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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01H |
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管理番号 | 1164929 |
審判番号 | 不服2005-1550 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-27 |
確定日 | 2007-09-27 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第319688号「漏電遮断器」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月12日出願公開、特開平 8-180792号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年12月22日の出願であって、平成15年11月27日付けで最初の拒絶理由が通知され、平成16年1月20日付けで手続補正がされ、同年5月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月6日付けで手続補正がされ、同年11月12日付けで同年7月6日付けでされた手続補正に対して補正の却下の決定がされると共に拒絶査定がされた。 請求人(出願人)は、この査定を不服として、平成17年1月27日付けで本件審判を請求したものである。 2.本願発明について 上記「1.手続の経緯」に記載したように、原審において、平成16年7月6日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年1月20日付けで手続補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 電路の漏電電流を検出する零相変流器の検出した零相電流に応じて作動する電磁石装置と、 この電磁石装置の動作により開閉機構を介して開離される電路接点と、 上記電路から電源が供給され漏電テストスイッチおよび遠隔漏電テストスイッチの少なくとも一方のスイッチが閉成されると上記零相変流器にテスト用の電流を流す漏電テスト回路と、 上記漏電テストスイッチおよび遠隔漏電テストスイッチに対して直列に接続され上記開閉機構の動作に応じて開閉される焼損防止スイッチと、 上記電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタンを備えた漏電遮断器において、 上記漏電テストスイッチおよび上記焼損防止スイッチは、弾性導電板材からなり中央部が固定され両端部が各々漏電テストスイッチ板および焼損防止スイッチ板として一体に形成された可動接触板と、上記漏電テストスイッチ板と対向して設けられた漏電テストスイッチ固定接点と、上記焼損防止スイッチ板と対向して設けられた焼損防止スイッチ固定接点とで構成されるとともに、 上記遠隔漏電テストスイッチを構成する一対のリード線が、上記可動接触板および上記漏電テストスイッチ固定接点に電気的に接続され、かつ上記開閉機構のオフ動作に伴って移動するテストオフレバーが上記焼損防止スイッチ板を押圧することで、通常時は閉成している上記焼損防止スイッチ板と上記焼損防止スイッチ固定接点が開離されることを特徴とする漏電遮断器。」 なお、あらためて検討しても、平成16年11月12日付けの補正却下の決定は、その理由に示したとおり妥当なものであると認められる。 3.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「平成16年1月20日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1及び段落【0009】の「電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタンを備えた漏電遮断器」との事項。 出願人は意見書において、上記補正事項の根拠を「出願当初明細書段落0025第1行「漏電表示ボタン」、及び段落0038第2行?第7行「電磁石装置7のコイル7aへの通電により、・・・・・・テストオフレバー27は焼損防止スイッチ板16bの付勢力により矢印B方向に表示ボタン22を伴って移動して」との記載に基くものであります。」と説明しているが、請求項1の「開閉機構のオフ動作に伴って移動するテストオフレバーが上記焼損防止スイッチ板を押圧することで、通常時は閉成している上記焼損防止スイッチ板と上記焼損防止スイッチ固定接点が開離される」事項と上記補正に係る事項を共に備える回路遮断器については、出願当初の明細書又は図面に記載されていない。 (2)段落【0041】の「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる。」との事項。」 4.願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項 平成16年1月20日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1及び発明の詳細な説明の【0009】に「上記電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタンを備えた」という事項が追加され、発明の詳細な説明の【0041】に「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる。」という事項が追加された。これらの事項に関して、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の(ア)?(サ)の記載がある。 (ア)「【0020】 ・・・(中略)・・・いわゆる逆接続状態において、遠隔漏電テストスイッチ13が押下されると、漏電テスト回路9に擬似不平衡電流が流れ、増幅器5から電磁石装置7を介して漏電遮断動作がなされる。この漏電遮断動作により焼損防止スイッチ14が開極され、擬似不平衡電流が遮断されるので、電磁石装置7のコイルあるいはサイリスタ6等の電気部品の焼損を防止することができる。 【0021】 ・・・(中略)・・・正常接続では、漏電遮断動作により電路接点8が開離されるので漏電テスト回路9への電圧印加がなくなり、また焼損防止スイッチ14も開極されるので、当然電気部品の損傷はない。」 (イ)「【0022】 実施例2. 図3はこの発明の実施例2の損傷防止スイッチ部の要部斜視図、図4は損傷防止スイッチの閉極状態の要部断面図、図5は焼損防止スイッチの開極状態を示す要部断面図である。 【0023】 図において、10、13、14は上記実施例1において説明と同一のものである。」 (ウ)「【0025】 22は漏電表示ボタン、23は電路接点8の可動側接点に取り付けられているクロスバーであり、開閉機構により電路接点8がオン、オフすると矢印Aのように回動する。24はテストオフレバーであり、クロスバー23の腕部23aと焼損防止スイッチ板16bの間に上下に移動可能に設けられている。 【0026】 その位置関係は電路接点8がオン状態ではテストオフレバー24が焼損防止スイッチ板16bから離れ、焼損防止スイッチ板16bと焼損防止スイッチ固定接点18が接触し、電路接点8のオフ状態では腕部23aによりテストオフレバー24が押し上げられ、焼損防止スイッチ板16bを押し上げ、焼損防止スイッチ板16bと焼損防止スイッチ固定接点18の接触導通を断つ。」 (エ)「【0032】 実施例3. 図6はこの発明の実施例3の焼損防止スイッチ部の要部斜視図、図7は焼損防止スイッチの閉極状態の要部断面図、図8は焼損防止スイッチの開極状態を示す要部断面図、図9は断面方向を変えた焼損防止スイッチの開極状態を示す要部断面図である。 【0033】 図において、10、13、15?18、23?25は上記実施例2において説明のものと同様のものである。」 (オ)「【0036】 実施例4. 図10はこの発明の実施例4の焼損防止スイッチ部の開極状態の要部断面図、図11は焼損防止スイッチの閉極状態の要部断面図である。 図において、13、15?19、22は上記実施例3において説明のものと同様のものである。」 (カ)「【0037】 ・・・(中略)・・・27は表示ボタン22と一体に形成されたテストオフレバーである。」 (キ)「【0038】 次に動作について説明する。図10の焼損防止スイッチが閉極の状態において、漏電テストスイッチ10の押下あるいは漏電遮断動作によって電磁石装置7のコイル7aへの通電により、アマチュア26が矢印C方向に吸引移動される。この動作によりフック26cに掛止されている図示しない開閉機構のトリップバーを引っ張り、開閉機構を介して図2の電路接点8を開離する。同時にストッパー27bの摺動突起26bとの当接が外れ、テストオフレバー27は焼損防止スイッチ板16bの付勢力により矢印B方向に表示ボタン22を伴って移動して、図11の焼損防止スイッチ13が開極した状態になる。」 (ク)「【0039】 図11の焼損防止スイッチ13が開極した状態から開閉機構に連なる操作ハンドルのリセット操作により、リセットレバー28は矢印E方向に回転されると、リセットレバー28の先端はリセット腕27cを押し下げる。これによりテストオフレバー27は矢印B方向に移動して、表示ボタン22の突出を元に戻すと共に押腕27aが焼損防止スイッチ板16bを焼損防止スイッチ固定接点18に接触させる。」 (ケ)「【0041】 上記実施例2、3では、漏電遮断動作および操作ハンドルの手操作によるオン、オフ毎に焼損防止スイッチ13が開閉されるので、焼損防止スイッチ板16bが疲労折損することがあったが、該実施例4の構成では、漏電テストスイッチの押下あるいは漏電遮断動作のときのみ焼損防止スイッチ13が開閉するので、その開閉頻度が少なくなり、焼損防止スイッチ板16の寿命を長くすることができる。また、テストオフレバー27と表示ボタン22とが一体に構成されているので、表示ボタン22の特別の突出装置を不要とすることができる。」 (コ)図面の図4,5,7,8には、実施例2又は3による焼損防止スイッチの閉極状態の要部断面図又は開極状態を示す要部断面図として、漏電表示ボタン22が図示されており、図4,7の焼損防止スイッチの閉極状態の要部断面図における漏電表示ボタン22は、図5,8の焼損防止スイッチの開極状態を示す要部断面図における漏電表示ボタン22と同じ位置に図示されている。 (サ)図面の図11,12には、実施例4による焼損防止スイッチの閉極又は開極状態の要部断面図として、表示ボタン22が図示されている。 5.当審の判断 (1)請求項1及び段落【0009】について 当該補正事項について、上記「4.願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項」で摘示したように、漏電表示ボタン22に関する当初明細書等の記載は、実施例2及び3並びに実施例4に関するものである。そこで、実施例2及び3並びに実施例4についてそれぞれ検討する。 (a)実施例2,3に関する記載事項について 上記記載事項(イ)?(エ),(コ)より、漏電表示ボタン22を備えることが記載されているが、漏電表示ボタン22が突出すること、及びその動作によりこれに応じて漏電表示ボタン22を突出させる電磁石装置を備えることは記載されていない。 なお、上記記載事項(オ)の「図において・・・(中略)・・・22は上記実施例3において説明のものと同様のものである」との記載は、実施例4の表示ボタン22が実施例3の漏電表示ボタン22と同様のものである旨述べるものである。上記記載事項(オ)は、「同様」がどこまで同じとするのかが不明りょうであるが、もし、実施例2,3の漏電表示ボタン22が、実施例4と同様に、テストオフレバーと一体に形成され(上記記載事項(カ)を参照。)突出するものとすると、実施例2,3に設けられる漏電表示ボタン22は、開閉機構の動作により移動するものとなり、本願発明の「電磁石装置の動作に応じて突出する」ものではない。一方、単に漏電表示ボタンという点で同様とするのであれば、実施例2,3に設けられる漏電表示ボタン22が突出するものとはいえない。 よって、請求項1及び段落【0009】の「上記電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタン」は、当初明細書等の実施例2,3に関する部分には記載されておらず、且つ該実施例2,3に関する部分の記載から自明な事項とも認められない。 (b)実施例4に関する記載事項について 上記記載事項(オ)?(ケ),(サ)より、実施例4は、表示ボタン22を備え、該表示ボタン22が電磁石装置7のコイル7aへの通電により突出するものであることが記載されている。 しかし、上記記載事項(オ),(キ),(サ)より、実施例4は、電磁石装置7のコイル7aへの通電により、テストオフレバー27は焼損防止スイッチ板16bの付勢力により移動して、焼損防止スイッチ13が開極した状態になるものであり、上記記載事項(オ),(ク),(サ)より、実施例4は、開閉機構に連なる操作ハンドルにより、テストオフレバー27の押腕27aが焼損防止スイッチ板16bを焼損防止スイッチ固定接点18に接触させるものであるので、実施例4は、本願発明のように、焼損防止スイッチが「開閉機構の動作に応じて開閉される」ものではなく、「開閉機構のオフ動作に伴って移動するテストオフレバーが上記焼損防止スイッチ板を押圧することで、通常時は閉成している上記焼損防止スイッチ板と上記焼損防止スイッチ固定接点が開離される」ものではない。 よって、実施例4は、本願発明の実施例とは認められないから、請求項1及び段落【0009】の「上記開閉機構の動作に応じて開閉される焼損防止スイッチと、上記電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタンを備えた漏電遮断器において」、「上記開閉機構のオフ動作に伴って移動するテストオフレバーが上記焼損防止スイッチ板を押圧することで、通常時は閉成している上記焼損防止スイッチ板と上記焼損防止スイッチ固定接点が開離されること」は、当初明細書等の実施例4に関する部分には記載されておらず、且つ該実施例4に関する部分の記載から自明な事項とも認められない。 (c)その他の記載事項について 当初明細書等において、上記記載事項(ア)?(サ)の事項及びその他の事項を総合しても、本願発明に対応する実施例の開閉機構と電磁装置と漏電表示ボタンとの接続構造を具体的に特定できないので、請求項1及び段落【0009】の「上記開閉機構の動作に応じて開閉される焼損防止スイッチと、上記電磁石装置の動作に応じて突出する漏電表示ボタンを備えた漏電遮断器において」、「上記開閉機構のオフ動作に伴って移動するテストオフレバーが上記焼損防止スイッチ板を押圧することで、通常時は閉成している上記焼損防止スイッチ板と上記焼損防止スイッチ固定接点が開離されること」は、当初明細書等には記載されておらず、且つ当初明細書等の記載から自明な事項とも認められない。 (2)段落【0041】について 段落【0041】に追加された「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる」の事項は、当初明細書等には記載されていない。 また、上記記載事項(ア)には、「正常接続あるいは逆接続の場合」について記載されているが、漏電表示ボタンについては記載されていない。上記記載事項(ウ)には、「漏電表示ボタン22」について記載されているが、「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる」ことについては記載されていない。上記記載事項(オ)?(ケ),(サ)は実施例4に関する記載事項であるが、実施例4は、上記「5.(1)(b)実施例4に関する記載事項について」で検討したとおり、本願発明の実施例ではないから、本願発明について「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる」ことが記載されていたとはいえない。そして、上記記載事項(ア)?(サ)及び当初明細書等のその他の記載事項を総合しても、電路接点のオンオフ状態と、漏電表示ボタンの状態との対応関係が自明であるとは認められず、「正常接続あるいは逆接続のどちらの場合においても、電路接点が漏電遮断動作および擬似漏電遮断動作以外でのオフ状態では、擬似漏電遮断動作を実施しても漏電表示ボタンが突出しないので、漏電遮断器の性能が接続状態に左右されることなく統一できる」ことが自明であるとは認められない。 よって、段落【0041】に追加された上記事項は、当初明細書等の記載から自明な事項とは認められない。 (3)まとめ 以上のとおり、請求項1,段落【0009】,【0041】についてした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、平成16年1月20日付けでした手続補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 6.むすび したがって、平成16年1月20日付け手続補正書による補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-30 |
結審通知日 | 2007-07-31 |
審決日 | 2007-08-14 |
出願番号 | 特願平6-319688 |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(H01H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 茂夫 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
岸 智章 平上 悦司 |
発明の名称 | 漏電遮断器 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 高橋 省吾 |
代理人 | 村上 加奈子 |