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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G04B
管理番号 1164424
審判番号 不服2005-6852  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-15 
確定日 2007-09-13 
事件の表示 平成 8年特許願第321866号「時計用表示板」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月19日出願公開、特開平10-160861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月2日の出願であって、平成17年3月11日付け(発送日同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年5月13日付手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成17年5月13日付手続補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、補正前の
「ソーラ時計又はEL(エレクトロルミネセンス)付時計の時計本体に組み込まれる盤状の時計用表示板であって、
前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、平面状に配置されており、
前記異種の部材の少なくとも1種の部材が、光透過性の部材から構成されていることを特徴とする時計用表示板。」
から、補正後の
「時計に内蔵されたソーラセル又はEL(エレクトロルミネセンス)と、該ソーラセル又はELの表面側に配設された時計用表示板とを備える時計用表示板構造に用いられる時計用表示板であって、 前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、平面状に配置されており、
前記異種の部材の少なくとも1種の部材が、光透過性の部材から構成され、
前記光透過性の部材が、貴石、貝、若しくはセラミックスからなる天然素材、又は、プラスチックからなる合成素材のいずれかから構成されていることを特徴とする時計用表示板。」(当審注:下線部は補正箇所を示すために付したものである。)
に補正する補正事項を含むものである。

上記補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「ソーラ時計又はEL(エレクトロルミネセンス)付時計の時計本体に組み込まれる盤状の時計用表示板」を「時計に内蔵されたソーラセル又はEL(エレクトロルミネセンス)と、該ソーラセル又はELの表面側に配設された時計用表示板とを備える時計用表示板構造に用いられる時計用表示板」に、同じく「光透過性の部材」について「前記光透過性の部材が、貴石、貝、若しくはセラミックスからなる天然素材、又は、プラスチックからなる合成素材のいずれかから構成されている」と、各々限定するものであって、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成7年10月12日に頒布された刊行物である国際公開第95/27234号(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a-1 「第1図及び第2図は本発明の第一実施例に関する平面図と概略断面図で、時計の外装を省略してある。
この第一実施例の時計は、ムーブメント1の上面にEL素子などの発光部材又は太陽電池などの吸光部材を構成するセル2が載置してある。このセル2はムーブメント1とほぼ同一平面形状となっており、中心部は指針軸3の貫通する孔2aが設けてある。
また、支持部材4は、リング状の樹脂成形体であり、その上部には内方に突出したフランジ4aが形成してある。そして、前記支持部材4をムーブメント1の外方に配設すると、前記フランジ4aの下面と前記ムーブメント1の上面との間で、前記セル2の外縁部分が挟持されることにより、前記ムーブメント上面に前記セル2が固定される。
この支持部材4のフランジ部4aの上面には内側から外側に溝状をした位置決め部としての凹部4bが形成してある。この凹部4bは、フランジ4aの三箇所に形成してあり、このうち二箇所に形成した凹部4bは180度対向した位置にあり、残りの一箇所に形成した凹部4bは対向した凹部4b間の真中より多少ずれた位置に形成してある。
光透過型表示板5は、アクリル,ポリカーボネイト,セラミックス等より成る薄板状の透明板又は半透明板に目盛,ペットネーム,数字,模様等の装飾を印刷,塗装等により施して形成してある。この光透過型表示板を形成する透明板(以下、半透明板を含めて、単に透明板と称す)5は中心部に指針軸3の貫通する孔5aが形成してあり、また、フランジ部には、外方に向かって突出した位置決め部としての凸部5bが、前記支持部材4のフランジ部4aに形成した凹部4bと対応した三箇所に形成してある。
このような構成からなる時計は、次のようにして組み立てる。
まず、セル2の上面に透明板5を載置する。」(明細書第8頁第21行?第9頁第19行)

a-2 「第3図は、本発明の第二実施例に関する概略断面図であり、時計の外装を省略してある。
この第二実施例の時計は、光透過型表示板50としてめっきや塗装によって表面処理を行った金属板を用いるとともに、目盛,数字,模様などの装飾部の全部又は一部を、指針軸の貫通する孔50a及び貫通孔51によって形成し、光の透過は、これら孔50a及び貫通孔51を介して行なっている。
すなわち、セル2がEL素子である場合には、EL素子からの光を孔50a及び貫通孔51を通して表示板の表面に透過させ、またセル2が太陽電池の場合には、太陽光を孔50a及び貫通孔51を通して表示板下面の太陽電池へ透過させている。このように金属板50で光透過型表示板を形成した場合は、装飾部を形成する前記貫通孔51及び孔50aの面積を大きくとることになるが、表示板外周に突設する凸部50b等、他の構成は第1実施例における表示板と同様である。
また、金属板50からなる光透過型表示板の場合には、金属板50をセル2の上面に載置するに際し、セル2と表示板50の間に隙間を設ける必要はないので、両者の間にスペーサを介在させる必要はない。したがって、光透過型表示板である金属板50をセル2の上面に固定するための作業手順は、スペーサの介在作業を除き、第一実施例のものと同様となる。
なお、光透過型表示板は、透明板5と金属板50を積層して構成したものであってもよく、第4図に示す第三実施例のように、第一実施例で説明した透明板5の上部に金属板50を積層したり、あるいは第5図に示す第四実施例のように、第二実施例で説明した金属板50の上部に透明板5を積層する。」(明細書第10頁第22行?第11頁第18行)

そうすると、上記摘記事項a-2の記載の「なお、光透過型表示板は、透明板5と金属板50を積層して構成したものであってもよく、第4図に示す第三実施例のように、第一実施例で説明した透明板5の上部に金属板50を積層したり、」及び、上記摘記事項a-1の記載の「光透過型表示板5は、アクリル,ポリカーボネイト,セラミックス等により成る薄板状の透明板又は半透明板に目盛,ペットネーム,数字,模様等の装飾を印刷,塗装等により施して形成してある。」から、透明板5が、光透過性の部材から構成され、前記光透過性の部材が、セラミックス、アクリル、ポリカーボネイトから構成されていることが読み取れる。

したがって、上記摘記事項a-1及びa-2からみて、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認める。
「時計に内蔵された太陽電池又はEL素子からなるセル2と、該セル2の表面側に配設された光透過型表示板とを備える時計用表示板構造に用いられる光透過型表示板であって、
金属板50及び透明板5という異種の部材からなる表示部材が、金属板50の孔50a及び貫通孔51を通じて透明板5が表面側に露出するように配置されており、
透明板5が、光透過性の部材から構成され、前記光透過性の部材が、セラミックス、アクリル、ポリカーボネイトから構成されていることを特徴とする光透過型表示板。」

イ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和56年5月13日に頒布された刊行物である実願昭54-137795号(実公昭56-54485号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

b-1 「本案は係る欠点を消除するために考案されたもので、第3図によって説明する。
黄銅,洋白など金属からなるベース1に、厚目の材料を用い、外周部及び中心穴部をプレス抜後、第3図に示す如く、貴石固定用溝4を切削、或は塑性加工により形成する。
貴石固定用溝4は、貴石2の寸法によって左右されるが、1例をあげると、巾5mm、厚さ0.4mmの貴石2を貼付ける場合、貴石貼付け用溝は、巾5.1mm、深さ0.45mm程度の寸法で成形する。塑性加工による貴石固定用溝4の成形の場合は、ベース1の外周部及び中心穴部bをプレス抜する前に実施し、切削加工と併用して形成することも出来る。勿論、溝形成後は、ベース1の材質をプラスチックにして、射出成形によっても加工できる。
第4図は、外周側へ貴石貼付け用溝4を、形成した状態を示す。
斯様にして仕上げた腕時計用文字板は、金属片5を別体で製造することなく、ベース1の製造工程で作り込むことが可能となった。この結果、部品点数が減少し、組立てが容易となり、大巾に製造コストが低減し且つ、表面仕上のバラツキのない腕時計用文字板を提供できる効果を生ぜしめた。又、構造的に簡素となり、第1,2図に示す構造のものに比べ、更に薄形化を実現できる効果も生じた。」(第2頁第10行?第3頁第16行)

b-2 図面の第4図には、ベース1と貴石2の表面側は、平面状に配置されて描かれている。

そうすると、上記摘記事項b-1及びb-2からみて、引用例2には、「内周に孔を形成した貴石2と、外周側へ貴石貼付け用溝4を有する金属からなるベース1において、貴石貼付け用溝4に貴石2を配置し、表面からみて貴石2とベース1とが平面状に配置された腕時計用文字板の構造」が記載されているものと認める。

(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「太陽電池又はEL素子からなるセル2」、「透明板5」は、それぞれ本願補正発明の「ソーラセル又はEL(エレクトロルミネセンス)」、「光透過性の部材」に相当する。
また、引用例1発明の「光透過型表示板」は、用途からみて本願補正発明の「時計用表示板」に相当する。
さらに、引用例1発明の「透明板5が、光透過性の部材から構成され、前記光透過性の部材が、セラミックス、アクリル、ポリカーボネイトから構成されていること」は、本願補正発明の「前記光透過性の部材が、貴石、貝、若しくはセラミックスからなる天然素材、又は、プラスチックからなる合成素材のいずれかから構成されている」に相当する。
そして、引用例1発明の「前記光透過型表示板の表面側に露出する部分が、金属板50及び透明板5という異種の部材からなる表示部材が、金属板50の孔50a及び貫通孔51を通じて透明板5が表面側に露出するように配置されており、」と本願補正発明の「前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、平面状に配置されており、」とは、「前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、配置されている」という点で共通する。

したがって、両者は、
【一致点】
「時計に内蔵されたソーラセル又はEL(エレクトロルミネセンス)と、
該ソーラセル又はELの表面側に配設された時計用表示板とを備える時計用表示板構造に用いられる時計用表示板であって、
前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、配置されており、
前記異種の部材の少なくとも1種の部材が、光透過性の部材から構成され、
前記光透過性の部材が、貴石、貝、若しくはセラミックスからなる天然素材、又は、プラスチックからなる合成素材のいずれかから構成されていることを特徴とする時計用表示板。」
である点で一致し、次の相違点で相違する。

【相違点】表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、本願補正発明では、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、平面状に配置されているのに対し、引用例1発明では、金属板50及び透明板5という異種の部材からなる表示部材が、金属板50の孔50a及び貫通孔51を通じて透明板5が表面側に露出するように配置されている点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
時計用表示板の構造として、内周に孔を形成した貴石2と、外周側へ貴石貼付け用溝4を有する金属からなるベース1において、貴石貼付け用溝4に貴石2を配置し、表面からみて貴石2とベース1とが平面状に配置した構造が引用例2に記載されているから、引用例1発明の、金属板50及び透明板5という異種の部材からなる表示部材が、金属板50の孔50a及び貫通孔51を通じて透明板5が表面側に露出するように配置される構造に、引用例2に記載された構造を適用し、孔50a及び貫通孔51内に透明板5を突出させることにより2種類の異種の部材からなる表示部材を平面状に配置し、上記相違点に係る本願補正発明の構成のように変更することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用例1及び2の記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年5月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成16年8月4日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は以下のとおりである。
「ソーラ時計又はEL(エレクトロルミネセンス)付時計の時計本体に組み込まれる盤状の時計用表示板であって、
前記表示板の少なくとも表面側に露出する部分が、少なくとも2種類の異種の部材からなる表示部材が、平面状に配置されており、
前記異種の部材の少なくとも1種の部材が、光透過性の部材から構成されていることを特徴とする時計用表示板。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願第1発明は、前記2.で検討した本願補正発明の発明特定事項から「時計に内蔵されたソーラセル又はEL(エレクトロルミネセンス)と、該ソーラセル又はELの表面側に配設された時計用表示板とを備える時計用表示板構造に用いられる時計用表示板」を「ソーラ時計又はEL(エレクトロルミネセンス)付時計の時計本体に組み込まれる盤状の時計用表示板」に、同じく「前記光透過性の部材が、貴石、貝、若しくはセラミックスからなる天然素材、又は、プラスチックからなる合成素材のいずれかから構成されている」を「光透過性の部材」と各々上位概念化したものである。

そうすると、本願第1発明の発明特定事項をすべて含み、一部特定事項について限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願第1発明も同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願第1発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2?20に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-11 
結審通知日 2007-07-17 
審決日 2007-07-30 
出願番号 特願平8-321866
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G04B)
P 1 8・ 575- Z (G04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 健太榮永 雅夫  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 居島 一仁
上原 徹
発明の名称 時計用表示板  
代理人 鈴木 俊一郎  

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