ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
無効200480272 | 審決 | 特許 |
無効200235248 | 審決 | 特許 |
無効200480147 | 審決 | 特許 |
無効200580231 | 審決 | 特許 |
無効200580100 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) G01B 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 G01B 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 G01B 審判 全部無効 2項進歩性 G01B 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 G01B 審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 G01B 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 G01B |
---|---|
管理番号 | 1164344 |
審判番号 | 無効2004-80273 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-12-22 |
確定日 | 2007-08-06 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3390971号「穴の内径測定方法及び装置」の特許無効審判事件についてされた平成18年 2月22日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10140号平成18年7月14日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
【1】本件経緯の概要 本件特許第3390971号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。 平成12年 6月21日 特許出願(国内優先日:平成12年2月29日) 平成15年 1月24日 特許権の設定登録 平成16年12月22日 特許の無効審判請求 (無効2004-80273号) 平成17年 4月 8日 被請求人より答弁書提出及び訂正請求 平成17年 6月10日 請求人より弁駁書提出 平成18年 2月22日 審決(発送日:同年3月2日) 平成18年 3月31日 被請求人により審決取消訴訟提起 (平成18年(行ケ)第10140号) 平成18年 5月24日 被請求人により訂正審判請求 (訂正2006-39084号) 平成18年 7月14日 審決取消訴訟差戻し決定 平成18年 7月21日 訂正請求のための期間指定通知 (発送日:同年同月25日)注 平成18年 8月10日 訂正請求副本送付通知及び弁駁指令通知 (発送日:同年同月15日) 平成18年10月 4日 請求人より弁駁書提出 平成18年12月22日 被請求人に訂正拒絶理由通知 (発送日:平成19年1月4日) 平成18年12月26日 請求人に訂正拒絶理由通知 (発送日:平成19年1月4日) 平成19年 1月12日 請求人により意見書提出 平成19年 2月 5日 被請求人により意見書、手続補正書及び 全文訂正明細書提出 注:被請求人は平成18年7月21日付け訂正請求のための期間指定通知に応答しなかったので、被請求人が行った平成18年5月24日付け訂正審判請求(訂正2006-39084号)は、特許法第134条の3第5項の規定により、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書又は図面を援用した訂正の請求とみなされ(以下「平成18年5月24日付け訂正請求」という。)、特許法第134条の2第4項の規定により、この訂正請求によって平成17年4月8日付け訂正請求は取り下げられたものとみなされる。 【2】請求の趣旨及び理由の概要 請求人(マーポス、ソチエタ、ペル、アッツィオーニ)は、「第3390971号特許の請求項1乃至10に係る発明は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第6号証(ロシア語文献)、甲第1a号証ないし甲第6a号証(甲第1号証ないし甲第6号証をそれぞれ英語訳したもの)、そして甲第1b号証ないし甲第6b号証(甲第1a号証ないし甲第6a号証をそれぞれ日本語訳したもの)と、甲第7号証及び甲第8号証を提出している。 そして、概ね、以下のアないしウの理由により、被請求人(株式会社東京精密)の訂正請求は、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、本件の訂正前の請求項1ないし10に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであり、また、仮に訂正請求が認められたとしても、当該証拠方法により、本件の訂正後の請求項1ないし10に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張している。 記 甲第1号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証133580 7号公報 甲第1a号証:甲第1号証の英訳 甲第1b号証:甲第1a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第2号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証133580 8号公報 甲第2a号証:甲第2号証の英訳 甲第2b号証:甲第2a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第3号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証149047 4号公報 甲第3a号証:甲第3号証の英訳 甲第3b号証:甲第3a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第4号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証168277 2号公報 甲第4a号証:甲第4号証の英訳 甲第4b号証:甲第4a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第5号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証130723 3号公報 甲第5a号証:甲第5号証の英訳 甲第5b号証:甲第5a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第6号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証147982 7号公報 甲第6a号証:甲第6号証の英訳 甲第6b号証:甲第6a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第7号証:米国特許No.3,438,244号公報 甲第8号証:本件特許に係る特許出願(特願2000-185773号)の審 査結果書類 ア.平成18年5月24日付け訂正請求書による願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の訂正は、特許法第134条の2第5項で準用する同126条第5項の要件を充たしていない。 イ.(訂正前の)請求項1及び請求項2に係る特許発明は、本件優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第6号証のいずれにも記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、また、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、 (訂正前の)請求項3に係る特許発明は、甲第1号証ないし甲第6号証のいずれにも記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項4に係る特許発明は、甲第1号証に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項5に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証に記載された発明または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項6に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第4号証に記載された発明または甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項7に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と本件優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項8に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項9に係る特許は、甲第1号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に基づいて特許を受けることができず、 (訂正前の)請求項10に係る特許は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものであるから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものである。 ウ.訂正後の請求項1ないし請求項10に係る特許発明は、以下の1)ないし4)のとおり、甲第1号証ないし甲第6号証に記載の発明と同一であるか、又は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基いて当業者がその優先権主張の日前に容易に発明することができた発明であるから、本件請求項1ないし請求項10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、したがって、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものである。 1)訂正後の請求項1及び請求項3に係る特許発明について (1a)「剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子」について 支持部材と校正球の自動球心作用を利用して穴の内径を測定するに際し、穴内で球を自動球心作用可能なように支持することは当業者に自明であり、甲第4号証には、磁気ロッド支持対4により磁力を介して較正球3を支持することが記載されており、支持部材としてロッド状のものを用いることは当業者が適宜なし得ることである。また支持部材を剛体で構成するか否かは、当業者が適宜考え得る設計事項である。 (1b)「10?100μmの隙間」について 甲第3号証ないし甲第5号証には、それぞれ隙間が10?100μmであることが開示されている。また、隙間が小さいほど弾性の影響で流体が流れにくくなり、隙間が小さすぎると弾性の影響で流体が流れなくなるということは当業者が容易に技術的に理解できることであり、本件発明において弾性の影響で流体が流れなくなる範囲を実験的あるいは理論的に求めて設定することは、当業者なら必須的に行うべきことであり、また容易に求めることが可能なことである。 (1c)「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である」について 甲第2号証の要約(57)の「ベローズ8を圧縮しながら、・・・」との記載から、「ベローズ8」が圧縮した後の個々の状態においては定常状態を取り得るのであり一定の形状を有するから「剛体」といえ、仮に、圧縮可能なベローズ8は変形するから「剛体」ではないと解釈したとしても、上述のように、「ベローズ8」が圧縮した後の定常状態において一定の形状を有するから、「浮子の非接触挿入には」何の不都合をもたらすことがないことは明らかである。 2)訂正後の請求項2に係る発明について (2a)「前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である」について 被請求人は、「更に甲第4号証や甲第5号証には、磁気支持ロッド体4及び剛性支持体8を穴の奥行き方向に駆動させることは開示されていますが、支持体と較正球とを一体的に自動求心方向へ移動させるための較正(請求人の注:構成の誤りと思われる)は開示されておりません。その結果、支持体と較正球とがガス流によって自動求心するために移動するに、円滑な移動は期待できません。これに対し、本件発明2のフローティング機構では、移動駒を介して支持部材と浮子とを一体的にかつ水平面上に移動させることができるので、浮子が振り子状に触れることを抑止しつつ、かつ自動求心するときにも移動駒を介して滑らかに水平面上を移動させるという特有の効果があります。」において、「甲第4号証や甲第5号証には、磁気支持ロッド体4及び剛性支持体8を穴の奥行き方向に駆動させることは開示されていますが、支持体と較正球とを一体的に自動求心方向へ移動させるための構成は開示されておりません。その結果、支持体と較正球とがガス流によって自動求心するために移動するに、円滑な移動は期待できません。」と述べている。 しかしながら、例えば甲第4号証において「該装置は、・・凹部9の軸に沿った移動を許容するように設けられた較正球3とを備え」と記載されていることからも明らかなように、較正球3が自動求心作用を受けるように移動する場合に較正球3が凹部9の軸に沿って移動できるようにすることは、球を穴の中心に位置させようとする自動求心作用に基づいて内径を測定する手法を適用する場合に、当業者が当然に考えることであり、そして、較正球3が凹部9の軸に沿って移動することを容易には実現できない場合に、支持体と較正球とを一体的に自動求心方向へ移動させるように凹部9の軸方向に微少移動させる調整手段を設ける必要性を想起し微少移動調整手段を設けることは当業者が当然になし得ることである。 さらに、この微少移動調整手段は種々の手法で可能であることは技術常識であり、「前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせること」によって調整するというように移動駒を活用することは微少移動調整手段としては通常において行われる手法の一つであり単なる設計的な事項である。 また、甲第6証には、較正球5とそれを支持するロッド4とがヒンジ7を介して可動に駆動部6に結合されていることが開示され、この場合の限られた範囲でロッド4が旋回動作を行い較正球5の位置をワーク4に対して調整することを、上記の「前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせる」ように転用することは容易に可能である。 (2b)「10?100μmの隙間」について 上記(1b)の記載のとおり、当業者なら必須的に行うべきことであり、また容易に求めることが可能なことである。 3)訂正後の請求項4に係る特許発明について (3a)「前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である」について 被請求人は、「「前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である」を追加することにより、無効審判の審決書第41頁下から第3?28行の「どの段階で電流を停止するかあるいは通電するかの記載事項もない」というご指摘は解消しております。」と述べている。 しかしながら、甲第4号証等には磁力を有する「磁気ロッド支持体4」が開示されており、永久磁石と電磁石との間には一方が他方を連想する関係があることは明らかである。「磁気ロッド支持体4」は永久磁石と電磁石のいずれであるかは明示されていないが、仮に、「磁気ロッド支持体4」が永久磁石であるとした場合において、「磁気ロッド支持体4」を電磁石で構成することは、当業者には反射的に容易に想起できる。この場合において、「前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である」という内容は単に、磁石が電磁石であることの性質から必然的に導出される内容である。すなわち、浮子を穴に出し入れするときには浮子を吸着させる必要があり、そのために通電することになるのであり、また、穴に流体を供給するときには浮子を吸着させておく必要がないのであり、そのために電流を停止することになるのであり、「どの段階で電流を停止するかあるいは通電するか」は必然的に特定されることになるのである。 また、本件の明細書の段落[0038]の「なお、上述した測定装置では、永久磁石52によって測定球30を吸着したが、図7に示すように、電磁石54によって吸着してもよい。電磁石54は、支持部材32を強磁性体の心(磁心)として、支持部材32の上部にコイル56を設けることにより構成される。この場合も、永久磁石52を用いた場合と同様に、測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作、及び穴22Aの内径測定操作を迅速に行うことができる。また、電磁石54を用いた方法では、供給口28Aから圧縮空気を噴射した際にコイル56への電流を停止することにより、測定球30に働く磁力が無くなり、測定球30がより滑らかに穴22Aの中心に移動する。」には、「この場合も、永久磁石52を用いた場合と同様に、測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作、及び穴22Aの内径測定操作を迅速に行うことができる。」と記載されており、「測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作、及び穴22Aの内径測定操作を迅速に行うことができる」という効果が電磁石の特有の効果というよりも永久磁石の場合と同様の効果であると記載されています。このことからも明らかなように、「電磁石」であることを特定したとしても、当業者に自明である内容を超えるものは何もないというべきである。 (3b)「10?100μmの隙間」について 上記(1b)の記載のとおり、当業者なら必須的に行うべきことであり、また容易に求めることが可能なことである。 4)訂正後の請求項5ないし10に係る特許発明について 請求人は、訂正後の請求項5及び6に係る特許発明は、平成18年2月22日付け審決において有効であると判断された請求項7の内容を含むものであり、訂正後の請求項7及び8に係る発明は、先の審決において有効であると判断された請求項8の内容を含むものであり、また、訂正後の請求項9は、請求項5、6、7、8の従属項であり、訂正後の請求項10は、請求項5、6、7、8、9の従属項であるとして、上記審決をふまえる所存であると主張している。 【3】被請求人の主張の概要 これに対し、被請求人(株式会社東京精密)は、平成18年5月24日付け訂正請求により、特許請求の範囲の記載を訂正し、この訂正は、平成18年2月22日付け無効2004-80273号事件審決において、無効とされた第3390971号特許の請求項1ないし6、9ないし10のうち、請求項2及び3を削除するとともに、請求項1,4ないし6の特許請求の範囲を減縮し、そして、特許が維持された請求項7及び8を独立請求項形式に記載したものであり、請求項9及び10については、特許が維持された請求項だけを引用する等したものであって、特許法第134条の2第1項但書各号及び同第5項で準用する同法第126条第3項ないし第5項の規定に適合するものであると主張している。 さらに、この平成18年5月24日付け訂正請求に対して当審が通知した平成18年12月22日付け訂正拒絶理由に対して、平成19年2月5日付け手続補正書により当該訂正請求を補正し、この補正(以下「平成19年訂正請求補正」という。)は、平成18年5月24日付け訂正請求によって減縮した請求項1及び3を削除するとともに、この削除に対応して請求項番号を整合して、請求項1ないし8とするものであると主張している。 そして、平成19年訂正請求補正後の第3390971号特許の請求項1ないし8に係る発明は、無効理由に該当しない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、概ね、以下のa)ないしc)の理由により、この補正後の請求項1ないし請求項8に係る特許発明は、それぞれ甲第1号証ないし甲第6号証とは異なる発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、更に、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものではないと、反論している。 a)請求項1について(平成18年5月24日付け訂正請求後の請求項2に相当する。) 請求項1に係る発明は、支持部材と浮子とが一体となって移動駒を介して水平に移動するため、甲第2号証、甲第3号証のように浮子だけが振り子状に動くことがない。その結果、ワークの穴内壁を傷づけることがないという特有の効果を有する。更に甲第4号証や甲第5号証には、磁気支持ロッド体4及び剛性支持体8を穴の奥行き方向に駆動させることは開示されているが、支持体と較正球とを一体的に自動求心方向へ移動させるための較正は開示されていない。その結果、支持体と較正球とがガス流によって自動求心するために移動するに、円滑な移動は期待できない。 これに対し、請求項1に係る発明のフローティング機構では、移動駒を介して支持部材と浮子とを一体的にかつ水平面上に移動させることができるので、浮子が振り子状に触れることを抑止しつつ、かつ自動求心するときにも移動駒を介して滑らかに水平面上を移動させるという特有の効果がある。 以上から、請求項1に係る発明は、当業者が甲第2号証から甲第5号証までの発明に基づいて容易に想到できたとはいえないため特許法第29条第2項に該当しない。 b)請求項2について(同訂正請求後の請求項4に相当する。) 請求項2に係る発明は、浮子を出し入れする時は電磁石により支持部材に吸着するとともに、流体を供給して自動求心させるときには通電を停止して浮子が自由移動できるようになる。 これに対し、甲第4号証及び甲第5号証は、磁力で較正球を吸着することは開示されているが、これらからは較正球をワークの穴内に挿入した後、吸着状態を解除して較正球を支持体とは別体に移動できるようにすることができるとの発想はできず、記載もなければ示唆もない。 よって、請求項2に係る発明を当業者が甲第2号証から甲第5号証に基づいて容易に想到できたとはいえず、特許法第29条第2項に該当しない。 c)請求項3ないし8について(同訂正請求後の請求項5ないし10に相当する。) 請求項3ないし8に係る発明は、平成18年2月22日付け審決で特許を維持すると判断された平成17年4月8日付け訂正請求後の請求項7及び8に基づくものであり、それぞれ甲第1号証ないし甲第6号証とは異なる発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、更に、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので特許法第29条第2項に該当しない。 【4】当審の判断 【4.1】訂正拒絶理由の概要 当審は、平成19年1月4日を発送日として、請求人及び被請求人に対し、概略、以下のような訂正拒絶理由を通知した。 【4.1.1】訂正前の特許請求の範囲について 訂正前の特許請求の範囲は、登録時の本件特許発明の特許請求の範囲の記載事項によれば、以下のとおりである。 『【請求項1】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算することを特徴とする穴の内径測定方法。 【請求項2】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えたことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項3】前記浮子は、球状に形成されることを特徴とする請求項2記載の穴の内径測定装置。 【請求項4】前記浮子の支持手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の穴の内径測定装置。 【請求項5】前記浮子は、前記支持手段に弾性体を介して取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。 【請求項6】前記浮子は、磁力によって前記支持部材に支持されることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。 【請求項7】前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の穴の内径測定装置。 【請求項8】前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の穴の内径測定装置。 【請求項9】前記流体は、空気であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の穴の内径測定装置。 【請求項10】前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7、8又は9記載の穴の内径測定装置。』 【4.1.2】訂正後の特許請求の範囲について 訂正後の特許請求の範囲は、平成18年5月24日付け訂正請求書に添付された訂正した特許請求の範囲の記載事項によれば以下のとおりである。 『【請求項1】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する穴の内径測定方法であって、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする穴の内径測定方法。 【請求項2】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた前記浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された前記穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項3】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子と、該浮子が挿入された前記穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項4】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項5】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた前記浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項6】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項7】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた前記浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項8】ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された前記穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項9】前記流体は、空気であることを特徴とする請求項5、6、7、又は8に記載の穴の内径測定装置。 【請求項10】前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項5、6、7、8又は9に記載の穴の内径測定装置。』 なお、下線は訂正箇所を示すために付したものである(以下同様)。 【4.1.3】訂正の適否についての判断 【4.1.3.1】訂正事項 (1)訂正事項a 訂正前の請求項1に係る記載を、訂正後の請求項1のごとく訂正する。 (2)訂正事項b 訂正前の請求項2に係る記載を削除する。 (3)訂正事項c 訂正前の請求項3に係る記載を削除する。 (4)訂正事項d 訂正前の請求項4に係る記載を、訂正後の請求項2のごとく訂正する。 (5)訂正事項e 訂正前の請求項5に係る記載を、訂正後の請求項3のごとく訂正する。 (6)訂正事項f 訂正前の請求項6に係る記載を、訂正後の請求項4のごとく訂正する。 (7)訂正事項g 訂正前の請求項7に係る記載を、訂正後の請求項5のごとく訂正するとともに、訂正後の請求項6のごとく訂正する。 (8)訂正事項h 訂正前の請求項8に係る記載を、訂正後の請求項7のごとく訂正するとともに、訂正後の請求項8のごとく訂正する。 (9)訂正事項i 訂正前の請求項9に係る記載を、訂正後の請求項9のごとく訂正する。 (10)訂正事項j 訂正前の請求項10に係る記載を、訂正後の請求項10のごとく訂正する。 (11)訂正事項k 訂正前の明細書の段落番号【0006】の「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、…ことを特徴とする。」を、 「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する穴の内径測方法であって、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする。」と訂正する。 (12)訂正事項l 段落番号【0007】の「また、本発明は前記目的を達成するために、…ことを特徴とする。」を、「また、本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする。また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。また、本発明は、前記流体は、空気であることを特徴とする。また、本発明は、前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする。」と訂正する。 (13)訂正事項m 段落番号【0040】の「なお、測定球30と支持部材32とを弾性体60で連結する代わりに、…なお、支持部材32と測定球32との間に弾性体60を設けながら、支持部材32にフローティング機構を設けてもよい。」を、「なお、測定球30と支持部材32とを弾性体60で連結する代わりに、図9に示すように、支持部材32にエアベアリング等を用いたフローティング機構を設けてもよい。即ち、水平面上でスライドするように支持された移動駒62を介して、剛体で構成された支持部材32とアーム36とを連結する。これにより、測定球30が自動求心作用を受けると移動駒62が水平面上を移動し、測定球30が穴22A中心に配置され、穴22Aの内径を精度良く求めることができる。なお、支持部材32と測定球30との間に弾性体60を設けながら、支持部材32にフローティング機構を設けてもよい。」と訂正する。 【4.1.3.2】新規事項の追加の有無 (ア)訂正事項aについて 訂正事項aは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「浮子」を、構造的により具体化して「剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子」に、同「隙間」を、数値的により具体化して「10?100μmの隙間」に、同「弾性体」を「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である」に、限定するものである(以下それぞれ「限定事項a1」、「限定事項a2」、「限定事項a3」という。)。 そして、限定事項a1については、「剛体で構成された」は、願書に添付された明細書の段落【0040】の記載に、「円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子」内容のうち、「円柱状の」部分は同明細書の段落番号【0018】に、「支持部材に弾性体を介して取り付けられた」部分は、訂正前の請求項5の記載に、「球状の浮子」は図6に基づくものである。 また、限定事項a2については、「10?100μmの隙間」は、同明細書の段落【0017】に記載の事項に基づくものである。 しかしながら、限定事項a3の「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり」については、図6から、図面番号52が永久磁石を表示し、図面番号32が支持部材を表示していること、図面番号30の測定球(浮子)が球状であることは読み取れるが、永久磁石が「弾性体」に相当するものであることは読み取れず、また、仮に永久磁石が「弾性体」に相当するものとしても、図6には部品の寸法や縮尺などが表示されてはいないので、図6から、「弾性体」が浮子の半径長さに等しいと解することはできない。(なお、図8からは、図面番号32の支持部材と図面番号30の測定球との間に図面番号60の弾性体が介在していることが読み取れるが、「弾性体」が浮子の半径長さに等しいと解することはできないことは上記と同様である。) なお、被請求人は、『「前記球状の浮子の半径長さであり」は図6に基づきます』と主張するが、上記のとおりであるから、その主張は採用できない。 そうすると、限定事項a3は、願書に添付された明細書又は図面(特許明細書等)に記載された事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合せず、新規事項の追加にあたるものである。 (イ)訂正事項eについて 訂正事項eは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項4に従属する請求項5を独立請求項形式にし(以下、「釈明事項e1」という。)、訂正事項aと同様の訂正を行うもので、その独立請求項に記載された「浮子」を、構造的により具体化して「剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子」に、同「隙間」を、数値的により具体化して「10?100μmの隙間」に、同「弾性体」を「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である」に、限定するものである(以下それぞれ「限定事項e1」、「限定事項e2」、「限定事項e3」という。)。 そして、釈明事項e1については、従属請求項を独立請求項の形式にするので、明りょうでない記載の釈明にあたる。 また、限定事項e1については、「剛体で構成された」は、願書に添付された明細書の段落【0040】の記載に、「円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子」内容のうち、「円柱状の」部分は同明細書の段落番号【0018】に、「支持部材に弾性体を介して取り付けられた」部分は、訂正前の請求項5の記載に、「球状の浮子」は図6に基づくものである。 また、限定事項e2については、「10?100μmの隙間」は、同明細書の段落【0017】に記載の事項に基づくものである。 しかしながら、限定事項e3の「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり」について、被請求人は、『「前記球状の浮子の半径長さであり」は図6に基づきます』と主張するものの、上記(ア)における訂正事項aについての検討と同様、限定事項e3は、願書に添付された明細書又は図面(特許明細書等)に記載された事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合せず、新規事項の追加にあたるものである。 (ウ)訂正事項kについて 訂正事項kは、特許請求の範囲の請求項1ないし3の訂正に伴い、願書に添付された明細書中の【課題を解決するための手段】の一部である段落【0006】を訂正するものであるが、その記載事項である「前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり」は、上記(ア)及び(イ)おける訂正事項a、eについての検討と同様、願書に添付された明細書又は図面(特許明細書等)に記載された事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合せず、新規事項の追加にあたるものである。 【4.1.4】結論 したがって、平成18年5月24日付け訂正請求は、特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正請求を認めない。 【4.2】平成19年2月5日付け手続補正の適否について この訂正拒絶理由に対し、被請求人は、平成18年5月24日付け訂正請求書について、平成19年2月5日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)を行った。本件補正は、平成18年5月24日付け訂正請求書を補正し、当該訂正請求書に添付された訂正明細書を補正するものであって、その補正事項は以下のとおりである。 【4・2・1】補正事項 (1)補正事項1 当該訂正請求の訂正事項aについて、 『特許請求の範囲の請求項1に係る記載 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算することを特徴とする穴の内径測定方法。」を、「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する穴の内径測定方法であって、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、 ことを特徴とする穴の内径測定方法。」 と訂正する。』 を、 『特許請求の範囲の請求項1に係る記載 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算することを特徴とする穴の内径測定方法。」を、削除する。』と補正する。 (2)補正事項2 当該訂正請求の訂正事項dについて、 『特許請求の範囲の請求項4に係る記載 「前記浮子の支持手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項2とする。』 を、 『特許請求の範囲の請求項4に係る記載 「前記浮子の支持手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項1とする。』と補正する。 (3)補正事項3 当該訂正請求の訂正事項eについて、 『特許請求の範囲の請求項5に係る記載 「前記浮子は、前記支持手段に弾性体を介して取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項3とする。」』 を、 『特許請求の範囲の請求項5に係る記載 「前記浮子は、前記支持手段に弾性体を介して取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。」を、削除する。』と補正する。 (4)補正事項4 当該訂正請求の訂正事項fについて、 『特許請求の範囲の請求項6に係る記載 「前記浮子は、磁力によって前記支持部材に支持されることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項4とする。』 を、 『特許請求の範囲の請求項6に係る記載 「前記浮子は、磁力によって前記支持部材に支持されることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項2とする。』と補正する。 (5)補正事項5 当該訂正請求の訂正事項gについて、 『特許請求の範囲の請求項7に係る記載 「前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項5とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項6とする。』 を、 『特許請求の範囲の請求項7に係る記載 「前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」 と訂正し、請求項3とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項4とする。』と補正する。 (6)補正事項6 当該訂正請求の訂正事項hについて、 『特許請求の範囲の請求項8に係る記載 「前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」 と訂正し、請求項7とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項8とする。』 を、 『特許請求の範囲の請求項8に係る記載 「前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」 と訂正し、請求項5とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項6とする。』と補正する。 (7)補正事項7 当該訂正請求の訂正事項iについて、 『特許請求の範囲の請求項9に係る記載 「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項5、6、7、又は8に記載の穴の内径測定装置。」と訂正とする。』 を、 『特許請求の範囲の請求項9に係る記載 「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項3、4、5、又は6に記載の穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項7とする。』と補正する。 (8)補正事項8 当該訂正請求の訂正事項jについて、 『特許請求の範囲の請求項10に係る記載 「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項2、3、4、6、7、8又は9記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項5、6、7、8又は9に記載の穴の内径測定装置。」と訂正する。』 を、 『特許請求の範囲の請求項10に係る記載 「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項2、3、4、6、7、8又は9記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7に記載の穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項8とする。』と訂正する。 (9)補正事項9 当該訂正請求の訂正事項kについて、 『段落番号【0006】「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、・・・ことを特徴とする。」を、 「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法において、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子を挿入した前記穴に流体を供給し、供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する穴の内径測定方法であって、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、剛体で構成された円柱状の支持部材に、弾性体を介して取り付けられた球状の浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記弾性体は、前記球状の浮子の半径長さであり、前記ワークに非接触で前記浮子を前記穴に挿入でき、かつ前記供給した流体により前記浮子が自動求心できるように弾性変形する弾性体である、ことを特徴とする。」と訂正する。』 を、 『段落番号【0006】「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、・・・ことを特徴とする。」を、 「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする。」と訂正する。』と補正する。 なお、下線は、補正箇所を示すために、当審で付したものである。 【4.2.2】補正内容について (ア)補正事項1について 補正事項1は、平成18年5月24日付け訂正請求書における当初の訂正事項a(請求項1について、その発明特定事項の一部を下位概念化し、また、新たな発明特定事項を直列付加するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)に代えて、新しい訂正事項a(請求項1を削除するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)とするもので、訂正事項の内容の差し替えといえるものである。 (イ)補正事項3について 補正事項3は、当初の訂正事項e(請求項4を引用する請求項5を独立請求項形式にし、その発明特定事項の一部を下位概念化し、また、新たな発明特定事項を直列付加するもので、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)に代えて、新しい訂正事項e(請求項5を削除するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)とするもので、訂正事項の一部を削除するものの、その余の訂正事項について内容を差し替えるものといえる。 (ウ)補正事項9について 補正事項9は、当初の訂正事項k(明細書の段落番号【0006】について、特許請求の範囲の訂正に合わせて、その内容を整合しているもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正事項)に代えて、新たな訂正事項k(明細書の段落番号【0006】について、特許請求の範囲の補正に合わせて、その内容を整合しているもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正事項)とするもので、訂正事項の内容の差し替えといえるものである。 (エ)補正事項2,4ないし6について 補正事項2,4ないし6は、当初の訂正事項d,f,g及びh(引用形式の請求項を独立請求項形式にし、その発明特定事項の一部を下位概念化し、また、新たな発明特定事項を直列付加するとともに、請求項番号を直したもので、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)に代えて、新たな訂正事項d,f,g及びh(引用形式の請求項を独立請求項形式にし、その発明特定事項の一部を下位概念化し、また、新たな発明特定事項を直列付加するとともに、請求項番号を整合したもので、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項)とするもので、補正後の請求項番号に相違はあるものの、訂正事項の内容に変更はないといえる。 (オ)補正事項7及び8について 補正事項7及び8は、当初の訂正事項i及びj(引用形式の請求項において、引用する請求項番号を直すもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正事項)に代えて、新たな訂正事項(引用形式の請求項において、引用する請求項番号を直すもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正事項)とするもので、補正後の引用する請求項番号に相違はあるものの、訂正事項の内容に変更はないといえる。 【4.2.3】補正要件の検討 特許法第134条の2第5項で準用する特許法第131条の2第1項の規定によれば、訂正請求書の補正及び訂正明細書の補正は、「訂正請求書の要旨」を変更するものであってはならず、「訂正請求書の要旨を変更する補正」とは、訂正請求書の「請求の趣旨」の記載を変更することによって、補正前後の間で請求の基礎である「訂正を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更することである。 ところで、上記【4.2.2】(ア)ないし(ウ)は、補正が認められる類型として挙げられている、当初の訂正事項を削除するだけの補正、いわゆる、減縮的変更に該当せず、当初の訂正請求書の要旨を変更する補正といえるか否かについて更に検討を加えなければならない(「平成15年改正法における無効審判等の運用指針」特許庁(平成15年11月)の104頁ないし109頁参照。)。 そもそも、特許法第131条の2第1項の規定は、訂正請求人が審判の審理が進んだ段階で訂正請求の要旨を拡張・変更すると、実質的な審理のやり直しをせざるを得ず、審理が長期化・遅延することに照らし、審判請求書の補正がその「要旨の変更」に当たる場合には、これを許さないものとしたものと解されるところ、本件訂正請求の趣旨が、訂正前の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決を求めるものであるから、明細書の記載が変更されれば請求の趣旨及び理由が変更されることになる。 しかし、「要旨の変更」にあたるか否かは、単に請求の趣旨や理由が変更されたかどうかを形式的に判断するのではなく、補正前の訂正事項と補正後の訂正事項の内容を対比検討し、訂正審判における審理の範囲が当該補正により実質的に拡張・変更されるかどうかに基づいて判断すべきであるとの判示もなされている(知財高裁平成18年10月25日判決言渡し・平成17年(行ケ)第10706号最高裁HP掲載参照。)。 そこで、上記の判示も踏まえ、本件補正について検討すると、上記(ア)ないし(ウ)は、補正前の訂正事項の内容を変更するものであるが、当該補正によって、訂正明細書から請求項1及び3に係る記載事項が特許請求の範囲から削除され、また、その削除にともなって、明細書の段落【0006】の記載内容の一部を削除後の特許請求の範囲にあわせて削除したものであり、この削除された記載事項は、上記訂正拒絶理由において新規事項の追加であると指摘した箇所を含むものであり、当審として審理の範囲外と考えていたものであるから、本件補正によって、訂正審判における審理の範囲が実質的に拡張・変更されるものではないといえる。 したがって、本件補正は、訂正請求の要旨を実質的に変更するものではないので、これを認め、以降、本件補正後の訂正請求の適否について検討する。 【4.3】補正後の平成18年5月24日付け訂正請求の適否に対する判断 【4.3.1】訂正事項 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1に係る記載を、削除する。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2に係る記載を、削除する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項3に係る記載を、削除する。 (4)訂正事項d 特許請求の範囲の請求項4に係る記載「前記浮子の支持手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項1とする。 (5)訂正事項e 特許請求の範囲の請求項5に係る記載を、削除する。 (6)訂正事項f 特許請求の範囲の請求項6に係る記載「前記浮子は、磁力によって前記支持部材に支持されることを特徴とする請求項4記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項2とする。 (7)訂正事項g 特許請求の範囲の請求項7に係る記載「前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」 と訂正し、請求項3とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項4とする。 (8)訂正事項h 特許請求の範囲の請求項8に係る記載「前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の穴の内径測定装置。」を、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」 と訂正し、請求項5とするとともに、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項6とする。 (9)訂正事項i 特許請求の範囲の請求項9に係る記載「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記流体は、空気であることを特徴とする請求項3、4、5、又は6に記載の穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項7とする。 (10)訂正事項j 特許請求の範囲の請求項10に係る記載「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7、8又は9記載の穴の内径測定装置。」を、 「前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7に記載の穴の内径測定装置。」と訂正し、請求項8とする。 (11)訂正事項k 段落番号【0006】「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、・・・ことを特徴とする。」を、 「【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする。」と訂正する。 (12)訂正事項l 段落番号【0007】の「また、本発明は前記目的を達成するために、・・・ことを特徴とする。」を、 「また、本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。 また、本発明は、前記流体は、空気であることを特徴とする。 また、本発明は、前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする。」と訂正する。 (13)訂正事項m 段落番号【0040】の「なお、測定球30と支持部材32とを弾性体60で連結する代わりに、…なお、支持部材32と測定球32との間に弾性体60を設けながら、支持部材32にフローティング機構を設けてもよい。」を、 「なお、測定球30と支持部材32とを弾性体60で連結する代わりに、図9に示すように、支持部材32にエアベアリング等を用いたフローティング機構を設けてもよい。即ち、水平面上でスライドするように支持された移動駒62を介して、剛体で構成された支持部材32とアーム36とを連結する。これにより、測定球30が自動求心作用を受けると移動駒62が水平面上を移動し、測定球30が穴22Aの中心に配置され、穴22Aの内径を精度良く求めることができる。なお、支持部材32と測定球30との間に弾性体60を設けながら、支持部材32にフローティング機構を設けてもよい。」 と訂正する。 なお、下線は訂正箇所を示すために当審で付したものである。 【4.3.2】新規事項の追加の有無及び訂正の目的の適否 (1)訂正事項aは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る記載の全てを削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。 (2)訂正事項bは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項2に係る記載の全てを削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。 (3)訂正事項cは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る記載の全てを削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。 (4)訂正事項dは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項2に従属する請求項4を独立クレーム形式に訂正し、かつ請求項4の「支持手段」をより下位概念である「フローティング機構を設けた前記浮子を支持する支持部材」に(以下、「限定事項1」という。)、「隙間」をより下位概念である「10?100μmの隙間」に(以下、「限定事項2」という。)限定し、また、前記フローティング機構に関して「前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である」を直列的に付加する(以下、「限定事項3」)ものである。 そして、請求項2に従属する請求項4を独立クレーム形式にすることは、限定事項1ないし3に伴い明りょうでない記載の釈明に該当するものである。 また、限定事項1及び3については、願書に添付された明細書の段落番号【0040】に記載された事項に基づくものであり、限定事項2については、願書に添付された明細書の段落番号【0017】に記載の事項に基づくものである。 すると、訂正事項dは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (5)訂正事項eは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項5に係る記載の全てを削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。 (6)訂正事項fは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項4に従属する請求項6を独立クレーム形式にし、かつ「磁力」をより下位概念である「電磁石」に(以下、「限定事項4」という。)、「隙間」をより下位概念である「10?100μmの隙間」に(以下、「限定事項5」という。)限定し、また、前記電磁石に関して、「前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である」を直列的に付加する(以下、「限定事項6」という。)ものである。 そして、請求項4に従属する請求項6を独立クレーム形式にすることは、限定事項4ないし6に伴い明りょうでない記載の釈明に該当するものである。 ところで、限定事項4及び6については、願書に添付された明細書の段落【0036】ないし【0038】及び図面の図7の記載に基づくものである。すなわち、【0036】及び【0037】には、測定球30が永久磁石52を介して支持部材32に吸着支持されているので、測定球30と支持部材32を同時に穴22Aに出し入れすることができる旨が記載され、【0038】には、永久磁石52に代えて電磁石54を用いた場合は、永久磁石52と同様に、測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作を行うことができる旨が記載されており、「電磁石」及び「前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着」する点が記載されているものといえる。また、【0038】には、電磁石54を用いた方法では、供給口28Aから圧縮空気を噴射した際にコイル56への電流を停止する旨が記載されており、「前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石」が記載され、限定事項5については、上記限定事項2と同様である。 すると、訂正事項fは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (7)訂正事項gは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項4に従属する請求項7を独立クレーム形式にするとともに、「支持手段」を「フローティング機構を備えた支持部材」に限定し(以下、「限定事項7」という。)、また、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項5に従属する請求項7を独立クレーム形式にするとともに、「支持手段に弾性体を介して」を「円柱状の支持部材に、弾性体を介して」に限定(以下、「限定事項8」という。)したものである。 そして、請求項4に従属する請求項7を独立クレーム形式にし、請求項5に従属する請求項7を独立クレーム形式することは、限定事項7及び8に伴い明りょうでない記載の釈明に該当するものである。 また、限定事項7及び8は、それぞれ、願書に添付された明細書の段落番号【0052】の記載に基づくものである。 すると、訂正事項gは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (8)訂正事項hは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項4に従属する請求項8を独立クレーム形式にするとともに、「支持手段」を「フローティング機構を備えた支持部材」に限定し(以下、「限定事項9」という。)、また、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項5に従属する請求項8を独立クレーム形式にするとともに、「支持手段に弾性体を介して」を「円柱状の支持部材に、弾性体を介して」に限定(以下、「限定事項10」という。)したものである。 そして、請求項4に従属する請求項8を独立クレーム形式にし、請求項5に従属する請求項8を独立クレーム形式することは、限定事項9及び10に伴い明りょうでない記載の釈明に該当するものである。 また、限定事項9及び10は、それぞれ、上記限定事項7及び8と同様である。 すると、訂正事項hは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (9)訂正事項iは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項9において引用した請求項2、3、4、5、6、7、8のうち、請求項3、4、5、6のみを引用するようにするとともに、請求項番号を整合したものである。 すると、訂正事項iは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (10)訂正事項jは、願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項10において引用した請求項2、3、4、5、6、7、8、9のうち、請求項3、4、5、6、7のみを引用するようにするとともに、請求項番号を整合したものである。 すると、訂正事項jは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (11)訂正事項kは、訂正後の請求項1に係る記載に対応し、また、訂正事項lは、訂正後の請求項2ないし8に係る記載に対応して明細書の【課題を解決するための手段】の記載を訂正したものである。 すると、訂正事項k及びlは、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 (12)訂正事項mは、願書に添付された明細書の段落番号【0040】における「測定球32」を正しい部品番号「(測定球)30」に訂正するものである。すると、「測定球」の部品番号が「30」であることは、願書に最初に添付した明細書又は図面、例えば段落番号【0040】の「なお、測定球30と支持部材32とを」の記載事項、図9の「30」が指示する部品が「測定球」である点から明らかであるから、訂正事項mは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、誤記の訂正に該当するものである。 【4.3.3】特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 本件訂正請求は、訂正前の請求項1ないし10に係る特許発明の発明特定事項について、その請求項の削除、限定的減縮、あるいは、訂正前の請求項1ないし10の記載事項について明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の請求項1ないし10に係る特許発明に、新たな発明特定事項を付加するものではない。 そして、本件訂正請求における上記限定事項は、いずれも、願書に添付された明細書の【発明の実施の形態】に記載された事項に基づくものであるから、本件訂正請求は、訂正前の請求項1ないし10に係る特許発明を、実質的に願書に添付した明細書及び図面に記載された実施の形態が有する構成に限定するものである。 【4.3.4】結論 よって、上記訂正事項は、訂正目的要件を充たし、新規事項の追加をするものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、補正後の平成18年5月24日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 なお、請求人は、平成19年1月12日付け意見書において、(1)平成18年10月4日付け弁駁書において、被請求人が行った訂正について、新規事項が追加されているとともに、進歩性を有しないとして独立特許要件も充たさない旨、(2)平成19年1月4日発送の訂正拒絶理由通知においては、新規事項の追加の有無のみを判断しており、独立特許要件について判断していない旨、主張している。 しかしながら、(1)に関しては、請求人は、上記弁駁書内で、『「前記球状の浮子の半径長さであり」なる訂正は、特許法第126条第5項の要件を充足していないというべきです。』(平成18年10月4日付け弁駁書第4頁参照。)との主張をしているが、これについては、当審において職権審理の上、上記のとおり訂正拒絶理由を通知した。また、(2)に関しては、請求人は、無効審判の請求の趣旨を、「第3390971号特許の請求項1乃至10に係る発明は、これを無効とする」として、審判を求めており、これは弁駁の趣旨においても同様であるところ、特許法第134条の2第5項が、同法第126条第5項を準用するとともに、独立特許要件は、特許無効審判の請求がされていない請求項について訂正がなされた場合に当該請求項について検討すべきことを規定しており、訂正後の請求項1ないし8についての上記独立特許要件に関する主張は、無効理由ついての主張として併せて検討することとする。 【4.4】本件発明 以上のように、本件補正及び本件訂正請求は適法なものであるので、本件特許の請求項1ないし8に係る特許発明(以下、項番号に従い「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、平成19年2月5日付け手続補正書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。 『【請求項1】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項2】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項3】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項4】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項5】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項6】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項7】 前記流体は、空気であることを特徴とする請求項3、4、5、又は6に記載の穴の内径測定装置。 【請求項8】 前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7に記載の穴の内径測定装置。』 【4.5】甲各号証に記載された発明 請求人の提出した甲第1号証ないし甲第7号証(以下、番号順に「刊行物1」ないし「刊行物7」という。)には、以下のような記載事項が存在する(なお、甲第1号証ないし甲第6号証の記載事項の日本語訳は甲第1b号証ないし甲第6b号証を採用し、甲第7号証の記載事項の日本語訳は甲第7号証の部分訳を採用する。)。 【4.5.1】刊行物1について (1a)「本発明は測定技術に関し、ごく微小な径から数ミリメートルまでの径を有する穴を検査するために使用されることができる。本発明の目的は、計測精度を向上させることである。穴の相当直径を検査するために、該穴の軸に対して垂直に位置決めされた支持体が該穴に挿入され、支持体上に球が載置されて、ガスが該穴に一定の流量で供給される。ガス流は該穴内において球を中心に位置させる。該穴の径は、球と検査すべきワークとの間の隙間によって変化するガスの圧力に基づいて決定される。」(甲第1号証第1頁右欄(57)、甲第1b号証第1頁(57)) (1b)「検査すべきワーク1が、配置要素2の上に載置される。支持体4が検査すべき穴3内に挿入されて、平坦端5が該穴の軸に対して垂直となるように位置決めされる。適切な寸法を有する球6が検査すべき穴内の支持体上に配置される。内部にノズル9が形成された吸気管8を有する気密チャンバ7が、ワーク1上に配置される。チャンバは表示ユニット11に管10を介して連通している。圧縮ガスが管8を介してチャンバに供給され、穴3の入口を通り、球6とワーク1との間の隙間を通過して、大気中に流出する。ガス流量はノズル9により一定に保持される。」(甲第1号証第1欄14行?32行、甲第1b号証第2頁8行?15行) (1c)「ガスは球6の周囲を流れ、球6が穴の中心に対して変位した場合には、該穴の中心に向かって方向付けられる空気力成分が形成される。こうして、ワーク1に対する支持体の位置とは無関係に、ガス流によって球が穴内において中心に位置される。」(甲第1号証第1欄32行?第2欄6行、甲第1b号証第2頁第15行?18行) (1d)「球6が中心位置に配置されると、表示ユニット11は、ガス流パラメータを、特に球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を計測するように使用される。こうして、表示ユニット11により穴3の相当直径に関する情報が提供される。」(甲第1号証第2欄7行?13行、甲第1b号証第2頁第19行?22行) (1e)「穴の軸に垂直に位置決めされた支持体上に球を配置することにより、確実に球が穴の内部の中心に位置するようになり、計測精度が向上する。」(甲第1号証第2欄14行?18行、甲第1b号証第2頁23,24行) (1f)「計測精度の向上を目的として、前記穴の内部において前記回転体を中心に位置させることにより、検査すべき穴の内部において該穴の軸に垂直に配置された支持体上に回転体が自由に配置される」(甲第1号証第2欄特許請求の範囲、甲第1b号証第3頁特許請求の範囲) (1g)刊行物1の図面には、ガス流の方向と反対側に、球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を計測するための表示ユニット11を配置していること、ワーク1に穴3が形成されていること、そして穴3内に支持体である平坦端5が位置することが読み取れる。 そうすると、刊行物1には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物1記載発明」という。)。 「ワーク1に形成された穴3の直径を測定する穴3の測定技術において、適切な寸法を有する球6が検査すべき穴内の支持体の平坦端5上に配置され、ノズル9が形成された吸気管8を有する気密チャンバ7をワーク1上に配置し、ガスを吸気管8を介してチャンバ7に供給し、ガスを球6とワーク1との間の隙間を通過させ、ワーク1に対する支持体の平坦端5の位置とは無関係にガス流によって球6を穴3内において中心に位置させ、球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を表示ユニット11により計測し、ワーク1に形成された穴3の直径を求める技術」 【4.5.2】刊行物2について (2a)「安定した圧力を有する圧縮空気がチャネル2内に供給され、駆動部9によりベローズ8を圧縮しながら、較正された球6がワーク12の検査すべき穴内に供給される。球6とワーク12との間の隙間によって変化するチャネル4内の圧力に基づいて、対応する断面における該穴の径が決定される。」(甲第2号証第1頁左欄(57)、甲第2b号証第1頁(57)) (2b)「本発明は測定技術分野に係り、ごく微小な径から数ミリメートルまでの径を有する円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用されることができる。・・・本発明による穴の寸法を作用検査するための空気式装置は、吸気チャネル2、ノズル3、及び排気チャネル4を有するシールされた本体1と、これらのチャネルと連通する表示コマンドユニット5と、弾性スレッド7によりベローズ8に連結された較正球6と、レバー10を介してベローズ8と協働する駆動部9と、を有している。本発明による装置は、旋盤(図示せず)の支持アーム11に固定されている。検査すべきワーク12は、コレット13により前記旋盤に固定されている。ベローズ8は排気チャネル4とそのブラインド端において同軸状に配置されており、駆動部と球との連結部がシールされることを確実にしている。シールリング14は排気チャネル4の端部に載置されている。」(甲第2号証第1欄1行?33行、甲第2b号証第2頁2行?17行) (2c)「計測前には、本体1はシールリング14を介して検査すべきワーク12に当接している。安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。その後、計測圧力が表示コマンドユニット5によって調節されて、これに伴ってワーク12の加工工程を調整するようにコマンドが生成される。」(甲第2号証第1欄36行?第2欄13行、甲第2b号証第2頁19行?26行) (2d)「駆動部と球との連結部をベローズ及びこれに固定された弾性スレッドの形状にし、且つ該ベローズを排気チャネルのブラインド端に配置することにより、例えば一方の端に向かって細くなる穴を備えたワークを検査する等の、本発明の装置の機能的可能性を拡大することができる。」(甲第2号証第2欄14行?21行、甲第2b号証第2頁27行?第3頁1行) (2e)「駆動部と球との連結部をベローズの形状とし、前記ベローズは前記駆動部と、前記ベローズに固定された弾性スレッドと、前記球と協働するとともに、前記排気チャネルとそのブラインド端において同軸状に配置されていること」(甲第2号証第2欄特許請求の範囲、甲第2b号証第3頁特許請求の範囲) (2f)刊行物2の図面には、圧縮空気流の方向と反対側に、球6とワーク12との間の隙間によって変化するチャネル4内の圧力を測定する表示コマンドユニット5を配置していること、ワーク12に穴が形成されていることが読み取れる。 そうすると、刊行物2には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物2記載発明」という。)。 「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術において、本体1がシールリング14を介して検査すべきワーク12に当接しており、弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されることにより、較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定するワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」 【4.5.3】刊行物3について (3a)「本発明の目的は、検査すべき穴の長さ範囲を拡大することである。ドラム6から解かれた弾性スレッド8に沿って、較正球が検査すべきワーク17の穴まで降下される。検査すべき穴全体に沿った平均直径が、吸気ノズル2を介して供給された圧縮ガス流に対する流圧に基づいて決定される。」(甲第3号証第1頁(57)、甲第2b号証第1頁(57)) (3b)「本発明による穴寸法を作用測定するための空気式装置は、吸気ノズル2、排気チャネル3、及び表示コマンドユニット(図示せず)への空気流通路のためのパイプ連結部4とを有するシールされた剛性本体1と、この本体内に配置された駆動部であって、電気モータ 5と、軸7に載置された回転自在ドラム6と、較正球9を有するドラム6に巻き付けられた弾性スレッド8と、中央リング10と、ガスケット13及び14とともに前記本体のシールを確実にするカバー11及び12と、電気モータ 5へのシール電力リード15と、本体1と検査すべきワーク17との突合せ接合部をシールすることが意図されたガスケット16とを有する駆動部とを有している。ワーク17は旋盤チャック18に固定されている。本発明により提案される装置は、ガスケット16を介してワーク17の端部に当接している。」(甲第3号証第3欄13行?32行、甲第3b号証第2頁6行?16行) (3c)「安定した圧力を有する圧縮空気がノズル2を介して供給され、較正球9がチャネル3に沿ってワーク17の検査すべき穴に引き寄せられる。ドラム6は電気モータ 5により回転されて、球9をスレッド8に沿って降下させる。」(甲第3号証第3欄32行?第4欄4行、甲第3b号証第2頁16行?18行) (3d)「検査すべきワーク17の各断面において、球と検査すべきワークとの間の隙間は該ワークの径に応じて変化し、空気流に対する流圧が決定される。該流圧は表示コマンドユニットにより計測され、検査すべきワークのその時の径がこのユニットと較正との関係の読取値に基づいて決定される。」(甲第3号証第4欄4行?13行、甲第3b号証第2頁18行?22行) (3e)「駆動部をドラム形状にして較正球を担持する弾性スレッドを該駆動部から解かれるようにすることにより、検査すべき穴の長さ範囲を拡大することができる」(甲第3号証第4欄14行?19行、甲第3b号証第2頁23行?25行) そうすると、刊行物3には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物3記載発明」という。)。 「ワーク17の穴の径を決定する穴寸法の測定技術において、装置1がガスケット16を介してワーク17の端部に当接しており、圧縮空気がノズル2を介して供給され、較正球9がチャネル3に沿ってワーク17の検査すべき穴に引き寄せられ、ドラム6は電気モータ5により回転されて球9を弾性スレッド8に沿って降下させ、検査すべきワーク17の各断面において、球と検査すべきワークとの間の隙間は該ワークの径に応じて変化し、空気流に対する流圧が決定され、該流圧は表示コマンドユニットにより計測され、検査すべきワークのその時の径がこのユニットと較正との関係の読取値に基づいて決定されるワーク17の穴の径を決定する穴寸法の測定技術」 【4.5.4】刊行物4について (4a)「本発明は検査及び測定技術に関し、壁厚0.2乃至2.0mm及び直径0.5mm乃至3.0mmの軸受筒を0.1乃至0.5μmの範囲の寸法精度で形成する場合に利用されることができる。本発明の目的は、薄壁であって容易に変形しやすいワークを検査する際の損傷を防止することにより、検査の信頼性を向上させることである。」(甲第4号証第1欄(57)1行?10行、甲第4b号証第1頁(57)1行?5行) (4b)「較正球3が一方の側から検査すべき穴内に導入されるとともに、ガスが他方の側から該穴に導入されて、該穴の入口における圧力が決定されて、検査すべきパラメータがこの値に基づいて評価される。」(甲第4号証第2欄6行?11行、甲第4b号証第1頁(57)12行?14行) (4c)「図面は本発明による装置を示し、流断面を検査する方法を説明するものである。図には、加工及び検査すべき穴2を有するワーク1と、較正計測球3と、軸方向駆動部5を有する厳密に方向付けられた磁気ロッド支持体4と、作動ガスの流通路のための開口部7を有するマンドレル6と、較正球3と検査すべきワーク1の凹部9とともに支持体を移動させるための開口部8と、ガス供給チャネル11とノズル12とを有する計測センサ10と、ガス流通路チャネル13と、長方形の断面を有するガスケット14と、計測センサ移動駆動部15と、該ワークの寸法を視覚的に検査するための機器16と、表示コマンドユニット17と、ラップ19を有する処理ユニット18とが示されている。」(甲第4号証第2欄下から6行?第3欄13行、甲第4b号証第2頁7行?15行) (4d)「ノズル端の内径dnと、マンドレルの凹部の直径Drと、ノズル端の外径Dnとの関係がdn<Dr<Dnとなるように関係付けられる・・・」(甲第4号証第3欄14行?19行、甲第4b号証第2頁16行?18行) (4e)「本発明の装置により、ラップ19を使用しながらダイヤモンドペーストを用いて穴を加工する方法は、以下の態様で実施される。球3を有するロッド支持体4が、駆動部5によって端(作動領域から移動された)位置に配置される。弾性ガスケット14がワーク1の外側円筒形表面に着座され、ワーク1が凹部9内に挿入される。計測センサ10が駆動部15によりワーク1まで移動され、該ワークは弾性ガスケット14に対するノズル12の端部によるセンサの軸方向移動によって軸方向に押される。弾性ガスケット14はマンドレル8の端部に当接してノズル12の端部においてガスケット14と弾性接触している。安定した圧力を有するガス流がガス供給チャネル11、ノズル12、及びチャネル13を通過するとともに、駆動部5が同時にワーク1に沿って球3を有するロッド支持体4を移動させる。この時、断面に関して該ワークにおける寸法変化が機器16の目盛りに基づいて観察され、ダイヤモンドペーストを用いたラップによる加工処理の次の補正のための情報が得られる。表示コマンドユニット17から情報が送信され、駆動部5により球3を有するロッド支持体4が不作動位置まで移動され、駆動部15により該ワークから計測センサが移動され、該ワークが洗浄されて開口部7を介してブローされ、ラップ19を有する加工ユニット18が作動される。穴をラップによって加工した後、計測サイクルが繰り返され、目標となる穴寸法が得られた後、該ワークが凹部9から移動される。」(甲第4号証第3欄20行?57行、甲第4b号証第2頁19行?第3頁8行) (4f)「以上提案してきた方法及び装置は、穴径dor=2.5+0.0005mm・・の軸受筒を加工する際に実施された。・・・本発明による方法及び装置は、直径0.5乃至3.0mmの穴であって、壁厚が0.2乃至2.0mmの穴を、0.1乃至0.5μmの範囲の計測精度で計測する際の信頼性を向上させることができる。」(甲第4号証第3欄58行?第4欄12行、甲第4b号証第3頁9行?16行) そうすると、刊行物4には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物4記載発明」という。)。 「ワーク1における小径貫通穴の流断面を検査するための技術において、磁気ロッド支持体4上の較正球3が一方の側から検査すべき穴内に導入されるとともに、ガスが他方の側から該穴に導入されて、穴の入口における圧力が決定されて、検査すべきパラメータがこの値に基づいて評価されるワーク1における小径貫通穴の流断面を検査するための技術」 【4.5.5】刊行物5について (5a)「本発明の目的は、穴を加工する際の作用検査において精度と生産性とを向上させることである。この目的のために、加工すべき穴に挿入されるとともに、検査の際にガス流に露出される較正球9を、磁力により剛性支持体8上に保持する。これにより、較正球9は測定ガス流中において穴の内部で自由に中心に位置することができ、且つ作動ガスの放出領域を超えて移動することができる。」(甲第5号証第1頁右欄(57)4行?第2頁左欄7行、甲第5b号証第1頁3行?8行) (5b)「支持体8は高い磁場力を有する永久磁石の形態とされるとともに、駆動部10の往復運動に適合するようにされている。球は強磁性材料から形成される。検査すべき穴の流断面は、球と穴との間の隙間によって変化するガス圧力に基づいて決定される。」(甲第5号証第2頁右欄2行?7行、甲第5b号証第1頁(57)11行?14行) (5c)「本発明による装置は、検査すべきワーク3を収容し位置させる凹部2を有する本体1と、ガスの供給及び放出のためのチャネル5及び6が導かれるピックアップ4とを有している。表示コマンドユニット7がこれらのチャネルに連通している。較正球9は本体1内の支持体8上に配置されている。支持体8は駆動部10に連結され、永久磁石の形態とされて、検査すべき部分を収容するための領域A、及び検査すべき部分が収容される前記領域の外部の領域において凹部の軸00に沿った移動を許容するようにされている。凹部の領域Bはパージチャネル11とともに形成されている。」(甲第5号証第1欄20行?35行、甲第5b号証第2頁8行?15行) (5d)「球9が磁力により支持体8に対して保持されている。・・・安定した圧力を有するガスがノズル21を介してピックアップ4内に供給され、次いで検査すべきワーク3の穴内に供給される。そして球9及び支持体8は駆動部10により移動される。検査すべき穴の流断面によって変化する計測圧力は、ピックアップ4及びそのチャネル6において生成され、これは機器12によって記録され、コンパレータ要素13の所定のレベルに設定された入力部に送信される。」(甲第5号証第2欄12行?40行、甲第5b号証第2頁25行?第3頁7行) そうすると、刊行物5には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物5記載発明」という。)。 「小径の貫通穴の流断面を検査するための技術において、較正球9を磁力により保持することのできる永久磁石の形態の剛性支持体8と、この剛性支持体8上において較正球9は測定ガス流中に穴の内部で自由に中心に位置することができ、圧縮空気が加工すべきワーク3の穴内に供給され、駆動部10により較正球9及び支持体8が穴内を移動させられ、検査すべき穴の流断面が球と穴との間の隙間によって変化するガス圧力に基づいて決定される小径の貫通穴の流断面を検査するための技術」 【4.5.6】刊行物6について (6a)「計測中において、該球は装置6によりダイアフラム15に形成された開口部を介して押されて検査すべきワーク3及び標準リング14に沿って移動される。表示コマンドユニットは、この工程の間に、吸気チャネル10を介して供給された空気に対する流体抵抗を記録する。計測された圧力に従って、ユニット8が検査すべきワークの穴の実際の横方向寸法を記録し・・・」(甲第6号証第1頁右欄6行?18行、甲第6b号証第1頁(57)6行?10行) (6b)「本発明による装置は、凹部2を有する本体1であって、凹部の一部は検査すべきワーク3を収容し配置させるように設計された本体1と、本体の内部でロッド4上に載置された較正球5と、該球を本体の軸に沿って移動させる駆動部6であってヒンジ7によりロッド4に連結された駆動部6と、ノズル11を有する吸気チャネル10と排気チャネル12とが内部に形成されるとともに、シールガスケット13と標準リング14とが載置された計測ユニット9に連結された表示コマンドユニット8と・・・」(甲第6号証第1欄10行?23行、甲第6b号証第2頁6行?12行) (6c)「球5は検査すべきワークの穴内に導入されて、球が検査すべきワークに沿って且つ標準リング14に対して移動される間に、表示コマンドユニット8が計測圧力の値を記録する。球がワーク3の穴及び標準リング14に位置している間に、計測された圧力と較正関係との比較に基づいて、表示コマンドユニット8が検査すべきワークの穴の実際の断面寸法を決定し・・・」(甲第6号証第2欄4行?19行、甲第6b号証第2頁第26行?第3頁第1行) そうすると、刊行物6には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物6記載発明」という。)。 「ワーク3の穴の寸法を検査する技術において、駆動部6とヒンジ7で結合されたロッド4と、該ロッド4上に載置された較正球5と、ノズル11を有する吸気チャネル10と排気チャネル12とが内部に形成された計測ユニット9に連結された表示コマンドユニット8とを備え、較正球5は検査すべきワークの穴内に導入されて検査すべきワークに沿って移動する間に、表示コマンドユニット8が計測圧力の値を記録するとともに、計測された圧力と較正関係との比較に基づいて、表示コマンドユニット8が検査すべきワークの穴の実際の断面寸法を決定するワーク3の穴の寸法を検査する技術」 【4.5.7】刊行物7について (7a)「開示の要約 流体を介してワークの寸法を計測するゲージは流路を有する部材を有する。このゲージはほぼ均一の所定の断面積の計測面を有する。孔は、前記流路と外部との間で圧力下の空気が前記所定の断面積を通って通過できるようにする。この孔は、前記流路を通り供給される流体中に何の背圧も生じないように、前記流路と関係する大きさを有する。」(第2頁第1欄第1行?10行目の日本語訳) (7b)「一対のゲージリング73と74がブローブ66の後部に軸方向に間隔をおいてあるこれらのリングは本体部材62の円筒表面より外側へ半径方向に拡がり軸方向に所定距離だけ離れている」(第4頁第5欄第3行?7行目の日本語訳) (7c)「チューブ78の開口の大きさは、ゲージリング73、74を通過して流れる流体によって生じる圧力の大きさよって測定される。」(第4頁第5欄第31行?33行目の日本語訳) (7d)「ゲージリング73、74の整列により、チューブ78の断面領域の正確な読み取りが得られる。」(第4頁第5欄第40行?41行目の日本語訳) (7e)「図9は本発明の他の形態を示し、ここではゲージがワークのめくら開口の大きさを測るのに用いられる。特に、ゲージヘッド85は圧力下の流体源及び記録用ゲージと連通する開口管部86を有する。開口管部86はマウス部87まで延びそこで流体は制圧あるいは背圧なしで流れることができる。」(第4頁第5欄第57行?64行目の日本語訳) 【4.6】対比と判断 [本件発明1] そこで、本件発明1(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、「穴の内径」は当該穴の「直径」によって表現するのが通常であり、両者ともに、ワークに形成された穴の内径を流体中における球の自動求心作用を利用して、該球と該穴の内壁との距離によって変化する流体の圧力を測定して該穴の内径に変換することを測定原理としている点で共通していることから、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、前者の「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置」に相当する。 そして、刊行物2の「円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用される」、「空気式装置」(「2b」)との記載や、「安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。」(「2c」)との記載から、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、ワーク12の検査すべき穴内に較正球6(前者の「浮子」に相当する。)を挿入し、当該穴内に圧縮空気(前者の「流体」に相当する。)を供給するといえるので、前者の「前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段」に相当する。 また、後者の「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されること」は、較正球6は弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、このベローズ8は較正球6を支持しているといえるので、「浮子を支持する支持部材」である点で、前者の「フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材」と共通する。 さらに、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」ことは、「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」の点で、前者の「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」と共通する。 そうすると、両者は、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えることを特徴とする穴の内径測定装置。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)前者は穴内壁と前記浮子との隙間を10?100μmと限定しているのに対し、後者はそのことが明らかでない点。 (2)前者は、「流体の背圧」の他、「流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量」を検出量としているのに対し、後者はそのことが明らかでない点。 (3)前者は、フローティング機構を設けた浮子を支持する支持部材を有し、かつ、このフローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するものであるのに対し、後者はそのことが明らかでない点。 (判断) (1)について 刊行物4(4f)には、球の自動球心作用を利用して穴の内径を測定する際の計測精度について「0.1乃至0.5μmの範囲の計測精度で計測する」と記載され、これにより計測の信頼性を向上させている。他方、本件特許発明の明細書には、隙間を10?100μmと限定する意義として、「【0017】・・・測定する穴径Dと要求される感度により、例えば10?100μm程度を目安として設定する。これにより、測定球30を穴22Aにスムーズに挿入でき、且つ穴22Aの寸法を精度良く測定することができる」と記載され、また、答弁書には「浮子と穴の内壁との隙間の適正化・・・検出精度0.1μmといった測定では、隙間100μm程度が限界であり」と記載されている。 そうすると、刊行物4記載の計測精度の場合も較正球3と穴内壁との間の距離は、本件発明1の上限の隙間100μmと同じ程度のものと認められる。また、流体中の球の自動球心作用を利用して穴の内径を測定するに際し、感度と球の取扱との関係は、該距離が短いほど感度が良くなるが他方で却って球の挿入が困難になるなどいわば相反する(トレードオフの)関係にあることは測定原理から当業者の技術常識といえ、100μmよりも隙間距離を短くするのにも自ずからその限界があるのであって、10?100μmとすることは、当業者ならば通常設定可能な数値範囲の限定にすぎず、刊行物2記載発明における相違点(2)は、刊行物4の記載事項及び技術常識から当業者が容易になし得ることである。 (2)について 本件発明1の「流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量」なる発明特定事項は、浮子と穴の内壁との隙間を流体が通過する際に生じる流体あるいは浮子の物理的変化の点で共通する選択肢を並列して択一的に記載したものであり、「流体の背圧」の選択肢は刊行物2に記載されていることは既述のとおりである。 (3)について 刊行物2記載の発明の支持部材も弾性体を介して浮子に接続されており、該弾性体の作用により該浮子は自動球心作用を受けるとワークの穴の中心に位置することになるので、この「弾性体」も同等の機能を発揮することになるから、刊行物2記載の発明の「弾性体」は、「浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置する」点で、本件発明1の「フローティング機構」と共通する。 しかしながら、本件発明1の「フローティング機構」は、「前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせる」という刊行物2記載の発明とは異なった構成を有しており、この構成によって、支持部材と浮子とが一体になって移動駒を介して水平方向に移動するため、自動求心の際に移動駒を介して滑らかに水平面上を移動できるという格別な効果を奏するといえる。 なお、請求人は、被請求人の支持部材と浮子とが一体となって移動駒を介して水平に移動するために浮子だけが振り子状に動くことがなくワークの穴内壁を傷づけることがないとの主張に対して、本件の明細書の段落【0020】の「・・測定球30が穴22Aの内壁に接触しても内壁が傷付くことがない。」との記載、及び段落【0022】の「・・測定球30が穴22Aの内壁に接触しても内壁が傷付くことがない。・・」との記載されており、「浮子や孔に傷を付ける」ことを強調する被請求人の上記主張は、これらの記載内容に矛盾するものである(平成18年10月4日付け弁駁書の第7頁参照。)、との主張をしている。 しかしながら、刊行物4(甲第4号証)には、磁気ロッド支持体4が磁力により較正球3を支持していることが記載されているだけであり、較正球3の自動求心作用による水平方向への動作にあわせて、磁気ロッド支持体4が水平方向に動作することは記載も示唆もされていない。また、刊行物6(甲第6号証)には、較正球5とロッド4とがヒンジで結合されていると記載されているものの、ヒンジの機能を考慮すれば、較正球5の自動求心作用による水平方向への動作にあわせて、ロッド4が直立したまま水平方向に動作するとはいえない。そして、本件特許明細書の段落【0020】及び【0022】には、測定球30が球状に形成されているので、穴22Aの内壁に接触しても傷付けない旨記載されているだけで、本件発明1は、浮子が球状であるとの限定をしているわけではなく、その内壁を傷付けない効果は、移動駒を用いたフローティング機構によるものといえ、上記段落【0020】及び【0022】の記載に矛盾するものではない。 そうすると、請求人の上記主張は採用することはできない。 (小括) したがって、本件発明1は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとはいえず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明2] 本件発明2(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、前者の「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置」に相当する。 また、後者の「較正球6」は、「ワーク12の検査すべき穴内に供給され」るので、前者の「前記穴に挿入される浮子」に相当し、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、前者の「該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段」に相当する。 そして、後者の「較正球6」は、「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されること」により、弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、このベローズ8が較正球6を支持しているといえるので、「支持部材に取り付けられた浮子」である点で、前者の「円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子」と共通する。 さらに、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」ことは、「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」の点で、前者の「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」と共通する。 そうすると、両者は、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、支持部材に取り付けられた浮子と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えることを特徴とする穴の内径測定装置。」で一致し、上記相違点(1)、(2)に加えて、以下のような相違点を有する。 (相違点) (4)前者は、円柱状の支持部材に電磁石を介して浮子を取り付け、かつ、この電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石であるのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (判断) (1)、(2)については、[本件発明1]において既に述べたとおりである。 (4)について 本件発明2の「電磁石」は、「前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する」という機能を有し、この機能によって、流体供給手段から流体を穴内に供給して浮子を自動求心させる際に、通電を停止することによって、浮子は流体による圧力以外に拘束力がない状態で水平方向に移動できる。 すると、刊行物4記載発明や刊行物5記載発明のように永久磁石を用いた場合は常に磁力が浮子に作用するところ、本件発明2では自動求心の際に磁力が作用しないことから、浮子がより滑らかに水平方向に移動できるという格別な効果を奏するといえる。 なお、請求人は、平成18年10月4日付け弁駁書において、上記【2】ウ(3a)のように主張している。 たしかに、穴内で支持部材により浮子を支持する際に、磁力を用いることは、刊行物4及び刊行物5に記載されているように周知技術であり、電磁石であれば吸着・解除が自由にできることもその機能から明らかである。 しかしながら、刊行物1ないし7には、穴に流体を供給するときに電磁石の電流を停止する点について何ら記載も示唆もされておらず、電磁石が上記のような機能を持つとしても、そのことから直ちにどの段階で通電停止させるかが明らかになるとはいえない。また、本件特許明細書の段落【0038】には、「前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石」であることの特有の効果として、「圧縮空気を噴射した際にコイル56への電流を停止することにより、測定球30に働く磁力が無くなり、測定球30がより滑らかに穴22Aの中心に移動する。」との記載があり、この効果は永久磁石では奏することはできないといえる。 (小括) したがって、本件発明2は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとはいえず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明3] 本件発明3(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、前者の「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置」に相当する。 また、後者の「較正球6」は、「ワーク12の検査すべき穴内に供給され」るので、前者の「前記穴に挿入される浮子」に相当し、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、前者の「該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段」に相当する。 そして、後者の「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されること」は、較正球6は弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、このベローズ8は較正球6を支持しているといえるので、「浮子を支持する支持部材」である点で、前者の「フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材」と共通する。 さらに、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」ことは、「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」の点で、前者の「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」と共通する。 そうすると、両者は、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えることを特徴とする穴の内径測定装置。」で一致し、上記相違点(1)、(2)に加えて、以下のような相違点を有する。 (相違点) (5)前者は、フローティング機構を設けた浮子を支持する支持部材を有するのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (6)前者は、浮子に流体の供給口が形成されているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (判断) (1)、(2)については、[本件発明1]において既に述べたとおりである。 (5)について 本件発明3の「フローティング機構」の意義は、浮子が自動球心作用を受けることにより該浮子がワークの穴の中心に位置するように該浮子を支持することにある。他方、刊行物2記載の発明の支持部材も弾性体を介して浮子に接続されており、該弾性体の作用により該浮子は自動球心作用を受けるとワークの穴の中心に位置することになるので、この「弾性体」も同等の機能を発揮することになるから、刊行物2記載の発明の「弾性体」は本件発明4の「フローティング機構」に相当する。 なお、被請求人は、答弁書において、相違点(5)の効果として「浮子の揺れが小さくなる(支持部材がフローティングしない限りにおいて浮子は振り子状に動かない)」(答弁書第14頁第18-20行),「支持部材及び支持部材に連結された浮子が水平方向に移動でき、浮子が自動球心作用により穴の中心に位置することができます。」(同第14頁第26-28行)と主張している。しかし、本件発明4における「フローティング機構」という用語自体は意義が明確であり、特許明細書を参酌する特段の事由もないことから、本件発明3において「フローティング機構」に関して特許明細書のような具体的構造に関し記載も示唆もないので、「フローティング機構」というだけの構成をもってかかる効果が生じるものとはにわかに認めがたく、上記主張は発明特定事項に基づくものでなく採用できない。 (6)について 請求人が提出した証拠中には、浮子に流体の供給口が形成されている点について記載も示唆もなく、また、相違点(6)によって、前者の場合には、穴の一方側から浮子を挿入するだけで測定を行うことができるという効果がある(本件特許明細書【0055】?【0058】参照。)ので、当該相違点(6)が当業者にとって自明ともいえない。 なお、請求人は、審判請求書において、刊行物7(甲第7号証)の(7e)から「ゲージヘッド85の内部に流体源に連通する開口管部86が形成されている・・・よって、請求項7に記載の発明は、甲第1b号証に記載された発明と甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。」(審判請求書第13頁第9-15行)と主張しているが、刊行物7の「ゲージヘッド85」は自動求心作用を有するものではなく、本件発明3の「浮子」に相当するものではないので、刊行物7記載の該当技術を刊行物1に記載された発明あるいは刊行物2に記載された発明に適用することは容易ではなく、上記主張を採用できない。 (小括) したがって、本件発明3は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとはいえず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明4] 本件発明4(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、前者の「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置」に相当する。 また、後者の「較正球6」は、「ワーク12の検査すべき穴内に供給され」るので、前者の「前記穴に挿入される浮子」に相当し、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、前者の「該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段」に相当する。 そして、後者の「較正球6」は、「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されること」により、弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、このベローズ8が較正球6を支持しているといえるので、「支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子」である点で、前者の「円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子」と共通する。 さらに、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」ことは、「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」の点で、前者の「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」と共通する。 そうすると、両者は、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えることを特徴とする穴の内径測定装置。」で一致し、上記相違点(1)、(2)、(6)に加えて、以下のような相違点を有する。 (相違点) (7)前者は、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子を有するのに対し、後者の支持部材の形状は明らかでない点。 (判断) (1)、(2)、(6)については、[本件発明1]及び[本件発明3]において既に述べたとおりである。 そうすると、相違点(7)について、支持部材としてロッド状のものを用いることは当業者が適宜なし得ることであり、その形状を円柱状にすることは、流体抵抗などを考慮して通常設計し得る事項に過ぎないものであるが、上述したとおり、相違点(6)は刊行物1ないし7から容易になし得るものではない。 (小括) したがって、本件発明4は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとはいえず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明5] 本件発明5(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、前者の「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置」に相当する。 また、後者の「較正球6」は、「ワーク12の検査すべき穴内に供給され」るので、前者の「前記穴に挿入される浮子」に相当し、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、前者の「該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段」に相当する。 そして、後者の「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されること」は、較正球6は弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、このベローズ8は較正球6を支持しているといえるので、「浮子を支持する支持部材」である点で、前者の「フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材」と共通する。 さらに、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」ことは、「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」の点で、前者の「該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μm隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」と共通する。 そうすると、両者は、 「ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えることを特徴とする穴の内径測定装置。」で一致し、上記相違点(1)、(2)、(6)に加えて、以下のような相違点を有する。 (相違点) (8)前者は、穴に複数の浮子が挿入されているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (判断) (1)、(2)、(6)については、[本件発明1]及び[本件発明3]において既に述べたとおりである。 (8)について 請求人が提出した証拠中には、複数の浮子を穴に挿入する点について記載も示唆もなく、また、相違点(8)によって、前者には、穴の内径を精度良く測定することができるという効果がある(本件特許明細書【0055】?【0058】)ので、当該相違点(8)が当業者にとって自明ともいえない。 なお、請求人は、審判請求書において、刊行物7(甲第7号証)の(7b)?(7c)から、「チューブ78の開口の大きさを測定することにおいて、間隔をおいて設けられたゲージリング73とゲージリング74とをチューブ78の開口に揃えることによって正確な測定を行うことが記載されている。よって、請求項8に記載の発明は、甲第1b号証に記載された発明と甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。」(審判請求書第13頁第24-第14頁第2行)と主張しているが、刊行物7の「ゲージリング73とゲージリング74」は自動求心作用を有するものではなく、それぞれ本件発明5の「浮子」に相当するものではないので、刊行物7記載の該当技術を刊行物1に記載された発明に適用することは容易ではなく、上記主張を採用できない。 (小括) したがって、本件発明5は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとは認められず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明6] 本件発明6(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、上記相違点(1)、(2)、(7)、(8)のような相違点を有し、これらの相違点については、[本件発明1]、[本件発明4]、[本件発明5]において検討したとおりである。 したがって、本件発明6は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとは認められず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明7] 本件発明7(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者において供給される流体は、圧縮空気であることから、前者の「空気」に相当する。すると、両者は、上記相違点(1)?(8)の相違点があり、当該相違点は[本件発明1]?[本件発明6]において既に検討したとおりである。 したがって、本件発明7は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとは認められず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明8] 本件発明8(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者の測定対象穴は「円筒形状」であることから(「刊行物2の「(2b)」)、後者の「較正球6」は本件発明8の「穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状である」「浮子」に相当する。すると、両者は、上記相違点(1)?(8)の相違点があり、当該相違点は[本件発明1]?[本件発明6]において既に検討したとおりである。 したがって、本件発明8は、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものとは認められず、当該特許発明は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、 (1)平成19年2月5日付け手続補正書により補正された訂正請求については、これを認める。 (2)請求項1ないし8に係る発明の特許については、無効の理由を発見しない。 (3)そして、審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法62条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 穴の内径測定方法及び装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子と、 フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、 前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、 ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項2】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、 該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、 ことを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項3】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子と、 フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、 前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項4】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、 該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項5】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子と、 フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、 前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項6】 ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、 前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、 該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、 該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、 前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする穴の内径測定装置。 【請求項7】 前記流体は、空気であることを特徴とする請求項3、4、5、又は6に記載の穴の内径測定装置。 【請求項8】 前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7に記載の穴の内径測定装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 ワークに形成された穴の内径を測定する測定装置の一つとして、空気マイクロメータがある。従来の空気マイクロメータは、図26及び図27に示すように、測定ヘッド1をワーク2の穴3に挿入し、測定ヘッド1のノズル4、4から圧縮空気を噴射し、ノズル4の背圧を検出する。ノズル4の背圧は、ノズル4と穴3の内壁との間隔に依存するので、予め求めたマスターの基準値と比較することによって、前記検出値を穴3の内径の寸法に換算することができる。このような空気マイクロメータは、ワーク2と非接触で、高精度に穴3の内径を測定できる利点がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の空気マイクロメータは、図26に示すように、測定ヘッド1の中心が穴3の中心からずれた場合、穴3の内径からずれた位置を測定することになり、偏心誤差が発生して測定精度が低下するという欠点があった。また、従来の空気マイクロメータは、図27に示すように、測定ヘッド1が穴3に傾いて挿入された場合、穴3の半径を斜めに測定することになり、角度誤差が発生して測定精度が低下するという欠点があった。 【0004】 また、従来の空気マイクロメータは、測定精度を向上させるために、複数のノズル4、4を小径で、且つ均等に精度良く加工しなければならず、測定ヘッド1の加工費が高くなる欠点もあった。また、測定精度を向上させるために、ガイドクリアランス(ワークと測定ヘッドとの隙間)を小さくする必要があり、測定ヘッド1の挿入時に測定ヘッド1がワーク2に接触してワーク2を傷付ける欠点もあった。 【0005】 本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、ワークに傷を付けることなく、ワークの穴を精度良く測定することができ、且つ低コストである穴の内径測定方法及び装置を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記フローティング機構は、前記浮子及び前記支持部材を移動駒を介して水平面上でスライドさせることにより、前記浮子が自動求心作用を受けると前記浮子を前記穴の中心に配置するフローティング機構である、ことを特徴とする。 【0007】 また、本発明は前記目的を達成するために、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に電磁石を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記電磁石は、前記浮子を前記穴に出し入れするときには通電して前記浮子を吸着し、前記供給手段から前記流体を供給するときには電流を停止する電磁石である、ことを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記浮子に前記流体の供給口が形成されていることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子と、フローティング機構を設けた該浮子を支持する支持部材と、前記浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。 また、本発明は、ワークに形成された穴の内径を測定する穴の内径測定装置において、前記穴に挿入される浮子であって、円柱状の支持部材に弾性体を介して取り付けられた浮子と、該浮子が挿入された穴に流体を供給する流体供給手段と、該流体供給手段で供給した流体が穴内壁と前記浮子との10?100μmの隙間を通過する際の流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力、或いは前記浮子の変位量を検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備え、前記穴に複数の浮子が挿入されることを特徴とする。 また、本発明は、前記流体は、空気であることを特徴とする。 また、本発明は、前記浮子は、前記穴の軸と直交する方向における断面形状が、前記穴に相似した形状であることを特徴とする。 【0008】 本発明によれば、ワークに形成された穴に浮子を挿入して流体を供給し、供給した流体が穴内壁と浮子との隙間を通過すると、浮子は穴の中心に位置しようとし(自動求心作用)、これによって穴の中心に自動的に配置される。したがって、従来装置のような偏心誤差や角度誤差が発生せず、穴の内径を常に精度良く測定することができる。また、流体供給手段の供給口の中心を穴の中心に精度良く合わせる必要がないので、測定を短時間で容易に行うことができる。 【0009】 また、本発明によれば、空気マイクロメータと同様に、ワークと非接触で穴の内径を計測することができるので、ワークに傷を付けることを防止することができる。 【0010】 さらに、本発明によれば、従来装置のように精度の高い加工が要求されるノズルや測定ヘッドを必要とせず、低コストで測定できる。 【0011】 【発明の実施の形態】 以下添付図面に従って本発明に係る穴の内径測定方法及び装置の実施の形態について説明する。 【0012】 図1は、第1の実施の形態の測定装置10の構成を示すブロック図である。 【0013】 図1に示すように、空気源12から供給される圧縮空気は、フィルタ14で除塵され、レギュレータ16で一定圧力に調整された後、A/E変換器18(空気/電気変換器)内に設置された絞りを通り、コネクタ33を介して測定台28内の送気路28Bに送気される。 【0014】 測定台28の上面には、送気路28Bに連通される供給口28Aが形成されるとともに、ワーク22が載置される。ワーク22には、円柱状の穴22Aが形成されており、この穴22Aに測定球30が挿入される。 【0015】 前記測定台28の送気路28Bに供給された圧縮空気は、供給口28Aから穴22Aに噴射され、穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通って外部に吹き出される。A/E変換器18は、このときの圧力を、内蔵するベローズと差動変圧器とによって電気信号に変換し、管制部20に出力する。穴22Aの径が異なる場合、圧力が微小変化し、管制部20は、後述するように、変化した電気信号に基づいてワーク22の内径を算出し、算出したデータを例えば管制部20のモニタ上に表示する。 【0016】 図2は、図1に示した測定装置10の特徴部分の構造を示す断面図である。同図に示すように、供給口28Aの周囲にはエア漏れ防止シール(Oリング)34が配設され、このエア漏れ防止シール34によって測定台28とワーク22との隙間から空気が洩れることが防止される。 【0017】 測定球30は、高い加工精度で球状に形成され、その材質は、例えば、セラミック、樹脂、鋼、軽合金等が使用される。測定球30の直径dは、穴22Aの直径Dよりも若干小さく形成されている。この測定球30の直径dは、穴22Aの直径Dの値に近いほど感度が良くなり、穴22Aと測定球30との隙間が少し変化しただけでも背圧が大きく変化するようになる。しかし、測定球30の直径dが穴22Aの直径Dに近すぎると測定球30を穴22Aに挿入しづらくなる。そこで、測定球30とワーク22との隙間(D-d)を、測定する穴径Dと要求される感度により、例えば10?100μm程度を目安として設定する。これにより、測定球30を穴22Aにスムーズに挿入でき、且つ穴22Aの寸法を精度良く測定することができる。なお、測定球30の直径dを、供給口28Aよりも大きな径で形成すると、測定球30が供給口28A内に落下することが防止される。 【0018】 支持部材32は、円柱状に形成され、測定球30よりも小さい径で形成される。この支持部材32は、図1のアーム36を介して支柱38に支持され、穴22Aと同じ方向、例えば鉛直方向に支持される。この支持部材32は、下端面が穴22Aの軸と垂直に形成され、この下端面が平滑に加工されている。 【0019】 次に上記の如く構成された測定装置10の作用について説明する。 【0020】 まず、図3(a)に示すように、測定台28の上面にワーク22を載置する。このとき、ワーク22の穴22Aが供給口28A上に配置されるようにする。次いで、ワーク22の穴22Aに測定球30を挿入する。このとき、測定球30が球状に形成されているので、測定球30が穴22Aの内壁に接触しても内壁が傷付くことがない。 【0021】 次に、図3(b)に示すように、支持部材32を穴22Aに挿入した後、図1に示した空気源12から圧縮空気を供給し、供給口28Aから圧縮空気を噴射する。このとき、噴射した圧縮空気は、ワーク22と測定台28との隙間から洩れることなく、穴22Aに噴射される。 【0022】 供給口28Aから圧縮空気を噴出したことによって、測定球30は、図3(c)に示すように、噴射された圧縮空気を受けて浮上する。浮上する際、測定球30は球状に形成されているので、測定球30が穴22Aの内壁に接触しても内壁が傷付くことはない。浮上した測定球30は、支持部材32の下端面に当接し、浮上した状態に維持される。前記圧縮空気は、測定球30と穴22Aの内壁との隙間を通り抜けて上部開口から外部に吹き出す。このときの背圧は、測定球30と穴22Aの内壁との隙間の大きさに依存するので、背圧をA/E変換器18で検出し、管制部20でこの検出値をマスターの基準値と比較して穴22Aの内径に換算することにより、穴22Aの内径を求めることができる。なお、マスターの基準値とは、測定に先立って、測定時と同じ条件でマスターを測定した値であり、測定条件を変える度に行われる。 【0023】 測定時における測定球30には、測定球30と穴22Aの内壁との隙間を通り抜ける圧縮空気によって自動求心作用(又は自動調心作用)が働き、測定球30が穴22Aの中心に自動的に移動する。即ち、図2に二点鎖線で示すように、支持部材32に当接した測定球30が穴22Aの中心からずれていた場合、球状の測定球30が、支持部材32の平滑な下端面を転がり、図2中実線で示すように中心に移動する。したがって、圧縮空気は、測定球30の回りに略均等に形成された隙間を通り抜けることになり、このときの背圧を検出することによって穴22Aの内径を精度良く求めることができる。 【0024】 このように本実施の形態の測定装置10によれば、供給口28Aの中心と穴22Aの中心とを正確に中心位置合わせしなくても穴22Aの内径を測定することができるので、偏心誤差や角度誤差が発生せず、穴22Aの内径を常に精度良く測定することができる。特に、測定装置10は、測定球30が自動求心作用によって自動的に穴22Aの中心に位置するので、穴22Aの内径を精度良く測定することができる。 【0025】 また、測定装置10は、穴22Aに測定球30を挿入し、圧縮空気を噴射するだけなので、操作が容易であり、短時間で精度良く測定することができる。 【0026】 また、測定装置10は、従来の空気マイクロメータと同様に、ワーク22と非接触で測定することができるので、ワーク22に傷を付けることなく、測定することができる。 【0027】 さらに、測定装置10によれば、小径の穴を測定する場合であっても、小径の穴に応じて小径の測定球30を準備すればよく、測定球30だけの準備で済むので、装置全体のコストを削減することができる。即ち、測定装置10によれば、従来の空気マイクロメータでは、ノズルや測定ヘッドの加工上、低コストで精度良く測定することが困難だった小径の穴、例えば直径2mm以下の穴であっても、小径の測定球30を用いることによって、穴の内径を低コストで精度良く測定することができる。 【0028】 なお、上述した実施の形態は、測定球30を穴22Aに挿入した後、圧縮空気を供給口28Aから噴射したが、圧縮空気を噴射しながら測定球30を挿入してもよい。 【0029】 また、上述した実施の形態は、A/E変換器18で背圧を検出したが、これに限定するものではなく、圧縮空気が穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通過する際の圧縮空気の流量を検出してもよい。この場合も上述した測定装置10と同様に、管制部20が、検出値をマスターの基準値と比較することによって、穴22Aの内径を精度良く求めることができる。 【0030】 さらに、本発明は、圧縮空気の背圧や流量の検出に限定されるものではなく、以下に示すように、圧縮空気が穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通過する際の、測定球30の受ける抗力や測定球30の変位量を検出してもよい。 【0031】 図4は第2の実施の形態の測定装置40の構造を示すブロック図であり、図1に示した第1の実施の形態の測定装置10と同一又は類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。 【0032】 同図に示す測定装置40は、測定球30の受ける抗力を検出する装置であり、支持部材32が圧電ピックアップ42を介してアーム36に取り付けられている。圧電ピックアップ42は、圧縮空気が穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通過する際に、測定球30が圧縮空気から受ける抗力を検出し、その検出信号を管制部20に出力する。管制部20は、圧電ピックアップ42から検出信号を受信すると、その検出値を、前記同様、マスターの基準値と比較して穴22Aの内径に換算する。 【0033】 なお、測定装置40では、測定球30が受ける抗力を検出する手段として圧電ピックアップ42を挙げて説明したがこれに限定するものではなく、次に述べるように、例えば歪みゲージ等で検出してもよい。 【0034】 図5に示す測定装置46は、圧電ピックアップ42の代わりに、アーム36に歪みゲージ48が取り付けられ、この歪みゲージ48によってアーム36の歪みを検出する。管制部20は、圧縮空気が穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通過する際に、歪みゲージ48から検出信号を受信し、アーム36の歪み特性から測定球30の変位量を求め、さらにこの値をマスターの基準値と比較して穴22Aの内径に換算する。 【0035】 なお、上述した測定装置10、40、46では、浮上する測定球30を支持部材32で受け止めて支持したが、これに限定するものではなく、以下に示すように、磁力で吸着支持したり、弾性体を介して支持してもよい。 【0036】 図6に示す測定装置は、支持部材32の下端に永久磁石52が取り付けられ、この永久磁石52に、鋼等の金属から成る測定球30が吸着支持されている。また、永久磁石52の下端面は、穴22Aの軸と略垂直な面上に形成され、鏡面仕上げされて平滑に加工されている。これにより、供給口28Aから圧縮空気を供給すると、測定球30は、永久磁石52の吸着力にもかかわらず、自動求心作用によって永久磁石52の下端面を転がり、中心に配置される。 【0037】 このような測定装置によれば、測定球30が磁力によって永久磁石52に吸着されるので、測定球30を浮上させる必要がなく、穴22Aの内径測定を迅速に行うことができる。また、測定球30が永久磁石52を介して支持部材32に吸着されているので、穴22Aの測定開始時や測定終了時に、測定球30と支持部材32を同時に穴22Aに出し入れすることができ、作業を簡単に行うことができる。さらに、測定球30が永久磁石52に吸着されているので、測定球30の紛失も防止することができ、且つ、測定球30の交換を容易に行うことができる。 【0038】 なお、上述した測定装置では、永久磁石52によって測定球30を吸着したが、図7に示すように、電磁石54によって吸着してもよい。電磁石54は、支持部材32を強磁性体の心(磁心)として、支持部材32の上部にコイル56を設けることにより構成される。この場合も、永久磁石52を用いた場合と同様に、測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作、及び穴22Aの内径測定操作を迅速に行うことができる。また、電磁石54を用いた方法では、供給口28Aから圧縮空気を噴射した際にコイル56への電流を停止することにより、測定球30に働く磁力が無くなり、測定球30がより滑らかに穴22Aの中心に移動する。 【0039】 図8に示す測定装置は、測定球30が、水平方向に変形可能な、ゴムやスプリング等の弾性体60を介して支持部材32に連結されている。この測定装置では、供給口28Aから圧縮空気を噴射すると、測定球30が自動求心作用を受け、弾性体60が変形して、測定球30が穴22Aの中心に移動する。即ち、弾性体60を測定球30と支持部材32との間に介在させたことにより、測定球30と支持部材32とを完全に連結しながらも、測定球30の自動求心作用の効果を得ることができる。したがって、この測定装置によれば、測定球30と支持部材32が完全に連結されているので、測定球30及び支持部材32の穴22Aへの出入操作、及び穴22Aの内径測定操作をより迅速に行うことができるとともに、測定球30の自動求心作用によって穴22Aの内径を精度良く測定することができる。 【0040】 なお、測定球30と支持部材32とを弾性体60で連結する代わりに、図9に示すように、支持部材32にエアベアリング等を用いたフローティング機構を設けてもよい。即ち、水平面上でスライドするように支持された移動駒62を介して、剛体で構成された支持部材32とアーム36とを連結する。これにより、測定球30が自動求心作用を受けると移動駒62が水平面上を移動し、測定球30が穴22Aの中心に配置され、穴22Aの内径を精度良く求めることができる。なお、支持部材32と測定球30との間に弾性体60を設けながら、支持部材32にフローティング機構を設けてもよい。 【0041】 図10は、ワークの閉止穴22Bを測定するための、第3の実施の形態の測定装置の構造を示すブロック図であり、図11は、図10に示した測定装置の特徴部分の構造を示す断面図である。 【0042】 第3の実施の形態の測定装置64は、測定球66に供給口66A(図11参照)が形成され、この供給口66Aから圧縮空気が噴射されるように構成されている。即ち、図11に示すように、支持部材68の下端面の中央には、円柱状の突出部68Aが形成され、この突出部68Aの下端面が平滑に加工されている。支持部材68と測定球66は、水平方向に変形可能な円筒状の弾性体70を介して連結され、この弾性体70によって測定球66が上方に付勢されて突出部68Aの下端面に当接されている。 【0043】 また、支持部材68は、中空状に形成されており、内部に圧縮空気の流路68Bが形成される。流路68Bは、図10に示すコネクタ72を介してA/E変換器18に接続されており、空気源12からの圧縮空気が供給される。また、流路68Bは、支持部材68の下端部分において分岐し、下端面に形成された複数の開口68Cに連通される。複数の開口68Cは、同じ径で形成され、さらに支持部材68の軸を中心に均等に配置される。これにより、A/E変換器18から供給された圧縮空気は、支持部材68内の流路68Bを通って、複数の開口68Cから均等に吹き出される。複数の開口68Cから吹き出された圧縮空気は、測定球66の送気路66Bを通り、外部に洩れることなく、支持部材68、弾性体70及び測定球66で囲まれた円筒状の空間74に供給される。 【0044】 円筒状の空間74に供給された圧縮空気は、測定球66内の送気路66Bを介して供給口66Aから噴射される。なお、送気路66Bは、支持部材68の軸を中心として均等に形成されている。 【0045】 上記の如く構成された測定装置64では、供給口66Aから噴射された圧縮空気は、閉止穴22Bの下端が封止されているため、測定球66と閉止穴22Bの内壁との隙間を通って上方に流出する。このとき、測定球66には自動求心作用が働き、球形の測定球66が支持部材68の平面上をスムーズに転がること、測定球66が弾性体70を介して支持部材68に支持されていることから、測定球66が確実に中心に移動する。したがって、A/E変換器18で背圧(又は圧縮空気の流量)を測定することによって閉止穴22Bの内径を精度良く測定することができる。 【0046】 このように第3の実施の形態の測定装置64によれば、測定球66に供給口66Aを形成したので、閉止穴22Bであっても、閉止穴22Bの内径を精度良く測定することができる。 【0047】 また、測定装置64によれば、測定球66が支持部材68に連結されているので、測定球66及び支持部材68を閉止穴22Bに出入操作を簡単に行うことができ、また、測定球66の紛失も防止することができる。 【0048】 さらに、測定装置64によれば、測定球66に供給口66Aが形成されているので、測定球66及び支持部材68を閉止穴22Bに挿入するだけで閉止穴22Bの内径を測定することができる。したがって、閉止穴22Bの方向やワーク22の大きさに影響されることなく、測定することができる。 【0049】 なお、図10には、A/E変換器18で、圧縮空気の背圧又は流量を検出する例を示したが、図4に示したように測定球66の受ける抗力を検出したり、図5に示したように測定球66の変位を検出してもよい。 【0050】 また、測定装置64は、閉止穴22Bの内径の測定だけに限定されず、多方向に開口された穴であっても、一方向を除いて全ての開口を栓等の封止部材で封止することによって、残りの一方向の穴の内径を測定することができる。 【0051】 また、測定装置64は、アーム36を支柱38に連結せず、作業者がアーム36(又は支持部材32)を手に持って測定するようにしてもよい。 【0052】 さらに、測定装置64は、測定球66が弾性体70を支持部材68に介して支持され、さらに、測定球66よりも先端側に圧縮空気を噴射できる構造であればよい。例えば、図24に示す測定装置は、球形の測定球75が円筒状の支持部材76に貫通された状態で固定され、この支持部材76が円筒状の弾性体77を介してパイプ78に連結されている。パイプ78には、図10に示した空気源12からの圧縮空気が供給され、支持部材76を介して測定球75の奥側に噴射される。噴射された圧縮空気は、測定球75と穴22Bとの隙間から上方に吹き出し、測定球75に自動求心作用を与える。測定球75は弾性体77を中心に揺動し、穴22Bの中心に配置される。これにより、穴22Bの内径を精度良く測定することができる。なお、支持部材76を弾性体77を介してパイプ78に連結する代わりに、支持部材76にフローティング機構を設けてもよい。 【0053】 なお、第3の実施の形態の測定装置64は、閉止穴22Bを測定する装置であるが、複数の測定球を設けることによって、貫通された穴22Aを測定することもできる。以下にその例を示す。 【0054】 図12に示す測定装置は、供給口80Aが形成された測定球80と、供給口の無い測定球82とを備えている。測定球80は、支持部材68に弾性体70を介して連結され、支持部材68の突出部68Aに当接される。測定球80の下端には、水平方向に弾性変形可能なゴム等の弾性体84を介して測定球82が連結されている。測定球80と測定球82は等しい外径で形成され、穴22Aの直径Dよりも僅かに小さい径で形成される。 【0055】 前記測定球80には、複数の供給口80A、80A…が形成されている。複数の供給口80A、80A…は、それぞれ径方向に形成され、円筒状の空間74に連通されている。また、複数の供給口80A、80A…は、同じ径で形成されるとともに、支持部材68の軸に対して均等に配置されている。これにより、円筒状の空間74に供給された圧縮空気は、複数の供給口80A、80A…から均等に吹き出される。 【0056】 上記の如く構成された測定装置は、測定球80と測定球82との間に圧縮空気が吹き出される。したがって、吹き出された圧縮空気は、測定球80と穴22Aとの隙間から上方に流出するとともに、測定球82と穴22Aとの隙間から下方に流出する。測定球80が支持部材68に弾性体70を介して支持され、さらに、測定球82が弾性体84を介して測定球80に支持されているので、測定球80、82はそれぞれ、自動求心作用によって穴22Aの中心に配置される。このときの背圧は、測定球80と穴22Aとの隙間の大きさ、及び測定球82と穴22Aとの隙間の大きさに依存しているので、背圧をA/E変換器18で検出し、マスターの基準値と比較することにより、穴22Aの内径を精度良く測定することができる。 【0057】 このように上記測定装置によれば、複数の測定球80、82を設け、この測定球80、82の間に圧縮空気を噴射するようにしたので、支持部材68と逆方向から圧縮空気を噴射する必要がない。即ち、穴22Aの一方側から測定球80、82及び支持部材68を挿入するだけで、測定を行うことができる。したがって、この測定装置は、大型のワークに形成された穴22Aの測定に適している。 【0058】 さらに、この測定装置は、支持部材68の軸を中心として圧縮空気の流れが均等になるように構成されている。したがって、圧縮空気によって測定球66が傾くことがなく、穴22Bの内径を精度良く測定することができる。 【0059】 なお、上記測定装置は、2つの測定球80と測定球82との間に圧縮空気を噴射する構造であればよく、例えば、弾性体84に供給口を形成したり、図25に示すように、2つの測定球を連結する部材に供給口を形成してもよい。図25に示す測定装置は、球形の測定球85が円筒状の支持部材87に貫通された状態で固定される。支持部材87は、基端側が円筒状の弾性体88を介してパイプ89に連結され、先端側が弾性体から成る栓83によって封止されている。栓83の下端には、測定球86が接着されて支持される。また、支持部材87の下端部の外周面には、供給口87A、87A…が均等に形成されている。したがって、パイプ89に圧縮空気を供給すると、支持部材87を介して供給口87A、87A…から測定球85と測定球86との間に噴射され、噴射された圧縮空気は、測定球85と穴22Aとの間、測定球86と穴との間から流出する。測定球85は、弾性体88を介して支持されているので、自動求心作用によって穴22Aの中心に配置され、また、測定球86は、測定球85に弾性体の栓83を介して連結されているので、自動求心作用によって穴22Aの中心に配置される。これにより、穴22Aの内径を精度良く測定することができる。なお、支持部材87を弾性体88を介して連結する代わりに、支持部材87にフローティング機構を設けてもよい。 【0060】 なお、上述した第1、2、3の実施の形態では、ワーク22の穴22A(又は2B)に空気を噴射して穴22Aの内径を測定したが、流体を噴射するのであればよく、空気以外の気体や液体であってもよい。また、その流体の温度を制御する温度制御手段を設けてもよい。 【0061】 また、上述した第1、2、3の実施の形態では、浮子として球形の測定球30、66、80、82を使用したが、これに限定するものではない。例えば、図13?図23に示したような浮子や、これ以外にも穴の軸心に対して穴を対象に狭窄できる形状であればよい。 【0062】 図13に示す浮子90は、球体を円周状に切削することによって形成される形状であり、切削した部分の直径d1が穴22Aの直径Dよりも若干小さく形成される。この浮子90は、球体を切削加工することによって簡単に加工することができるので、測定する穴22Aに適した径の球体を入手しにくい場合に効果的である。 【0063】 図14に示す浮子92は、円柱部92Aと半球部92B、92Bとから成るカプセル型に形成されている。この浮子92は、中央部92Aを長くすることによって浮子92の姿勢が安定し、測定誤差の小さい安定した測定結果が得られる。 【0064】 図15に示す浮子94は、楕円形型、即ち、楕円形を長径(又は短径)を中心に180°回転させることによって得られる形状に形成されている。また、図16に示す浮子96は、径差コロ型(又はたる型)に形成されている。このように形成された浮子94、96は、穴22Aに挿入しやすく、また、安定した測定結果が得られる。 【0065】 図17に示す浮子98は、円錐型に形成されている。この浮子98は、頂点側98Aが流体の吹出側を向くように穴22Aに挿入することによって、浮子98の空気抵抗を小さくすることができる。したがって、供給する流体の圧力を低下させることができる。 【0066】 図18に示す浮子100は、円錐上下型であり、2つの円錐の底面を貼り合わせた形状に形成される。このように形成された浮子100は、浮子100の後方に渦が発生しないので、空気抵抗をさらに小さくすることができる。 【0067】 図19に示す浮子102は、流線形型に形成されている。したがって、浮子102の空気抵抗を最も小さくすることができる。 【0068】 図20に示す浮子104は、低重心型、即ち、浮子104全体の重心が下方に配置され、浮上姿勢が安定する。 【0069】 図21に示す浮子106は、挿入ガイド付き型であり、下部に径の小さいガイド部106Aが設けられており、穴22Aに挿入し易く構成されている。また、浮子106は、ガイド部106Aの下端が半球状に形成されており、自動求心作用が得られやすいように構成されている。 【0070】 図22(a)及び図22(b)は、スプライン型の浮子108の平面断面図及び側面断面図である。浮子108は、スプライン型、即ち、歯車形状をした柱状部108Aと、半球状に形成された求心作用部108Bとから構成される。この浮子108を、柱状部108Aと相似形状をしたスプライン形状の穴22Dに挿入すると、浮子108は、求心作用部108Bによって自動求心作用が働き、穴22Dの中心に配置されるので、柱状部108Bの周囲には均等な隙間が形成される。したがって、スプライン状のマスターの基準値とを比較することにより、穴22Dの寸法を測定することができる。なお、求心作用部108Bの形状は、半球状に限定するものではなく、円錐状であってもよい。 【0071】 図23に示す浮子110は、ダイヤ型、即ち、2個の四角錐を底面で合わせた形状に形成されている。この浮子110は、角穴22Cの測定に適している。 【0072】 なお、浮子の形状は、穴に流体を供給した際に自動求心作用が効果的に働く形状であることが好ましく、例えば、流体が供給される側を半球状や円錐状に形成する。または、これらの浮子形状の組み合わせでもよい。 【0073】 また、浮子は、穴の軸と直交する方向における断面形状が、穴の形状に相似していることが好ましい。例えば、多角形状の穴が形成されていた場合には、その形状の多角錐、または、その多角錐を底面で合わせた形状にするとよい。これにより、浮子の回りに隙間が均等に形成され、精度良く穴の寸法を測定することができる。したがって、本発明は、浮子の断面形状を変えることによってあらゆる断面形状の穴の寸法を精度良く計測することができる。 【0074】 また、上述した実施の形態では、測定球30を上方から支持部材32によって抑えることにより、測定球30が穴22Aの外部に抜けることを防止したが、これに限定するものではなく、下方から紐状部材等によって支持してもよい。また、その紐状部材の張力や伸びを測定してもよい。 【0075】 また、図1に示した測定装置10において、測定球30が中空に浮いた状態のまま、測定を行ってもよい。即ち、測定球30が流体の噴射によって受ける浮力と、測定球30の自重とが釣り合うことにより、測定球30が支持部材32に当接せずに中空に維持される状態で背圧や流量を検出する。この場合、同じ条件におけるマスターの基準値と比較することにより、穴22A?22Dの寸法を精度良く求めることができる。 【0076】 また、上述した第1の実施の形態において、ワーク22は、穴22Aの中心が供給口28Aの中心とできるだけ一致するように測定台28上に設置することが好ましい。したがって、ワーク22を測定台28に簡単に位置決めできるように測定台28に位置決め手段を設けてもよい。 【0077】 また、測定台28は、ワーク22の穴22Aの大きさの変更に伴い、供給口28Aの径の異なるものに交換するようにしてもよい。 【0078】 また、上述した実施の形態では、鉛直方向に形成された穴22Aに下方から流体を噴射して測定を行ったが、穴22Aに上方から流体を噴射し、下方から支持部材32で支持することによって測定してもよい。また、鉛直方向に形成された穴22Aだけでなく、斜め方向や水平に形成された穴を測定してもよい。 【0079】 また、上述した実施の形態において、A/E変換器18から出力された検出信号を、管制部20でA/D変換し、高周波成分を除去することにより、測定球30の振動成分を除去してもよい。これにより、穴22A(又は22B)の内径の測定精度をさらに向上させることができる。 【0080】 また、上述した実施の形態は、直線状に形成された穴22A?22Dの内径を測定する例で説明したが、本発明は、例えばT字状やL字状に形成された穴の内径を測定してもよい。 【0081】 また、上述した実施の形態において、アーム36を支柱38に対して上下方向スライド自在に設けると、支持部材32、68を簡単に穴22A?22Dへ出し入れすることができる。 【0082】 【発明の効果】 以上説明したように本発明に係る穴の内径測定方法及び装置によれば、ワークに形成された穴に浮子を挿入して流体を供給し、供給した流体の背圧、流量、又は浮子が受ける抗力、或いは浮子の変位を検出することによって穴の内径を測定するので、偏心誤差や角度誤差を発生することなく、穴の内径を精度良く測定することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る穴の内径測定装置の第1の実施の形態の構造を示すブロック図 【図2】図1に示した穴の内径測定装置の特徴部分を示す断面図 【図3】図1に示した穴の内径測定装置の作用を示す説明図 【図4】本発明に係る穴の内径測定装置の第2の実施の形態の構造を示すブロック図 【図5】図4と検出方法が異なる測定装置の構造を示すブロック図 【図6】図1と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図7】図1と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図8】図1と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図9】図1と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図10】本発明に係る穴の内径測定装置の第3の実施の形態の構造を示すブロック図 【図11】図10に示した穴の内径測定装置の特徴部分を示す断面図 【図12】図10に示した穴の内径測定装置の応用例を示す断面図 【図13】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図14】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図15】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図16】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図17】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図18】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図19】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図20】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図21】丸穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図22】丸穴に適した浮子の一例を示す説明図 【図23】角穴に適した浮子の一例を示す断面図 【図24】図11と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図25】図12と異なる測定球の支持構造を示す断面図 【図26】従来装置の構造を示す平面断面図 【図27】従来装置の構造を示す縦断面図 【符号の説明】 10…測定装置、12…空気源、16…レギュレータ、18…A/E変換器、20…管制部、22…ワーク、22A…穴、28…測定台、28A…供給口、30…測定球、32…支持部材、42…圧電ピックアップ、48…歪みゲージ、52…永久磁石、54…電磁石、60…弾性体 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-02-03 |
結審通知日 | 2007-03-14 |
審決日 | 2007-03-27 |
出願番号 | 特願2000-185773(P2000-185773) |
審決分類 |
P
1
113・
855-
YA
(G01B)
P 1 113・ 851- YA (G01B) P 1 113・ 113- YA (G01B) P 1 113・ 121- YA (G01B) P 1 113・ 852- YA (G01B) P 1 113・ 853- YA (G01B) P 1 113・ 841- YA (G01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 卓弥 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 山口 敦司 |
登録日 | 2003-01-24 |
登録番号 | 特許第3390971号(P3390971) |
発明の名称 | 穴の内径測定方法及び装置 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 松浦 憲三 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 久保山 典子 |
代理人 | 松浦 憲三 |
代理人 | 久保山 典子 |