソリ27は固定ボルト28でアンカープレートPに取り付けられている。このときフランジ27aとアンカープレートPとの間には摩擦低減プレート29が介装されている。ソリ27は同図(e)に示した矢印方向にわずかな範囲で揺動することができる。これにより、ボックスカルバート1を横引きする場合に、縦断方向にカーブしている箇所でレール溝(図示せず)がカーブしていても容易にレール溝の形状に倣ってボックスカルバート1を移動させることができる。」を
「図4各図は摩擦低減手段の変形例を示したものである。同図(a)は基礎コンクリート13内にH形鋼の下半部を埋設し、このH形鋼をレール20としたものである。H形鋼の上側フランジ20aの両端にはフラットバー(平鋼)からなるガイドバー22が設けられている。このガイドバー22間の上側フランジ20a上に複数個のベアリングボール12を配置するようにしたものである。同図(b)には、工場製作時にH形鋼等のソリ25が底面に埋設されたボックスカルバート1と、基礎コンクリート13上面に溝形鋼を埋設して形成したレール溝26とが示されている。このレール溝26内に多数のベアリングボール12を敷き並べ、さらにベアリングボール12上にボックスカルバート1のソリ25を載置するようにした。この変形例によれば、H形鋼で作られたソリ25にベアリングボール12やローラー16の落下防止用のガイドバーを設ける必要がなく、従来の鋼材をそのまま使用でき、部品点数を減らすことができる。なお、この溝形鋼は図示したように、ほぼ全体を基礎コンクリート13内に埋設させるようにしてもよいし、フランジ26aの高さの1/2程度を埋設させたり、溝形鋼全体を基礎コンクリート13の面上に載置し、図示しないボルト等によりコンクリート面に固定するようにしてもよい。図4(c)は同図(b)に示したソリ25と同等の機能を有するソリ27を後付けした例を示している。この変形例では同図(d)に示したように、ボックスカルバート1の底面の4箇所にあらかじめ埋設されているアンカープレートPに固定ボルト28を介してH形鋼形状からなるソリ27が取り付けられている。このソリ27のフランジ27aには同図(e)に示したような長円形状の長孔27bが形成されている。この長孔27bを介してソリ27は固定ボルト28でアンカープレートPに取り付けられている。このときフランジ27aとアンカープレートPとの間には摩擦低減プレート29が介装されている。ソリ27は同図(e)に示した矢印方向にわずかな範囲で長孔27b内を移動することができる。これにより、ボックスカルバート1を横引きする場合に、縦断方向にカーブしている箇所でレール溝(図示せず)がカーブしていても容易にレール溝の形状に倣ってボックスカルバート1を移動させることができる。」

4.訂正の適否についての判断
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴い明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項cは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、上記訂正事項はいずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

5.本件各発明
本件の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。
【請求項2】地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け、該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。」

6.請求人主張の無効理由2についての判断
請求人は、審判請求書において、本件発明1は、特許法第29条柱書の発明に相当しない未完成発明であって、その理由として、本件発明1の発明特定事項である「前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、」の構成について、球状体をレール上面に敷き詰めてしまうと、球状体は転動動作を生じないことは明らかであり、球状体の転動動作に基づいて単位管体の横引動作を容易とする目的及び効果を生じないから、その請求項1の記載によっては、本件発明1の目的及び効果を生じない旨を主張している。
しかしながら、上記4.のとおり、平成17年4月15日付けの訂正請求が認められたことにより、本件発明1の上記発明特定事項は、「前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、」と訂正され、球状体が転動動作を生じうることが明らかとなったため、本件発明1は、特許法第29条柱書の発明に相当しない未完成発明であるとはいえない。

7.請求人主張の無効理由1についての判断
7-1.甲号各証の記載事項
7-1-1.甲第1号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第1号証には、「コンクリートブロックの敷設方法」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
(a)「【請求項1】 コンクリートブロックの荷卸し位置と据え付け位置との間において、前記荷卸し位置付近に配置した牽引装置により、ワイヤロープ及び滑車を介してコンクリートブロックを牽引して荷卸し位置から据え付け位置に移動させ、据え付けることを特徴とするコンクリートブロックの敷設方法。
【請求項2】 コンクリートブロックの移動路の上面両側に、断面直角状のガイド部材を予め所定のブロック据え付け高さ及び幅に設定して対向配置することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの敷設方法。
【請求項3】 コンクリートブロックの底版にボルト孔及びグラウト孔を設け、該ボルト孔に螺合させた調節ボルトを回転させてコンクリートブロックを所定の据え付け高さに調節した後、グラウト孔からグラウト材を注入して前記底版の下方の隙間に充填することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの敷設方法。」
(b)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、カルバート、水路ブロック等のコンクリートブロックの敷設方法に関するものである。
【0002】【従来の技術】従来、この種のコンクリートブロックを敷設する場合、次のような方法で行っている。
(1)多くの場合、図9、図10に示すように据え付け位置に溝1の上方からクレーンでコンクリートブロック(以下、単にブロックという)2を吊り込んで敷設する。なお、図10は深度の深い溝1に土留壁3及び切梁4を設けた場合である。
(2)土被りや溝幅が大きく切梁間隔が非常に細かく必要な所や、橋の下など上方から敷設することが困難な場所では、現場打ちにするか、あるいは図12のように溝1内の側方からジャッキ5によってブロック2を推進する方法が行われている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】(1)前者の吊り込みによる方法では、クレーンの作業半径が決っているので、一定の区間毎にクレーンの移動、据え付け作業が必要となる。また、図10のような切梁4のある溝施工の場合、図11の平面図に示すように切梁4の間隔と、各ブロック2a、2b、…の吊り金具6による吊り位置との関係により、ブロック据え付けに制約を受けるため、ワイヤの掛け替えや、場合によっては切梁4の移動が必要となる。因みにブロック2a、2c、2eは切梁4の制約を受ける。
【0004】(2)後者の推進工法の場合は、ジャッキ5等の特別の設備が必要となるばかりでなく、1サイクル当り、ジャッキ5のストローク分しか押せないため、効率が悪かった。
【0005】本発明が解決しようとする課題は、クレーンを移動させることなく、一定の場所からコンクリートブロックを荷卸しできると共に、上方の障害物に関係なく施工でき、しかも簡単な設備で効率良く敷設できるようにしたコンクリートブロックの敷設方法を提供することにある。」
(c)「【0009】【作用】コンクリートブロックの荷卸し位置を据え付け位置から離れた場所に設定できるので、該荷卸し位置を一定とすることができ、クレーンを移動させる必要がなくなると共に、据え付け位置の上方に障害物があっても、何ら支障なく施工することができる。牽引装置によって牽引するので、ブロックを1サイクルで荷卸し位置から据え付け位置まで移動させることができ、従来のジャッキによる推進に比べ、効率良く施工できる。ブロックの移動路両側に、予め所定のブロック据え付け高さ及び幅に設定したガイド部材を配置することにより、据え付け時にブロックの高さ及び幅方向位置の調節という二次的な作業が不要となり、より効率化される。また、ブロックの底版に取り付けた調節ボルトを回してブロックを所定の据え付け高さに調節した後、底版の下方の隙間にグラウト材を注入、充填することにより、簡単にブロックの高さ調節を行うことができる。
【0010】・・・実施例1では、図1、図2に示すようにコンクリートブロック2に装着した牽引治具11に動滑車12を、取り付けると共に、荷卸し位置A付近に配置した反力ブロック13及び据え付け位置B側の反力壁14にそれぞれ定滑車15、16を取り付ける。また、この反力は底版から取ってもよい。そして、ワイヤロープ17の一端を、荷卸し位置Aの地上に配置したクレーン(図示省略)等の牽引装置に接続すると共に、そのワイヤロープ17を定滑車15、16及び動滑車12の順に掛け渡し、その先端を反力壁14に固定する。
【0011】そこで、クレーンによりワイヤロープ17を牽引することにより、定滑車15、16と動滑車12を介してブロック2を荷卸し位置Aから据え付け位置Bまで移動させる。この場合、動滑車12を使用しているので、牽引力1/2に軽減される。」
(d)「【0013】・・・実施例3はブロック2の移動路のガイドに関するものである。図5、図6に示すように移動路の基礎コンクリート20の上面両側に、アングル材等の断面直角状の一対のガイド部材21、21を、予め所定のブロック据え付け高さと幅に調節して埋め込み、このガイド部材21、21間にはモルタル22を敷設する。なお、この基礎コンクリートは、予め工場で製作したプレキャスト基礎を用いてもよい。」
上記(b)の記載及び図10、図11を参照すると、コンクリートブロック2は、溝1の内部に荷卸しされることが開示されており、また上記(c)の記載及び図1を参照すると、据え付け位置Bにおいて、牽引されたコンクリートブロック2は、他のコンクリートブロック2と連結され、それによって、水路等のコンクリートブロック構造物を構築することは、当業者にとって明らかである。
さらに、上記(d)の記載及び図5、図6を参照すると、コンクリートブロック2がガイド部材21に沿って牽引される点が開示されている。
よって、上記甲第1号証の摘記事項及び図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証には、
「溝1内にコンクリートブロック2を荷卸しし、該コンクリートブロック2を基礎コンクリート20の上面に埋め込んだガイド部材21に沿って牽引装置で他のコンクリートブロックとの連結を行う据え付け位置Bまで移動させ、該位置で各コンクリートブロック2同士を順次連結して一体となったコンクリートブロック構造物を構築するようにしたコンクリートブロック2の敷設方法。」の発明の記載が認められる。

7-1-2.甲第2号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第2号証には、「大型重量物の坑内移動装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「既設坑内の大型重量物の移動において、移動時のけん引抵抗の軽減および、重量物の移動方向修正を容易した大型重量物の坑内移動装置を提供することを目的とする。」(明細書第4頁第3行?第6行)
「大型重量物1の本体の下部の長手方向両側に下面が平滑なレール面2aとなっている一対の上部レール2が固着される。」(同第5頁第9行?第11行)
「該上部レール2と対向して敷設され、且つ上面が平滑なレール面5aになっている下部レール5が床面7上に配置される。下部レール5はチャンネルを鍔を上向きにして使用するのが、鋼球4が側方に外れないようにする上で好ましい。該上部レール2と下部レール間に転動自在に介在される直径約90mmの鋼球を多数配設する。又、上下レールには鋼球4が上下レールの間から側方にはずれないよう16φの丸棒を、上下レールに溶接されたストッパー3が両側に設けられる。」(同第5頁第19行?第6頁第10行)
「該下部レール5の上に重量物が載置される前に、下部レール5上に多数の鋼球4を配置する。鋼球4は下部レール5の長手方向には転動自在に移動できるが、左右方向にはレール両側にストッパー3があり、こう束されている。」(同第7頁第2行?第6行)
「従って重量物は鋼球のころがりを利用し移動するものであるから長手方向へスムーズにけん引可能である。」(同第7頁第11行?第13行)
「重量物1の移動方向と反対側にウインチ8を設置し、滑車9を利用し、およそ5m/min位の速度でワイヤ10を引張り、重量物1を移動させて行く。」(同第8頁第3行?第6行)
よって、上記甲第2号証の摘記事項及び図面に図示された技術事項を総合すると、甲第2号証には、
「既設坑内の重量物1を床面7上に配置される下部レール5に沿ってウインチ8でけん引する場合において、前記下部レール5の両側に設けられたストッパー3に囲まれた前記下部レール上面5aに鋼球4を転動自在に多数配設し、該鋼球4の上に重量物1を上部レールを介して載置し、鋼球4のころがりを利用して重量物1を移動させるようにした移動方法。」の発明の記載が認められる。

7-1-3.甲第3号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第3号証には、「固定子センタリング用移動装置」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【請求項1】基礎体に設置された固定子用ベース上に載置される立軸回転電機の固定子を上記ベースに対して移動する固定子センタリング用移動装置において、上記基礎体に載置され、上記固定子を上記固定子用ベースから浮かせるように支持するジャッキと、上記基礎体と上記ジャッキとの間と上記ジャッキと上記固定子との間との少なくとも一方の間に介在され、上記固定子のセンタリングのために上記固定子を上記基礎体に対して移動させる時の摩擦力を低減させる摩擦低減体とを具備することを特徴とする固定子センタリング用移動装置。
【請求項2】上記摩擦低減体は、上記基礎体と上記ジャッキとの間に介在されると共に、上記基礎体に載置された枠付き箱と上記枠付き箱内に収容され互いに垂直方向に配列された2層の丸棒列とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の固定子センタリング用移動装置。
【請求項3】上記摩擦低減体は、上記基礎体と上記ジャッキとの間に介在されると共に、上記基礎体に載置された枠付き箱と上記枠付き箱内に収容された複数の鋼球とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の固定子センタリング用移動装置。
【請求項4】上記摩擦低減体は、上記ジャッキと上記固定子との間に介在されると共に、小摩擦係数を有する四ふっ素樹脂等の滑材であることを特徴とする請求項1に記載の固定子センタリング用移動装置。」
「【0016】コンクリート基礎体3に枠付の鋼製箱8が載置され、この鋼製箱8内の丸棒列9A、9Bの上にジャッキ6が載置される。このジャッキ6は、図2に示したように固定子1がこのジャッキ6に載置された時に固定子用ベース2と脚部7との間に僅かな間隙gが存在するように、その天端位置が調節される。この調整の後に、固定子1がクレーンによってジャッキ6の上に載置される。
【0017】こうして、固定子1は、その脚部7が固定子用ベース2から僅かに浮くように、ジャッキ6によって支持される。この状態で、固定子1に外力を作用すると、ジャッキ6が上下層の丸棒9A、9B上を摺動し、固定子1が移動され、センタリングが行われる。この時、固定子1とコンクリート基礎体3との間の摩擦は、丸棒9A、9Bの転がり摩擦となるため、非常に小さい値となる。
【0018】従って、固定子1の移動に必要な外力は、従来の固定子センタリング用移動装置の滑り移動に比べて、1/30?1/100程度に低減されるため、固定子1は、数名の人力によって移動可能となる。
【0019】図3は、本発明の第2の実施例を示したもので、上下層の丸棒9A、9Bの代わりに、複数の鋼球10が使用される。その他の構成及び作用は第1の実施例と同一である。
【0020】なお、丸棒9A、9Bや鋼球10を収容した枠付の鋼製箱8は、上述の第1及び第2の実施例ではコンクリート基礎体3とジャッキ6との間に介在されたが、ジャッキ6と固定子1との間に介在させることもできる。」

7-2.本件発明1について
7-2-1.対比及び一致点・相違点
本件発明1と甲第1号証記載の発明を対比すると、甲第1号証記載の発明の「溝1」、「コンクリートブロック2」、「荷卸し」、「基礎コンクリート20の上面」、「埋め込んだ」、「ガイド部材21」、「牽引装置」、「他のコンクリートブロックとの連結を行う据え付け位置B」、「コンクリートブロック構造物」、及び、「敷設」は、それぞれ、本件発明1の「地盤掘削により形成された山留め空間内」、「単位管体」、「搬入」、「基礎コンクリート上」、「敷設された」、「レール」、「横引き装置」、「所定の連結位置」、「管渠」、及び、「布設」に相当する。
よって、両者は、
「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたのに対して、甲第1号証記載の発明では、上記のような摩擦低減手段が設けられていない点。

7-2-2.相違点1についての検討
甲第2号証記載の発明における「床面7」、「下部レール5」、「ウインチ8」、「ストッパー3」、「多数の鋼球4」、及び、「けん引」は、それぞれ、本件発明1の「基礎コンクリート」、「レール」、「横引き装置」、「ガイド部材」、「多数の球状体」及び「横引き動作」に相当し、前記「多数の鋼球4」等が摩擦低減手段を構成していることは当業者にとって明らかであるから、甲第2号証には、重量物を移動するにあたって、レールに設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に球状体を、転動可能に配置した摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に重量物を載置し、この状態で該重量物の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記重量物を移動させる構成が記載されていると認められる。
また、多数の球状体を配置して摩擦低減手段を構成するにあたって、前記多数の球状体を、転動可能に敷き詰めることによって、摩擦低減手段を構成することは、従来周知の事項(必要あれば、特開平7-11780号公報(段落0009,0019及び図2)、特開昭60-209413号公報(特許請求の範囲、第3図、第4図及び第6図)等参照)である。
さらに、ガイド部材を設ける位置をレールの側面としたことは、単なる設計的事項にすぎない。
よって、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証記載の発明、及び、従来周知の事項を適用し、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到できることにすぎない。
そして、本件発明1によってもたらされる効果も、甲第1,2号証記載の発明及び従来周知の事項から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
以上のことから、本件発明1は、甲第1,2号証記載の発明及び従来周知の事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項に該当するものである。

7-3.本件発明2
7-3-1.対比及び一致点・相違点
本件発明2と甲第1号証記載の発明を対比すると、甲第1号証記載の発明の「溝1」、「コンクリートブロック2」、「荷卸し」、「基礎コンクリート20の上面」、「埋め込んだ」、「ガイド部材21」、「牽引装置」、「他のコンクリートブロックとの連結を行う据え付け位置B」、「コンクリートブロック構造物」、及び、「敷設」は、それぞれ、本件発明2の「地盤掘削により形成された山留め空間内」、「単位管体」、「搬入」、「基礎コンクリート上」、「敷設された」、「レール」、「横引き装置」、「所定の連結位置」、「管渠」、及び、「布設」に相当する。
よって、両者は、
「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明2では、レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け、該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたのに対して、甲第1号証記載の発明では、上記のような摩擦低減手段が設けられていない点。

7-3-2.相違点2についての検討
甲第2号証記載の発明における「床面7」、「下部レール5」、「ウインチ8」、「ストッパー3」、及び、「けん引」は、それぞれ、本件発明2の「基礎コンクリート」、「レール」、「横引き装置」、「ガイド部材」、及び、「横引き動作」に相当し、本件発明2における「円筒形ローラー」と甲第2号証記載の発明における「多数の鋼球4」は、ともに「多数の転動体」である点で共通する。そして、前記「多数の転動体」等が摩擦低減手段を構成していることは当業者にとって明らかであるから、甲第2号証には、重量物を移動するにあたって、レールに設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に多数の転動体を転動可能に配置した摩擦低減手段を設け、該多数の転動体上に重量物を載置し、この状態で該重量物の横引き動作を行い、前記転動体の転動動作に伴い前記重量物を移動させる構成が記載されていると認められる。
また、摩擦低減手段を構成するにあたって、転動体として、円筒体を転動可能に配置したものは、従来周知の事項(必要あれば、甲第3号証等参照。)であり、前記円筒体を、レール延長方向、すなわち移動方向に転動可能に所定間隔をあけて配列することは、当業者であれば当然になしうることである。
さらに、ガイド部材を設ける位置をレールの側面としたことは、単なる設計的事項にすぎない。
よって、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証記載の発明、及び、従来周知の事項を適用し、上記相違点2に係る本件発明2の構成とすることは当業者が容易に想到できることにすぎない。
そして、本件発明2によってもたらされる効果も、甲第1,2号証記載の発明及び従来周知の事項から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
以上のことから、本件発明2は、甲第1,2号証記載の発明及び従来周知の事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項に該当するものである。

8.まとめ
以上のように、訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
管渠の布設方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。
【請求項2】
地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け、該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は管渠の布設方法に係り、特にプレキャストコンクリート製ボックスカルバートを開削トンネル内に搬入し、横引きして複数連結させ管渠を布設するようにした管渠の布設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市部の下水道工事における管渠の布設方法としてプレキャストコンクリート製品からなる同一形状の管体(以下、単位管体と記す。)を連結して管渠を構築する方法がある。この管渠の布設工法では、鋼矢板等の山留め壁で支保され、所定の地盤面まで掘削された山留め空間内の基礎コンクリート上に、プレキャストコンクリート製の矩形断面ボックスカルバートや円形断面ヒューム管等の単位管体を搬入し、各単位管体を連結可能な位置まで移動させ、勾配を調整して仮置きし、各単位管体間の水密性を保持しながら一体化した管渠を構築している。本工法によれば、開削工事のために地上部が占有されるが、プレキャストコンクリート製品の使用により工事全体を迅速に進めることができる。
【0003】
図6は単位管体の一例であるプレキャストコンクリート製のボックスカルバート51を用いた管渠の布設方法の一例を示した説明図である。図6に示したボックスカルバート51は図示しない荷卸し開口の地上部に設置された荷卸しクレーンにより山留め空間内に搬入される。そして基礎コンクリート52上に敷設された2本のレール53上を矢印方向に横引きされ、すでに設置されたボックスカルバート51の隣接位置に仮置きする。このボックスカルバート51の横引きには図示しないワイヤを巻回するウインチ等の横引き装置が用いられる。ウインチによる横引き作業を効率良く行うために、ボックスカルバート51の底面には摩擦低減手段60が施されている。
【0004】
図7はボックスカルバート51の底面54に設けられた摩擦低減手段60を示した部分断面図である。同図に示したように、レール53と接触するボックスカルバート51の底面54には、断面形が偏平なU字形をなす埋込み金具61が埋設されている。この埋込み金具61と基礎コンクリート52に埋設されたレール53との間には摩擦低減手段としてのソリ60が示されている。このソリ60はボックスカルバート51の奥行きLに等しい長さからなる平板状で、埋込み金物61側に鋼板63が、レール53上面との接触位置にテフロン樹脂(商品名)等の樹脂板64が配置された積層板構造となっている。このソリを埋込み金具61と基礎レール53との間に介在させることにより、ウインチの横引き負荷を軽減することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、図7に示したソリ60を摩擦低減手段として採用することにより、ボックスカルバート51の横引き時に生じるレール53と埋込み金具61との間の摩擦を低減することができる。しかし、重量物であるボックスカルバート51の下面54の埋込み金具61位置にソリ60を挿入するためにはボックスカルバート51を油圧ジャッキ等の昇降手段によりで所定の上下範囲で昇降させる必要がある。また、ソリ60を用いた場合でもボックスカルバート51を横引きするためのウインチは直引力3トン能力のものが2台必要であった。このため、さらに横引き時の摩擦の低減を計ることが求められていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、基礎レール上に搬入されたボックスカルバートを効率よく横引きできるようにする装置と、横引きされ連結作業により完成した管渠が基礎コンクリート上に確実に設置されるようにした管渠の布設方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を、転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け、該多数の球状体上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し、該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ、該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において、前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け、該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し、この状態で該単位管体の横引き動作を行い、前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の管渠の布設方法の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の管渠の横引き作業状態を示した斜視図である。この横引き作業において、摩擦低減手段がボックスカルバート1とレール10との間に設けられている。摩擦低減手段の構成について図2(a)を参照して説明する。基礎コンクリート13上に敷設された10kgレール10の上面10aの両側位置にはガイドバー11としての丸鋼(φ6mm)が長手方向に沿って固着されている。ガイドバー11に挟まれたレール上面10aには多数の球状体としてのベアリングボール12が敷き並べられている。本実施の形態では、ベアリングボール12には直径φ11mmの鋼球が使用されている。そしてベアリングボール12の上にボックスカルバート1が載置されている。このときベアリングボール12に被せるようにボックスカルバート1の下面の所定位置に埋込み金具15が埋設されている。ベアリングボール12は埋込み金具15を介してボックスカルバート1を点支持することになるが、図3に示したように、ボックスカルバート1の矢印方向への移動に伴い、ベアリングボール12は転動する。これにより埋込み金具15とレール10間の動摩擦が大幅に低減される。図7に示した従来のソリ60の使用に比べ、実験によれば動摩擦係数を1/4まで低減することができる。この移動には横引き装置として同様にウインチを使用したが、ウインチの直引力は安全率を見込んでもソリ60の使用時の能力の半分のもので横引きが可能になる。なお、図3において示されたベアリングボール12は説明のために拡大してある。
【0010】
図2(b)はベアリングボール12に代えて摩擦低減手段として所定長さの丸鋼棒ローラー16を用いた例を示したものである。このローラー16はガイドバー17に両端部が規制され、レールの延長方向に転動できるようにレール10上に配列されている。また、ベアリングボール12、ローラー16はボックスカルバート1の移動が終了する連結位置で後述するグラウト内に埋設される。したがって、図11に示した従来のようにソリ60を撤去するためにボックスカルバート1を上下に昇降させる必要がない。
【0011】
図4各図は摩擦低減手段の変形例を示したものである。同図(a)は基礎コンクリート13内にH形鋼の下半部を埋設し、このH形鋼をレール20としたものである。H形鋼の上側フランジ20aの両端にはフラットバー(平鋼)からなるガイドバー22が設けられている。このガイドバー22間の上側フランジ20a上に複数個のベアリングボール12を配置するようにしたものである。同図(b)には、工場製作時にH形鋼等のソリ25が底面に埋設されたボックスカルバート1と、基礎コンクリート13上面に溝形鋼を埋設して形成したレール溝26とが示されている。このレール溝26内に多数のベアリングボール12を敷き並べ、さらにベアリングボール12上にボックスカルバート1のソリ25を載置するようにした。この変形例によれば、H形鋼で作られたソリ25にベアリングボール12やローラー16の落下防止用のガイドバーを設ける必要がなく、従来の鋼材をそのまま使用でき、部品点数を減らすことができる。なお、この溝形鋼は図示したように、ほぼ全体を基礎コンクリート13内に埋設させるようにしてもよいし、フランジ26aの高さの1/2程度を埋設させたり、溝形鋼全体を基礎コンクリート13の面上に載置し、図示しないボルト等によりコンクリート面に固定するようにしてもよい。図4(c)は同図(b)に示したソリ25と同等の機能を有するソリ27を後付けした例を示している。この変形例では同図(d)に示したように、ボックスカルバート1の底面の4箇所にあらかじめ埋設されているアンカープレートPに固定ボルト28を介してH形鋼形状からなるソリ27が取り付けられている。このソリ27のフランジ27aには同図(e)に示したような長円形状の長孔27bが形成されている。この長孔27bを介してソリ27は固定ボルト28でアンカープレートPに取り付けられている。このときフランジ27aとアンカープレートPとの間には摩擦低減プレート29が介装されている。ソリ27は同図(e)に示した矢印方向にわずかな範囲で長孔27b内を移動することができる。これにより、ボックスカルバート1を横引きする場合に、縦断方向にカーブしている箇所でレール溝(図示せず)がカーブしていても容易にレール溝の形状に倣ってボックスカルバート1を移動させることができる。
【0012】
以上に述べたように、連結位置までウインチ等の横引き装置によって移動されたボックスカルバートは、所定の基数ごとに順次、公知の連結方法によりトンネル軸線方向に連結される。本実施の形態では、図6に示したように、ボックスカルバート51の上側ハンチと底版両側位置に4基のボックスカルバート51(1.0m×4基)を貫通するようにPC鋼棒70が挿通されている。このPC鋼棒70を図示しないカップラーで接続することにより、各ボックスカルバート51を連結できる。このとき図1、図6に示したように、ボックスカルバート1の当接する端面にはパッキン材71が装着されており、連結箇所の防水性を確保できるようになっている。この状態では、各ボックスカルバート1はレール10上に摩擦低減手段であるベアリングボール12やローラー16上に載置された状態であり、基礎コンクリート13とボックスカルバート1の底面間には隙間があいたままになっている。
【0013】
そこで、この隙間部分を閉塞するための次工程としてのグラウト工について説明する。複数基が連結されて完成した管渠は前述したレール10、20あるいはソリ25、27上に支持されている。したがって、ボックスカルバート1の底面と基礎コンクリート13との間の隙間部分を閉塞する必要がある。従来はボックスカルバート1のレベル及び勾配を調整した後に底面と基礎コンクリートとの間に敷きモルタルが施工されていた。これに対して本発明では図5各図に示したように、ボックスカルバート1の底面に設けられたグラウト孔40を用いたグラウト工を行っている。このグラウト孔40は図1に示したように、ボックスカルバート1の奥行き(1m)のほぼ中央位置に、幅方向に所定の離れをとって2個設けられている。
【0014】
グラウト工では図5(a)に示したように、ボックスカルバート1の設置位置でグラウト孔40に接続されたグラウトホース41を介して図示しないポンプから圧送されたグラウト材42を充填する。グラウト材42は高い流動性を有しているため、ボックスカルバート1の底面から流れ出て基礎コンクリート13上を流れるように広がる。グラウト材42はレール10の位置で一旦せき止められるが、さらに充填が進むとレール10上面を越え、ベアリングボール12の間を通り抜けていく。最終的には、図5(b)に示したように、ボックスカルバート1の側壁1bの外側まで充填を行うことができる。このようにグラウト孔40を利用してボックスカルバート1と基礎コンクリート13との間の空間を完全に充填することができる。グラウト材42にはセメントモルタル等の充填材が好適である。この場合、アルミニウム粉末等の発泡剤を添加して充填効果を高めることも好ましい。充填用のセメントモルタルはコンクリートミキサー車で供給できる。ミキサー車から充填位置まではグラウトポンプ(モルタルポンプ)を用いて容易に圧送すればよい。
【0015】
以上の説明では、単位管体としてボックスカルバートを用い、矩形断面からなる管渠を構築する方法を例として示したが、本発明の技術的特徴を変えることなく、単位管体として円筒状のヒューム管を用いた例にも適用できることは言うまでもない。
【0016】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、搬入されたボックスカルバート等の管渠を効率よく連結位置まで移動でき、さらに連結された管渠の設置のためのグラウト作業も効率よく行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による管渠の布設方法での横引き作業の状態を示した状態説明図。
【図2】
摩擦低減手段の実施の態様を示した部分拡大断面図。
【図3】
本発明の摩擦低減手段による横引き状態を示した状態説明図。
【図4】
摩擦低減手段の構成の変形例を示した部分拡大断面図。
【図5】
ボックスカルバートのグラウト工作業の状態を示した状態説明図。
【図6】
従来のボックスカルバートの布設方法の一例を示した説明図。
【図7】
従来、ボックスカルバートの横引きに使用された摩擦低減手段の一例を示した部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 ボックスカルバート
10,20 レール
11,17,22 ガイドバー
12 ベアリングボール
13 基礎コンクリート
15 埋込み金具
16 ローラー
25,27 ソリ
40 グラウト孔
42 グラウト材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-06-08 
結審通知日 2005-06-13 
審決日 2005-06-27 
出願番号 特願平8-277516
審決分類 P 1 113・ 1- ZA (E03F)
P 1 113・ 121- ZA (E03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 高橋 祐介
木原 裕
登録日 1999-01-22 
登録番号 特許第2879021号(P2879021)
発明の名称 管渠の布設方法  
代理人 葛西 泰二  
代理人 葛西 泰二  
代理人 砂場 哲郎  
代理人 砂場 哲郎  

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