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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C02F 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C02F 審判 訂正 2項進歩性 訂正する C02F 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する C02F 審判 訂正 原文新規事項追加の訂正 訂正する C02F |
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管理番号 | 1164351 |
審判番号 | 訂正2007-390021 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2007-02-23 |
確定日 | 2007-09-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3500173号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3500173号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3500173号については、平成5年12月1日に特許出願され、平成15年12月5日にその特許の設定登録がなされ、平成18年2月13日付けで無効審判が請求され(平成19年7月5日付けで無効審判の請求が取下げられている)、その後、平成19年2月23日付けで本件訂正審判が請求されたものである。 II.訂正事項 平成19年2月23日付け訂正審判の請求は、本件明細書の記載を、訂正請求書に添付した訂正した明細書に記載されるとおりに訂正することを求めるものである。 以下、訂正前の明細書を「特許明細書」といい、訂正後の明細書を「訂正明細書」という。 【訂正事項1】特許明細書の請求項1における、 「・・・これら陽極室と陰極室内に陽極と陰極をそれぞれ配設した電解層と、・・・」を、 「・・・これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極と陰極をそれぞれ配設した電解層と、・・・」に訂正する。 【訂正事項2】特許明細書の請求項1における、 「・・・直流電源と,・・・循環塩水タンクと,・・・前記陽極室と前記陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管と,前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水取出し管と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取出し管・・・」を、 「・・・直流電源と、・・・循環塩水タンクと、・・・前記陽極室と陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管と、前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水導出管と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取り出し管・・・」に訂正する 【訂正事項3】特許明細書の請求項1における、 「・・・を備えてなる流水式電解水製造装置。」を、 「・・・を備えた流水式電解水製造装置において、 前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたことを特徴とする流水式電解水製造装置。」に訂正する。 【訂正事項4】特許明細書の請求項2?6の記載を削除する。 【訂正事項5】特許明細書の段落0006における、 「・・・本発明は、上記の問題を解消するため、・・・・・・、これら陽極室と陰極室内に陽極15と陰極16をそれぞれ配設した電解槽と、・・・,前記電解槽の塩水室Aに前記循環塩水タンク20に貯えた塩水を導入する塩水導入管21と、前記塩水室Aから・・・を備えてなる流水式電解水製造装置を提供するものである。」を、 「・・・本発明は、上記の問題を解消するため、・・・・・・、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極15と陰極16をそれぞれ配設した電解槽と、・・・,前記電解槽の塩水室Bに前記循環塩水タンク20に貯えた塩水を導入する塩水導入管21と、前記塩水室Bから・・・を備えた流水式電解水製造装置において、前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほゞ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたことを特徴とする流水式電解水製造装置を提供するものである。」に訂正する。 III.訂正の適否の判断 III-1.訂正の目的の適否 訂正事項1 当該訂正事項1は、具体的には、請求項1で記載される陽極と陰極につき、「液体の通過が自由な」との機能を付加するものであり、これは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項2 当該訂正事項2は、具体的には、請求項1で記載される「直流電源と,」を「直流電源と、」に訂正し、同「循環塩水タンクと,」を「循環塩水タンクと、」に訂正し、同「前記陽極室と前記陰極室」を「前記陽極室と陰極室」に訂正し、同「原水導入管と,」を「原水導入管と、」に訂正し、同「酸性水を継続的に導出する酸性水取出し管」を「酸性水を継続的に導出する酸性水導出管」に訂正し、そして、「アルカリ水取出し管」を「アルカリ水取り出し管」に訂正するものであって、これらは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 訂正事項3 当該訂正事項3は、請求項1で記載される流水式電解水製造装置に設けられた陽極及び陰極につき、「前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し」として、その形状及び位置決め固定形態を限定するものであり、また、同流水式電解水製造装置に設けられた電極と隔膜につき、「これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにした」として、その電極と隔膜との相互関係を限定するものであり、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 更に、当該訂正事項3は、請求項1の記載において、流水式電解水製造装置につき、上記の陽極及び陰極、及び、上記の電極と隔膜につき限定したうえで、「を備えてなる流水式電解水製造装置」を「を備えた流水式電解水製造装置において、・・・ことを特徴とする流水式電解水製造装置」と訂正するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴ってなされる、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 訂正事項4 当該訂正事項4は、請求項2?6を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項5 当該訂正事項5は、その記載が明らかに誤りである「塩水室A」を「塩水室B」と訂正し、また、請求項1の訂正に伴い不明瞭となった発明の詳細な説明の記載を請求項の記載に整合させるものであり、それぞれ、誤記の訂正を目的及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 してみれば、訂正事項1?5は、特許法第126条第1項ただし書き第1号?3号に掲げる事項を目的とするといえる。 III-2.新規事項の追加の有無 訂正事項1 当該訂正事項1において陽極と陰極につき、「液体の通過が自由な」との機能を付加することは、特許明細書で、「・・・陽極15が設けられ、・・・陰極16が設けられている。・・・各電極15,16はメタルラスに限らず液体の通過が自由なものであれば金網またはパンチドメタルあるいは・・・ものでもよく、・・・」(段落0012)等と記載され、このように陰極及び陽極は液体の通過が自由なものであることが明示されていることから、特許明細書の記載に基づいてなされたものであるといえる。 訂正事項2 当該訂正事項2において、「直流電源と,」を「直流電源と、」に訂正し、「循環塩水タンクと,」を「循環塩水タンクと、」に訂正し、「前記陽極室と前記陰極室」を「前記陽極室と陰極室」に訂正し、同「原水導入管と,」を「原水導入管と、」に訂正し、同「酸性水を継続的に導出する酸性水取出し管」を「酸性水を継続的に導出する酸性水導出管」に訂正し、「アルカリ水取出し管」を「アルカリ水取り出し管」に訂正することは、明らかに特許明細書の記載に基づいてなされたものである。 訂正事項3 〔当該訂正事項3において請求項1で記載される流水式電解水製造装置に設けられた陽極及び陰極(電極)につき、「前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し」との事項を付加する訂正について〕 当該付加するところの事項については、特許明細書で、「・・・、前記陽極15及び陰極16は全体として板状をなし・・・各隔膜11,13に隣接して前記ケーシング10に固定して設け、・・・」(段落0007)と記載され、この記載から、陽極及び陰極(電極)は全体として板状であることが導き出される。また、この記載より陽極及び陰極はケーシング内に各隔膜に隣接して固定して設けられるものであること、及び、その隔膜は特許明細書の請求項1によればケーシング内に離間して設けられることから、そこでの陽極及び陰極は、ケーシングの内部に離間して位置決め固定して設けられていることが自明なこととして導き出し得る。 そうであれば、請求項1で記載される流水式電解水製造装置に設けられた陽極及び陰極につき、「前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し」との事項を付加する訂正は、特許明細書の記載に基づいてなされたものであるといえる。 〔当該訂正事項3において請求項1で記載される流水式電解水製造装置に設けられた電極と隔膜につき、「これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにした」との事項を付加する訂正について〕 当該付加するところの事項は、特許明細書の「・・・これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に配置して・・・」(請求項2)、「・・・、前記陽極15及び陰極16は・・・対応する前記隔膜11,13のほゞ全面積にわたり各隔膜11,13に隣接して・・・設け、・・・」(段落0007)、「上記の電解水製造装置において、塩水室B内の水圧が陽極室A及び陰極室C内の水圧よりも高くなるように設定した場合には、その水圧の差により各隔膜11,13はそのほゞ全面積にわたり接近して設けた陽極15及び陰極16に押し付けられ、各隔膜11,13に加わる力は陽極15及び陰極16により受け止められる。」(段落0009)の記載及びその図1と2に記載される隔膜と電極との配置態様から、自明なこととして導き出し得るものである。 〔当該訂正事項3において請求項1で記載される流水式電解水製造装置につき、「を備えてなる流水式電解水製造装置」を「を備えた流水式電解水製造装置において、・・・ことを特徴とする流水式電解水製造装置」とする訂正について〕 当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴って、その表現方法を明瞭化するに過ぎないものであり、これは、特許明細書から自明なこととして導き出し得るものである。 以上のとおり、当該訂正事項3の訂正は、特許明細書の記載に基づいてなされたものであるといえる。 訂正事項4及び5 当該訂正事項4の訂正は請求項を削除するだけのものであり、また、当該訂正事項5の訂正は発明の詳細な説明の記載を請求項の記載に整合させ又は単に誤記を是正するものであり、いずれも、特許明細書の記載に基づいてなされたものであるといえる。 してみれば、訂正事項1?5は、特許法第126条第3項の規定に適うといえる。 III-3.拡張、変更の存否 訂正事項1及び3については、発明の目的の範囲内で特許請求の範囲の記載を上記のとおり限定するものであり、またそれに伴って表現方法を明瞭化するに過ぎないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項2については、その意味内容が実質的に変わるものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項4は請求項を削除するだけのものであり、また、訂正事項5は発明の詳細な説明の記載を請求項の記載に整合させ又は単に誤記を是正するものであり、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 してみれば、訂正事項1?5は、特許法第126条第4項の規定に適うといえる。 III-4.独立特許要件の適否 本件審判の請求は、訂正事項1、3及び4を含み、それら訂正事項は上記したとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することから、以下、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かにつき検討する。 III-4-1.訂正後の本件発明 【請求項1】ケーシングの内部に離間して設けた一対の隔膜の間に塩水室を形成し同塩水室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽と、前記陽極と陰極に直流電流を供給する直流電源と、電解される塩水を貯える循環塩水タンクと、前記電解槽の塩水室に前記循環塩水タンクに貯えた塩水を導入する塩水導入管と、前記塩水室から未電解の塩水を前記循環塩水タンクに還流させる塩水導出管と、前記塩水導入管又は塩水導出管に介在して塩水を循環させる循環ポンプと、前記陽極室と陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管と、前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水導出管と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取り出し管を備えた流水式電解水製造装置において、 前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたことを特徴とする流水式電解水製造装置。 【請求項2】?【請求項6】削除 【請求項7】前記循環塩水タンクに濃塩水を供給する濃塩水タンクと、前記循環塩水タンク内に貯えられる塩水の濃度を検出する濃度計を設けて、前記循環塩水タンク内の塩水の濃度が低下したとき前記濃度計の検出値に基づいて前記濃塩水タンクから濃塩水を前記循環塩水タンクに補給して同循環塩水タンク内の塩水の濃度を所定範囲内に保持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流水式電解水製造装置。 以下、必要に応じて、訂正発明1及び訂正発明7という。 III-4-2.独立特許要件(特許法第29条第2項)の判断 III-4-2-1.引用例(前記した無効審判請求で引用された証拠)及びその記載 引用例1:特開平3-20491号公報 引用例2:特開昭56-5990号公報 引用例3:特開昭59-182983号公報 引用例4:特開平5-214573号公報 引用例5:特開昭63-65912号公報 引用例6:特公昭62-54196号公報 引用例7:特開昭52-17372号公報 引用例8:特開昭52-65182号公報 引用例9:特開昭52-111900号公報 引用例10:特開昭62-27584号公報 III-4-2-1A.引用例1(特開平3-20491号公報)の記載 (A-1)「(1)陽極と、陰イオン交換膜と、陽イオン交換膜と、陰極と、陽極と陰イオン交換膜に挟まれた陽極室と、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜に挟まれた食塩室と、陽イオン交換膜と陰極に挟まれた陰極室とを備えた電解槽と、前記食塩室に接続した食塩水貯槽と、水道栓から分岐して1つを別経路とし1つは陽極室を通過し1つは陰極室を通過して三者が合一する通水路と、陰極室を通過後他の通水路と合一するまでの通水路中に置かれた脱気器と、陽極と陰極との間に加印する直流電源とを有する塩素溶液製造装置。」(特許請求の範囲第1項) (A-2)「(2)底部には食塩貯留スペースを設け、そのスペース上方にあって、電解槽の食塩室に高低差を設けて設置した2つの管路接続部との間で、上は上どうし下は下どうし接続する高低差を付けて設置した2つの管路接続部と、開口した頂部とを有する食塩水貯槽を有する請求項1記載の塩素溶液製造装置。」(特許請求の範囲第2項) (A-3)「本発明の第一の実施例を第1図・第2図をもとに説明する。第1図は電解槽の構成を示すもので、1は陽極、2は陰イオン交換膜、3は陽イオン交換膜、4は陰極であってフレーム5を挟んで固定されている。こうして各々の間隙が陽極室6・食塩室7・陰極室8として利用されている。つまり陽極室6は、陽極1と陰イオン交換膜2に挟まれた空間、食塩室7は陰イオン交換膜2と陽イオン交換膜3に挟まれた空間、陰極室8は陽イオン交換膜3と陰極4に挟まれた空間である。また9は、陽極1・陰極4間に食塩水の電気分解のための直流電圧を加印するための直流電源である。」(第3頁左上欄第1?13行) (A-4)「また陰イオン交換膜2はNa+を透過せず、Cl-を選択的に透過し、陽イオン交換膜3はCl-を透過せずNa+を選択的に透過するので、Na+が陽極1にCl-が陰極室に移行することはなく、陽極室6・陰極室8を通過する水にNaClが混入することもない。」(第3頁右上欄第4?9行) (A-5)「第2図は塩素溶液製造装置の全体構成を示すもので、第1図で説明したものと共通の機能を有する部分、即ち電解槽を示す部分には共通の番号を付して説明を省略する。10は濃厚な食塩水を貯留する食塩水貯槽であり、食塩室7にNaClを供給している。11は水道栓を水源として分岐し、1つは陽極室6を通過し1つは陰極室8を通過し、他の1つと11aで合一する通水路である。」(第3頁左下欄第6?13行) (A-6)「第1図をもって説明したように、電解槽を構成している陰極室8ではNaOHとH2が発生し、これは通水路11からの水供給により移動して脱気器12に入る。ここでは水中からH2が除去されてNaOH溶液のみが流出する。また陽極室6ではCl2が発生し、大部分は陽極室6を通過する水に溶解して移動し最終的には3本に分岐した通水路が11aで合一して、NaOH溶液にCl2が溶解した希薄な塩素溶液が得られる。この希薄な塩素溶液中では、Cl2はH2O(水)と反応してClO-(次亜塩素酸イオン)とCl-とH+が生成され塩素原子と等モル存在するNaOHがこれを中和している。」(第3頁左下欄第16行?右下欄第7行) (A-7)「次に本発明の第二の実施例を第4図をもとに説明する。第一の実施例で説明したものと同一の機能を果たす電解槽を示す部分には同一の番号を付し、説明を省略する。13は頂部を開にした食塩水貯槽であって、14はその底部に設けた食塩貯留スペース、15・16は食塩水貯槽13に高低差をつけて設けた管路接続部であり、下方の管路接続部16は、食塩室7の下方に接続され、上方の管路接続部15は同上方に接続されている。 以下に本実施例の作用を説明する。食塩水貯槽13に水が供給された状態では、食塩貯留スペース14内に貯留されている食塩が溶解し拡散して食塩水貯槽13内に食塩水の濃度の勾配が生じる。この食塩水の濃度の濃厚な下部から、比重差により管路接続部16を通って濃厚な食塩水が食塩室7に流入し、食塩室7から濃度の希薄な食塩水が食塩水貯槽13に管路接続部15を介して返される。」(第4頁右上欄第4行?左下欄第1行) III-4-2-1B.引用例2(特開昭56-5990号公報)の記載 (B-1)「1.陽極室、陰極室及び緩衝室を形成する少なくとも二つのイオン移送性隔膜によって分離されている陽極と陰極との間で水性アルカリ金属ハロゲン化物陽極液を電解し、その際前記電極の少なくとも一方の電気化学的に活性な成分は該隔膜の一つに複数の位置で物理的に結合して一体化された電極-隔膜を形成しているものとし:該結合電極と接触している電子電流導体によって電位源からの電位を該結合電極に適用し:陰極室に陰極液を導入し:緩衝室に加圧された水性供給物を導入して緩衝室と他の室との間に正の圧力差を保持せしめ、それによつて該隔膜を外側へ押圧しかつ電気化学的に活性な結合電極と電子電流導体構造体との間に緊密な接触を保持せしめることからなるハロゲンの製造方法。」(特許請求の範囲第1項) (B-2)「今般本発明者は3個の区画室をもち、その中央室、すなわち緩衝室を他の室に関して正の圧力で操作することによつて電極/電流界面に良好な接触を維持せしめかつ該界面におけるオーム損失を最小限に抑止し得ることを認めた。これによつて一体化された隔膜/電極構造体は集電装置に対して圧接されて均一、一定なかつ制御可能な接触圧力が確保され、それによつて最適の槽電圧が得られる。」(第3頁左下欄第18行?右下欄第6行) (B-3)「ハロゲン化物の電解に要する槽電圧の低下に加えて、逆移行する水酸イオンの実質的部分は緩衝室から水酸化ナトリウムとして排出されるので高い水酸化ナトリウム濃度における陰極電流効率もまた実質的に増加せしめ得る。これによつて陽極隔膜を通じてのOH-イオンの逆移行は実質的に減少せしめられる。したがって、電流効率の改善は陰極室において高濃度の水酸化ナトリウムを生成しながら緩衝室においてはより低濃度の水酸化ナトリウムを生成することによって達成される。」(第3頁右下欄第7?16行) (B-4)「本発明の利益は電解槽を陽極室、陰極室及び緩衝室に分割する一対の透過選択性隔膜、好ましくは陽イオン隔膜をもつ電解槽を提供することによつて達成される。二つの気体及び液体不透過性透過選択性隔膜はそれぞれ陽極室及び陰極室に面するそれらの表面に結合された電極を有する。電気化学的に活性な粒子及び重合体粒子の結合体である電極は隔膜の表面に結合されかつその中に埋込まれている。電解電圧源に連結される集電装置はこれらの電気化学的に活性な電極と物理的に接触した状態に保持される。蒸留水又は水酸化ナトリウムの希薄溶液は陽極室及び陰極室に対して正の圧力として緩衝室に導入される。この正の圧力は隔膜を外側へ強制的に押圧してそれを集電装置と緊密に接触させ、それによって集電装置と電極との間のオーム損失を最小限にする均一、一定の接触圧力を保持する。」(第4頁左上欄末行?右上欄第16行) (B-5)「陽極18及び陰極19は、それぞれ陽極室及び陰極室に面している隔膜12及び13の表面にそれぞれ結合されかつその中に埋込まれる。後に詳述するごとく、陽極及び陰極は多孔質かつ気体透過性でありそして電気触媒的な粒子及び重合体粒子の結合体からなる。触媒粒子は好ましくは白金属金属の安定化された還元酸化物の粒子又は還元金属粒子の分散物でありかつ弁用金属の還元酸化物及びグラフアイトのような導電性増量剤を含み得る。重合体粒子は好ましくはポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロカーボン粒子である。触媒的粒子及び重合体状粒子の結合体はそれ自体、電極が隔膜の主要部上に分散されるように熱及び圧力の適用によつて隔膜の表面に結合されかつその中に埋込まれる。」(第4頁左下欄第16行?右下欄第11行) (B-6)「塩素及び苛性アルカリの製造の場合には、アルカリ金属ハロゲン化物の水溶液、好ましくは食塩水を食塩水槽22から導管23を経て陽極液室に供給する。塩素ガスは陽極液室から出口導管24を経て除去されそして費消された食塩水は導管25を経て取出されそして食塩水槽22に還付される。同様に、水又は稀苛性アルカリの形の水性陰極液は入口導管26を経て陰極液室に導入されそして水素ガスは出口導管27を経てそして濃苛性アルカリは出口導管28を経てとり出される。蒸留水又は苛性アルカリ稀水溶液は入り口導管29を経て緩衝室17に導入される。陽極室からのナトリウムイオンから緩衝室で形成された苛性アルカリ及び陰極から逆移行する水酸イオンを含む稀苛性アルカリは出口導管30を経てとり出される。」(第4頁右下欄第19行?第5頁左上欄第13行) III-4-2-1C.引用例3(特開昭59-182983号公報)の記載 (C-1)「1.実質的に水平に張設された陽イオン交換膜の上部に陽極室を、下部に陰極室をそれぞれ備えてなる水平型電解槽を用い、陽極室側壁のフランジ部から又は該陽極室側壁のフランジに対峙する陰極板の周縁部から該陰極板の水平面に対して略垂直方向に陰極液を導入し、該陰極板の他の周縁部から又は陽極室側壁のフランジ部から陰極液と陰極ガスとの混相流を同じく略垂直方向に排出することを特徴とする電解方法。」(特許請求の範囲第1項) (C-2)「本発明は主としてアルカリ金属ハロゲン化物水溶液、特に塩化アルカリ塩水溶液の電解方法及びそれに用いる電解槽に関する。 詳しくは、電解隔膜として陽イオン交換膜を用いた水平型電解槽において低い電解電圧で、主として高品質の苛性アルカリを効率良く得るための方法及び装置に関するものである。」(第2頁右上欄第17行?左下欄第3行) (C-3)「更にまた、陽イオン交換膜の接液・非通電部分(非電解部分)においてNaOHが膜を通じて陽極液側に洩れ込み、陽極液中のNaClの溶解度を低下させ、膜にNaClを析出付着させるという現象が生じることを知見した。・・・・。第2図に示した如く、具体的には膜(3)が陽極室側壁のフランジ(5a)と陰極室側壁(17)との間に挟持張設された部分等において発生し易い。膜に析出付着したNaClは膜を押し下げ、電極-膜間の距離を変動させるのみならず、膜の振動を誘発し、膜と電極との衝突により膜を破損する。・・・。本発明は叙上の如き従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、」(第3頁右上欄第7行?左下欄第8行) (C-4)「本発明の方法において、陽イオン交換膜の実質的に電解に係わつている面を陽極に押し付けるようにし乍ら電解することにより、△Pの変動による膜の振動を一層効果的に防止することができる。 陽イオン交換膜を陽極に押しつける方法としては、従来公知の方法を用いることが出来る。例えば陰極室に循環供給している陰極液の出口にバルブを設け、該バルブを絞ることにより陽イオン交換膜の陰極側全面に圧力をかけることが出来る。」(第8頁左上欄第19行?右上欄第9行) III-4-2-1D.引用例4(特開平5-214573号公報)の記載 (D-1)「【請求項1】少なくとも一枚のイオン交換膜によって仕切られた室と、各室に電解液を供給する循環系と、各室からの電解生成物を抜き出す循環系と、陰極と、水素含有ガスが供給され、水素ガス室を形成する水素減極陽極構造体とからなる少なくとも一つの単位電解セルからなり、 前記水素減極陽極構造体が、カチオン交換膜と、多孔性かつ柔軟性の電極触媒シ-トと、前記電極触媒シ-トと多数の接触点を有する導電性かつ多孔性の給電体とからなり、前記カチオン交換膜、電極触媒シ-ト及び給電体を、結合することなしに、加圧手段によって、ともに接触せしめたことを特徴とする電解槽。」(特許請求の範囲第1項) (D-2)「【請求項8】前記給電体が、多孔性で、目の粗い、剛性の金属スクリ-ンと、多孔性で、目の細かい、柔軟性の金属スクリ-ンとよりなり、互いに接触されていることを特徴とする請求項1に記載の電解槽。」(特許請求の範囲第8項) (D-3)「【請求項15】前記加圧手段が、前記カチオン交換膜の、前記電極触媒シ-トと接触する側と反対側の面と接触する電解液による圧力であることを特徴とする請求項1に記載の電解槽。」(特許請求の範囲第15項) (D-4)「本発明の陽極構造体:・・・。洗浄した水素は次に電解液が存在しない水素ガス室4に供給され、先述した適切な多孔性の給電体14とカチオン交換膜13の間で押圧された電極触媒の多孔性シート12からなる本発明の陽極構造体の背後に流れる。通電下で、水素は電極触媒シート12とカチオン交換膜13の間の境界面でイオン化される。このようにして形成されたH+イオンはカチオン交換膜13を通って中間室41に移動し、そこで陰極室40へ移動したNa+イオンと置換される。硫酸の正味の形成はこのようにして得られる。」(段落0031) III-4-2-1E.引用例5(特開昭63-65912号公報)の記載 (E-1)「本発明は個々の各電解槽の装置が双極膜、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を含む電気透析スタックで、1対の電極間にクランプした多数のそのような電解槽を利用する。塩溶液例えばNaClは陰イオン交換膜と陽イオン交換膜との間に送られて脱塩される。減塩した塩流は好ましくは再循環されてスタックに通される。双極膜で生じたCl-イオンおよびH+イオンは塩酸(HCl)を形成し、それは酸受けタンクへ送られる。双極膜で生じたNa+及びOH-イオンは水酸化ナトリウム(NaOH)を形成し、それは塩基受けタンクへ送られる。」(第4頁右下欄第17行?第5頁左上欄第8行) (E-2)「次に本発明の最初の好ましい態様による方法および装置が第2図に示されるその略図を参照して説明される。〈中 略〉 タンク14からのNaCl塩溶液はタンク14からスタック10の陰イオン膜と陽イオン膜との間に規定される室中へ塩循環ポンプ27によりライン24およびライン26を経て連続的に循環される。スタック10の陰イオン膜と陽イオン膜との間に規定された室から部分脱塩した塩溶液がライン28を経てタンク14中へ循環して戻される。スタックの陰イオン膜と双極膜との間の室中に生じた酸HCl溶液は酸受けタンク16中へライン30を経て送られる。スタック10の陽イオン膜と双極膜との間の室中に生じた塩基NaOH溶液は塩基受けタンク18中へライン32を経て送られる。」(第6頁左上欄第9行?右上欄第12行) III-4-2-1F.引用例6(特公昭62-54196号公報)の記載 (F-1)「1(a)電解槽の陽極室に食塩水を導入し、(b)水又は水酸化ナトリウム水溶液を該電解槽の陰極室に導入し、(c)該両室を陽イオン選択透過膜にて分離し(d)塩素及び消耗食塩水を、陽極室から第1出口ライン及び第1ヘッダーを通して、食塩水捕集箇所に取出し、(e)水酸化ナトリウム溶液と水素を、陰極室から第2出口ライン及び第2ヘッダーを通して水酸化ナトリウム溶液捕集箇所に取出し、その第1ヘッダーおよび第2ヘッダーはそれぞれ食塩水捕集箇所および水酸化ナトリウム溶液捕集箇所に伸びている端部を有していることからなる食塩水の電解方法において、その第1ヘッダーのその端部およびその第2ヘッダーのその端部は別々の液面下に保持され、2つの液の液面水準を異なったレベルに保持させることによつて陽極室の圧力を陰極室の圧力よりも高く維持することを特徴とする食塩水の電解方法。」(特許請求の範囲第1項) (F-2)「この結果陽極で発生する塩素と相まつて、膜の陽極側の極く近辺に比較的高濃度の次亜塩素酸アルカリが局部的に生成する。塩素/苛性ソーダ膜電解槽のチタン金属陽極で使用される導電性被膜は通常ルテニウム及びチタン酸化物の混合物である。斯る被膜は次亜塩素酸アルカリの攻撃を受け易く、被覆が急速に失なわれると共に陽極表面が非導電性になる。このために膜と陽極が直接接触するのを防止する必要がある。従つて膜は陰極に近く陽極から離れて配置されねばならない。」(第1頁右欄第22行?第2頁左欄第9行) (F-3)「従つて、陽極室-陰極室間に一定の正差圧を維持するには、各液封脚部オーバーフローの高さを適正にするだけでよい。この差圧は、図に示すごとく、可撓性の膜12を陽極14から遠ざけ陰極16に近づける役を果し、更に膜を陰極面に対しても安全に保持することも可能とする。これは陽極と膜の接触防止に役立ち、且つ、膜の屈曲防止にも役立つものである。」(第3頁左欄第19?27行) III-4-2-1G.引用例7(特開昭52-17372号公報)の記載 (G-1)「内部に陽極を有する陽極室枠の両面に隔膜と、その外側に中間室枠、更にその外側に隔膜を配し、これらを陽極室枠に固定した単位陽極室を陰極室プール内に着脱自在に取付けた隔膜法電解槽。」(特許請求の範囲) (G-2)「陰極23は、陽極室の最外側に設けられた陽イオン交換膜5の有効面全体にわたつて存在していればよい。陰極23の形状は図示の如くカゴ型であつても、また単なる板状体であつてもよく、その材質は鉄,ステンレス等適宜公知の陰極材料を用いる事が出来る。 又、陽極2の形状は図示の如くカゴ型であつても、又単なる板状体であってもよく、その材質は例えばチタン母材に白金属金属やその酸化物を適宜被覆せしめた所謂耐食電極を用いるのが好ましいが、黒鉛を用いる事も勿論可能である。」(第3頁左上欄第1?12行) III-4-2-1H.引用例8(特開昭52-65182号公報)の記載 (H-1)「槽又は室を強酸性カチオン交換膜と強塩基性アニオン交換膜によつて陰極板を有する陰極室、中間室、陽極板を有する陽極室の三室に区分し、直流電解することにより該中間室に導入した被処理電解液中のカチオンとアニオンとを、それぞれ陰極室と陽極室に透析せしめて分別回収することを特徴とするイオン交換膜電解による分別回収法。」(特許請求の範囲第1項) III-4-2-1J.引用例9(特開昭52-111900号公報)の記載 (J-1)「(2)陽イオン交換膜にて分離された陽極室と陰極室、又は隔膜若しくは陽イオン交換膜で陽極室と中間室とを分離し、陽イオン交換膜にて中間室と陰極室とを分離したアルカリ金属塩化物水溶液の電解槽において、陰極と陽イオン交換膜との間に、湿潤性又は浸透性隔膜を設け、陰極と陽イオン交換膜とが該隔膜によつて隔離されていることを特徴とする電解槽。」(特許請求の範囲第2項) III-4-2-1K.引用例10(特開昭62-27584号公報)の記載 (K-1)「本発明は、隔膜法電解に用いる電解用電極に関し、特にイオン交換膜等の隔膜に電極を近接して配置し、電極にガスを発生させる電解法に好適な電解用電極に関する。」(第1頁右下欄第6?9行) (K-2)「食塩水の電解に於いては、陽極に塩素、陰極に水素の各ガスが発生し、且つ陰極室には苛性ソーダが生成する。その際、電極をイオン交換膜に近接させると電解電圧の低下を図ることが出来るが電解液の流通や発生ガスの除去に問題が生ずる。 そのため、従来から電極として第3図に示すようなエキスパンドメタルや第4図に示すような打抜多孔板(パンチドメタル)等の多孔性板状体を用いている。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第5行) III-4-2-2.対比、検討 III-4-2-2-1.訂正発明1 引用例1には塩素溶液製造装置に関する一つの纏まりのある技術思想が記載されており、その具体的な構成につき検討する。 引用例1の前記(A-1)及び(A-3)と第2図の記載によれば、引用例1には、 「陽極と陰イオン交換膜に挟まれた陽極室と、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜に挟まれた食塩室と、陽イオン交換膜と陰極に挟まれた陰極室とを備えた電解槽と、前記食塩室に接続した食塩水貯槽と、水道栓から分岐して1つを別経路とし1つは陽極室を通過し1つは陰極室を通過して三者が合一する通水路と、陽極と陰極との間に加印する直流電源とを有する塩素溶液製造装置」が記載され、そして、前記摘示(A-6)と第2図の記載及びこの分野の技術常識によれば、上記陽極室では電気分解によって塩素Cl2が溶解した水が生成され、上記陰極室では電気分解によって少なくとも水酸化ナトリウムNaOHが溶解した水が生成されることは明白なことである。 以上のことから、引用例1には、 「陽極と陰イオン交換膜に挟まれた陽極室と、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜に挟まれた食塩室と、陽イオン交換膜と陰極に挟まれた陰極室とを備えた電解槽と、陽極と陰極との間に加印する直流電源と、前記食塩室に接続した食塩水貯槽と、水道栓から分岐して1つを別経路とし1つは陽極室を通過し1つは陰極室を通過する通水路とを有し、上記陽極室では電気分解によって塩素Cl2が溶解した水が生成され、上記陰極室では電気分解によって水酸化ナトリウムNaOHが溶解した水が生成されることを基本構成とする、塩素溶液製造装置」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用発明1」という)が記載されているといえる。 そこで、訂正発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の塩素溶液製造装置では、必要に応じてその第2図の記載を参照すれば、その陽極室では電気分解によって塩素Cl2を溶解した水が生成し、上記陰極室では電気分解によって水酸化ナトリウムNaOHを溶解した水を生成し、それら水がそれぞれ室外に流出するものであり、かつ、食塩水槽からの食塩水と水道栓からの水道水が塩素溶液製造装置に流入するものであり、このように、当該「塩素溶液製造装置」は、電解水を製造し、水又は水溶液を流入ないしは流出させるものであり、訂正発明1の「流水式電解水製造装置」に相当する。 そして、引用発明1の「電解槽」、「食塩室」、「陽極室」、「陰極室」、「陰イオン交換膜」、「陽イオン交換膜」、「陽極」及び「陰極」は、訂正発明1の「電解槽」、「塩水室」、「陽極室」、「陰極室」、「隔膜」、「隔膜」、「陽極」及び「陰極」にそれぞれ相当し、引用発明1の「直流電源」、「食塩水貯槽」は、本件発明1の「直流電源」、「塩水タンク」にそれぞれ相当する。 次いで、引用発明1の電解槽では、その前記(A-3)と第2図の記載によれば、その電解槽は、陽極及び陰極とフレームからなる囲いの内部に形成されているものであり、かつ、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とは離間して設けられるものであって、その電解槽は、訂正発明1と同じように、陽極及び陰極とフレームからなる囲い(訂正発明1の「ケーシング」に相当)の内部に、離間して設けた陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の間に食塩室を形成し、同食塩室の両側に陽極室及び陰極室を分離形成するものであるということができる。 次に、引用発明1では、陽極室が陽極と陰イオン交換膜に挟まれて形成され、また、陰極室が陽イオン交換膜と陰極に挟まれたて形成されているので、当該陽極及び陰極は、少なくともその一部が、訂正発明1と同じように、陽極室及び陰極室に配設されているということができる。 次に、引用発明1の食塩水貯槽は、訂正発明1と同じように、電解される食塩水を貯えるものであり、また、その(A-5)と第2図の記載によれば、電解槽の食塩室に食塩水を導入するものであって、そのための食塩水供給水路(訂正発明1の「塩水導入管」に相当)を具備することは明白である。 次に、引用発明1の塩素溶液製造装置では、必要に応じてその第2図の記載を参照すると、水道栓から分岐して1つを別経路とし1つは陽極室を通過し1つは陰極室を通過するところの通水路とを有するのであるから、訂正発明1と同じように、陽極室と陰極室内に水道栓からの水道水(訂正発明1の「新たな原水」に相当)をそれぞれ継続的に導入する導入側の通水路(本件発明1の「原水導入管」に相当)を具備するものである。また、同じく、引用発明1の塩素溶液製造装置では、上記通水路を有し、更に、その陽極室では電気分解によって塩素Cl2が溶解した水を生成させ、上記陰極室では電気分解によって水酸化ナトリウムNaOHが溶解した水を生成させるものであるから、訂正発明1と同じように、陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された塩素が溶解された水(訂正発明1の「酸性水」に相当)を継続的に導出する導出側の通水路(訂正発明1の「酸性水導出管」に相当)と、前記陰極室内にて電気分解によって生成された水酸化ナトリウムが溶解された水(訂正発明1の「アルカリ水」に相当)を継続的に導出する導出側の通水路(訂正発明1の「アルカリ水取り出し管」に相当)を具備するということができる。 よって、両者は、 「ケーシングの内部に離間して設けた一対の隔膜の間に塩水室を形成し同塩水室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽と、前記陽極と陰極に直流電流を供給する直流電源と、電解される塩水を貯える塩水タンクと、前記電解槽の塩水室に前記塩水タンクに貯えた塩水を導入する塩水導入管と、前記陽極室と陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管と、前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水導出管と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取り出し管を備えてなる流水式電解水製造装置」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点1】該塩水タンクが、訂正発明1では、「循環塩水タンク」(下記相違点の記載を含め全3箇所)であるとの構成を具備するのに対して、引用発明1ではそのことが示されず、当該構成を具備しない点 【相違点2】該流水式電解水製造装置において、訂正発明1では、「前記塩水室から未電解の塩水を前記循環塩水タンクに還流させる塩水導出管と、前記塩水導入管又は塩水導出管に介在して塩水を循環させる循環ポンプと、」を備えたとの構成を具備するのに対して、引用発明1ではそのことが示されず、当該構成を具備しない点 【相違点3】該陽極と陰極が、訂正発明では、「液体の通過が自由な」ものであるとの構成を具備するのに対して、引用発明1ではそのことが示されず、当該構成を具備しない点 【相違点4】該流水式電解水製造装置において、訂正発明1では、「前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたこと」との構成を具備するのに対して、引用発明1ではそのことが示されず、当該構成を具備しない点 以下、上記相違点に関する構成が容易に想到できるか否かにつき、相違点2、1、4の順で検討する。 【相違点2】及び【相違点1】について 訂正明細書の記載(段落0002、0003、0010及び請求項1の記載)によれば、従来の電解水製造装置では供給された食塩水は電解されたものと未電解のものが分離されることなく全てそのまま取り出されていたので大半の食塩が無駄に消費されるとの問題があったところ、訂正発明1では、上記相違点に係る構成を具備することにより、その余の構成と相まって、食塩が無駄に消費されることのない電解水製造装置を提供することができ、これにより、上記問題を解決できたというものである。 これに対して、引用発明1では、その前記(A-1)、(A-2)及び(A-7)とその第4図の記載によれば、頂部が開口し底部に食塩貯留スペースを有する食塩水貯槽を設け、食塩水の比重差により、濃厚な食塩水を食塩水貯槽から電解槽の食塩室へ流入させ、また、濃度の稀薄な食塩水(本件発明1の「未電解の塩水」に相当)を食塩室から食塩水貯槽へ返すところの態様をその発明の一態様として含み、このように、食塩水を食塩室から食塩水貯槽に環流させ、食塩水貯槽と食塩室との間で食塩水を循環させることを許容するものである。 そして、引用発明2では、その前記(B-1)及び(B-6)の記載によれば、食塩水の陽極液を電解する方法において、「食塩水を食塩水槽22から導管23を経て陽極液室に供給され、電解された塩素ガスは陽極液室から出口導管24を経て除去され、そして費消された食塩水は導管25を経て取出されそして食塩水槽22に還付される」と、食塩水を陽極液室から食塩水槽に環流させ、食塩水槽と陽極液室との間で食塩水を循環させることが示され、かつ、その環流及び循環手段として、そのFig.1では、還付及び循環のための導管を設け、その導管にポンプ手段を設けることが示される。 また、引用例5では、その前記(E-1)及び(E-2)の記載によれば、1対の電極間に、双極膜、陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜をクランプした電解槽を利用するNaClの電解方法において、「タンク14からのNaCl塩溶液はタンク14からスタック10の陰イオン膜と陽イオン膜との間に規定される室中へ塩循環ポンプ27によりライン24およびライン26を経て連続的に循環される。スタック10の陰イオン膜と陽イオン膜との間に規定された室から部分脱塩した塩溶液がライン28を経てタンク14中へ循環して戻される」と、NaCl溶液をスタックからタンクに環流させ、タンクとスタックとの間でNaCl溶液を循環させることが示され、かつ、その循環手段として、そのFig.2では、戻り又は循環のためのラインを設け、循環ラインに塩循環ポンプ27を設けることが示される。なお、この場合、引用例2に記載される「陽極液室」及び「食塩水槽」は、引用発明1の「食塩室」及び「食塩水貯槽」にそれぞれ対応し、引用例5に記載される「スタックにおける陰イオン膜と陽イオン膜との間に規定される室」及び「タンク14」は、引用発明1の「食塩室」及び「食塩水貯槽」にそれぞれ対応する。 このように、引用発明1が属する食塩水(ないしはNaCl溶液)の電解(ないしは分離)分野においては、上記引用例2及び引用例5で示されるように、原料となる食塩水を電解領域に供給した後に、未処理食塩を含む溶液(費消された又は部分脱塩された食塩水)を貯留領域に環流させ、かつ、その溶液を循環させるために、環流及び循環のための流路を設け、かつ、環流及び循環のためのポンプ手段をその流路に設けることは、公知ないしは周知・慣用の事項となっている。 そうであれば、引用発明1において、上記食塩室からの未電解の食塩を含む水を前記食塩水貯槽に還流させ、食塩水を食塩室と食塩水貯槽の間を循環させることとなし、その場合に、その環流及び循環のために食塩室と食塩水貯槽の間に食塩水導出水路を設け、その系に環流及び循環のために循環ポンプを設けてみることは当業者であれば直ちになし得ることに過ぎず、また、その際に、循環ポンプを前記食塩水供給水路又は食塩水導出水路に設けて食塩水を循環させる程度のことは設計事項に外ならないものである。 以上のとおり、引用発明1に、「前記食塩室から未電解の食塩水を前記食塩水貯槽に還流させる食塩水導出水路と、前記食塩水供給水路又は食塩水導出水路に介在して食塩水を循環させる循環ポンプと」を具備するようにすることは当業者が容易に想到できるものである。この場合、上記「食塩水導出水路」及び「食塩水供給水路」は訂正発明1の「塩水導出管」及び「塩水導入管」にそれぞれ相当する。 更に、上記のとおり食塩水導出水路及び循環ポンプを設けた場合には、引用発明1の食塩水貯槽は、必然的に、循環機能を具備する循環食塩水貯槽に至るものである。この場合、上記「循環食塩水貯槽」は訂正発明1の「循環塩水タンク」に相当する。 そして、引用発明1において、以上の相違点1及び2に係る構成を具備することにより、未電解の食塩は食塩水貯槽(循環食塩水貯槽)と食塩室(塩水室)の間を循環して繰り返し使用されることから、食塩が無駄なく消費されることは極めて容易に予測できるものであり、その場合の効果は顕著なものではない。 してみれば、引用発明1において、上記相違点1及び2に関する構成を具備するようにすることは当業者が容易に想到できるものである。 【相違点4】について 訂正明細書の記載(段落0002、0004、0011及び請求項1の記載)によれば、従来の電解水製造装置では隔膜は陽極室及び陰極室内の流れや水圧変動等による力を直接受けるので破損の虞があり、これを防止するために隔膜を横切る複数の補強リブを設けているので、この補強リブの分だけ隔膜の有効面積が低下して電解水の製造能力が低下するという問題があったところ、訂正発明では、「ケーシングの内部に離間して設けた一対の隔膜の間に塩水室を形成し同塩水室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽」において、上記相違点4に係る構成を採択することにより、すなわち、「前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにした」との構成を採択することにより、その余の構成と相まって、各隔膜に加わる力が陽極及び陰極により受け止められるので、隔膜に補強のためのリブ等を設ける必要がなくなり、また、隔膜の有効面積の低下による電解水製造能力の低下がなくなるようにすることができ、これにより、上記問題を解決することができたというものである。 一方、引用発明1では、その電極である陽極と陰極は陽イオン交換膜(隔膜)又は陰イオン交換膜(隔膜)とでそれぞれ陽極室及び陰極室を形成するものであって、そもそも、電極を前記各イオン交換膜の背面に隣接して配置するものではなく、また、そのようにする動機付けもない。 そうであれば、引用発明1において、電極を前記各イオン交換膜の背面に隣接して配置する構成を前提とする当該相違点4に係る構成を具備するようにすることが、当業者といえども容易に想到することはできない。 以下、当該相違点4につき、引用例2?10の記載を順次みる。 引用例2には、その前記(B-1)?(B-5)によれば、陽極室、陰極室及び緩衝室を形成する少なくとも二つのイオン移送性隔膜によって分離されている陽極と陰極との間で水性アルカリ金属ハロゲン化物陽極液を電解する電解槽が記載され、そして、その電解槽において、緩衝室に加圧された水性供給物を導入して緩衝室と他の陽極室及び陰極室との間に正の圧力差を保持せしめ、それによつて該隔膜を外側へ押圧しかつ電気化学的に活性な結合電極と電子電流導体構造体との間に緊密な接触を保持せしめることが記載される。 これによれば、引用例2に記載の発明では、その電解槽内で訂正発明1と同じように陽極室、陰極室及び緩衝室(塩水室に対応)の3室を有し、緩衝室と他の陽極室及び陰極室との間に正の圧力差を保持せしめるものであるといえるとしても、その(B-1)によれば、その電極は、隔膜と一体化された電極-隔膜を形成することを前提とするものであって、訂正発明のように電極を隔膜の背面に隣接して配置するものではなく、したがって、その緩衝室に生じる正の圧力差により隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるものではなく、また、そのようにする動機付けもないものである。 引用例3には、その前記(C-1)及び(C-4)によれば、実質的に水平に張設された陽イオン交換膜の上部に陽極室を、下部に陰極室をそれぞれ備えてなり、陽極室及び陰極室にそれぞれ陽極及び陰極板を有する水平型電解槽において、陰極室に循環供給している陰極液の出口にバルブを設け、該バルブを絞ることにより陽イオン交換膜の陰極側全面に圧力をかけて、陽イオン交換膜の実質的に電解に係わつている面を陽極に押し付けるようにし乍ら電解することにより、△Pの変動による膜の振動を効果的に防止する電解方法が記載される。 これによれば、引用例3に記載の発明では、陽イオン交換膜(隔膜)の上部に陽極室を、下部に陰極室をそれぞれ備えてなる水平型電解槽において、△Pの変動による膜の振動を効果的に防止するうえで、当該陽イオン交換膜(隔膜)を、陰極液の水圧により、陰極室の陰極板から遠ざけ、陽極室の陽極に押しつけることが実質上示されているといえる。 しかし、引用例3に記載される発明は、膜の振動を効果的に防止するうえで、単一の陽イオン交換膜と陽極を有する陽極室と陰極を有する陰極室との関係につき教示するだけであって、訂正発明の如く一対の隔膜と塩水室と陽極を有する陽極室及び陰極を有する陰極室との関係についてまで具体的に示唆ないしは教示するものではなく、したがって、引用例3に記載の発明をみても又は引用発明1に組み合わせてみても、そこから、陽極及び陰極の電極を各隔膜に隣接して配置すること、そして、陽極室及び陰極室以外の第三の室である食塩室(ないしは塩水室)に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにするところの構成を含む当該相違点4に係る構成が容易に導き出せるものではない。 引用例4には、その前記(D-1)?(D-3)によれば、イオン交換膜によって仕切られた室と、循環系と、陰極と、水素含有ガスが供給され、水素ガス室を形成する水素減極陽極構造体とからなる少なくとも一つの単位電解セルからなる電解槽において、前記水素減極陽極構造体を構成するところのカチオン交換膜と、同多孔性かつ柔軟性の電極触媒シ-トと、同前記電極触媒シ-トと、同剛性の金属スクリ-ンを含む給電体とを、電解液による圧力によって共に接触せしめることが記載される。 これによれば、引用例4に記載の発明では、電解液の水圧により、カチオン交換膜(隔膜)と、多孔性かつ柔軟性の電極触媒シ-ト(陽極)と給電体とを接触させることが示されているといえるものの、ここでの陽極である電極触媒シ-トは柔軟性の材質からなる一方、上記給電体が剛性部材を含むことからみて明らかなとおり、上記カチオン交換膜を受け止めるのは、当該電極触媒シ-トではなく、給電部材に外ならないものである。 してみれば、引用例4の記載からは、水圧により隔膜が、電極に、押し付けられて受け止められるようにしたとの構成は導き出すことができない。 そもそも、引用例4に記載される発明は、前記(D-4)によれば、その陽極は水素ガスをイオン化する役割を担い、その陽極が塩素ガス等を生成するところの引用発明1又は訂正発明の場合とはその作用が基本的に異なり、したがって、引用例4に記載される発明を引用発明1に適用しようとすること自体が当業者といえども容易に着想できるものではない。 引用例5には、その前記(E-1)により、双極膜、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を含む電気透析スタックが記載されているものの、当該相違点4につき教示するものは何もない。 引用例6には、その前記(F-1)?(F-3)により、陽極側の極く近辺に比較的高濃度の次亜塩素酸アルカリが局部的に生成することから、陽イオン選択透過膜(隔膜)を陰極に近く陽極から離れて配置するとの観点から、陽極室の圧力を陰極室の圧力よりも高く維持することが記載されるだけであり、したがって、陰極と陽極の双方に隣接して隔膜を配置すること、更に、水圧により各隔膜が各電極に押し付けられて受け止められるようにすることがそこでの記載から導き出せるものではなく、したがって、引用例6では当該相違点4につき教示するものは何もない。 引用例7には、その前記(G-1)により、内部に陽極を有する陽極室枠の両面に隔膜と、その外側に中間室枠、更にその外側に隔膜を配し、これらを陽極室枠に固定した単位陽極室を陰極室プール内に着脱自在に取付けた隔膜法電解槽が記載され、また、前記(G-2)により、陰極は、陽極室の最外側に設けられた陽イオン交換膜の有効面全体にわたつて存在していればよいこと、前記(G-2)により、陽極及び陰極は板状体であって良いことが記載される。 これによれば、引用例7に記載の発明では、「離間して設けた一対の隔膜の間に中間室(塩水室)を形成し同中間室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽であって、前記陽極及び陰極として、離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に配置した電解槽」が示されているといえるものの、そこで開示されるものはそれ以上のものはなく、そこでは、隔膜が陽極室及び陰極室内の流れや水圧変動等による力を受けることにつき配慮するものでないことはもとより、陽極及び陰極と各隔膜との距離、並びに、水又は電解液の圧力について着目するものはなく、したがって、引用例7に記載の発明からは、陽極及び陰極の電極を隔膜に隣接して配置すること、そして、中間室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにすることについては示唆ないしは教示されるものは何もない。 引用例8では、その前記(H-1)によれば、強酸性カチオン交換膜(隔膜)と強塩基性アニオン交換膜(隔膜)によって、陰極板を有する陰極室、中間室、陽極板を有する陽極室の三室に区分した電解槽について記載され、また、引用例9では、その前記(J-1)によれば、隔膜若しくは陽イオン交換膜で陽極室と中間室とを分離し、陽イオン交換膜(隔膜)にて中間室と陰極室とを分離した三室からなるアルカリ金属塩化物水溶液の電解槽について記載されるものの、これら引用例8及び9では、電極を隔膜に隣接して配置し、そして、中間室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにすることにつき、示唆ないしは教示されるものは何もない。 引用例10には、隔膜法電解に用いる電解用電極に関する記載があるだけであり、当該相違点4に関して示唆ないしは教示するものは何もない。 このように、引用例2?10に記載の発明では、「ケーシングの内部に離間して設けた一対の隔膜の間に塩水室を形成し同塩水室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽」において、陽極及び陰極の電極を隔膜に隣接して配置し、中間室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにすることにつき、示唆ないしは教示されず、また、引用例2?10に記載の発明を組み合わせてみても、上記相違点4に係る構成を容易に導き出すことができない。 そして、訂正発明1は、当該構成を具備することにより前記したとおり有用な効果を奏したものである。 そうであれば、引用発明1において、訂正発明1の上記相違点4に係る構成を具備するようにすることが当業者の容易に想到できるものではない。 以上のとおりであり、引用発明1において、上記相違点1及び2に係る構成を具備することは当業者が容易に想到することができるとしても、上記相違点4に係る構成を具備するようにすることは当業者が容易に想到することはできず、したがって、他の相違点3について検討するまでもなく、訂正発明1は、引用例1?10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とはいえない。 また、他に、訂正発明1につき、特許を受けることができないとする理由もない。 III-4-2-2-2.訂正発明7 訂正発明7は、そこでの請求項1を引用し、訂正発明1の構成を全て具備するものであり、上記のIII-4-2-2-1.で記載した理由と同じ理由により、引用例1?10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とはいえない。 また、他に、訂正発明7につき、特許を受けることができないとする理由もない。 III-4-2-3.独立特許要件の結論 そうであれば、訂正発明1及び2は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではなく、特許法第126条第4項の規定を満たす。 IV.むすび 本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き及び同条第3項?5項の規定に適合する よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電解水製造装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ケーシングの内部に離間して設けた一対の隔膜の間に塩水室を形成し同塩水室の両側に陽極室と陰極室を分離形成して、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極と陰極をそれぞれ配設した電解槽と、前記陽極と陰極に直流電流を供給する直流電源と、電解される塩水を貯える循環塩水タンクと、前記電解槽の塩水室に前記循環塩水タンクに貯えた塩水を導入する塩水導入管と、前記塩水室から未電解の塩水を前記循環塩水タンクに還流させる塩水導出管と、前記塩水導入管又は塩水導出管に介在して塩水を循環させる循環ポンプと、前記陽極室と陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管と、前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水導出管と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取り出し管を備えた流水式電解水製造装置において、 前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほぼ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたことを特徴とする流水式電解水製造装置。 【請求項2】削除 【請求項3】削除 【請求項4】削除 【請求項5】削除 【請求項6】削除 【請求項7】前記循環塩水タンクに濃塩水を供給する濃塩水タンクと、前記循環塩水タンク内に貯えられる塩水の濃度を検出する濃度計を設けて、前記循環塩水タンク内の塩水の濃度が低下したとき前記濃度計の検出値に基づいて前記濃塩水タンクから濃塩水を前記循環塩水タンクに補給して同循環塩水タンク内の塩水の濃度を所定範囲内に保持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流水式電解水製造装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、生鮮食品の洗浄及び殺菌、冷凍魚肉の解凍などの食品処理や、お絞りの洗浄用、手洗い用などに使用する電解水の製造装置に関する。 【0002】 【従来の技術】この種の電解水の製造装置においては、例えば図3に示したように、中間部に隔膜2を挟んで配設したスペーサ2aの両側に、板状の陽極3、陰極4及びケーシング1a,1bを当接固定して本体を形成し、この本体内に隔膜2により仕切られて形成した陽極室及び陰極室内に希釈食塩水タンク5内の食塩水を供給管7を通してポンプ6により送り込み、電気分解により陽極室及び陰極室内にて生成された各電解水を酸性水取出し管8a及びアルカリ性水取出し管8bにより取り出して所望の用途に応じて使用している。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来の電解水製造装置においては、供給された食塩水は電解されたものと未電解のものが分離されることなく全てそのまま取り出されていたので大半の食塩が無駄に消費されるという問題があった。このような食塩の無駄な消費をなるべく少なくするために、通常は0.1パーセント程度の希薄な食塩水を使用しているので食塩水の伝導度が低く、このため所定の電解を行うための消費電力が増大するという問題もあった。 【0004】 また、隔膜2は陽極室及び陰極室内の流れや水圧変動等による力を直接受けるので破損のおそれがあり、これを防止するために隔膜2を横切る複数の補強リブを設けているので、この補強リブの分だけ隔膜2の有効面積が低下して電解水の製造能力が低下するという問題があった。 【0005】 【0006】 【問題を解決するための手段】本発明は、上記の問題を解消するため、図1及び図2に示したように、ケーシング10の内部に離間して設けた一対の隔膜11,13の間に塩水室Bを形成し同塩水室の両側に陽極室Aと陰極室Cを分離形成して、これら陽極室と陰極室内に液体の通過が自由な陽極15と陰極16をそれぞれ配設した電解槽と、前記陽極と陰極に直流電流を供給する直流電源17と,電解される塩水を貯える循環塩水タンク20と,前記電解槽の塩水室Bに前記循環塩水タンク20に貯えた塩水を導入する塩水導入管21と、前記塩水室Bから未電解の塩水を前記循環塩水タンク20に還流させる塩水導出管22と、前記塩水導入管又は塩水導出管に介在して塩水を循環させる循環ポンプ23と、前記陽極室と前記陰極室内に新たな原水をそれぞれ継続的に導入する原水導入管25a,25bと,前記陽極室から同陽極室内にて電気分解によって生成された酸性水を継続的に導出する酸性水取出し管26と、前記陰極室内にて電気分解によって生成されたアルカリ水を継続的に導出するアルカリ水取出し管27を備えた流水式電解水製造装置において、前記陽極及び陰極として、前記ケーシングの内部に離間して位置決め固定した平板状の電極を採用し、これら平板状の電極を前記各隔膜の背面に同隔膜のほゞ全面積に隣接して配置し、前記塩水室に生じる水圧により前記各隔膜が前記平板状の各電極に押し付けられて受け止められるようにしたことを特徴とする流水式電解水製造装置を提供するものである。 【0007】 本発明の実施にあたって、前記陽極15及び陰極16は全体として板状をなし対応する前記隔膜11,13のほゞ全面積にわたり各隔膜11,13に隣接して前記ケーシング10に固定して設け、前記塩水導出管に絞りを設けて前記塩水室B内の水圧が前記各陽極室A及び陰極室C内の水圧よりも高くなるよう設定することが望ましい。 【0008】 【作用】 上記した本発明の電解水製造装置において、陽極15及び陰極16に直流電源17より電解用電力が供給されれば、塩水室B内の塩水中の陰イオンは隔膜11を通って陽極室A内に入り陽極15に接触して電価を失い、その付近の水に溶解してこれを酸性とし、この酸性水は陽極15を通り抜けて陽極室A内に広がる。また、塩水室B内の塩水中の陽イオンは隔膜13を通って陰極室C内に入り陰極16に接触して電価を失い、その付近の水に溶解してこれをアルカリ性とし、このアルカリ性水は陰極16を通り抜けて陰極室C内に広がる。塩水室B内の電解されなかった塩水は隔膜11,13に遮られて陽極室Aまたは陰極室C内に入ることはほとんどなく、塩水導入管21、塩水導出管22及び循環ポンプ23により塩水室Bと循環塩水タンク20の間を循環して繰り返し使用される。電解水の原水は2本の原水導入管25a,25bにより陽極室A及び陰極室C内に導入され、上述したように塩水室B内の塩水がほとんど混入されることなく陽極室A及び陰極室C内で酸性水及びアルカリ性水となり、酸性水取出し管26及びアルカリ性水取出し管27より取り出される。 【0009】 上記の電解水製造装置において、塩水室B内の水圧が陽極室A及び陰極室C内の水圧よりも高くなるように設定した場合には、その水圧の差により各隔膜11,13はそのほゞ全面積にわたり接近して設けた陽極15及び陰極16に押し付けられ、各隔膜11,13に加わる力は陽極15及び陰極16により受け止められる。 【0010】 【発明の効果】 上述したように、本発明によれば、未電解の塩水は陽極室または陰極室内に入ることなく、塩水室と循環塩水タンクの間を循環して繰り返し使用されるので、塩が無駄に消費されることがない。また、このような塩の無駄な消費がないので濃度の高い塩水を使用することができ、これにより塩水の伝導度が高まるので、必要な量の電解を行うための消費電力が減少する。 【0011】 また、前記陽極15及び陰極16が全体として板状をなし対応する前記隔膜11,13のほゞ全面積にわたり各隔膜11,13に隣接して前記ケーシング10に固定して設けられた場合には、各隔膜に加わる力は陽極及び陰極により受け止められるので、隔膜に補強のためのリブ等を設ける必要がなくなり、従って隔膜の有効面積の低下による電解水製造能力の低下がなくなる。 【0012】 【実施例】 以下に図1及び図2に示す実施例により、本発明の説明をする。図1及び図2に示すように、主要部が絶縁材よりなるケーシング10の内部は、互いに平行に設けられた2枚の隔膜11,13により仕切られて、両隔膜11,13の間の塩水室Bと、隔膜11とケーシング10の間の陽極室Aと、隔膜13とケーシング10の間の陰極室Cに分離される。実質的に同一構造の各隔膜11,13は例えばポリエチレン不織布を骨材とするポリフッカビニリデン酸化チタンよりなる半透膜で、その外周全縁は塩化ビニールよりなる枠状の隔膜保持体12,14が一体的に形成されて補強されている。隔膜11の陽極室A側には殆ど隙間なく隣接して陽極15が設けられ、隔膜13の陰極室C側には殆ど隙間なく隣接して陰極16が設けられている。各電極15,16は剛性のある平板状のメタルラスよりなり、ケーシング10に固定支持され、電解用の直流電源17に接続されている。各電極15,16はメタルラスに限らず液体の通過が自由なものであれば金網またはパンチドメタルあるいは棒状の素材を格子状に多数並べたものでもよく、その材質は例えばチタンあるいはチタンに白金コーティングを施したものである。 【0013】 主として図1に示すように、塩水室Bの底部と循環塩水タンク20の底部は循環ポンプ23を設けた塩水導入管21により連通され、塩水室Bの上部と循環塩水タンク20の上部は絞り24を設けた塩水導出管22により連通されている。循環塩水タンク20の上部には開閉弁32を備えた連通管31を介して飽和食塩水を収容する濃塩水タンク30が接続され、また開閉弁を備えた給水管(図示省略)が接続され、循環塩水タンク20内に設けた濃度計35により検出された食塩水濃度が所定範囲(例えば10?20%)を外れれば開閉弁32または給水管の開閉弁を開いて、循環塩水タンク20内の食塩水濃度を所定範囲に維持するようになっている。循環塩水タンク20にはその内部の濃度を均一化するための撹拌ポンプ34が設けられている。また濃塩水タンク30の上側には濃塩水タンク30に食塩を供給する食塩タンク33が設けられている。 【0014】 図1に示すように、水道管に接続されて制御弁28が設けられた原水供給管25は2つの原水導入管25a,25bに分岐され、各原水導入管25a,25bはそれぞれ陽極室A及び陰極室Cの底部に連通されている。陽極室A及び陰極室Cの上部にはそれぞれ酸性水取出し管26及びアルカリ性水取出し管27が連通されている。なお図1の説明図の寸法関係は図示の都合上現実のものとは異なっており、ケーシング10は循環塩水タンク20、濃塩水タンク30、食塩タンク33などに比して実際より大きく表示されている。 【0015】 次に上記実施例の作動の説明をする。この電解水製造装置の使用開始時には、先ず開閉弁32を及び給水管の開閉弁を開いて循環塩水タンク20に飽和食塩水及び水道水を供給すると同時に撹拌ポンプ34を作動させて循環塩水タンク20内部の濃度を均一にし、濃度計35により検出した食塩水濃度に基づき両開閉弁を制御して所定濃度範囲内とし、循環塩水タンク20内の水位が所定のレベルに達すれば両開閉弁を閉じる。次いで循環ポンプ23を作動させ循環塩水タンク20内の食塩水を塩水導入管21を介して塩水室B内に送り込み、塩水導出管22を介して循環塩水タンク20内に戻して食塩水を循環させる。続いて原水供給管25の制御弁28を開き、水道管からの原水を陽極室A及び陰極室C内に送り込み、酸性水取出し管26及びアルカリ性水取出し管27から排出させる。 【0016】 この状態で陽極15及び陰極16に直流電源17からの電解用電力を供給すれば、塩水室B内の食塩水中の塩素イオン(陰イオン)は隔膜11を通って陽極室A内に入り陽極15に接触して電価を失って塩素となる。この塩素の一部はそのまま陽極15付近の水中に溶解し、一部は水と反応して次亜塩素酸あるいは次亜塩素酸イオンを生じ、これらにより殺菌作用のある有効塩素濃度が与えられる。残る塩素の一部は塩酸となりあるいは塩素ガスとなって遊離される。これにより陽極15付近の水は酸性となり、これらの成分よりなる酸性水は液体の通過が自由な陽極15を通り抜けて陽極室A内に広がる。また塩水室B内の塩水中のナトリウムイオン(陽イオン)は隔膜13を通って陰極室C内に入り陰極16に接触して電価を失い、陰極16付近の水と反応して苛性ソーダ及び遊離水素を生じて陰極16付近の水をアルカリ性とする。アルカリ性となった水は液体の通過が自由な陰極16を通り抜けて陰極室C内に広がる。このようにして陽極室A及び陰極室C内にそれぞれ生成された酸性水及びアルカリ性水は、酸性水取出し管26及びアルカリ性水取出し管27から送り出され、それぞれの用途に使用される。 【0017】 塩水室B内の電解されなかった食塩水は隔膜11,13に遮られて陽極室Aまたは陰極室C内に入ることはほとんどなく、大部分は塩水導出管22より循環塩水タンク20内に戻され、循環ポンプ23により塩水導入管21より再び塩水室B内に送り込まれて繰り返し循環して使用される。従って未電解の食塩水が酸性水取出し管26及びアルカリ性水取出し管27から排出されることがほとんどないので食塩が無駄に消費されることがない。またこのように食塩の無駄な消費がないので濃度の高い食塩水を使用することができ、これにより食塩水の伝導度が高まるので、必要な量の電解を行うための消費電力が減少する。 【0018】 循環ポンプ23により循環塩水タンク20内の食塩水を塩水室Bを通して循環させた状態では、塩水導出管22に設けた絞り24の程度により塩水室B内の水圧が上昇し、この絞り24を適当に設定することにより塩水室B内の水圧が陽極室A及び陰極室C内の水圧よりも高くなるように設定する。この水圧の差により各隔膜11,13はそのほゞ全面積にわたり隣接して設けた陽極15及び陰極16に押し付け保持され、各隔膜11,13に加わる力は陽極15及び陰極16により受け止められる。従って各隔膜11,13はそれに加わる力を受け止める必要がないので、各隔膜11,13を横切って補強リブを設ける必要がなくなり、隔膜の有効面積の低下による電解水製造能力の低下がなくなる。 【0019】 電解水の製造により塩水室B及び循環塩水タンク20内の食塩が消費されて食塩水の濃度が低下すれば、濃度計35はこれを検知して開閉弁32を開き、食塩水の濃度を所定範囲内に保持する。これにより循環塩水タンク20内の水位は上昇し、所定の水位を越えた分はオーバフローパイプ(図示省略)より排出される。また、浸透圧の差により陽極室A及び陰極室C内の水は隔膜11,13を通って塩水室B内に流入し、これによっても循環塩水タンク20内の水位は上昇するが、この場合も所定の水位を越えた分はオーバフローパイプより排出される。なお、浸透圧の差による陽極室A及び陰極室Cから塩水室B内への流入は、前述のように塩水室B側の水圧を高めることにより抑制される。 【0020】 上述のようにして製造される食品処理に使用する酸性水のpH、有効塩素濃度、酸化還元電位(ORP)などの値は、制御弁28により陽極室A内を通る水の流量を調節することにより制御することができる。これらの値は、陽極15の組成、直流電源17による印加電圧、食塩水の濃度及び温度などによっても制御することができる。 【0021】 なお上記実施例では塩水導出管22に絞り24を設けて塩水室B内の水圧を高めているが、循環塩水タンク20をケーシング10よりも高い位置として塩水室B内の水圧を高めてもよい。また上記実施例では完全に分離した2枚の隔膜11,13を使用したが、筒状とした1枚の隔膜の互いに向かい合う部分をある幅にわたりケーシング10の対向する内面に取り付け、ケーシング10内に張り渡される隔膜の2部分によりケーシング10の内部を中央の塩水室Bとその両側の陽極室A及び陰極室Cに分離するようにしてもよい。また、上記実施例は被電解溶液として食塩水を使用した場合につき説明したが、本発明はその他の塩の溶液を被電解溶液として使用する場合にも適用することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による電解水製造装置の一実施例の全体説明図である。 【図2】図1に示す実施例のケーシング及びその内部構造を主として示す横断面図である。 【図3】従来技術による電解水製造装置の一例の説明図である。 【符号の説明】 10…ケーシング、11,13…隔膜、15…陽極、16…陰極、17…直流電源、20…循環塩水タンク、21…塩水導入管、22…塩水導出管、23…循環ポンプ、25a,25b…原水導入管、26…酸性水取出し管、27…アルカリ性水取出し管、A…陽極室、B…塩水室、C…陰極室。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2007-08-31 |
出願番号 | 特願平5-301723 |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Y
(C02F)
P 1 41・ 121- Y (C02F) P 1 41・ 855- Y (C02F) P 1 41・ 856- Y (C02F) P 1 41・ 842- Y (C02F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 幹 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
廣野 知子 板橋 一隆 |
登録日 | 2003-12-05 |
登録番号 | 特許第3500173号(P3500173) |
発明の名称 | 電解水製造装置 |
代理人 | 長谷 照一 |
代理人 | 長谷 照一 |