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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1164386
審判番号 不服2004-19399  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-17 
確定日 2007-09-14 
事件の表示 特願2000-336772「教材用記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-139982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成12年11月2日の出願であって、平成16年8月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成16年9月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

(1)補正の内容

本件補正により、本件補正前の平成16年6月25日付け手続補正書により補正された請求項1が、
「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて録画されているとともに、教師による問題Aの解説が録音されていることを特徴とする教材用記録媒体。」から

「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて録画されているとともに、教師による問題Aの解説が録音されており、書画カメラ4によって原稿用紙6の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してあることを特徴とする教材用記録媒体。」

と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された教材用記録媒体を、「書画カメラ4によって原稿用紙6の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してある」と限定したものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件について(その1)

以下、本願補正発明は、特許法第2条にいう発明に相当するか否かについて検討する。

特許法は、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義し(特許法第2条第1項)、また、「産業上利用することができる発明」に対して、所定の要件を充足した場合に、特許を受けることができると規定する(同法第29条第1項)。
したがって、たとえ技術的思想の創作であったとしても、その思想が、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めを利用したものである場合には特許を受けることができない。この点は、技術的思想の創作中に、自然法則を利用した部分が全く含まれない場合はいうまでもないが、仮に、自然法則を利用した部分が含まれていても、ごく些細な部分のみに含まれているだけで、技術的な意味を持たないような場合も、同様に、特許を受けることができないというべきである。
そこで、本願補正発明について検討する。

本願補正発明の「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて録画されている」、「書画カメラ4によって原稿用紙6の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してある」は、いずれも撮像情報の内容を規定し、「教師による問題Aの解説が録音され」は録音情報の内容を規定するものである。また本願補正発明の「教材用」も記録媒体の内容を規定したものである。
つまり、本願補正発明は、特定内容の撮像情報と、特定内容の録音情報が記録された記録媒体であると認める。

撮像情報と、録音情報が記録された記録媒体は、例えばビデオテープに示されるように公知であって、本願補正発明の撮像情報と録音情報(ただし、いずれも情報内容は別として)と変わりはない。
本願補正発明の創作的特徴は、「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて」録画され、「書画カメラ4によって原稿用紙6の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してある」撮像情報の内容と、「教師による問題Aの解説」が録音された録音情報の内容のみにあって、教育活動に供する情報の内容そのものに特徴を有するといえる。

上記のように本願補正発明の特徴的部分は、教育活動に供する情報の内容そのものであり、どのような情報をどのように表現するかは、人間の精神活動そのものであって、自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。

本願補正発明は「記録媒体」に関するものであり、書画カメラ、記憶媒体そのものは自然法則を利用した技術により創作されたものということができる。しかし、本願補正発明はそれら技術自体の創作や改良ではないことは明らかである。創作的部分に自然法則が利用されておらず、単に既存の自然法則を利用した技術により創作されたものが一部利用されているだけにすぎない。

また、「特許・実用新案審査基準」には、「第II部 第1章 産業上利用することができる発明 1.1「発明」に該当しないものの類型 (5) 技術的思想でないもの」において、「情報の単なる提示(提示される情報の内容にのみ特徴を有するもの)」として、音楽を録音したCDが例示されている。

本願補正発明も、特定の撮像情報と、特定の録音情報が記録された記録媒体であって、上記した「情報の単なる提示」に示された音楽を録音したCDと同様であるといえることから、上記した「特許・実用新案審査基準」に照らしても、本願補正発明は「技術的思想でないもの」であり、「発明」に該当しないのは明らかである。

よって、本願補正発明に記載された事項は、「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しない。

以上のとおり、本願請求項1に記載された事項は、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないから、同項の規定により特許をすることができない。

(3)独立特許要件について(その2)

上記に検討したように、本願補正発明は特許法にいう発明とはいえないものであるが、仮に本願補正発明が発明であるとの仮定に立った上で、新規性或いは進歩性を備えたものかについても検討する。

(3-1)引用文献

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前に頒布された特開昭57-177179号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が図示とともにある。

(a) 「ビデオカセットテープの上部より、音声トラック、映像信号トラック及びコントロールトラックが備えられた普通のビデオカセットテープを使用し、その映像信号トラックには教材表題名、学習単位(講義、問題提示、模範解答等)を順次繰返し幾組か録画すると共に、前記教材表題名の音声トラックにはビデオカセットテープレコーダーやフロツピーディスクの操作を出来るだけ省くために付加されたイニシャルローディングプログラムを格納せしめ、次の各項目の音声トラックには学習単位(講義、問題提示、模範解答等)に係る音声を録音してなることを特徴とする個別学習用ビデオカセットテープ。」(請求項1)

(b) 「次のテープ位置情報数値毎に必要数の学習単位(講義(ロ)、問題提示(ハ)、模範解答(ニ))を録画、録音すると共に、それぞれのテープ位置情報数値をインターフェースの現在位置カウンター表示数値として、更に模範解答(ニ)そのものを記憶させる。」(第2ページ右上欄第3?8行目)

(c) 第1図からは、個別学習用ビデオカセットテープに、教材表題名(イ)、学習単位講義(ロ)、問題(ハ)、模範解答(ニ)が順次繰返し録画されていることが看取できる。

この記載事項及び第1図を含む引用文献全体の記載によると、引用文献には、「講義(ロ)、問題提示(ハ)、模範解答(ニ)を録画、録音されている個別学習用ビデオカセットテープ」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-2)対比

本願発明と引用発明を対比する。

本願発明は「教材用記録媒体」として、具体的にビデオテープを使用することを想定しており(本願発明【0013】参照)、学習者個人が教材用記録媒体を用いて学習することが記載されているから(本願発明【0019】?【0021】参照)、引用発明に記載された「個別学習用ビデオカセットテープ」は本願発明の「教材用記録媒体」に相当する。
また、引用発明において、問題提示(ハ)、模範解答(ニ)の録画、録音された内容には、問題提示の部分において問題が提示され、模範解答の部分において問題の解方が示されているものと認められるから、引用発明においても、問題Aと、問題Aの解方Bとが録画されているとともに、問題Aの解説が録音されているものである。

したがって、本願発明と引用発明は、
「問題Aと、問題Aの解方Bとが録画されているとともに、問題Aの解説が録音されている教材用記録媒体。」
点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]本願補正発明が、問題Aに関係する情報Cが録画されているのに対し、引用発明は問題Aに関係する情報Cが録画されているかどうか不明な点。

[相違点2]本願補正発明が、問題等は原稿用紙に記載された状態で、書画カメラにより撮影され、原稿用紙の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してあるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

[相違点3]本願補正発明が教師により問題Aの解説が録音されているのに対し、引用発明は誰による録音解説なのか不明な点。

(3-3)判断

[相違点1]について検討する。
引用文献1には、問題Aと、問題Aの解方Bとが録画されており、問題Aに関する理解を深めるために、問題Aと、問題Aの解方Bに加えて、問題Aに関係する情報Cも録画するようにすることは望ましいことは明らかであるから、相違点1の構成とすることは、当業者が当然なし得る事項である。

[相違点2]について検討する。
引用文献1には、問題Aと、問題Aの解方Bとが録画されていることが記載されている。問題等を担持させる担持体として原稿用紙を使用することは、一般的に行われている。また、原稿用紙を録画する際に、書画カメラを使用することもまた一般的に行われている。したがって、問題等を担持させる担持体として原稿用紙を、撮像機器として書画カメラを選択することは、当業者が必要に応じ適宜設計する事項にすぎない。
また、強調して録画したい部分を中心に、原稿用紙の画像が大半を占めるように録画すること、教材の使用者の注意をひくために拡大やスクロールという強調して示す技法を使って撮影することのいずれも、重要部分の表現方法として通常行われる事項であって、これらの撮影技法を使って撮影することは当業者が必要に応じ適宜設計する事項と言わざるを得ない。

[相違点3]について検討する。
一般に教授を行う者は教師であると考えられるから、実質的に相違しておらず、仮に相違するとしても、教師により問題の解説を行い、録音するようにする点は、当業者が適宜設計する事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献に記載の発明から当業者が予測出来る範囲のものである。

以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、特許出願の際独立して特許をうけることができないものである。

(4)むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明の認定

本願補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月25日付手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定された次のとおりのものと認める。

「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて録画されているとともに、教師による問題Aの解説が録音されていることを特徴とする教材用記録媒体。」

(2)柱書きについて

以下、本願発明は、特許法第2条にいう発明に相当するか否かについて検討する。

本願発明の「問題Aと、問題Aの解方Bと、問題Aに関係する情報Cとを記載した原稿用紙6が書画カメラ4で撮影されて録画されている」は、撮像情報の内容を規定し、「教師による問題Aの解説が録音され」は録音情報の内容を規定するものである。また本願発明の「教材用」も記録媒体の内容を規定したものであるから、本願発明は、特定内容の撮像情報と、特定内容の録音情報が記録された記録媒体であると認める。
本願発明の創作的特徴は、録画された撮像情報の内容と、録音された録音情報の内容のみにあって、教育活動に供する情報の内容そのものに特徴を有するといえる。

前述したように、本願発明の特徴的部分は、教育活動に供する情報の内容そのものであり、どのような情報をどのように表現するかは、人間の精神活動そのものであって、自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。

したがって、本願発明の創作的特徴は情報の単なる提示にすぎず、本願発明は技術的思想でないから、「発明」に該当しない。

よって、本願発明に記載された事項は、「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しない。

(3)進歩性について

上記に検討したように、本願発明は特許法にいう発明とはいえないものであるが、仮に本願発明が発明であるとの仮定に立った上で、新規性或いは進歩性を備えたものかについても検討する。

本願発明は、前記2.における「(1)補正の内容」で確認したように、本願補正発明における原稿用紙の録画の状態を、「書画カメラ4によって原稿用紙6の画像が大半を占めるように録画してあるとともに、問題Aの解方Bの重要個所を拡大し、あるいはスクロールしながら録画してある」とした限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに前記の各限定を行ったものに相当する本願補正発明が、前記2.における「(3)独立特許要件について(その2)」に記載したとおり、引用文献1の構成に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、あるいはその出願前に頒布された刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-01 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-10 
出願番号 特願2000-336772(P2000-336772)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
P 1 8・ 14- Z (G09B)
P 1 8・ 575- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 七字 ひろみ
島▲崎▼ 純一
発明の名称 教材用記録媒体  
代理人 千葉 茂雄  
代理人 千葉 茂雄  

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