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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1164973 |
審判番号 | 不服2003-12921 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-09 |
確定日 | 2007-09-26 |
事件の表示 | 平成11年特許願第368432号「弾球遊技機の入賞装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 3日出願公開、特開2001-178900〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年12月24日の出願であって、平成15年1月17日付で拒絶理由通知がなされ、同年3月20日付で手続補正がなされ、同年6月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月7日付で手続補正がなされたものである。 2.平成15年8月7日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月7日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「遊技球の挙動により作動条件が成立すると図柄を変動表示した後に当りまたは外れを示す当否図柄を表示する第1と第2の図柄表示装置と、 所定条件が成立すると遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な可変入賞口を複数設けた弾球遊技機において、 前記第1の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な大入賞口と、 該大入賞口の上方に、前記第2の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な前記大入賞口より狭い小入賞口と、 該小入賞口の上方に、遊技球が入球することにより前記第1の図柄表示装置の図柄を始動させる始動口とを、同一の入賞装置ユニットに設け、 前記小入賞口及び前記大入賞口の開閉部材は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動することにより、開閉状態を可変とし、 前記入賞装置ユニットの内部が、前記大入賞口の球通路と前記小入賞口の球通路とが中枠により上下に区画されていることで、前記大入賞口と前記小入賞口とが近接配置されることを特徴とする弾球遊技機の入賞装置。」 と補正された。 上記補正は、平成15年3月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「入賞装置ユニット」を「入賞装置ユニットの内部が、前記大入賞口の球通路と前記小入賞口の球通路とが中枠により上下に区画されていることで、前記大入賞口と前記小入賞口とが近接配置される」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-108953号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、 「【発明の属する技術分野】 本発明は、可変表示装置の表示結果が予め定めた特定表示結果となったことに基づいて特定遊技状態を発生して遊技者に所定の遊技価値を付与する遊技機に関するものである。」(段落【0001】)、 「・・・、図1に示す可変表示装置30により、表示結果が予め定めた特定表示結果(大当り図柄)となったことに基づいて特定遊技状態を発生して遊技者に所定の遊技価値を付与するする本発明の可変表示装置の一例を構成している。」(段落【0007】)、 「【発明の実施の形態】 ・・・。図1は、遊技盤1の正面図であり、図2は、遊技盤1の背面図である。図において、遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2が・・・植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央上部には、2つの可変表示部材35、38a?38cを有する可変表示装置30が配置されている。」(段落【0014】)、 「可変表示装置30の2つの可変表示部材35、38a?38cのうち、上部に設けられる普通図柄用可変表示器35は、1個の7セグメントLEDで構成され、・・・通過口21a,21bに打玉が通過したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、・・・電動始動入賞口6を一定時間開放するものである。また、下部に設けられる可変表示部材38a?38cは、複数(3つ)の識別情報(図柄)を表示することが可能な回転ドラム38a?38cで構成され、・・・始動口装置4の始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せ(特定表示結果)となったときに、特定遊技状態となって、・・・可変入賞球装置10の開閉板11を所定の態様で開放駆動する。・・・。」(段落【0015】)、 「・・・可変表示装置30の下方には、始動口装置4が配置されている。この始動口装置4は、遊技領域3を落下する打玉を単に受け止める始動入賞口5と該始動入賞口5の下方でソレノイド7により開閉制御される電動始動入賞口6とが一体的に形成されている。下方の電動始動入賞口6は、・・・普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに一定時間(例えば、3秒)が経過するまで又は所定個数(例えば、3個)の入賞玉が発生するまで開放するもので、開放したときには、打玉が入賞し易くなっている。また、始動入賞口5及び電動始動入賞口6のいずれに入賞した入賞玉も遊技盤1の裏面に導かれて図2に示す始動入賞玉検出器8、9によって検出されるようになっている。」(段落【0016】)、 「・・・始動口装置4の下方には、可変入賞球装置10が配置されている。この可変入賞球装置10には、そのほぼ中央に長方形状の開口を横置きにした入賞領域が形成され、該入賞領域の前面をソレノイド12によって開閉制御される開閉板11が閉塞している。しかして、ソレノイド12がONされたときには、開閉板11が開放して遊技領域3を落下する打玉を受け止めて入賞領域に誘導するが、該入賞領域の内部が3つに区画され、その中央に特定入賞口(図示しない)が形成されている。特定入賞口には、図2に示すように、特定玉検出器13が臨み、該特定玉検出器13の左右に開閉板11によって入賞領域に入賞した入賞玉を検出する入賞玉検出器14a,14bが設けられている。また、可変入賞球装置10には、開閉板11の左右に通常の入賞口15a,15bが設けられる・・・。」(段落【0017】)、 「可変表示装置30と始動口装置4と可変入賞球装置10との関係について・・・、発射された打玉が始動入賞口5又は電動始動入賞口6に入賞すると、可変表示装置30の回転ドラム38a?38cが可変表示を開始し、一定時間(例えば、6秒)が経過すると順次停止する。そして、回転ドラム38a?38cの停止時の識別情報の組合せが所定の大当り図柄(例えば、7のゾロ目等)となったときに、特定遊技状態となり、可変入賞球装置10の開閉板11を所定期間(例えば、30秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放するように設定され、その開放している間遊技領域3を落下する打玉を入賞領域内に受け入れるようになっている。・・・。」(段落【0018】)、 「・・・、パチンコ遊技機1の裏面には、図2に示すように、その前面に遊技盤1の後面に導かれた入賞玉を所定の径路に沿って誘導する入賞径路が形成された入賞玉集合カバー体29が止着されている。しかして、上記した入賞径路のうち、前記始動口装置4の始動入賞口5及び電動始動入賞口6に入賞した入賞玉、及び前記入賞口15a,15bに入賞した入賞玉を導く入賞径路の末端には、誘導口29a?29cが開設され、入賞玉集合カバー体29の後面側に導かれるようになっている。・・・。」(段落【0021】)、 「・・・。可変表示装置30は、・・・取付基板31を有し、・・・入賞口32が形成され、該入賞口32の下方左右に飾り図柄34と普通図柄用可変表示器35とが設けられ、・・・ている。・・・。」(段落【0022】)、 「・・・、普通図柄用可変表示器35も7セグメントLEDで構成され、打玉が通過口21a,21bを通過したときに、3→F→7→3→・・・と変動を開始し、所定の時間(・・・)の経過後停止し、その停止時の表示結果が特定表示結果(本実施形態の場合には、7)となったときには、当りと判定されて前記電動始動入賞口6を開放する。」(段落【0023】)、 「・・・、可変表示装置30の下方には、複数の回転ドラム38a?38cが設けられている。この回転ドラム38a?38cが特定遊技状態の発生に直接的に関係する特別図柄表示装置を構成するものである。・・・、各回転ドラム38a?38cに表示される図柄のうち、3つの図柄を遊技者が視認できるようになっており、このそれぞれ3つの図柄合計9個の図柄のうち、・・・図15に示すように、中央横ライン及び斜め(対角線)ラインの合計3つのライン上に並んだ図柄によって当りか否かが決定される。」(段落【0024】)、 「・・・、第一実施形態中では、可変表示装置30を回転ドラム38a?38cで構成しているが、特にこれに限定するものではなく、LCD、CRT、LED、VFD、EL、あるいはプラズマによる表示器やベルト式で構成することも可能である。また、遊技機全体をLCD表示器等の表示装置で構成してもよい。即ち「打玉」「可変入賞球装置」等の構成部材を疑似的に表示器に表示することで遊技機を構成することも可能である。この場合では、賞球の払出しを得点等で代行しても良い。さらには、アレンジ式パチンコ遊技機、スロットマシン、あるいはその他のゲーム機を本発明の遊技機としても良い。」(段落【0069】)、 との記載が認められる。 また、上記摘記事項および図1より、可変表示部材38a?38cは、複数(3つ)の識別情報(図柄)を表示することが可能な回転ドラム38a?38cで構成され、始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せ(特定表示結果)となったときに、特定遊技状態となること(段落【0015】)、回転ドラム38a?38cが可変表示を開始し、一定時間(例えば、6秒)が経過すると順次停止して、回転ドラム38a?38cの停止時の識別情報の組合せが所定の大当り図柄(例えば、7のゾロ目等)となること(段落【0018】)、回転ドラム38a?38cが特定遊技状態の発生に直接的に関係する特別図柄表示装置を構成するものであり、各回転ドラム38a?38cに表示される図柄のうち、3つの図柄を遊技者が視認できるようになっており、このそれぞれ3つの図柄合計9個の図柄のうち、中央横ライン及び斜め(対角線)ラインの合計3つのライン上に並んだ図柄によって当りか否かが決定されること(段落【0024】)、および、普通図柄用可変表示器35は、1個の7セグメントLEDで構成され、通過口21a,21bに打玉が通過したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、電動始動入賞口6を一定時間開放すること(段落【0015】)、普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、開放したときには、打玉が入賞し易くなっていること(段落【0016】)、普通図柄用可変表示器35が7セグメントLEDで構成され、打玉が通過口21a,21bを通過したときに、3→F→7→3→・・・と変動を開始し、所定の時間の経過後停止し、その停止時の表示結果が特定表示結果(本実施形態の場合には、7)となったときには、当りと判定されて前記電動始動入賞口6を開放すること(段落【0023】)等から、可変表示部材38a?38cと普通図柄用可変表示器35は、「打玉の遊技領域3の落下により作動条件が成立すると図柄を可変表示した後に当りまたは外れを示す当否図柄を表示する」ものと認められ、 また、上記摘記事項および図1より、可変入賞球装置10のほぼ中央に長方形状の開口を横置きにした入賞領域が形成され、該入賞領域の前面をソレノイド12によって開閉制御される開閉板11が閉塞し、ソレノイド12がONされたときには、開閉板11が開放して遊技領域3を落下する打玉を受け止めて入賞領域に誘導すること(段落【0017】)、回転ドラム38a?38cの停止時の識別情報の組合せが所定の大当り図柄(例えば、7のゾロ目等)となったときに、特定遊技状態となり、可変入賞球装置10の開閉板11を所定期間開放するように設定され、その開放している間遊技領域3を落下する打玉を入賞領域内に受け入れるようになっていること(段落【0018】)、および、普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、電動始動入賞口6を一定時間開放するものであること(段落【0015】)、電動始動入賞口6は、普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに開放するもので、開放したときには、打玉が入賞し易くなっていること(段落【0016】)、普通図柄用可変表示器35の停止時の表示結果が特定表示結果となったときには、当りと判定されて電動始動入賞口6を開放すること(段落【0023】)等から、パチンコ遊技機1は、「図柄が予め定めた特定表示結果となったときに打玉が入賞し難い閉塞状態から打玉が入賞し易い開放状態に開閉制御される長方形状の開口を横置きにした入賞領域を有する大入賞口と電動始動入賞口6を設け」ているものと認められ、 また、上記摘記事項および図1より、普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、電動始動入賞口6を一定時間開放するものであること(段落【0015】)、ソレノイド7により開閉制御される電動始動入賞口6は、普通図柄用可変表示器35の表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに一定時間(例えば、3秒)が経過するまで又は所定個数(例えば、3個)の入賞玉が発生するまで開放するもので、開放したときには、打玉が入賞し易くなっていること(段落【0016】)、普通図柄用可変表示器35が7セグメントLEDで構成され、打玉が通過口21a,21bを通過したときに、3→F→7→3→・・・と変動を開始し、所定の時間の経過後停止し、その停止時の表示結果が特定表示結果(本実施形態の場合には、7)となったときには、当りと判定されて電動始動入賞口6を開放すること(段落【0023】)等から、電動始動入賞口6は、「大入賞口の上方に、普通図柄用可変表示器35に表示される普通図柄が予め定めた7となったときにはチューリップ式開閉翼が打玉が入賞し難い閉塞状態から打玉が入賞し易い開放状態に開閉制御され、大入賞口より幅狭な」ものであると認められ、 また、上記摘記事項および図1より、電動始動入賞口6は、ソレノイド7により開閉制御されることおよび始動口装置4は、始動入賞口5と電動始動入賞口6とが一体的に形成されていること(段落【0016】)、大入賞口の開閉板11がソレノイド12によって開閉制御されること(段落【0017】)等、並びに、チューリップ式の始動入賞口やアタッカー式の大入賞口の開閉機構の構造は例をあげるまでもなく周知であるから、開閉制御されるそれぞれの開閉部材において、「電動始動入賞口6のチューリップ式開閉翼は、支軸を中心として左右に回動することにより、開閉状態を可変とし、及び、大入賞口の開閉板11は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動することにより、開閉状態を可変とす」ることができるものと認められる。 これらの記載によれば、引用例1には、 「打玉の遊技領域3の落下により作動条件が成立すると図柄を可変表示した後に当りまたは外れを示す当否図柄を表示する可変表示部材38a?38cと普通図柄用可変表示器35と、 図柄が予め定めた特定表示結果となったときに打玉が入賞し難い閉塞状態から打玉が入賞し易い開放状態に開閉制御される大入賞口と電動始動入賞口6を設けたパチンコ遊技機1において、 前記可変表示部材38a?38cに表示される特別図柄が予め定めた大当り図柄の組合せとなったときに開閉板11が打玉が入賞し難い閉塞状態から打玉が入賞し易い開放状態に開閉制御される大入賞口を可変入賞球装置10に設け、 該大入賞口の上方に、前記普通図柄用可変表示器35に表示される普通図柄が予め定めた7となったときにはチューリップ式開閉翼が打玉が入賞し難い閉塞状態から打玉が入賞し易い開放状態に開閉制御され前記大入賞口より幅狭な電動始動入賞口6と、 該電動始動入賞口6の上方に、打玉が入賞したことに基づいて前記可変表示部材38a?38cの特別図柄を可変表示開始させる始動入賞口5とを、始動口装置4に一体的に設け、 前記電動始動入賞口6のチューリップ式開閉翼は、支軸を中心として左右に回動することにより、開閉状態を可変とし、及び、前記大入賞口の開閉板11は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動することにより、開閉状態を可変とするパチンコ遊技機1の入賞装置。」 との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「打玉」、「遊技領域3の落下により」、「可変表示」、「可変表示部材38a?38cと普通図柄用可変表示器35」、「図柄が予め定めた特定表示結果となったときに」、「打玉が入賞し難い閉塞状態」、「打玉が入賞し易い」、「開閉制御される」、「電動始動入賞口6」、「パチンコ遊技機1」、「可変表示部材38a?38cに表示される特別図柄が予め定めた大当り図柄の組合せとなったときに」、「開閉板11」、「普通図柄用可変表示器35に表示される普通図柄が予め定めた7となったときには」、「チューリップ式開閉翼」、「幅狭な」、「打玉が入賞したことに基づいて」、「可変表示開始」および「始動入賞口5」は、本願補正発明の「遊技球」、「挙動により」、「変動表示」、「第1と第2の図柄表示装置」、「所定条件が成立すると」、「遊技者に不利な閉鎖状態」、「遊技者に有利な」、「変換可能な」、「可変入賞口」、「弾球遊技機」、「第1の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると」、「開閉部材」、「第2の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると」、「開閉部材」、「狭い」、「遊技球が入球することにより」、「始動」および「始動口」に相当すると認められる。 また、引用例1発明の「可変入賞球装置10または始動口装置4」と、本願補正発明の「入賞装置ユニット」は、「入賞機器ユニット」で共通する。したがって、両者は、 「遊技球の挙動により作動条件が成立すると図柄を変動表示した後に当りまたは外れを示す当否図柄を表示する第1と第2の図柄表示装置と、 所定条件が成立すると遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な可変入賞口を複数設けた弾球遊技機において、 前記第1の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な大入賞口と、 該大入賞口の上方に、前記第2の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な前記大入賞口より狭い小入賞口と、 該小入賞口の上方に、遊技球が入球することにより前記第1の図柄表示装置の図柄を始動させる始動口とを、入賞機器ユニットに設け、 前記大入賞口の開閉部材は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動することにより、開閉状態を可変とする弾球遊技機の入賞装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1、入賞機器ユニットにおいて、本願補正発明では、「大入賞口と小入賞口と始動口とを同一の入賞装置ユニット」に設けているのに対して、引用例1発明では「大入賞口を下側の入賞機器ユニットである可変入賞球装置10に設け、電動始動入賞口6と始動入賞口5とを上側の入賞機器ユニットである始動口装置4に」設けており、つまり、引用例1発明では入賞機器ユニットを下側と上側に分割し二つの入賞機器ユニットを構成しており、本願補正発明のような同一の入賞機器ユニットとして単一の構成になっていない点、および、入賞機器ユニットの内部構造において、本願補正発明では、「入賞装置ユニットの内部が、大入賞口の球通路と小入賞口の球通路とが中枠により上下に区画されていることで、大入賞口と小入賞口とが近接配置される」ものであるのに対して、引用例1発明ではそのような構成となっていない点、 相違点2、小入賞口の開閉機構の構造において、本願補正発明では、「開閉部材は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動する」ものであるのに対して、引用例1発明では「チューリップ式開閉翼は、支軸を中心として左右に回動する」ものであり、本願補正発明のような開閉機構となっていない点、 (4)判断 上記相違点について検討する。 相違点1について、引用例1において、始動口装置4は、始動入賞口5と電動始動入賞口6とを一体的に形成し、そして、可変入賞球装置10は、中央の入賞領域の左右に通常の入賞口15a,15bが一体的に設けられている。つまり、引用例1には、複数の入賞口をそれぞれの入賞ユニットに一体的に設けることが開示されている。そして、遊技機分野において、一般的に、(1)小入賞口と始動口、(2)大入賞口と小入賞口、(3)大入賞口と始動口とをそれぞれ同一の入賞装置ユニットに設けることが周知{(1)例えば、引用例1、特開平9-276489号公報参照、(2)例えば、特開平6-105950号公報、特開平7-236738号公報参照、(3)例えば、特開平8-117416号公報、特開平8-117417号公報参照。}であり、さらに周知例(2)は3種類の入賞口を一体化する入賞装置ユニットであることから、2種類の入賞口を一体化する思想のある引用例1発明の可変入賞球装置10と始動口装置4に代えて、前記入賞機能の違う3種類の入賞口の組み合わせである周知のものを適用して、本願補正発明のように3種類の入賞口を一体化する入賞装置ユニットとした点に格別の発明力を要したとはいえなく、また、その際に、入賞装置ユニットの内部において、大入賞口と小入賞口とを隣接配置させるために、大入賞口用球寄せ室と小入賞口用球寄せ室を中枠を設けて区画し、それらの入球通路を中枠を介して上下に区画することも周知であり{例えば、特開平6-105950号公報(段落【0016】、【0022】、図4等)、特開平7-236738号公報(段落【0019】、【0021】、図4等)参照。}、本願補正発明のような内部構成とした点に格別の創意工夫を要したともいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。 相違点2について、遊技機分野において、一般的に、小入賞口の開口部を塞ぐ開閉板が下縁付近を横方向に開閉自在に軸着され、前回りに回動可能に支持されることが周知{例えば、特開平6-105950号公報(段落【0012】、【0020】等)、特開平7-236738号公報(段落【0015】、【0035】等)参照。}であり、引用例1の電動始動入賞口6のチューリップ式開閉翼に代えて、前記周知のものを適用して本願補正発明のように構成した点に格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。 そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年8月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年3月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「遊技球の挙動により作動条件が成立すると図柄を変動表示した後に当りまたは外れを示す当否図柄を表示する第1と第2の図柄表示装置と、 所定条件が成立すると遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な可変入賞口を複数設けた弾球遊技機において、 前記第1の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な大入賞口と、 該大入賞口の上方に、前記第2の図柄表示装置に表示される図柄が予め定められた当り図柄となると開閉部材が遊技者に不利な閉鎖状態から遊技者に有利な開放状態に変換可能な前記大入賞口より狭い小入賞口と、 該小入賞口の上方に、遊技球が入球することにより前記第1の図柄表示装置の図柄を始動させる始動口とを、同一の入賞装置ユニットに設け、 前記小入賞口及び前記大入賞口の開閉部材は、支軸を中心として前回りに傾動又は後回りに回動することにより、開閉状態を可変することを特徴とする弾球遊技機の入賞装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-26 |
結審通知日 | 2007-07-27 |
審決日 | 2007-08-15 |
出願番号 | 特願平11-368432 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 尚 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
小林 俊久 林 晴男 |
発明の名称 | 弾球遊技機の入賞装置 |
代理人 | 尾崎 隆弘 |