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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1164925
審判番号 不服2004-26403  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-27 
確定日 2007-09-27 
事件の表示 特願2001-190862「化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月15日出願公開、特開2003- 12459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月25日の出願(特願2001-190862号)であって、平成16年11月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月26日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年1月26日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した2種の平均粒径2?30μmの板状着色顔料を合計で14?30重量%含有するファンデーションであって、当該板状着色顔料の一方の外観色がマンセル表色系において色相10P?5YR未満であり、他方が色相5YR?10GYであるファンデーション。」(以下、「本願補正発明」という。)

(2)引用例
原査定の理由である平成15年9月29日付けの拒絶理由通知書に引用された本出願前に頒布された刊行物である特開2001-39847号公報(以下「引用例A」という)、特開平10-17437号公報(以下「引用例B」という)には以下の記載がある。

引用例A;
(A-1)「干渉光の色相(H)がマンセル表色系において、P,RP,R,YR,Y領域(紫色?黄色)に属する分光反射率特性を有し、表面が酸化鉄で被覆された干渉系酸化鉄被覆雲母チタンの一種または二種以上と、血行促進剤の一種または二種以上とを配合したことを特徴とする皮膚外用組成物。」(【特許請求の範囲の請求項1】)

(A-2)「本発明は目の回りのくまや肌のくすみ等に用いる皮膚外用組成物に関し、さらに詳しくは雲母チタンの干渉光を日本人の肌の色調に近い黄色から赤色に調整することで、目の周りのくまや肌のくすみ等を補正しながら、さらには同時に配合されている血行促進剤によってくまやくすみ等を改善することが可能な皮膚外用組成物に関する。」(段落【0001】)

(A-3)「本発明に使用される干渉系酸化鉄被覆雲母チタンとしては黄酸化鉄を被覆した雲母チタンやベンガラを被覆した雲母チタンが挙げられる。その被覆率としては0.1?30.0重量%が好ましく、特に0.5?10.0重量%が好ましい。この範囲で基板色を肌の色調に近似したものとすることができ、製剤に配合した時に自然な仕上りとなる。その干渉色は黄色から赤色の範囲であり、一種または二種以上を配合することが好ましい。また、その平均粒子径は1?100μmが好ましく、より好ましくは10?30μmである。この平均粒子径の範囲で適度な光沢と干渉色の効果が認められる。かかる干渉系酸化鉄被覆雲母チタンとしては、例えばディオクロムYRおよびディオクロムYY(いずれもエンゲルハード社製商品名)が挙げられる。…本発明における干渉系酸化鉄被覆雲母チタンの配合量は、組成物全量中、0.1?10.0重量%であ…る。」(段落【0005】【0006】)

(A-4)比較例3及びその試験結果には酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(赤色干渉色)を1.5重量%、酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(黄色干渉色)を2.5重量%含む油中水型乳化組成物が20名の女性パネラーに試料を塗布し、20日間継続して使用した時のくま及びくすみ補正効果について17名以上が良いと、自然な仕上り感について12名?16名が良いと、くま及びくすみ改善効果について5名?8名が良いと回答したことが記載されている。酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(赤色干渉色)はディオクロムYR(エンゲルハード社製商品名)、酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(黄色干渉色)は、ディオクロムYY(エンゲルハード社製商品名)である。(段落【0017】?【0019】【0022】【0023】、【表1】【表4】)

引用例B;
(B-1)「【請求項1】分光反射スペクトルにおいて、500?620nmの波長領域にスペクトル的な窪みを有することを特徴とするファンデーション。

【請求項7】色材の分光反射スペクトルの反射率急増領域における変曲点の波長が60nm以上離れている、黄色系色材(A)及び赤色系色材(B)を含有する請求項1?6のいずれか1項記載のファンデーション。」(【特許請求の範囲】)

(B-2)「本発明において、各色材の配合量は、…全組成中に色材(A)を0.1?40重量%、…、色材(B)を0.05?20重量%、…配合するのが好ましい。」(段落【0030】)

(B-3)実施例2に黄色系色材(A)(黄色4号/アルミナ複合顔料)を19.0重量%、赤色系色材(B)(コチニール/アルミナ複合顔料)を8.0重量%含む固型ファンデーションを常法により製造したことが記載されている。(段落【0039】【表2】)

(B-4)「色材(A)及び(B)としては、特に制限されず、例えば有機色素(合成、天然)、無機顔料(焼結顔料、複合酸化物顔料、異元素ドープ顔料等を含む)、色素複合顔料、干渉パール等が挙げられ…る。」(段落【0024】)

(3)対比
引用例Aの特許請求の範囲に記載された発明は、目の周りのくまや肌のくすみ等を補正するための、雲母チタンの干渉光を日本人の肌の色調に近い黄色から赤色に調整した皮膚外用剤に、さらに、血行促進剤を配合することにより、くま、くすみ等を補正するだけでなく、くま、くすみ等を改善、すなわち減少させるものである(上記摘示事項(A-2))。そして、同引用例には、血行促進剤を配合したことによる効果を示すため、血行促進剤を含まない皮膚外用剤が、比較例3として記載されている。
比較例3で使用されている皮膚外用剤は、酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(赤色干渉色)を1.5重量%、酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(黄色干渉色)を2.5重量%含む油中水型乳化組成物である(上記摘示事項(A-4))。
したがって、引用例Aには比較例3として、「酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(赤色干渉色)1.5重量%、酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(黄色干渉色)2.5重量%含む目の周りのくまや肌のくすみ等を補正するための皮膚外用剤」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ここで、雲母は屈折率が2.0未満の板状粉体であり、チタンは屈折率2.0以上の粉体、酸化鉄は無機着色剤である。そして、赤色干渉色は、マンセル表色系において色相10P?5YR未満であり、黄色干渉色はマンセル表色系において色相5YR?10GY未満であることは明らかである。
なお、これらの点については、本願明細書にも、「板状粉体としては、…特に雲母が、透明性が高く、反射干渉光を散乱しないので好ましい。…覆粉体としては、…少なくとも二酸化チタンを含むことが、被覆粉体の屈折率を高くし、また着色板状顔料の色合いを損なわないので好ましい。」(段落【0006】【0007】)、「マンセル表色系における色相10P?5YR未満の赤系の板状着色顔料の着色剤としては、無機赤色顔料、特にベンガラを含むことが自然な肌色を調色できるので好ましい。また、他方のマンセル表色系における色相5YR?10GYの黄系顔料には、無機黄色顔料、特に黄酸化鉄を含むことが好ましい。」(段落【0008】)と記載されている。

すなわち、引用発明における「酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(赤色干渉色)」、「酸化鉄被覆干渉系雲母チタン(黄色干渉色)」は、それぞれ、本願補正発明における「屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した板状着色顔料であってその外観色がマンセル表色系において色相10P?5YR未満であるもの」、「屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した板状着色顔料であってその外観色がマンセル表色系において色相5YR?10GYであるもの」に相当する。

また、ファンデーションは、「肌色を整え、皮膚の欠陥をかくして滑らかに見せるという機能をもった製品」である(「最新化粧品科学、-改訂増補II-」、平成4年7月10日、日本化粧品技術者協会編集、株式会社薬事日報社、第69?70頁参照)から、引用発明における「目の周りのくまや肌のくすみ等を補正するための皮膚外用剤」は、本願補正発明における「ファンデーション」に相当する。

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると両者は、「屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した2種の板状着色顔料を含有するファンデーションであって、当該板状着色顔料の一方の外観色がマンセル表色系において色相10P?5YR未満であり、他方が色相5YR?10GYであるファンデーション。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は無機着色剤で被覆した2種の板状着色顔料の平均粒径が2?30μmであるのに対して引用発明では平均粒径が記載されていない点

[相違点2]
本願補正発明は板状着色顔料を合計で14?30重量%含有するのに対して引用発明では板状着色顔料を合計で4.0重量%含有する点

(4)判断
[相違点1について]
引用例Aには「本発明に使用される干渉系酸化鉄被覆雲母チタンとしては黄酸化鉄を被覆した雲母チタンやベンガラを被覆した雲母チタンが挙げられる。その平均粒子径は1?100μmが好ましく、より好ましくは10?30μmである。この平均粒子径の範囲で適度な光沢と干渉色の効果が認められる。」(上記摘示事項(A-3))と記載されていて、本願補正発明の平均粒径である2?30μmを含む範囲の平均粒径のものが適度な光沢と干渉色の効果が認められると記載されている。
そうすると、引用例A発明において、平均粒径として2?30μmとすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2について]
引用例Bには「黄色系色材(A)及び赤色系色材(B)を含有するファンデーション」(上記摘示事項(B-1))が記載されていて「各色材の配合量は、全組成中に色材(A)を0.1?40重量%、色材(B)を0.05?20重量%、配合するのが好ましい」(上記摘示事項(B-2))こと、「色材(A)及び(B)としては、例えば干渉パールすなわち雲母チタン顔料が挙げられる」(上記摘示事項(B-4))こと、及び「黄色系色材(A)を19.0重量%、赤色系色材(B)を8.0重量%、すなわち合計27.0重量%含む固型ファンデーションを常法により製造した実施例が記載されている」(上記摘示事項(B-3))。
引用例Bに記載の発明は、本願補正発明と同じ黄色系色材(A)及び赤色系色材(B)を含有するファンデーションであるから、引用発明において、引用例Bの上記記載を参酌して、板状着色顔料の含有量を合計で14?30重量%とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
また、本願発明の効果も、本願明細書の記載からは、当業者が予測し得ない顕著なものであるとは認められない。

したがって、本願補正発明は引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月8日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した2種の平均粒径2?30μmの板状着色顔料を合計で10?30重量%含有するファンデーションであって、当該板状着色顔料の一方の外観色がマンセル表色系において色相10P?5YR未満であり、他方が色相5YR?10GYであるファンデーション。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、屈折率2.0未満の板状粉体の表面を、屈折率2.0以上の粉体で被覆し、更にこれを無機着色剤で被覆した2種の平均粒径2?30μmの板状着色顔料における、その含有量の下限値を14重量%から10重量%に拡張するものである。
そうすると、本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例A及びBに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該補正発明を包含する本願発明も同様の理由により引用例A及びBに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-25 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-13 
出願番号 特願2001-190862(P2001-190862)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 化粧料  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 村田 正樹  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 山本 博人  
代理人 有賀 三幸  
代理人 高野 登志雄  

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