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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1164826
審判番号 不服2004-24796  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-02 
確定日 2007-09-21 
事件の表示 平成10年特許願第185055号「蒸発燃料制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 16097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年6月30日の出願であって、平成16年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年12月27日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年12月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 燃料タンク内に連通するフィラーパイプのフィラーキャップにリリーフ弁を設け、該リリーフ弁によってフィラーパイプ内の蒸発燃料の上昇圧力を大気に放出する蒸発燃料制御装置において、
前記フィラーパイプの燃料タンク側の端部に、燃料タンクからフィラーパイプへの燃料の逆流を防止するべくチェックバルブを設け、該チェックバルブの弁体に、チェックバルブの上流部と下流部とを連通するバイパス穴を形成することを特徴とする蒸発燃料制御装置。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1記載の「チェックバルブ」に係る発明を、「蒸発燃料制御装置」に係る発明に変更するものである。また、チェックバルブの構成要件である、バイパス穴に関して、「フィラーパイプの給油口と燃料タンクの内圧を等しくする」という発明特定事項を削除したものである。このため、上記補正は、平成18年改正前の特許法(以下「旧法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。さらに、この補正は、旧法第17条の2第4項の他の各号に規定する、いずれの事項を目的とするものでないことが明らかである。
以上のとおりであるから、本件補正は、旧法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成16年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年4月16日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 燃料タンク内に連通するフィラーパイプの燃料タンク側の端部に、燃料タンクからフィラーパイプへの燃料の逆流を防止すべく設けるチェックバルブにおいて、
チェックバルブの弁体に、チェックバルブの上流部と下流部とを連通するバイパス穴を形成することにより、フィラーパイプの給油口と燃料タンクの内圧を等しくすることを特徴とする燃料タンクのフィラーパイプ用チェックバルブ。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平10-47186号公報(以下、「引用例」という。)には、「開閉バルブ」に関して、次のイ?ホの事項が記載されている。
イ)「この発明は、内燃機関の蒸発燃料制御装置に係り、特に燃料タンクへの給油の際に蒸発燃料が大気に放出されるのを防止し得る内燃機関の蒸発燃料制御装置に関する。」(段落【0001】)
ロ)「また、燃料タンク16には、燃料を注入させるフィラー通路78を形成するフィラーチューブ80が設けられている。・・・
また、このフィラーチューブ80内の他端側には、図1に示す如く、燃料タンク16への給油時に開動作される開閉バルブ84がバルブ取付ブラケット86によって取付けられている。この開閉バルブ84は、枢支軸88によって取付ブラケット86に回動可能に設けられている。」(段落【0027】?同【0030】)
ハ)「この開閉バルブ84には、略中央部位に、所定の直径Dのオリフィス90が形成されている。このオリフィス90の直径Dは、比較的小さく、例えば、2〓以下に設定されている。」(段落【0031】)
ニ)「内燃機関2の停止時で、燃料タンク16への給油前においては、図1に示す如く、フィラーキャップ82がフィラーチューブ80に取付けられ、また、図2に示す如く、タンク内圧(P1 )とフィラー通路78の開閉バルブ84とフィラーキャップ82間の給油口の圧力(P2 )とコントロールバルブ48の圧力作用室54の圧力(P3 )と第1エバポ通路34のコントロールバルブ48と燃料タンク16間の圧力(P4 )とが同一になり、つまり、P1 =P2 =P3 =P4 となり、コントロールバルブ48が閉動作しているとともに、2ウェイソレノイドバルブ62が制御手段118によって閉動作されている。」(段落【0044】)
ホ)「内燃機関2の停止時で、燃料タンク16への給油中には、図6に示す如く、給油ノズル120の挿入によって開閉バルブ84が開動作され、また、図7に示す如く、P1 、P4 >P2 、P3 の関係になり、コントロールバルブ48が開動作するとともに、2ウェイソレノイドバルブ62が閉動作されている。これにより、燃料タンク16内の蒸発燃料は、コントロールバルブ48を経てキャニスタ42側に流動され、大気に流出するおそれがない。・・・内燃機関2の停止後で、燃料タンク16への給油後には、図8に示す如く、フィラーチューブ80にフィラーキャップ82が取付けられ、P1 =P2 =P3 =P4 の関係になると、コントロールバルブ48が閉動作するとともに、2ウェィソレノイドバルブ62が閉動作されている。このとき、燃料タンク16のタンク内圧(P1 )が第1設定圧よりも高い第2設定圧になると、プレッシャバルブ70が開動作して燃料タンク16内の蒸発燃料を第3エバポ通路38からキャニスタ42側に流動させる。」(段落【0047】、【0048】)
よって、上記各記載事項を総合すると、引用例には、「燃料タンク16内に連通するフィラーチューブ80に設ける開閉バルブ84において、開閉バルブ84の弁体に、開閉バルブ84の上流側と下流側とを連通するオリフィス90を形成した、燃料タンクのフィラーチューブ用開閉バルブ。」の発明が記載されていると認められる。

3.発明の対比
(1)本願発明の構成事項と引用例に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「燃料タンク16」は本願発明の「燃料タンク」に相当し、以下同様に、「フィラーチューブ80」、「開閉バルブ84」、「オリフィス90」は、それぞれ「フィラーパイプ」、「チェックバルブ」、「バイパス穴」に相当する。
(2)以上の対比から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点]「燃料タンク内に連通するフィラーパイプに設けるチェックバルブにおいて、
チェックバルブの弁体に、チェックバルブの上流部と下流部とを連通するバイパス穴を形成した、燃料タンクのフィラーパイプ用チェックバルブ。」である点。
[相違点1]本願発明のチェックバルブは「燃料タンクからフィラーパイプへの燃料の逆流を防止すべく設ける」ものであるのに対して、引用発明は、係る点が明記されていない点。
[相違点2]チェックバルブを設ける位置について、本願発明は、「フィラーパイプの燃料タンク側の端部」としているのに対して、引用発明は、「フィラーチューブ80の他端側」としているのみである点。
[相違点3]バイパス穴について、本願発明は、「バイパス穴を形成することにより、フィラーパイプの給油口と燃料タンクの内圧を等しくする」としているのに対して、引用発明では、給油口と燃料タンクの内圧との関係について、バイパス穴との関連が明記されていない点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
フィラーパイプに設けられたバルブが、燃料の逆流を防止する目的を有することは、当該技術分野において周知の技術的事項である(特開平10-119594号公報)。よって、係る点に特に言及がなくとも、当業者は引用発明における開閉バルブを設けた目的を当然認識することができるので、上記相違点1において指摘した本願発明の事項は、当業者にとって、自明の事項である。
(2)相違点2について
フィラーパイプの燃料タンク側の端部に位置させてバルブを設けることは、周知の事項である(特開平10-119594号公報、特開平9-72257号公報 参照)。そして、引用発明における開閉バルブ84は、給油ノズル120の挿入によって開動作される関係上、給油ノズル120が到達し得る範囲におけるフィラーチューブ80の適宜箇所に配置されることになるが、前記範囲は、給油ノズル120とフィラーチューブ80双方の長さによって、フィラーチューブ80の全長に亘って変化しうるものであることは明白である。よって、バルブの設置箇所をフィラーチューブ80の全長における適宜箇所に設定することは設計的事項に過ぎないので、前記の周知の事項を考慮して、引用発明における開閉バルブ設置箇所を、上記相違点2において指摘した本願発明と同様の構成とすることは、当業者が格別の創意なくなし得る事項である。
(3)相違点3について
引用発明における、タンク内圧とフィラー通路の開閉バルブとフィラーキャップ間の給油口の圧力に関して、「内燃機関2の停止時で、燃料タンク16への給油前においては、」「タンク内圧(P1 )とフィラー通路78の開閉バルブ84とフィラーキャップ82間の給油口の圧力(P2 )とコントロールバルブ48の圧力作用室54の圧力(P3 )と第1エバポ通路34のコントロールバルブ48と燃料タンク16間の圧力(P4 )とが同一になり」(記載事項ニ)また、「内燃機関2の停止後で、燃料タンク16への給油後には、」「P1 =P2 =P3 =P4 の関係になると」(記載事項ホ)とあることを考慮すると、P1 =P2になるために準静的変化が生じていることが明らかである。そして、P1の圧力を有する空間とP2の圧力を有する空間とが連通していれば、前記準静的変化が生じることは、技術常識である。係る技術常識を考慮すると、引用発明におけるオリフィス90は、P1の圧力を有する空間(燃料タンク)とP2の圧力を有する空間(給油口を含むフィラー通路)とを連通していることが明白なので、必然的にフィラー通路の給油口と燃料タンクの内圧を等しくするものであるといえる。よって、上記相違点3において指摘した本願発明の事項は、当業者にとって、自明の事項である。
(4)作用効果等について
上記の相違点1及び2及び3に係る構成を併せ備える本願発明の作用効果についてみても、上記引用発明及び各周知例に記載された事項から、当業者が容易に予測しうる域を超えるものがあるとは認められない。
したがって、本願発明は、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-26 
結審通知日 2007-06-27 
審決日 2007-08-07 
出願番号 特願平10-185055
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 佐藤 正浩
山内 康明
発明の名称 蒸発燃料制御装置  
代理人 磯野 道造  
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