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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1164699
審判番号 不服2005-5843  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-04 
確定日 2007-09-18 
事件の表示 平成5年特許願第351759号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月1日出願公開、特開平7-194802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月29日の出願であって、平成16年10月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成16年12月6日付けで手続補正がなされたが、平成17年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年4月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月25日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の記載のとおりのものである。
「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、
この変動入賞装置内に配置された継続入賞口と、
複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、
前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備えた弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、
停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合に、当該大当り図柄を記憶する大当り図柄記憶手段と、
前記大当り回数を各図柄毎に記憶する大当り回数記憶手段と、
前記大当り回数記憶手段の記憶に基づいて、大当り回数を計数する大当り回数分析手段と、
前記大当り図柄記憶手段に記憶された大当り図柄が確率変動図柄であるかどうかを判定する大当り図柄分析手段と、を備え、
上記画像表示装置は、
前記大当り図柄記憶手段に記憶された当該大当り図柄を表示する大当り図柄表示手段、前記大当り図柄記憶手段に記憶された各図柄毎の大当りの回数を表示する大当り回数表示手段及び
大当り図柄が確率変動図柄であるか否かを表示するとともに、全ての大当り図柄並びに全ての大当り図柄に対する個別の大当り図柄の発生回数の傾向比較、確率変動図柄と確率変動図柄以外の図柄との発生回数の傾向比較を表示する大当り図柄分析表示手段として各々機能するように構成されていることを特徴とする弾球遊技機。」

3.引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成5年12月27日に頒布された特開平5-345068号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0014】図1はパチンコ遊技機1の前面斜視図で、パチンコ遊技機1の前面枠2には、遊技盤3(後述する)の前面を覆うカバーガラス4の上方に賞球の表示ランプ5等が、カバーガラス4の下方にパチンコ球の供給皿6、受け皿7と、供給皿6からのパチンコ球を1個ずつ打ち出す打球発射装置の操作部8が配設される。
【0016】図2のように遊技盤3の表面には、ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17のほぼ中央に各種情報を表示可能な映像表示装置20が、その下方に変動入賞装置21が配設される。
【0017】変動入賞装置21の直上方には始動口22が配設され、始動口22には入賞球を検出する始動スイッチ23が設置される。
【0018】24は映像表示装置20の上方に設けられる天入賞口(一般入賞口)、25a?25dは遊技部17の左右に設けられる袖入賞口(一般入賞口)、26はアウト口を示す。
【0025】変動入賞装置21は、図2のように遊技盤3に取付けられる基板50の中央に長方形の大入賞口51が形成され、大入賞口51に球を受け入れない閉状態(遊技者に不利な状態)と、球を受け入れやすい開状態(遊技者に有利な状態)とに変換可能な開閉扉52が配設される。
【0027】大入賞口51の内部には、図示しないが中央に継続入賞口が、その左右に一般入賞口が設けられ、継続入賞口に入賞球を検出する継続スイッチ54が、一般入賞口に入賞球を検出するカウントスイッチ55が設置される。
【0038】遊技制御装置75は、役物用CPU76、ROM77、RAM78、バッファゲート79、出力ポート80等からなり、ROM77に定めたプログラムデータおよび始動口22の始動スイッチ23、普図始動口60a,60bの普図始動スイッチ61、変動入賞装置21の大入賞口51内の継続スイッチ54、カウントスイッチ55の検出信号に基づいて、映像出力制御装置45に表示制御信号を出力すると共に、記憶表示器39、変動入賞装置21の開閉扉52の駆動ソレノイド53、普通図柄表示器63、記憶表示器64、始動口22の開閉翼57a,57bの駆動ソレノイド58、各ランプ、LEDを制御する。
【0040】映像出力制御装置45は、ROM、RAMを内蔵した表示器用CPU82、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)83、V-RAM84,85、フォントROM86,87、RAM88等からなり、遊技制御装置75からの表示制御信号および設定器91、不正検出器92、球貸機10、排出制御装置72、外部操作スイッチ93、管理装置90からの表示要求信号に基づいて、映像表示器44の映像を制御する。
【0042】設定器91は、図8のようにパチンコ遊技機1の裏面部等に配設され、その設定ボタンによってセットされた数値に基づく遊技の図柄キャラクタ、特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)、図柄変動時の更新速度、ラッキーナンバ(連続開放ナンバ)等の表示要求信号(設定信号)を送る。
【0050】RAM88には、天気予報、交通情報等の情報の表示データ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数も記憶する。
【0055】次に、遊技制御の内容を図11?図38のフローチャートに、映像出力制御の内容を図39?図54のフローチャートに基づいて説明する。フローチャート中、映像表示装置20を特図、普通図柄表示器63を普図と呼ぶ。
【0057】SW読込みは、図13のように特図スイッチ(始動口22の始動スイッチ)23がオンすれば、これを最大4つまで記憶し、特図用の乱数を読込む(2.01?2.05)。
【0059】特図ゲーム処理は、図14のように処理Noにしたがって各処理に入る(3.01?3.14)。
【0060】特図始動記憶がないときは、図15の通常動作にて、呼び込み転送データをセットし、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入る(3.101?3.105)。
【0061】図柄変動に入ると、図16のように図柄変動開始転送データをセットし、図柄変動音、ランプ動作を出力する(3.151?3.153)。
【0062】停止図柄決定は、図17のように始動記憶時に読込んだ乱数を、大当たり確率の変動中かどうかによって選定される大当たり値(特別の図柄の大当たり発生によって増加する)と比較し、乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、乱数が大当たり値と異なれば、外れ停止図柄を読込む(3.201?3.206)。
【0063】次に、その停止図柄転送データをセットし、左、中の図柄が一致のときのみリーチ転送データ、駒送り数転送データをセットする(3.207?3.211)。遊技の図柄は左、中、右の3つの図柄からなる。
【0064】左図柄停止では、図18のように左図柄変動制御転送データをセットし、処理タイマがタイムアップすると、左図柄停止音を出力する(3.251?3.253)。
【0065】中図柄停止では、図19のように中図柄変動制御転送データをセットし、処理タイマがタイムアップすると、中図柄停止音を出力すると共に(3.301?3.303)、左、中の図柄が一致してないときは右図柄停止(リーチ以外)に、一致のときは右図柄停止(リーチ)に入る(3.304?3.308)。
【0066】右図柄停止(リーチ以外)では、図20のように右図柄変動制御転送データをセットし、処理タイマがタイムアップすると、外れ動作に入る(3.351?3.354)。
【0067】右図柄停止(リーチ)では、図21のようにリーチ目が特別の図柄であれば、特別リーチ転送データをセットし、リーチ音、ランプ動作を出力し(3.401?3.407)、処理タイマがタイムアップすると、全停止図柄が一致のときはファンファーレ動作に入り、一致してないときは外れ動作に入る(3.408?3.412)。
【0068】外れ動作では、図22のように外れ音を出力した後、通常動作に戻る(3.451?3.453)。
【0069】ファンファーレ動作では、図23のようにファンファーレ転送データをセットし、ファンファーレ音を出力した後、大当たり動作に入る。このとき大当たり確率を通常値にする(3.501?3.506)。
【0070】大当たり動作(特別遊技)に入ると、図24のように変動入賞装置21の開閉扉52を開き、継続スイッチ54がオンする前は、継続入賞前転送データをセットし、継続スイッチ54がオンすると、継続入賞後転送データをセットし、継続入賞音を出力し、同時に継続回数転送データならびに継続スイッチ54、カウントスイッチ55のオン毎にカウント数転送データをセットし、大当たり動作音を出力する(3.551?3.558)。
【0071】変動入賞装置21の開閉扉52を開いてから、カウント数が所定数(10個)もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了する。
【0072】この際、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、図25のインターバル動作の終了後、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技が終了すると、図26の大当たり終了動作に入る(3.560?3.564)。
【0093】特図始動記憶による図柄変動処理は、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、図43のように画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、この後リーチ信号がないときは図柄変動処理(通常停止)に、あるときは図柄変動処理(リーチ)に入る(14.01?14.07)。
【0094】図柄変動処理(通常停止)では、図44のようにそれぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令する(15.01?15.12)。
【0096】左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、図46のファンファーレ処理にて、フォントROM86,87からファンファーレ表示データを選択し、画像更新タイミング毎に画像更新を指令する(17.01,17.02)。
【0098】大当たりの発生にて特別遊技に入ると、継続スイッチ54がオンする前は、図48の大当たり前半処理に入り、フォントROM86,87からカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令し、このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令する(19.01?19.05)。
【0132】このように、映像表示装置20の映像が制御され、映像表示装置20には遊技条件にしたがい呼び込み動作、図柄変動、図柄停止、大当たりディスプレイ、入賞カウント、継続ディスプレイ等の遊技画像が表示されると共に、不正検出器92、球貸機10、排出制御装置72、外部操作スイッチ93、管理装置90からの外部の割込み要求、遊技制御装置75からの要求に基づく各種情報が表示される。
【0133】即ち、遊技表示のほかに、映像表示装置20に、遊技の説明、打止め、獲得球の交換指示、球貸し動作状態、球排出動作状態、遊技店情報(遊技店の定休日、閉店時間、開店時間、次の遊技機開放時間)、食事中、コマーシャル、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数、不正情報、火災、地震情報等が表示される。

前記摘示の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17には、天入賞口(一般入賞口)24及び袖入賞口(一般入賞口)25a?25dと、始動口22と、球を受け入れない閉状態と受け入れやすい開状態とに変換可能な変動入賞装置21と、
この変動入賞装置21に形成された大入賞口51の内部に設けられた継続入賞口と、
左、中、右の図柄が一致すると大当たりとなる特図ゲームを行わせる映像表示装置20と、
前記始動口22の始動スイッチ23がオンすれば、これを記憶し、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入り、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、それぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令し、左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、変動入賞装置21の開閉扉52を開き、カウント数が所定数もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了し、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技を終了させる映像出力制御装置45と遊技制御装置75とを備えたパチンコ遊技機において、
始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、その停止図柄転送データをセットし、
前記映像出力制御装置45のRAM88には、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を記憶し、
大当たりの発生にて特別遊技に入ると、フォントROM86,87からカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令し、このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令し、
映像表示装置20に、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数が数値により表示されるパチンコ遊技機。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比するに際して、本願発明の「前記大当り図柄記憶手段に記憶された各図柄毎の大当りの回数を表示する大当り回数表示手段」との記載について検討すると、本願発明では、「各図柄毎の大当りの回数」について、「前記大当り回数を各図柄毎に記憶する大当り回数記憶手段」と記載されており、「各図柄毎の大当りの回数」が記憶される手段について、「大当り図柄記憶手段」と「大当り回数記憶手段」のいずれであるのか、あるいは両方の手段で記憶されるのか明りょうではないので詳細な説明を参酌すると、「大当り回数記憶手段230に記憶した図柄毎の大当りの発生回数」(段落0058)と記載されており、両方の手段で記憶されることは記載されていないことから、「前記大当り図柄記憶手段に記憶された」は「前記大当り回数記憶手段に記憶された」の誤記であると認められる。

そこで、本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17には、」は本願発明の「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、」に対応し、以下同様に、「天入賞口(一般入賞口)24及び袖入賞口(一般入賞口)25a?25d」は「複数の一般入賞口」に、「始動口22」は「始動口」に、「球を受け入れない閉状態と受け入れやすい開状態とに変換可能な変動入賞装置21」は「打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置」に、「この変動入賞装置21に形成された大入賞口51の内部に設けられた継続入賞口」は「この変動入賞装置内に配置された継続入賞口」に、「左、中、右の図柄が一致すると大当たりとなる特図ゲームを行わせる映像表示装置20」は「複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置」に、「パチンコ遊技機」は「弾球遊技機」に各々対応し、引用発明について次のことがいえる。

a.引用発明の「前記始動口22の始動スイッチ23がオンすれば、これを記憶し、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入り、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、それぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令し、左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、変動入賞装置21の開閉扉52を開き、カウント数が所定数もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了し、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技を終了させる」構成は、表現上の差異があるだけで、実質的には、本願発明の「前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる」構成に対応するものであり、そのように制御する引用発明の「映像出力制御装置45と遊技制御装置75」は本願発明の「電気的制御装置」ということができる。

b.引用発明の「始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、その停止図柄転送データをセット」する構成は、「大当りとなった場合に、当該大当り図柄を記憶する大当り図柄記憶手段」において、本願発明と共通するものである。

c.引用発明の「映像出力制御装置45のRAM88には、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を記憶」する構成は、「大当たり」、「特別大当たり」、「ラッキーナンバ大当たり」毎に、何等かの当り情報を記憶し、その記憶に基づいて発生回数を計数するものであることが、弾球遊技機分野における技術常識に照らして明らかなことであるから、電気的制御装置に「大当り回数を記憶する大当り回数記憶手段」及び「大当り回数記憶手段の記憶に基づいて、大当り回数を計数する大当り回数分析手段」を備える点において、本願発明と共通するものである。

d.引用発明の「大当たりの発生にて特別遊技に入ると、…このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令」する構成は、「特別図柄」が、「特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)」(段落0042)との記載から、確率変動図柄を意味することは明らかであり、また、「特別図柄であれば」が、大当り図柄記憶手段に記憶された大当り図柄に基づいて既に判断されたことを前提とするものであることは、弾球遊技機分野における技術常識に照らして明らかであるから、引用発明においても、「大当り図柄記憶手段に記憶された大当り図柄が確率変動図柄であるかどうかを判定する大当り図柄分析手段」を実質的に備えることを意味するものである。

e.これらの引用発明における手段(b?d)が、「映像出力制御装置45と遊技制御装置75」に備えられていることは明らかなことである。

f.引用発明の「大当たりの発生にて特別遊技に入ると、…大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令」する構成は、上記したとおり、大当たり出目(大当たり図柄)が大当り図柄記憶手段に記憶されており、また、その記憶に基づいて表示を指令することも、その機能及び弾球遊技機分野における技術常識に照らして明らかなことであるから、本願発明の「大当り図柄記憶手段に記憶された当該大当り図柄を表示する大当り図柄表示手段」に対応するものである。

g.引用発明の「映像表示装置20に、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数が数値により表示される」構成は、「大当り回数記憶手段に記憶された大当りの回数を表示する大当り回数表示手段」において、本願発明と共通するものである。

h.引用発明の「大当たりの発生にて特別遊技に入ると、…このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令」する構成は、上記したとおり、「特別図柄」が確率変動図柄を意味し、「特別画像合成を指令」することにより、他の大当りと区別して表示することも明らかなことであるから、「大当り図柄が確率変動図柄であるか否かを表示する」点において、本願発明と共通するものである。

i.これらの引用発明における表示(f?h)が、「映像表示装置20」にされることは明らかなことである。

そうすると両者は、「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、
この変動入賞装置内に配置された継続入賞口と、
複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、
前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備えた弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、
大当りとなった場合に、当該大当り図柄を記憶する大当り図柄記憶手段と、
前記大当り回数を記憶する大当り回数記憶手段と、
前記大当り回数記憶手段の記憶に基づいて、大当り回数を計数する大当り回数分析手段と、
前記大当り図柄が確率変動図柄であるかどうかを判定する大当り図柄分析手段と、を備え、
上記画像表示装置は、
前記大当り図柄記憶手段に記憶された当該大当り図柄を表示する大当り図柄表示手段、前記大当り回数記憶手段に記憶された大当りの回数を表示する大当り回数表示手段として各々機能するように構成されている弾球遊技機。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;「大当りとなった場合」ついて、本願発明は、「停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合」であるのに対して、引用発明は、始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致した場合である点。

相違点2;記憶・表示される大当り回数が、本願発明は、「各図柄毎」であるのに対して、引用発明は、大当たり、特別大当たり、ラッキーナンバ大当たり毎、即ち、(大当りの)種類毎である点。

相違点3;本願発明は、「全ての大当り図柄並びに全ての大当り図柄に対する個別の大当り図柄の発生回数の傾向比較、確率変動図柄と確率変動図柄以外の図柄との発生回数の傾向比較を表示する大当り図柄分析表示手段」として画像表示装置が機能するのに対して、引用発明は、数値により回数を表示するものの、傾向比較を表示する点について記載されていない点。

5.判断
相違点1について
弾球遊技機において、「大当りとなった場合」、その前提となる大当りを決定する手段として、「停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合」、即ち、事後決定と、始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致した場合、即ち、事前決定とがあり、両手段が選択的に採用され得ることは、当該分野における技術常識に属する周知技術であるから、引用発明においても、大当りを決定する手段として、事後決定、即ち、「停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合」に変更することは、当業者が設計的に成し得る程度のことである。
また、「停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合」との記載について、本願の実施例には、具体的に制御する手段が記載されているものではなく、画像表示装置40が液晶ディスプレイであること、さらに、弾球遊技機分野における技術常識を勘案すると、大当りを決定する手段として事前決定しており、上記記載が、遊技者から見て「停止表示された停止図柄が、予め設定された当り図柄に一致した場合」と表現していると解することも可能であり、そうであるなら、記載表現上の差異に過ぎないものである。
以上のとおりであるから、何れにしても相違点1については、格別なものではない。

相違点2及び3について
引用発明は、「その設定ボタンによってセットされた数値に基づく遊技の図柄キャラクタ、特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)、図柄変動時の更新速度、ラッキーナンバ(連続開放ナンバ)等の表示要求信号(設定信号)を送る。」(段落0042)との記載によれば、大当りの種類が、図柄の種類に対応して設定されているものと認められるから、「大当りの種類に対応した図柄の種類毎」に記憶・表示するものである。
ところで、弾球遊技機を含む図柄による抽選機能を有する遊技機分野において、当り等の抽選結果を「各図柄毎」に記憶・表示することは、例えば、特開平4-164470号公報、実公平5-41755号公報等に記載されているように、周知技術であり、また、情報をどのレベルまで細分化して記憶・表示するかは、当業者が必要に応じて設計的に成し得ることであるから、引用発明において、当り等の抽選結果を「各図柄毎」に記憶・表示する周知技術を採用して、「大当りの種類に対応した図柄の種類毎」を「各図柄毎」に変更することは、当業者にとって格別創意工夫を要することではない。
次に、本願発明における「全ての大当り図柄並びに全ての大当り図柄に対する個別の大当り図柄の発生回数の傾向比較、確率変動図柄と確率変動図柄以外の図柄との発生回数の傾向比較を表示する大当り図柄分析表示手段」との構成について、全ての情報をグラフ表示することにより、全ての情報に対する個別の情報の傾向比較が可能となることは明らかであるから、全ての情報をグラフ表示することは、傾向比較を表示するものといえる。
そして、そのように表示することは、例えば、上記周知例、即ち、特開平4-164470号公報、実公平5-41755号公報等に記載されているように、弾球遊技機を含む図柄による抽選機能を有する遊技機分野における周知技術であり、さらに、数値とグラフを併せて表示することも、例えば、実公昭63-14875号公報、特開平5-324631号公報等に記載されているように、一般的な周知技術であるから、引用発明において、数値による回数表示と併せてグラフを表示することにより、「全ての大当り図柄並びに全ての大当り図柄に対する個別の大当り図柄の発生回数の傾向比較、確率変動図柄と確率変動図柄以外の図柄との発生回数の傾向比較を表示する大当り図柄分析表示手段」として画像表示装置を機能させることは、当業者が容易に想到できることである。

作用効果について
本願発明の「大当り図柄を遊技者にわかり易く表示できる」及び「特に確率変動図柄を遊技者にわかり易く表示することができる」との作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-18 
結審通知日 2007-07-19 
審決日 2007-08-01 
出願番号 特願平5-351759
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
土屋 保光
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 米山 淑幸  
代理人 竹山 宏明  

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