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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04B |
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管理番号 | 1164935 |
審判番号 | 不服2005-6851 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-15 |
確定日 | 2007-09-27 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 52059号「ソーラ時計用表示板」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月19日出願公開、特開平 9-243759〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 ・本願発明 本願は、平成8年3月8日に出願されたものであって、平成17年3月11日付け(発送日同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成16年7月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願第9発明」という。)は、次のとおりのものである。 「時計に内蔵されたソーラセルと、前記ソーラセルの表面側に配設されたソーラ時計用表示板とを備えるソーラ時計用表示板構造に用いられるソーラ時計用表示板であって、 前記ソーラ時計用表示板が、光拡散剤を含んだ透明樹脂からなる表示板基板と、前記表示板基板のソーラセル側の表面に形成された反射層とを備え、 前記表示板が、少なくとも表示板に入射する入射光のうち、表示板下方に内蔵されたソーラセルの発電を生じせしめる波長域の光を表示板を介して下方に透過し、 前記表示板が、表示板を介してソーラセルの外部からの視認を困難にするとともに、表示板にカラー色調を付与するカラ-拡散板であることを特徴とするソーラ時計用表示板。」 2 引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和60年8月5日に頒布された特開昭60-148174号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a-1 「この発明は色つき太陽電池に関するものである。 従来、太陽電池は各種電気機器に実用化されてきており、材料としてはアモルフアスシリコンや単結晶シリコンが用いられている。しかし現在使われているこれら太陽電池は黒色またはそれに近い色となつているので見た目が美しいとはいえず、外装部品としては使いづらく、デザイン上の制約があつた。また屋外でソーラーシステムなどに応用された場合、周囲の雰囲気を暗くしてしまい、環境上好ましくない場合もあった。 この発明は、太陽電池に色をつけることによつてこうした従来技術における欠点を解決するものである。 つぎにこの発明の実施例について説明する。 第1図において、太陽電池1の上に選択反射層2およびその上に光拡散透過層3が形成される。太陽電池1として現在使用されているものにアモルフアスシリコン、または単結晶シリコンがあるが、これらを太陽電池として使つた場合の発電に寄与する波長は第2図のとうりである。選択反射層2としてはダイクロツクミラーあるいはコールドミラーなどの多層膜干渉フイルタがある。これは可視光の特定波長の光を選択反射し残余の光を透過するものである。選択反射する光の波長は、第2図の太陽電池1の発電に寄与する波長からずらしたほうがよい。したがってアモルフアスシリコンの太陽電池の場合は反射光の色は赤系、青系または紫系の色のものを用いればよい。他方単結晶シリコンの場合は青系、緑系を反射するものが望ましいが、一応可視域全域の色を出すことができる。またコールドミラーを使うことにより白色も出すことができる。第2図で青色のダイクロツクミラーの透過率を示す曲線DM、およびコールドミラーの透過率を示す曲線CMを示す。たとえば、太陽電池1としてアモルフアスシリコンを用い、これに選択反射層2として青色のダイクロツクミラーDMを使えばほとんど発電効率を落さずにすむ。 またコールドミラーCMを使うときは、太陽電池としてはアモルフアスシリコンよりも単結晶シリコンのほうがよいことがわかる。選択反射層2の上に光散乱透過層3(当審注:「光拡散透過層3」の誤記)が設けられる。この光散乱透過層(当審注:「光拡散透過層」の誤記)としては、ブラスト処理したガラスまたはプラスチツクを用いてもよいし、またその代りに選択反射層2の表面につや消しラツカーなどを吹き付けてもよい。この光散乱透過層3(当審注:「光拡散透過層3」の誤記)は反射光の色を明るく見せるためのものであり、これがないと黒つぽく見えてしまう。」(第1頁左下欄第13行?第2頁左上欄第20行) a-2 「さらに、選択反射層2を文字や図形、絵などのパターン形状として面白味を出すこともできるし、また一枚の太陽電池の上に異なる色の複数の選択反射層を設けてもよい。 上述の構成よりなる本発明の色つき太陽電池はカラフルなので外装部品として用途が拡がり、さらにソーラーシステムとして屋外に設けるときは環境を明るくすることができる。」(第2頁左下欄第4?11行) そうすると、上記摘記事項a-1の記載から、選択反射層2及び光拡散透過層3は、太陽電池1の外部からの視認を困難にするとともに、カラー色調を付与するものとして機能することが読み取れる。 したがって、これらの記載事項によると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認める。 「太陽電池1と前記太陽電池の表面側に配設された選択反射層2と光拡散透過層3とを備える色つき太陽電池構造に用いられる選択反射層2及び光拡散透過層3であって、 前記選択反射層2及び前記光拡散透過層3が、ブラスト処理したガラスまたはプラスチックからなる光拡散透過層3と、太陽電池1側の表面に形成された選択反射層2とを備え、 前記選択反射層2が、前記選択反射層2に入射する入射光のうち、太陽電池の発電を生じせしめる波長域の光を透過し、 前記選択反射層2及び光拡散透過層3が、太陽電池1の外部からの視認を困難にするとともに、カラー色調を付与するものであることを特徴とする選択反射層2及び光拡散透過層3」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成7年6月22日に頒布された刊行物である国際公開第95/17015号(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 b-1 「この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであり、太陽電池に充分な光エネルギーを供給しつつ、外部からその太陽電池を視覚的に認識できなくし、しかも外観品質に優れデザインの多用化を実現することを目的とする。」(明細書第2頁第14?17行) b-2 「実施例7 次に、この発明の実施例7に係る太陽電池装置について、第14図?第16図を参照して説明する。 第14図は、この発明の太陽電池装置を腕時計に適用した場合の実施例7を説明するための外観模式図であり、文字盤の内側に太陽電池が4分割に設置された状態が示されている。第15図は、第14図におけるG-G線断面のうち、太陽電池よりも正面側の構造を模式的に示した断面模式図である。 時計ケース71内には、ガラス基材72が固定されている。このガラス基材72の裏面には、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法で形成することにより、太陽電池73が形成してある。 ガラス基材72の正面には、第16図に拡大して示すように、遮蔽層74が積層してある。遮蔽層74の片面には、光を散乱するための光遮蔽面75が形成してある。遮蔽層74は、この光遮蔽面75を太陽電池73と対向する側に向けて、ガラス基材72上に積層してある。この実施例7では、遮蔽層74として、透明な板状ガラスの片面を機械加工して、一辺が50μm単位の四角錐を縦横方向(X-Y方向)に敷き詰めたような連続プリズム形状の光遮蔽面75とした構造となっている。 さらに、遮蔽層74の正面には、拡散透過層76が積層してある。この実施例7では、拡散透過層76として、二酸化チタン粉を焼結成形したセラミックを用いた。この拡散透過層76は、光透過率が光の入射方向に関係なくほぼ55%であった。なお、拡散透過層76は、太陽電池式腕時計の文字盤として兼用できる構造となっている。」(明細書第27頁第21行?第28頁第15行) b-3 「以上説明した本発明の実施例7?実施例10に示した透過異方性を有する遮蔽層を用いれば、外部からの入射光の多くを太陽電池へ導いて充分な起電力を発生させると共に、太陽電池からの反射光を遮蔽して太陽電池の外観を外部から見えないようにする効果を一層顕著なものとすることができる。」(明細書第37頁第5?9行) b-4 「さらに、遮蔽層の材料として、実施例7、実施例8ではガラス板を用いたが、実施例9、実施例10の場合と同様、透明な樹脂を用いてもよい。」(明細書第37頁第26?28行) b-5 「同実施例の拡散透過層は、透明なエポキシ樹脂や、メタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの透明なプラスチック材料に、光散乱物質として二酸化チタン、炭酸カルシウム、ふっ化マグネシウムなどの微粒子を添加して形成することもできる。」(明細書第38頁第12行?16行) そうすると、上記摘記事項b-1?b-5からみて、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているものと認める。 「太陽電池73の上に透明樹脂の遮蔽層74と透明なプラスチック材料に、光散乱物質として二酸化チタン、炭酸カルシウム、ふっ化マグネシウムなどの微粒子を添加して形成した拡散透過層76からなる文字盤を配置し、外部からの入射光の多くを太陽電池へ導いて充分な起電力を発生させると共に、太陽電池からの反射光を遮蔽して太陽電池の外観を外部から見えないようにする太陽電池式腕時計の文字盤構造。」 3 対比 本願第9発明と引用例1発明とを対比する。 引用例1発明の「太陽電池1」、「選択反射層2」は、それぞれ本願第9発明の「ソーラセル」、「反射層」に相当する。 また、引用例1発明の「ブラスト処理したガラスまたはプラスチックからなる光拡散透過層3」と、本願第9発明の「光拡散剤を含んだ透明樹脂からなる表示板基板」とは、「光拡散機能を有し、透明材料からなる表示板基板」という点で共通する。 そして、引用例1発明の「色つき太陽電池構造」、「選択反射層2及び光拡散透過層3」と、本願第9発明の「ソーラ時計用表示板構造」、「ソーラ時計用表示板」とは、それぞれ「ソーラセル用表示板」、「ソーラセル用表示板構造」という点で共通する。 したがって、両者は、 【一致点】 「ソーラセルと、前記ソーラセルの表面側に配設されたソーラセル用表示板とを備えるソーラセル用表示板構造に用いられるソーラセル用表示板であって、 前記ソーラセル用表示板が、光拡散機能を有し、透明樹脂からなる表示板基板と、前記表示板のソーラセル側の表面に形成された反射層とを備え、 前記表示板が、少なくとも表示板に入射する入射光のうち、表示板下方に内蔵されたソーラセルの発電を生じせしめる波長域の光を表示板を介して下方に透過し、 前記表示板が、表示板を介してソーラセルの外部からの視認を困難にするとともに、表示板にカラー色調を付与するものであることを特徴とするソーラセル用表示板。」 である点で一致し、次の2点で相違する。 【相違点1】 ソーラセル用表示板構造に用いられるソーラセル用表示板が、本願第9発明では、ソーラ時計用表示板構造に用いられるソーラ時計用表示板であるのに対し、引用例1発明では、色つき太陽電池構造に用いられる選択反射層2及び光拡散透過層3である点。 【相違点2】 光拡散機能を有する表示板基板が、本願第9発明では、光拡散剤を含んだ透明樹脂からなるのに対し、引用例1発明では、ブラスト処理したガラスまたはプラスチックである点。 4 当審の判断 上記【相違点1】について検討する。 引用例2には、太陽電池式腕時計の文字板構造に関する上記引用例2発明が記載されており、引用例1発明と引用例2発明とは、共にソーラセルの外部からの視認を困難にし、カラー色調を付与するソーラセル用表示板構造という点において両者は技術的に共通の分野に属するものといえる。 してみると、ソーラセルの外部からの視認を困難にし、カラー色調を付与する目的で、引用例1発明の選択反射層2及び光拡散透過層3を引用例2発明のようなソーラ時計用表示板用に改造し、上記【相違点1】に係る本願第9発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 次に【相違点2】について検討する。 引用例2には、光拡散機能を有する時計用文字板において、光散乱物質を含んだ透明樹脂からなる構造が記載されており(摘記事項b-5参照)、この点の構造は周知である。そして、引用例2に記載の「光散乱物質」は、本願第9発明の「光拡散剤」に相当する。 してみると、引用例1発明の光拡散機能を有する表示板基板としたブラスト処理したガラスまたはプラスチックに代えて、上記周知の光拡散剤を含んだ透明樹脂からなる構造を採用して、上記【相違点2】に係る本願第9発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 そして、本願第9発明の奏する作用効果も、引用例1及び2の記載事項並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 5 むすび 以上のとおり、本願第9発明は、引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願第9発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項1?8及び10に係る発明について検討するまでなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-25 |
結審通知日 | 2007-07-31 |
審決日 | 2007-08-13 |
出願番号 | 特願平8-52059 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫻井 健太 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
上原 徹 居島 一仁 |
発明の名称 | ソーラ時計用表示板 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |