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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1164805
審判番号 不服2005-19225  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-06 
確定日 2007-09-20 
事件の表示 特願2003- 56499「回転電機の回転子」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-266965〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 出願の経緯・本願発明
本件出願は、平成15年3月4日の出願であって、その請求項1ないし8に係る発明は、平成19年3月23日付けの手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1には次のとおり記載されている。

「磁束を発生するロータコイルと、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体および第2のポールコア体から構成されたポールコアを有する回転電機の回転子において、前記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する磁石と、前記爪状磁極に固定され前記磁石を爪状磁極に支持する補強体としての磁石保持部材とからなる磁石要素を有し、前記磁石要素の磁石保持部材には、前記爪状磁極の内周部を接合状態で固着している前記爪状磁極の内周面に沿った形状の内周部と、前記内周部の周方向両端から外径側に折曲し、前記磁石を外周側から挟み込んで補強体に保持する折曲部分を有し、前記磁石要素の対向面を構成する前記磁石保持部材の折曲部分の相互間に充填される樹脂部材を設けたことを特徴とする回転電機の回転子。」(この発明を以下「本願発明」という。)

2. 引用刊行物
刊行物1:特開2001-86715号公報
刊行物2:特開2002-335660号公報

(1) 当審における拒絶の理由に引用した、刊行物1には、発明の名称を「ロータ構造」と題して、図面とともに次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁束を発生するロータコイルと、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体から構成されたポールコアと、上記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同志の磁束の漏洩を低減する磁石と、この磁石を外周側が互いに広がるように傾斜する如く支持する補強体とを備えたことを特徴とするロータ構造。
【請求項2】 上記補強体は、爪状磁極の内周面に沿う内周部と、この内周部の両端から爪状磁極の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から折曲された磁石の外周面を押さえ付ける押さえ付け部と、押さえ付け部から磁石の外周面へ折返された折り返し部とより成り、補強体の内周側に上記磁石を支持したことを特徴とする請求項1に記載のロータ構造。
【請求項3】 上記補強体は、爪状磁極の内周面と磁石の内周面に沿う内周部と、この内周部の両端から磁石の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から爪状磁極に突出して爪状磁極の外周面を押さえ付ける押さえ付け部とより成り、補強体の外周側に上記磁石を支持したことを特徴とする請求項1に記載のロータ構造。」

「【0035】 また、補強体40は接着材等を介して爪状磁極23,24に固着したが、補強体40は金属製であるので、爪状磁極23,24の内周面23a,24aと補強体40の内周部40aとを溶接で接合しても良い。
また、爪状磁極23,24の両側面23c,24cと補強体40の折曲部40bとの間隙には、微小空間Sが設けられているが、この微小空間Sにゴムや樹脂等の弾性体を封入して介在させるようにしてもよい。形状としては、微小空間Sに合う三角柱状、薄板状や棒状等の挿入し易い形状とする。これによれば、同様の効果が得られるとともに、さらにこの弾性体が衝撃力を吸収するとともに、異物混入を抑えることもできる。」

「【0045】
【発明の効果】 以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、磁束を発生するロータコイルと、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体から構成されたポールコアと、上記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同志の磁束の漏洩を低減する磁石と、この磁石を外周側が互いに広がるように傾斜する如く支持する補強体とを備えたので、磁石を補強体で囲んだ状態で個々の爪状磁極に確実に固定でき、磁石に工夫をしなくても、磁石及び補強体の磁石が保持された部分より成る側面磁石体の強度を高くでき、耐遠心力性も高い。
【0046】 また、請求項2に記載の発明によれば、上記補強体は、爪状磁極の内周面に沿う内周部と、この内周部の両端から爪状磁極の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から折曲された磁石の外周面を押さえ付ける押さえ付け部と、押さえ付け部から磁石の外周面へ折返された折り返し部とより成り、補強体の内周側に上記磁石を支持したので、製作が容易で安価なものができ、補強体自体の強度も高く、また爪状磁極の内周面と側面とに補強体が連続して設けられるので、遠心力や爪状磁極にかかる扇動力を内周側から全面で受けることができ、磁石に影響する力を軽減できる。
【0047】 また、請求項3に記載の発明によれば、上記補強体は、爪状磁極の内周面と磁石の内周面に沿う内周部と、この内周部の両端から磁石の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から爪状磁極に突出して爪状磁極の外周面を押さえ付ける押さえ付け部とより成り、補強体の外周側に上記磁石を支持したので、製作が容易で安価なものが得られるとともに、爪状磁極の内周面と磁石の内周面とに補強体が連続して設けられるので、遠心力や爪状磁極にかかる扇動力を内周側から全面で受けることができ、磁石に影響する力を軽減できる。」

以上によれば、刊行物1には、
「磁束を発生するロータコイルと、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体および第2のポールコア体から構成されたポールコアを有するロータ構造において、前記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する磁石と、この磁石を外周側が互いに広がるように傾斜する如く支持する補強体を有し、補強体は、前記爪状磁極の内周部を接合状態で固着している前記爪状磁極の内周面に沿う内周部と、この内周部の両端から磁石の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から爪状磁極に突出して爪状磁極の外周面を押さえ付ける押さえ付け部と、押さえ付け部から磁石の外周面へ折返された折り返し部とより成り、補強体の内周側あるいは外周側に上記磁石を支持するロータ構造」
との発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。

(2) 同じく当審における拒絶の理由に引用した、刊行物2には、「ブラシレスオルタネータ」と題する発明について、図面とともに次の記載がある。
「【0019】 さらに図3を併せて参照して、ロータコア組立体31Aには、該ロータコア組立体31Aの全周にわたって連なって第1爪極32a…および第2爪極33a…間を埋める合成樹脂製の充填材40が、インジェクション成形等により一体にモールド結合されるものであり、各マグネット38…は充填材40中に埋設される。」
「【0043】
【発明の効果】 以上のように請求項1記載の発明によれば、ロータコア組立体の全周にわたって連なって第1および第2爪極間を埋める合成樹脂製の充填材は、遠心力の作用によってもロータコア組立体から離脱してしまうことはなく、その充填剤中にマグネットが埋設されるので、遠心力に耐えるようにして各マグネットをロータコア組立体に強固に固定することができる。」

3. 対比
(1) 本願発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。
・後者の「ロータ構造」は、前者の「回転電機の回転子」に相当する。
・後者の「磁石を外周側が互いに広がるように傾斜する如く支持する補強体」は、前者の「爪状磁極に固定され前記磁石を爪状磁極に支持する補強体としての磁石保持部材」に相当し、後者の「磁石」と「補強体」とをあわせたものを、前者の「磁石要素」と呼ぶことができる。
・後者の「補強体」に関し、「内周部の両端から磁石の側面へ折曲された折曲部と、この折曲部から爪状磁極に突出して爪状磁極の外周面を押さえ付ける押さえ付け部と、押さえ付け部から磁石の外周面へ折返された折り返し部とより成り、補強体の内周側あるいは外周側に磁石を支持」する点は、前者の「補強体としての磁石保持部材」の「内周部の周方向両端から外径側に折曲し、磁石を外周側から挟み込んで補強体に保持する折曲部分を有」することに相当する。
すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(2) 一致点
「磁束を発生するロータコイルと、このロータコイルを覆って設けられ、交互に噛み合うように突出される爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体および第2のポールコア体から構成されたポールコアを有する回転電機の回転子において、前記爪状磁極の両側面側に配設され、隣り合う爪状磁極の側面同士の磁束の漏洩を低減する磁石と、前記爪状磁極に固定され前記磁石を爪状磁極に支持する補強体としての磁石保持部材とからなる磁石要素を有し、前記磁石要素の磁石保持部材には、前記爪状磁極の内周部を接合状態で固着している前記爪状磁極の内周面に沿った形状の内周部と、前記内周部の周方向両端から外径側に折曲し、前記磁石を外周側から挟み込んで補強体に保持する折曲部分を有する回転電機の回転子。」

(3) 相違点
本願発明が、「磁石要素の対向面を構成する磁石保持部材の折曲部分の相互間に充填される樹脂部材を設けた」ものであるのに対して、引用発明のものは、そのような構成を有していない点。

4.相違点についての判断
(1) 引用刊行物2には、補強体に相当する部材はないものの、引用発明と同等のロータ構造のものにおいて、爪極間に適宜に磁石を配置するとともに、爪極間の隙間を含む全てを樹脂で充填したものが記載されている。ここで、この樹脂充填は、特にマグネットを含めたロータコア組立体の各要素全体を一体化して遠心力の影響を減少させようとするものであるが、一般的にみて、樹脂充填により全体を一体的にすれば、全体がより強固となることは明らかである。
引用発明のものにおいても、遠心力の影響を減少させようとする方向性は同じであるから、ここに、引用刊行物2に記載の技術を採用し、さらに爪状磁極を含めた全体を強固にするべく、磁石要素の対向面の間の隙間を全て樹脂で充填するようにして、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者に容易である。

(2) 本願発明の作用効果も、刊行物1、2に記載された発明から当業者が予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-12 
結審通知日 2007-07-17 
審決日 2007-08-06 
出願番号 特願2003-56499(P2003-56499)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天坂 康種櫻田 正紀  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 丸山 英行
渋谷 善弘
発明の名称 回転電機の回転子  
代理人 竹中 岑生  
代理人 大岩 増雄  
代理人 児玉 俊英  
代理人 村上 啓吾  

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