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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
管理番号 1164671
審判番号 不服2004-8830  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2007-09-18 
事件の表示 平成 6年特許願第 97996号「固形薬剤溶解装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月18日出願公開、特開平 8-155465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成6年4月12日に特許出願され、平成15年10月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年3月23日付けで出願拒絶されたところ、当該拒絶につき平成16年4月28日付けで審判請求がなされるとともに、平成16年5月28日付けで手続補正書が提出されたものである。これに対し、平成19年4月13日付けの補正の却下の決定により、平成16年5月28日付け手続補正は却下されるとともに、平成19年4月13日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成19年6月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、必要に応じて「本願発明」という。)は、上記の平成19年6月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

【請求項1】生活排水、産業排水、プール循環水又は浴場循環湯の処理装置において、30?250kgの無機又は有機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aを一回に充填可能な、高さ100cm?150cm、幅30cm?60cmの非耐圧構造の薬剤溶解槽1、処理水の主配管2、前記生活排水、産業排水、プール循環水又は浴場循環湯を送り出す濾過ポンプ、該濾過ポンプから送り出された生活排水、産業排水、プール循環水又は浴場循環湯を濾過する濾過装置、濾過装置の後側に設置された薬剤溶解槽への供給水Bの配管3、薬剤溶解槽1内で無機又は有機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aの充填層を薬剤溶解水Cの液面より上部に保持する目皿4、薬剤溶解槽1の内部の前記目皿4の下部、目皿4の位置又は目皿4の上部に設けられた、供給水Bを上向きにスプレーして目皿4の上に充填された無機又は有機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aを溶解せしめるスプレーノズル5、固形薬剤の投入口6、及び薬剤溶解槽1内の底部に集められた薬剤溶解水Cを処理水の主配管へ供給する供給ポンプ7を有することを特徴とする処理装置。

III.引用例とその記載
当審の拒絶の理由(特許法第29条第2項)で引用した引用例1(特公昭45-29788号公報)、引用例2(特開昭59-142890号公報)、引用例3(特開昭59-142891号公報)には、以下の事項が記載されている。

III-1.引用例1(特公昭45-29788号公報)
(A-1)
「本発明は乾燥せる高度晒粉を加圧成型加工して、個々の重量が1?50g、破壊荷重が10kg以上の硬度の錠剤となし、該錠剤を密閉または開放の容器に充填し、該充填層の一部に循環濾過式水泳プールの循環水の一部を連続的に通過せしめて該錠剤の一部を連続的に溶出せしめ、該溶出液を循環水に混合して連続的にプールに注入することを特徴とする循環濾過式水泳プール水の消毒滅菌法である。」(第2頁左欄第40行?右欄第3行)

(A-2)
「第1図は本発明に使用する装置の断面略図である。第1図において、本装置は円筒部1が垂直になる如く設置され、上ぶた2より高度晒粉錠剤3を円筒部1の内部に固定された目皿4上に充填し、円筒下部の流入口5よりプール循環水の一部6を流入させる。流入口5より装置内部に流入した水6は錠剤充填層3を通過する際に錠剤の一部を溶解し流出口8より溶出水9となって流出してプールへ導かれる。」(第2頁右欄第35?43行)

(A-3)
「第2図、第3図及び第4図は本装置とプール水循環濾過設備との接続方法を示す見取図である。循環濾過設備において通常、プール水はプール13の底面よりヘッド圧で排出され、・・・メインポンプ16により濾過器17に送られ、濾過された水は再びプール13へ戻され以下同様に循環される。循環水の一部を本装置に導き通過させる方法は第2図において、循環水路の途中に取入口18を設けポンプ19を設置して本装置の流入口5に圧入し、薬剤を溶出させ、この溶出液9を流出口8より循環水路のプール手前に設けた注入口20に導いて循環水の本流と合流させるか、または第3図において循環水路の一部にしぼり21を設置し、その結果しぼりの前後に現れる圧力差を利用して、その上流側に取入口22を設け、本装置に導入し下流側に設けた注入口20に戻すか、・・・。なお、第1図において本装置の上ぶた2は密閉式でも開放式でもよい。ただし、開放の場合には、錠剤充填層3の水位のヘッド圧が注入口20の圧力よりも少なくとも1m以上高くなるように本装置を高い位置に設置するか、または注入口20の接続部をエジェクター方式にして溶出液9を吸引させることが必要である。」(第3頁左欄第4?33行)

(A-4)
「第1図において、実施にあたり使用した装置はすべて硬質塩化ビニー製で、内径250mm、直管部有効高さ500mmの円筒部1、・・・よりなる。実施にあたり目皿4の位置を円筒1の底部から上方55mmの高さに固定し、前記高度晒粉錠剤3?20kgを上ぶた2より円筒1の内部の目皿4の上に充填した後、上ぶた2を密閉した。」(第3頁右欄第9?22行)

III-2.引用例2(特開昭59-142890号公報)
(B-1)
「固形薬剤Aを充填する薬剤溶解槽1、処理水Bの主配管2、薬剤溶解槽1への供給水Cの配管3、および薬剤溶解槽1と主配管2とを接続する薬剤溶解水Dの配管4とからなり、薬剤溶解槽1が固形薬剤Aの充填層を薬剤溶解水Dの液面より上部に保持する目皿5、目皿5の上部に、供給水を上向にスプレーするスプレーノズル6、固形薬剤Aの投入口7、ガス抜口8、ならびに供給水配管3および薬剤溶解水配管4の接続ノズルを有してなることを特徴とする固形薬剤溶解装置」(特許請求の範囲第1項)

(B-2)
「供給水Cの配管3’を処理水Bの主配管2から分岐してなる特許請求の範囲第1項記載の装置」(特許請求の範囲第2項)

(B-3)
「本発明は、固形薬剤溶解装置に係り、さらに詳しくは、無機または有機の塩素化錠剤を定量的に溶解する固形薬剤溶解装置に関する。生活排水、産業排水、水泳プール循環水、浴場循環湯等は塩素化剤、たとえば次亜塩素酸カルシウム組成物等の無機塩素化剤、トリクロルイソシアヌール酸等の有機塩素化剤等を用いて殺菌消毒処理を行った後、放流するか循環使用するのが一般的である。」(第1頁右下欄第3?11行)

(B-4)
「従来、塩素化剤の固形錠剤を処理水中に溶解添加する方法として、固形薬剤を充填した薬剤溶解槽に処理水を強制的に流通させ薬剤を処理水中に溶解する方法(特公昭45-29788号公報等参照)・・・等が一般に採用されている。しかしながら、これらの方法においては、固形薬剤が常時処理水中に浸漬されているため、薬剤の膨潤が起り易く、その結果として薬剤自身の荷重により薬剤が崩壊し、過剰に処理水中に流出する現象、また薬剤溶解槽中において固形薬剤がブリッジを生成し、処理水に浸漬する位置にまで落下してこなくなり、全く溶解しなくなる現象を生じ、安定した定量的な薬剤溶解量を得ることは困難であった。本発明は、固形薬剤の膨潤を防止し、かつ定量的な薬剤溶解量の得られる固形薬剤溶解装置を提供することを目的とする。」(第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第15行)

III-3.引用例3(特開昭59-142891号公報)
(C-1)
「固形薬剤Aを充填する薬剤溶解槽1、処理水Bの主配管2、薬剤溶解槽1への供給水Cの配管3、および薬剤溶解槽1と主配管2とを接続する薬剤溶解水Dの配管4とからなり、薬剤溶解槽1が固形薬剤Aの充填層を薬剤溶解水Dの液面より上部に保持する目皿5、目皿5の下部に、供給水を上向にスプレーするスプレーノズル6、固形薬剤Aの投入口7、ガス抜口8、ならびに供給水配管3および薬剤溶解水配管4の接続ノズルを有してなることを特徴とする固形薬剤溶解装置」(特許請求の範囲第1項)

(C-2)
「供給水Cの配管3’を処理水Bの主配管2から分岐してなる特許請求の範囲第1項記載の装置」(特許請求の範囲第2項)

(C-3)
「本発明は、固形薬剤溶解装置に係り、さらに詳しくは、無機または有機の塩素化錠剤を定量的に溶解する固形薬剤溶解装置に関する。生活排水、産業排水、水泳プール循環水、浴場循環湯等は塩素化剤、たとえば次亜塩素酸カルシウム組成物等の無機塩素化剤、トリクロルイソシアヌール酸等の有機塩素化剤等を用いて殺菌消毒処理を行った後、放流するか循環使用するのが一般的である。」(第1頁右下欄第3?11行)

(C-4)
「従来、塩素化剤の固形錠剤を処理水中に溶解添加する方法として、固形薬剤を充填した薬剤溶解槽に処理水を強制的に流通させ薬剤を処理水中に溶解する方法(特公昭45-29788号公報等参照)・・・等が一般に採用されている。しかしながら、これらの方法においては、固形薬剤が常時処理水中に浸漬されているため、薬剤の膨潤が起こり易く、その結果として薬剤自身の荷重により薬剤が崩壊し、過剰に処理水中に流出する現象、また薬剤溶解槽中において固形薬剤がブリッジを生成し、処理水に浸漬する位置にまで落下してこなくなり、全く溶解しなくなる現象を生じ、安定した定量的な薬剤溶解量を得ることは困難であった。本発明は、固形薬剤の膨潤を防止し、かつ定量的な薬剤溶解量の得られる固形薬剤溶解装置を提供することを目的とする。」(第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第15行)

IV.引用発明の認定
引用例1には、その前記(A-1)によれば、循環濾過式水泳プール水の消毒滅菌法に関する技術が記載されており、そして、この循環濾過式プール水の消毒滅菌法に供する具体的装置について、その前記(A-1)、(A-3)とその第2図の記載(ここでの本装置は前記容器に対応する)をみると、そこには、「高度晒粉の錠剤を充填し、該錠剤をプール水に溶出せしめる開放の容器、前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路、プール水を濾過器へ送るメインポンプ、メインポンプより送られたプール水を濾過する濾過器、濾過されたプール水の一部を濾過器の下流に設けられた前記容器に送る水路、及び、プール水をメインポンプ及び濾過器を経て再びプールに戻す循環水路、を含む循環濾過式プール水の消毒滅菌装置」が記載されているといえる。
そして、前記(A-2)と第1図の記載によれば、該「容器」において、上ぶたより高度晒粉錠剤をその内部に充填することが示される。
そうであれば、引用例1には、
「上ぶたより高度晒粉の錠剤をその内部に充填した、該錠剤をプール水に溶出せしめる開放の容器、
前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路、
プール水を濾過器へ送るメインポンプ、
メインポンプより送られたプール水を濾過する濾過器、
濾過されたプール水の一部を濾過器の下流に設けられた前記容器に送る水路、及び、
プール水をメインポンプ及び濾過器を経て再びプールに戻す循環水路、
を含む循環濾過式プール水の消毒滅菌装置」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用1発明」という)が記載されていると認められる。

V.対比、判断
そこで、本願発明と引用1発明とを対比する。
引用1発明は、循環水路を用いてプール水を濾過及び滅菌するものであって、その「循環濾過式プール水の消毒滅菌装置」は本願発明の「プール循環水の処理装置」に相当し、引用1発明の「プール水を濾過器へ送るメインポンプ」、「プール水を濾過する濾過器」は、本願発明の「プール循環水を送り出す濾過ポンプ」、「プール循環水を濾過する濾過装置」にそれぞれ相当する。
また、引用1発明の「高度晒粉の錠剤」、「該錠剤をプール水に溶出せしめる開放の容器」、「容器の上ぶた」は、本願発明の「無機の塩素化錠剤からなる固形薬剤A」、「薬剤溶解槽1」、「投入口6」にそれぞれ相当し、本願発明における「非耐圧構造の薬剤溶解槽1」の非耐圧構造とは、本願明細書に「薬剤溶解装置を内部に圧力がかからない設計とし」(段落0005)と記載されており、開放式のものを含み、したがって、引用1発明の「開放の容器」は本願発明の「非耐圧構造」を満たすものである。
更に、引用1発明の「前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路」及び「濾過されたプール水の一部を濾過器の下流に設けられた前記容器に送る水路」における水路には配管が典型的なものとして含まれ、当該「前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路」、「濾過されたプール水の一部を濾過器の下流に設けられた前記容器に送る水路」は、本願発明の「処理水の主配管2」、「濾過装置の後側に設置された薬剤溶解槽への供給水Bの配管3」にそれぞれ相当する。
よって、両者は、
「プール循環水の処理装置において、
無機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aを充填可能な非耐圧構造の薬剤溶解槽1、処理水の主配管2、前記プール循環水を送り出す濾過ポンプ、該濾過ポンプから送り出されたプール循環水を濾過する濾過装置、濾過装置の後側に設置された薬剤溶解槽への供給水Bの配管3、固形薬剤の投入口6を有する、処理装置」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】
当該薬剤溶解槽の内部構造につき、本願発明は、「薬剤溶解槽1内で無機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aの充填層を薬剤溶解水Cの液面より上部に保持する目皿4、薬剤溶解槽1の内部の前記目皿4の下部、目皿4の位置又は目皿4の上部に設けられた、供給水Bを上向きにスプレーして目皿4の上に充填された無機の塩素化錠剤からなる固形薬剤Aを溶解せしめるスプレーノズル5」を具備するのに対して、引用1発明では、当該構成が示されない点。

【相違点2】
当該処理装置につき、本願発明は、「薬剤溶解槽1内の底部に集められた薬剤溶解水Cを処理水の主配管へ供給する供給ポンプ7を有する」との構成を具備するのに対して、引用1発明では、当該構成が具体的に示されない点。

【相違点3】
当該薬剤溶解槽につき、本願発明は、「30?250kgの固形薬剤Aを一回に充填可能な、高さ100cm?150cm、幅30cm?60cmの」ものであるとの構成を具備するのに対して、引用1発明では、当該構成が具体的に示されない点。
以下、相違点につき検討する。

【相違点1】について
引用1発明では、錠剤を充填した容器にプール水を導入することで錠剤をプール水に溶出せしめるものである。
一方、引用例2又は引用例3には、固形薬剤を充填した薬剤溶解槽に供給水を導入することで、固形薬剤を処理水に溶解するものが記載されており、具体的には、引用例2の前記(B-1)?(B-3)又は引用例3の前記(C-1)?(C-3)によれば、水泳プール循環水等の一部を殺菌消毒する際に、薬剤溶解槽の内部には、固形薬剤の充填層を薬剤溶解水の液面より上部に保持する目皿と、目皿の上部又は下部に設けられた、固形薬剤を溶解せしめる上向きのスプレーノズルが設けられており、さらに引用例2の第1図又は引用例3の第1図を参照すれば、薬剤溶解槽の底部に集められた薬剤溶解水が主配管に供給されることが記載されており、このように、引用例2又は3には、薬剤溶解槽内部の構造につき、「固形薬剤Aの充填層を薬剤溶解水Dの液面より上部に保持する目皿」、「目皿の上部又は下部に設けられた、供給水を上向きにスプレーして目皿の上に充填された無機の塩素系化錠剤からなる固形薬剤Aを溶解せしめるスプレーノズル」が示されている。
そして、引用例2又は引用例3に記載の技術は、少なくともかかる構造を採ることにより、引用例2の前記(B-4)又は引用例3の前記(C-4)によれば、引用1発明(すなわち、特公昭45-29788号公報)の如き、固形薬剤を常時処理水中に浸漬しているタイプのものを改良しようとするものである。この場合、開放の容器からなる引例1発明に適用できないとする特段の事由もない。
そうであれば、引用1発明において、錠剤を充填した容器に、引用例2又は引用例3記載の固形薬剤の充填層を薬剤溶解水の液面より上部に保持する目皿と、目皿の上部又は下部に設けられた、供給水を上向きにスプレーして目皿上に充填された無機の塩素化錠剤からなる固形薬剤を溶解せしめるスプレーノズルを設け、本願発明の相違点にかかる構成を具備するようにすることは当業者が適宜実施し得るものである。

【相違点2】について
(1)引用1発明では、前記(A-3)の後段及び第2図の記載によれば、「前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路」と「プール水をメインポンプ及び濾過器を経て再びプールに戻す循環水路」との接続部をエジェクター方式にして溶出液を吸引させることが必要であることが示されたものであって、このエジェクター手段の採用は、当該溶出液を循環水の本流に合流させるべく溶出液を移送するために用いられることは明白であり、他方、この分野において、エジェクター手段とポンプ手段とは液体の移送手段として共に周知のものである。
そして、上記相違点1についての箇所で記載したとおり、その引用1発明に対して、引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用することは当業者が適宜実施し得るものであり、そのように適用した場合においては、その発明では、引用例2の第1図及び引用例3の第1図によれば、明らかなように、自ずと、溶出液が容器内の底部に集まり、ないしは、集められるものである。
そうであれば、その引用1発明に対して、引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用した発明において、上記の容器内の底部に集められた溶出液を循環水の本流に合流させるべく、上記エジェクター手段に変えてポンプ手段を採用すること、そして、当該溶出液を当該ポンプ手段により「前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路」に移送するようにして、本願発明の当該相違点2に係る構成を具備するようにすることは当業者であれば困難なく適宜実施し得るものである。
(2)引用1発明では、前記錠剤の一部を循環水で溶出した溶出液を循環水の本流に合流させるものである。
そして、上記相違点1についての箇所で記載したとおり、その引用1発明に対して、引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用することは当業者が適宜実施し得るものであり、そのように適用した場合においては、その発明では、引用例2の第1図及び引用例3の第1図によれば、明らかなように、自ずと、溶出液が容器内の底部に集まり、ないしは、集められるものである。この場合、その容器は開放式であって、溶出水の移送が滞る虞が生ずることは明白である。
そうであれば、引用1発明に対して、引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用した発明において、上記の容器内の底部に集められた溶出液を循環水の本流に合流させるべく、当該溶出液を「前記錠剤の一部を循環水に溶出した溶出液を循環水の本流に合流させる水路」に移送するところのポンプ手段を設け、本願発明の当該相違点2に係る構成を具備するようにすることは当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
(3)上記(1)及び(2)で記載したとおり、引用1発明において引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用した場合において、上記相違点に係る構成を有するようにすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎず、何ら困難を伴わない。

【相違点3】について
引用1発明においては、その前記(A-4)によれば、容器の大きさとして、高度晒粉の錠剤3?20Kg充填でき内径250mm及び直管有効高さ500mmが例示されるが、これに限られるものではない。
そして、引用1発明に対して、引用例2及び3で示される薬剤溶解槽内部の構造を適用した発明において、そこでの容器は、高度晒粉の錠剤を内部に充填するものの、その錠剤が消耗すれば、そこでの消毒滅菌処理は中断するに至るものであり、このことは自明なことである。
そうであれば、できるだけ長期間にわたり消毒滅菌処理を実施しようとすることは当業者にとって当然のことに過ぎず、そのため、そこでの容器の大きさを、「30?250kgの固形薬剤Aを一回に充填可能な、高さ100cm?150cm、幅30cm?60cm」の大きさとすることは当業者が通常なし得る設計事項に過ぎない。
また、引例1発明において上記相違点1?3に係る事項を具備することにより格別予想し難い効果を奏したものであるということはできない。

【請求人の主張について】
請求人は、その平成19年6月15日付け意見書で、「本願発明のように、濾過装置を通った後の供給水は減圧されているはずですから、このような場合は・・・スプレーノズルは使えないと考えられます。」と主張する。
しかし、この種のスプレーノズルにおいては、その水をスプレーするために格別高い圧力を要しないものであり、他方、処理対象水が濾過装置を通過することにより、その処理対象水につき圧力降下が生ずるとしても、通過前の圧力が全て損なわれるものでない。
そして、濾過後の水を含む水の圧力は、本願発明のような濾過装置を伴う処理装置においては、濾過ポンプの加圧能力の程度、濾過装置の減圧の程度、濾過装置と薬剤溶解槽との高低差、ポンプ19、しぼり21(引用例1の第2図及び第3図)等の付帯設備の有無、等の設計方法により、任意に設定できるものである。
そうであれば、濾過装置を通った後の供給水につき、その圧力を、必要なスプレー圧程度ないし、それ以上となし得るものであることは当業者であれば直ちに理解できる。
(そうであるからこそ、引用例2及び3においては、その先行技術である引用例1に記載されるところの濾過後に薬液処理する技術につき改良するべく、スプレーノズルを用いる技術を開示するものである。)
したがって、濾過装置を通った後の供給水を用いる方式に対してはスプレーノズルは使えないとする請求人の上記主張は採用できない。

VI.むすび
したがって、本願発明は引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-20 
結審通知日 2007-07-23 
審決日 2007-08-06 
出願番号 特願平6-97996
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 斉藤 信人
中村 敬子
発明の名称 固形薬剤溶解装置  
代理人 廣田 雅紀  
代理人 廣田 雅紀  

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