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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1164670
審判番号 不服2004-7519  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-14 
確定日 2007-09-19 
事件の表示 平成11年特許願第172245号「パチンコ機用施錠装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月 9日出願公開、特開2001- 707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年6月18日の出願であって、平成16年3月9日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年4月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月14日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成16年5月14日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年5月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「取付板と支持板からなる縦長の基枠の内側に、上部と下部に鉤部を一体的に設けた摺動杆が該支持板に沿って摺動可能に配設され、該基枠の取付板にシリンダ錠がその錠軸を内側に差込むように固定され、該錠軸の先端に前記摺動杆と係合するカム板が固定され、前記基枠の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、パチンコ機の本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部が係止されて該前面枠を施錠するパチンコ機用施錠装置であって、
ガラス枠施錠杆が前記基枠内の取付板の内側面にその平面を接して摺動可能に配設され、該ガラス枠施錠杆の上部と下部にはガラス枠鉤部が該取付板に設けた長孔または開口部から前方に突出させて突設され、該ガラス枠施錠杆の一部に前記カム板が係合可能な係合部が設けられ、パチンコ機のガラス枠の内側に設けた係止部に該ガラス枠鉤部が係止されて該ガラス枠が施錠され、前記シリンダ錠を前記前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させることにより、該ガラス枠施錠杆を摺動させて該ガラス枠鉤部と係止部の係合を解き該ガラス枠を解錠するパチンコ機用施錠装置において、
前記ガラス枠鉤部を突設した前記ガラス枠施錠杆上の該ガラス枠鉤部の近傍位置に長孔が該ガラス枠施錠杆の長手方向に沿って形成され、頭付ガイドピンが該長孔に挿通されて前記基枠の取付板上に固定され、該頭付ガイドピンの頭部で該ガラス枠鉤部近傍の該ガラス枠施錠杆を押えて摺動ガイドすることを特徴とするパチンコ機用施錠装置。」と補正された。
上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガラス枠施錠杆」について「の内側面にその平面を接して」との限定を付加するものであって,平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-76575号公報(公開日:平成11年3月23日)(以下,「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1-1
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 取付板と支持板からなる基枠体の内側に連結杆が摺動可能に配設され、該支持板の上部と下部に鉤部材が連結杆に連結されて傾動可能に枢支され、該取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を内側にして固定され、該錠軸の先端に前記連結杆と係合するカム板が固定され、前記基枠体の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材が係止されて前面枠を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
前記取付板の上部と下部に、ガラス扉用鉤部材が進入するための矩形孔が形成され、該矩形孔と連通する矩形の係止孔を有するガラス扉施錠用の摺動杆が該基枠体の内側に摺動可能に配設され、該摺動杆の一部が前記カム板と係合可能に形成され、ガラス扉の内側に突設したガラス扉用鉤部材が該矩形孔に進入し該係止孔に係止されてガラス扉が施錠され、前記シリンダ錠を前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させ、ガラス扉施錠用の摺動杆を摺動させてガラス扉を解錠することを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」

・記載事項1-2
「【0015】(中略)1は縦長の基枠体で、支持板3の前と後に取付板2、12を略直角に相互に逆方向に曲折した形状に一体成形される。」

・記載事項1-3
「【0017】鉤部材4、5は三角形頭部を有しその中間部に係合凹部を有している。基枠体1の内側には、図3に示すように、支持板3に沿って連結杆6が摺動可能に配設され、連結杆6の上端は鉤部材4の末端に連結ピン4bで連結され、連結杆6の下端は同様に下部の鉤部材5の末端に連結ピン5bで連結される。連結杆6は支持板3の一部を切り起したガイド部3bによりその摺動をガイドされ、外れを防止している。この鉤部材4、5及びそれを動かす連結杆6は、パチンコ機の前面枠用の施錠機構を構成する。
【0018】連結杆6の下部の取付板2側に突起部6aが突設され、その突起部6aに対向した取付板2の位置に異形の孔が穿設され、シリンダ錠7が取付板2の外側からその錠軸を内側に挿入するように、取付板2にねじ又はかしめで固定される。」

・記載事項1-4
「【0020】さらに、基枠体1の内側の取付板2上には、上記取付の矩形孔2a,2bと連通する矩形の係止孔14,15を有するガラス扉施錠用の摺動杆16が基枠体内を摺動可能に配設される。係止孔14,15は後述のガラス扉用鉤部材26、27が進入して係止可能な大きさと位置に配置される。摺動杆16は断面L字状に形成され、取付板2と支持板3との角部に摺動可能に配設され、取付板側に向けて突設された頭付きピン18を取付板2上の長孔2cに係合させ、所定の範囲で移動可能とされる。」

・記載事項1-5
「【0021】摺動杆16の下端でカム板8の近傍にには係合孔部16bが設けられ、図4の時計方向にカム板8が回動された時、図10、図11のように、カム板8の係合部8bがその係合孔部16bに係合し、摺動杆16が下に移動する。この摺動杆16の下降により、後述のガラス扉用鉤部材27との係合をはずし、ガラス扉を解錠する。」

・記載事項1-6
「【0026】一方、ガラス扉22を前面枠21に対して閉じると、図12から図13に示すように、ガラス扉22側のガラス扉用鉤部材26、27が取付板2の長孔2a、2bから摺動杆16の係止孔14、15内に進入する。そして、摺動杆16を下方に摺動させながら進入して、係止孔14,15に鉤部材26,27が係止され、ガラス扉22は施錠状態となる。」

・記載事項1-7
「【0027】ガラス扉を解錠する場合は、シリンダ錠7のキーを逆方向に回して、カム板8を図4の時計方向へ回動させると、カム板8の係合部8bが摺動杆16の係合孔16bと係合してこれを下方へ摺動させる。この摺動杆16の下降により、図10、図11に示すように、係止孔14、15と鉤部材26、27との係合が外れて、ガラス扉22が解錠される。」

以上の記載事項1-1?1-7及び図1?13によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「取付板2と支持板3からなる縦長の基枠体1の内側に上部と下部に鉤部材4、5を連結した連結杆6が前記支持板3に沿って摺動可能に配設され、該基枠体1の取付板2にシリンダ錠7がその錠軸を内側に挿入するように固定され、該錠軸の先端に前記連結杆6と係合するカム板8が固定され、前記基枠体1の取付板2がパチンコ機の前面枠21に縦に取付けられ、パチンコ機の本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材4、5が係止されて該前面枠21を施錠するパチンコ機の施錠装置であって、
ガラス扉施錠用の摺動杆16が前記基枠体1内の取付板2と支持板3との角部に摺動可能に配設され、該ガラス扉施錠用の摺動杆16の上部と下部に係止孔14、15を設け、該ガラス枠施錠用の摺動杆16の一部に前記カム板8が係合可能な係合孔部16bが設けられ、パチンコ機のガラス扉22の内側に突設したガラス扉用鉤部材26、27が前記係止孔14、15に係止されてガラス扉が施錠され、前記シリンダ錠7を前記前面枠21の解錠時と反対方向に回して該カム板8を同方向に回動させることにより、該ガラス扉施錠用の摺動杆16を摺動させて前記係止孔14、15と前記ガラス扉用鉤部材26、27の係合をはずし該ガラス扉22を解錠するパチンコ機用施錠装置において、
前記係止孔14、15が形成された前記ガラス扉用の摺動杆16の前記係止孔14、15の下部に突設した頭付きピン18を、前記取付板2上の長孔2cに係合させ、所定の範囲で移動可能とするパチンコ機用施錠装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-117554号公報(公開日:平成9年5月6日)(以下,「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項2-1
「【0024】第1可動錠板14の上下端部には、ベース錠板13の取付け板13aの後方へ突出され、表枠2の閉止時に機台枠1の第1受け金具5に解離可能に掛止される上下1対の第1ロック爪25が形成され、この両第1ロック爪25には第1受け金具5の受け爪5aが解離可能に係合された係合部25aと、第1ロック爪25が第1受け金具5の受け爪5aの上端縁に当接した状態で表枠2を後方へ押動したときに第1可動錠板14が第1受け金具5によって押上げられるように傾斜したガイド縁25bとがそれぞれ形成されている。」

・記載事項2-2
「【0026】第2可動錠板15の上下端部および中央部付近にはガイドピン18,19が挿通された縦長状の挿通孔15aが貫設されるとともに、」

・記載事項2-3
「【0027】第2可動錠板15の上下端部にはベース錠板13の取付け板13aを貫通してその前方へ突出され、金枠3の閉止時に第2受け金具6に解離可能に掛止される上下1対の第2ロック爪27が形成され、」

3.対比
引用文献1記載の発明と本願補正発明を対比すると、引用文献1記載の発明の「基枠体1」、「鉤部材4、5」、「連結杆6」、「挿入するように」、「ガラス扉施錠用の摺動杆16」、「係合孔部16b」、「ガラス扉22」、「係合をはずし」は、本願補正発明の「基枠」、「鉤部」、「摺動杆」、「差し込むように」、「ガラス枠施錠杆」、「係合部」、「ガラス枠」、「係合を解き」にそれぞれ相当する。
そして、引用文献1記載の発明の「ガラス扉22の内側に突設したガラス扉用鉤部材26、27」及び「ガラス扉施錠用の摺動杆16の係止孔14、15」、本願補正発明の「ガラス枠の内側に設けた係止部」及び「ガラス枠鉤部」は、ガラス枠施錠杆がガラス枠を係止するための「係止機構」を構成するものである。また、引用文献1記載の発明の「長孔2c」及び「頭付きピン18」、本願補正発明の「長孔」及び「頭付きガイドピン」は、いずれもガラス枠施錠杆の「摺動ガイド手段」を構成するものである。
更に、引用文献1において、「係止孔14,15」と「頭付きピン18」が近傍位置にあると明記されていないものの、その図1、図10の図示からみて「近傍位置」と解するのが自然である。
また、引用文献1において、ガラス扉施錠用の摺動杆16が取付板2と支持板3との角部に摺動可能に配設した旨の記載はあるものの、摺動杆16が取付板にその平面を接しているとの明記はされていないが、図3,10の図示及びガラス扉施錠用の摺動杆16が取付板2に頭付きピン18で移動可能とされている点から、ガラス扉施錠用の摺動杆16は取付板2の内側面にその平面を接して摺動可能となっていると解することが自然である。
したがって、両者は、
「取付板と支持板からなる縦長の基枠の内側に、上部と下部に鉤部を設けた摺動杆が該支持板に沿って摺動可能に配設され、該基枠の取付板にシリンダ錠がその錠軸を内側に差し込むように固定され、該錠軸の先端に前記摺動杆と係合するカム板が固定され、前記基枠の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、パチンコ機の本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部が係止されて該前面枠を施錠するパチンコ機用施錠装置であって、
ガラス枠施錠杆が前記基枠内の取付板の内側面にその平面を接して摺動可能に配設され、該ガラス枠施錠杆の上部と下部には係止機構の一方が設けられ、該ガラス枠施錠杆の一部に前記カム板が係合可能な係合部が設けられ、パチンコ機のガラス枠の内側に設けた係止機構の他方に前記係止機構の一方が係止されて該ガラス枠が施錠され、前記シリンダ錠を前記前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させることにより、該ガラス枠施錠杆を摺動させて係止機構の一方と他方の係合を解き、該ガラス枠を解錠するパチンコ機用施錠装置において、
係止機構の一方を設けた前記ガラス枠施錠杆上の係止機構の一方の近傍位置に長孔と頭付きガイドピンからなる摺動ガイド手段を設けたことを特徴とするパチンコ機用施錠装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
上部と下部に設けられた鉤部が摺動杆に、本願補正発明においては一体的に設けられたものであるのに対して、引用文献1記載の発明では一体的でない点。

<相違点2>
ガラス枠施錠杆がガラス枠を係止するための「係止機構」は、本願補正発明においては取付板に設けた長孔または開口部から前方に突出させてガラス枠施錠杆に突設させたガラス枠鉤部及びガラス枠の内側に設けた係止部からなるのに対して、引用文献1記載の発明においてはガラス扉22の内側に突設したガラス扉用鉤部材26,27及びガラス扉施錠用の摺動杆16に設けた係止孔14,15からなる点。

<相違点3>
ガラス枠施錠杆の「摺動ガイド手段」は、本願補正発明においてはガラス枠施錠杆の長手方向に形成された長孔及び長孔に挿通されて取付板上に固定され頭部でガラス枠施錠杆を押さえて摺動ガイドする頭付きガイドピンからなるのに対して、引用文献1記載の発明では取付板2の長手方向に形成された長孔2c及び長孔2cに挿通されてガラス扉施錠用の摺動杆16に突設された頭付きピン18からなる点で相違している。

4.判断
上記相違点について検討する。

<相違点1について>
上記した記載事項2-1の「【0024】第1可動錠板14の上下端部には、ベース錠板13の取付け板13aの後方へ突出され、表枠2の閉止時に機台枠1の第1受け金具5に解離可能に掛止される上下1対の第1ロック爪25が形成され、」との記載及び図1?6の図示に基づけば、引用文献2に記載された技術事項の第1可動錠板14の上下端部には第1ロック爪25が一体的に形成されているものと解される。
そして、引用文献2に記載された技術事項の「第1可動錠板14」「第1ロック爪25」は、それらの機能からみて、本願補正発明の「摺動杆」「鉤部」にそれぞれ相当するから、引用文献2に記載された技術事項である「第1可動錠板14の上下端部には第1ロック爪25が一体的に形成されている」は、「摺動杆の上部と下部には鉤部が一体的に設けられている」と言い換えることができる。
また、引用文献1記載の発明と引用文献2に記載された技術事項は、ともにパチンコ機の技術分野における施錠装置に関するものであるから、引用文献2に記載された技術事項である「摺動杆の上部と下部には鉤部が一体的に設けられている」を参酌して、引用文献1記載の発明において鉤部を摺動杆と一体的に設けるようにし、上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に成し得る程度のことである。

<相違点2について>
上記した記載事項2-3の「【0027】第2可動錠板15の上下端部にはベース錠板13の取付け板13aを貫通してその前方へ突出され、金枠3の閉止時に第2受け金具6に解離可能に掛止される上下1対の第2ロック爪27が形成され、」との記載及び図1?6の図示に基づけば、引用文献2には「取付け板13aを貫通して前方に突出させて第2可動錠板15に突設した第2ロック爪27及び金枠の内側に設けた第2受け金具6」からなる係止機構が記載されている。
そして引用文献2に記載された技術事項の「取付け板13a」、「第2可動錠板15」、「第2ロック爪27」、「金枠」、「第2受け金具6」は、それらの機能からみて、本願補正発明の「取付板」、「ガラス枠施錠杆」、「ガラス枠鉤部」、「ガラス枠」、「係止部」にそれぞれ相当する。また、板体である「第2ロック爪27」を「貫通」させるためには、「取付け板13a」には長孔または開口部が設けられているものと解される。
したがって、引用文献2には、「取付板の長孔または開口部から前方に突出させてガラス枠施錠杆に突設させたガラス枠鉤部及びガラス枠の内側に設けた係止部からなる」係止機構に関する技術事項が記載されている。
また、引用文献1記載の発明と引用文献2に記載された技術事項は、ともにパチンコ機の技術分野における施錠装置に関するものであるから、引用文献2に記載された技術事項である「取付板の長孔または開口部から前方に突出させてガラス枠施錠杆に突設させたガラス枠鉤部及びガラス枠の内側に設けた係止部からなる」係止機構を引用文献1記載の発明において採用し、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に成し得る程度のことである。

<相違点3について>
引用文献1に記載された発明の「長孔2c」、「頭付きピン18」は、それらの機能からみて、本願補正発明の「長孔」、「頭付きガイドピン」にそれぞれ相当するから、上記相違点3は、「長孔」、「頭付きガイドピン」を、ガラス枠施錠杆、取付板の何れに設けるかの相違によるものである。そして、「摺動ガイド手段」を構成する本願補正発明及び引用文献1記載の発明の「長孔」を本願発明のようにガラス枠施錠杆に設けるか、引用文献1記載の発明のように取付板に設けるか(「長孔と対をなして「摺動ガイド手段」を構成する「頭付きガイドピン」は設けられる対象が「長孔」と逆になる)は、格別作用効果に差異を生じさせるものでないから、単なる設計事項である。また、仮にそうでないとしても、摺動ガイド手段の「挿通孔15」(本願補正発明の「長孔」に相当する)を第2可動錠板15(本願補正発明の「ガラス枠施錠杆」に相当する)に設けることは、上記記載事項2-2で示したように引用文献2に記載されているから、当業者であれば容易に成し得る程度のことである。なお、「頭付きガイドピン」の「頭」は、そもそも部材を押さえつけるために設けられたものであるということは技術常識である。

相違点1?3に係る補正発明の構成を採用することは設計事項であるか又は当業者にとって容易に想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることできない。
したがって,本願補正発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり,同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成16年5月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成16年1月23日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「取付板と支持板からなる縦長の基枠の内側に、上部と下部に鉤部を一体的に設けた摺動杆が該支持板に沿って摺動可能に配設され、該基枠の取付板にシリンダ錠がその錠軸を内側に差込むように固定され、該錠軸の先端に前記摺動杆と係合するカム板が固定され、前記基枠の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、パチンコ機の本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部が係止されて該前面枠を施錠するパチンコ機用施錠装置であって、
ガラス枠施錠杆が前記基枠内の取付板に沿って摺動可能に配設され、該ガラス枠施錠杆の上部と下部にはガラス枠鉤部が該取付板に設けた長孔または開口部から前方に突出させて突設され、該ガラス枠施錠杆の一部に前記カム板が係合可能な係合部が設けられ、パチンコ機のガラス枠の内側に設けた係止部に該ガラス枠鉤部が係止されて該ガラス枠が施錠され、前記シリンダ錠を前記前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させることにより、該ガラス枠施錠杆を摺動させて該ガラス枠鉤部と係止部の係合を解き該ガラス枠を解錠するパチンコ機用施錠装置において、
前記ガラス枠鉤部を突設した前記ガラス枠施錠杆上の該ガラス枠鉤部の近傍位置に長孔が該ガラス枠施錠杆の長手方向に沿って形成され、頭付ガイドピンが該長孔に挿通されて前記基枠の取付板上に固定され、該頭付ガイドピンの頭部で該ガラス枠鉤部近傍の該ガラス枠施錠杆を押えて摺動ガイドすることを特徴とするパチンコ機用施錠装置。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,及びその記載事項は,前記第2の2.に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明から「ガラス枠施錠杆」の限定事項である「の内側面にその平面を接して」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の4.に記載したとおり,引用文献1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用文献1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-11 
結審通知日 2007-07-17 
審決日 2007-07-30 
出願番号 特願平11-172245
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進米津 潔  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 伊藤 陽
藤田 年彦
発明の名称 パチンコ機用施錠装置  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 飯田 昭夫  

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