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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01P
管理番号 1164421
審判番号 不服2005-4928  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2007-09-13 
事件の表示 特願2002- 93376「高周波スイッチ装置及びこれを用いた電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-298305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は平成14年3月28日の出願であって,その請求項1?21に係る発明は,平成19年6月1日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1?21の各請求項に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】 半導体チップと,該半導体チップ上に形成された少なくとも2つのスイッチとを有し,各スイッチのグランド部を前記2つのスイッチの間に配置し,
前記各スイッチのグランド部は外部接続用のグランド端子であり,該グランド端子を結ぶ仮想的な線の両側に前記少なくとも2つのスイッチが配置されていることを特徴とするスイッチ装置。」

第2 引用文献
これに対して,当審における拒絶の理由に引用された,本願出願前公知の特開2000-341002号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている。
(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はマイクロ波制御回路に関し,特に,マイクロ波帯及びミリ波帯等で通過位相または通過損失を離散的に変化させるマイクロ波制御回路に関するものである.
【0002】
【従来の技術】図25は,電子情報通信学会1998年総合大会講演論文集,C-1.電磁界理論,“Ka帯4ビットモノリシック移相器”,P.80に示された従来のマイクロ波制御回路を示す回路図である。図において,100は半導体基板,103a,103bはSPDTスイッチ,104a,104b,104c,104dはSPDTスイッチ103a,103b内に設けられたスイッチング素子,106a,106bはSPDTスイッチ103a,103b間を電気的に接続している線路である。SPDTスイッチ103a,103b,スイッチング素子104a,104b,104c,104d,線路106a,106bは半導体基板100の上にモノリシックに構成されている。
【0003】つぎに動作を説明する。SPDTスイッチ103aに入力された高周波信号は,スイッチング素子104a及びスイッチング素子104cが通過,スイッチング素子104b及びスイッチング素子104dが遮断状態の場合,SPDTスイッチ103aのスイッチング素子104a,線路106a及びSPDTスイッチ103bのスイッチング素子104cを介して出力される。
【0004】次に,スイッチング素子104b及びスイッチング素子104dが通過,スイッチング素子104a及びスイッチング素子104cが遮断状態の場合,SPDTスイッチ103aのスイッチング素子104b,線路106b及びSPDTスイッチ103bのスイッチング素子104dを介して出力される。
【0005】ここで,線路106aと線路106bの長さを変え,通過位相を異なる値に設定することにより,高周波信号の通過位相を切り替えることが出来る。」(第2頁第2欄)。
(2)図25において,複数本の平行な斜線が引かれた箇所はグランド部であるから,上記(1)に関連して,図25には,SPDTスイッチ103a,103bのグランド部を前記2つのスイッチの間に配置した回路図が示されている(第15頁右上部)。

したがって,引用文献には,
「半導体基板と,該半導体基板上に形成された少なくとも2つのSPDTスイッチとを有し,各SPTDスイッチのグランド部を前記2つのスイッチの間に配置したスイッチ回路。」の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

第3 対比
そこで,本願発明と引用発明を対比検討すると,引用発明中の「半導体基板」は半導体チップと同じものであり,引用発明中のSPDTスイッチから「グランド部」を除いて「スイッチ部」と称することができ,回路は最終的には,装置として実現されるものであるから,
両者は,
「半導体チップと,該半導体チップ上に形成された少なくとも2つのスイッチとを有し,各スイッチのグランド部が配置されているスイッチ装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明はスイッチ装置であり,物の形で具体化されているのに対し,引用発明は回路のレベルであって,上記一致点のレベルでの具体化は当然自明であるものの,本願発明の構成中の「各スイッチのグランド部を前記2つのスイッチの間に配置し,
前記各スイッチのグランド部は外部接続用のグランド端子であり,該グランド端子を結ぶ仮想的な線の両側に前記少なくとも2つのスイッチが配置されている」との具体的な物の構成が,引用発明で,どのように具体化されているのか不明である。

第4 当審の判断
そこで,上記相違点について検討する。
引用発明は,回路の発明であるが,図25の回路図は,電気回路論等で常用されている完全なシンボル図としての回路図ではなく,回路ブロック図とも称されているものであって,実際の半導体基板に作り込まれる各機能部の配置にほぼ対応したものになっている。
一方,グランド部を回路ブロック間に配置して,アイソレーションを得ることは,原審拒絶理由通知において引用された特開平4-176162号公報,あるいは,例えば,特開2000-22042号公報の図6及び関係記載,特開2001-60831号公報の図3,図5及び関係記載,特開平11-54629号公報の図1,図2及び関係記載,特開平10-79467号公報の図1及び関係記載,特開平9-260412号公報図1,図3及び関係記載などから明らかなように,当業者において,技術常識といえるものである。
してみると,上記技術常識を共有する当業者であれば,引用発明の回路に接し,これを具体的に装置化するに際して,グランド部を2つのスイッチの間に配置して,アイソレーションの向上を図ることは当然想起することであり,また,グランド部を外部接続用のグランド端子として利用することも,グランドを外部接続することが常套手段である以上,格別困難であるというものとはいえない。
してみると,「各スイッチのグランド部を前記2つのスイッチの間に配置し,
前記各スイッチのグランド部は外部接続用のグランド端子であり,該グランド端子を結ぶ仮想的な線の両側に前記少なくとも2つのスイッチが配置されている」との構成は,引用発明,技術常識,及び常套手段に基づいて,当業者が想到できる技術的事項でしかない。
そして,本願発明によって奏せられる作用・効果も,引用文献の記載,技術常識,及び常套手段から当業者が予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,引用文献記載の発明,技術常識,及び常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-21 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-30 
出願番号 特願2002-93376(P2002-93376)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 北村 智彦
中木 努
発明の名称 高周波スイッチ装置及びこれを用いた電子装置  
代理人 片山 修平  

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