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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1164980
審判番号 不服2005-2568  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-14 
確定日 2007-09-26 
事件の表示 平成 9年特許願第324651号「リモートプラズマ源清浄技術を用いた窒化ケイ素堆積中の白色粉末低減用の装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月31日出願公開、特開平10-199874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年11月26日(パリ条約による優先権主張1997年1月14日、米国)の出願であって、平成16年11月9日付で拒絶の査定がなされ、これに対し、平成17年2月14日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月16日付の手続補正により、特許請求の範囲は請求項1?8に補正されたものである。

II.平成17年3月16日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年3月16日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?8は次のとおりに補正された。
「【請求項1】窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での白色粉末の生成を低減する方法であって、
前記プロセスチャンバの壁の実質的な部分を覆うライナを設けるステップと、
前記プロセスチャンバの内部に接続されたリモートチャンバを提供するステップと、
前記リモートチャンバ内で洗浄ガスのプラズマを生じさせるステップと、
前記プロセスチャンバ内に前記洗浄ガスのプラズマの一部を流入するステップと、
前記プロセスチャンバの壁の少なくとも一部を加熱し、前記白色粉末が実質的に低減されるステップと、
を備える、前記方法。
【請求項2】前記加熱ステップは、前記壁内の少なくとも1個の中空隔室内に、加熱された流体を流すことにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】真空ライン内、および前記プロセスチャンバに機能を提供するポンプシステム内で、白色粉末が低減される、請求項2記載の方法。
【請求項4】前記プロセスチャンバ内の上部電極にパワーを供給するステップを更に備える、請求項2記載の方法。
【請求項5】前記上部電極は、シャワーヘッドである、請求項4記載の方法。
【請求項6】前記電力は、RF源により供給される、請求項5記載の方法。
【請求項7】上記ライナは、アルマイト製である、請求項1記載の方法。
【請求項8】上記ライナは、セラミック製である、請求項1記載の方法。」

2.補正の適否について
上記補正は、当該補正前の平成16年2月17日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を請求項6に記載の発明特定事項によって限定的減縮することにより補正後の請求項1とし、さらに、補正前の請求項2を新たな請求項2とし、補正前の請求項3、7、及び8は、補正後の請求項3、7、及び8とするものである。
そして、残りの補正後の請求項4?6と補正前の請求項4?6の対応関係をみるに、補正後の請求項4?6は、補正前の請求項6の発明特定事項を具備するものの、補正前の請求項4、5の発明特定事項を具備していない。
そうすると、補正前の請求項4、5は削除されたものと解され、補正前の請求項6が補正後の請求項4?6に増項されたものと解されるので、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものには該当しないし、さらに、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも該当しない。

なお、請求人は、審判請求書の平成17年4月14日付の手続補正書において、「4.補正の適合性」(3頁16?20行)として、「同時に提出した補正は、請求項1を限定しておりますが、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、補正前後で変更ありません。」と主張しているが、上記のとおり補正後の請求項2を実質的に引用する請求項4、5は、補正前の請求項のいずれにも対応しておらず、増項していることになるから、上記主張はともかく補正は適法なものとはいえない。
又補正後の請求項1が、補正前の請求項6を独立項とし補正前の請求項1が削除されたものとしても、補正後の請求項4、5は、補正前の請求項のいずれにも対応していないから、上記判断が変わるものではない。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも該当しないものであるから、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年3月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成16年2月17日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での白色粉末の生成を低減する方法であって、
リモートエネルギ源を用いて反応種を形成する為にリモートチャンバ内で清浄ガスを活性化するステップと、
上記リモートチャンバから上記プロセスチャンバ内に上記反応種を流入するステップと、
上記プロセスチャンバの壁の少なくとも一部を加熱している間に、上記反応種で上記プロセスチャンバの内面を清浄するステップと、
を備える、方法。」

2.引用刊行物とその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願の優先日前に国内において頒布された特開平2-226721号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「(1)反応容器内に被処理物を多数収容し、この反応容器内に収容された前記被処理物群に処理ガスおよび反応ガスを用いて所定の処理を施す処理装置において、
前記反応容器外部に配設され前記処理ガスをプラズマ化する処理ガスプラズマ化機構と、
この処理ガスプラズマ化機構で生成された処理ガスプラズマを前記反応容器内へ導くプラズマ輸送管を備えたことを特徴とする処理装置。
(2)上記処理ガスプラズマ化機構によりプラズマ化した処理ガスと反応ガスとにより前記被処理物を成膜することを特徴とする処理方法。
(4)上記処理ガスプラズマ化機構によりエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマ化したエッチングガスにより前記反応容器内をエッチング洗浄することを特徴とする処理方法。」(特許請求の範囲(1)、(2)、(4))
(1b)「(従来の技術)従来より、LCD基板や半導体基板等を処理する装置として、例えばAl配線後の半導体ウエハ上にパッシベーション膜例えばSi3N4膜を形成する装置では、低温例えば400℃以下の温度雰囲気で成膜する装置が知られている。
第6図はこのようなパッシベーション膜を形成するための従来のプラズマCVD装置を示す図で、・・・・・
反応容器1端部には反応ガス6からの反応ガス例えばSiH4+NH3ガスを導入するためのガス導入口7が設けられており、・・・
このようなプラズマCVD装置によるバッシベーション膜の形成は、・・・反応ガスを高周波電極板4間でプラズマ化しなからSi3N4成膜処理を行う。・・・
しかしながら、上述したプラズマCVD装置では、被処理物がプラズマ発生場所に近接しているため、この生成されたプラズマにより被処理物が損傷を受けるという問題があり、また、電極板4に付着した反応生成物の膜がプラズマにより剥離されて塵埃となりこの塵埃が被処理物に付着するという問題があった。」(1頁右下欄14行?2頁右上欄5行)
(1c)「そこで、これら問題を解決するために反応容器外でプラズマを生成し、該プラズマを反応容器内に輸送して処理するいわゆる活性化ガス輸送方式が開示されている・・・。第7図はこの活性化ガス輸送方式によるプラズマCVD装置を示す図で、・・・反応容器11両側部に処理ガス14例えばN2やO2ガスを導入するための一対の処理ガス導入口15、上部には反応ガス16例えばSiH4を導入するための反応ガス導入口17・・・が設けられている。
また、反応容器11外部には、上記処理ガス14を導入するプラズマ発生容器20、マイクロ波導波管21、マイクロ波出力部22から構成されるプラズマ発生機構23が配設されている。
このような構成のプラズマ処理装置では、プラズマ発生機構23でプラズマ化したN2やO2等の処理ガスを輸送管24を介して処理ガス導入口15から反応容器11内に導き、一方反応ガス導入口17からはSiH4等の反応ガスを導き、これら混合ガス雰囲気中で所定の温度例えば400℃でSi3N4の成膜を行う。このようにプラズマ生成部を反応容器外部に設けることで、プラズマによる被処理物の損傷や塵埃発生の問題を解決することができる。」(2頁右上欄10行?左下欄19行)
(1d)「(作 用)本発明は、処理ガスを反応容器の外部でプラズマ化した後、反応容器内に導入して処理するため、プラズマ発生源と被処理物とが隔離され、プラズマ粒子による半導体ウエハの損傷を防止することができる。また、反応容器内に多数の半導体ウエハを収容し、これを反応容器外部のヒータ機構により加熱するので、多数の半導体ウエハを一度に均熱することができるので均一なプラズマ処理が可能となる。
さらに上記構成の処理装置を用いることで、ウエハクリーニング工程からCVD処理工程への連続的な処理も可能となり、作業時間の短縮化による生産性の向上が図れる。」(3頁右上欄11行?左下欄4行)
(1e)「(実施例)以下、本発明を縦型熱処理装置に適用した一実施例について図を参照して説明する。
・・・・・
反応容器31下端側壁には、反応容器31内に処理ガス例えばSi3N4膜形成を行うのであればN2ガス、SiO2膜形成を行うのであればO2ガスそしてエッチングを行うのであればエッチングガス例えばCF4+O2やNF3等を導入するための処理ガス導入口39と、反応ガス例えばSiH4ガスを導入するための反応ガス導入口40とが設けられている。・・・・・
一方、反応容器31外部には、処理ガスをブラズマ化するためのプラズマ発生機構43が設けられている。このプラズマ発生機構43は、プラズマ発生容器44と、このプラズマ発生容器44内にプラズマ生成用のマイクロ波を導入するためのマイクロ波導波管45、そしてマイクロ波導波管45にマイクロ波例えば2.45GHz、パルス間隔20mSのパルス状マイクロ波を供給するためのマイクロ波出力部46等からその主要部分が構成されている。」(3頁左下欄5行?4頁左上欄9行)
(1f)「次に、本発明の半導体製造装置を用いた処理方法の第3の例として、反応容器内に付着した反応生成物膜例えばPo1y-Si膜の除去を行う場合について第4図のフローチャートを参照しながら説明する。
成膜処理例えばPo1y-Si成膜が終了してウエハ・アンロード後(304)、反応容器31下部側壁に設けられた排気口40から真空機構53により真空引きし、・・・またヒータ機構34により反応容器31を所定の処理温度例えば630℃まで昇温する(401)。
そして成膜用処理ガス源48の切替え弁50を閉じ、エッチング用処理ガス源49(本実施例ではCF4+O2またはNF3とする)の切替え弁51を開けてプラズマ発生機構43のプラズマ発生容器44内にCF4+O2またはNF3ガスを導入する。この後プラズマ発生容器44にマイクロ波例えば電力600w、2.45GHzのマイクロ波を供給し、該CF4+O2またはNF3ガスをプラズマ化する(402)。
そしてこのプラズマ化したCF4+O2またはNF3ガスをプラズマ輸送管52を通して処理ガス吐出管41へと導きガス吐出孔41aから反応容器31内へ吐出する(408)。こうして、反応容器31内部露呈面やウエハボート支持台38に付着した塵埃発生の原因となる不純物膜例えばPoly-Si膜等を除去する洗浄処理を行う(404)。
・・・・・
このように上述実施例の半導体処理装置および処理方法によれば、処理ガスをプラズマ化するためのプラズマ発生機構43を反応容器31外部に設け、また反応容器31内に多数の半導体ウエハ35を収容してこれを反応容器31外部のヒータ機構34により加熱する構成としたので、プラズマ粒子による半導体ウエハの損傷を防止でき、また多数の半導体ウエハを一度に均熱することができるので均一なプラズマ処理が可能となる。」(5頁右下欄14行?6頁左下欄9行)
(1g)「ところで、本発明は上述した実施例のように反応容器が縦型のプラズマ処理装置に限定されるものではなく、反応容器が横型のプラズマ処理装置にも適用可能である。
第5図はこのような横型の反応容器を有するプラズマ処理装置に本発明を適用した実施例を示す図である。尚、第1図と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明を省略する。
・・・・・
このような構成の横型炉によるプラズマ処理例えばSi3N4成膜処理も前述第1の実施例と同様に、プラズマ発生機構43によりプラズマ化した成膜用処理ガス例えばN2ガス48と、反応ガス例えばSiH4ガス54を反応容器61内に導入してSi3N4成膜処理を行う。
・・・・・
さらに、半導体ウエハを搬出した後、プラズマ化したエツチング用処理ガス例えばCF4+O2またはNF3ガス49により反応容器61内の洗浄を行うこともできる。」(6頁左下欄14行?7頁左上欄8行)

3.当審の判断
3-1.刊行物記載の発明
刊行物には、上記摘記事項(1b)によれば、従来から、プラズマCVD装置に反応ガスとしてSiH4ガスとNH3ガスを導入して、この反応ガスをプラズマ化し、半導体ウエハ上にSi3N4膜を成膜すること、上記摘記事項(1c)によれば、活性化ガス輸送方式において、処理ガスとして反応容器外でプラズマ化したN2ガスを反応容器内に導入するとともに、反応ガスとしてSiH4ガスを導入して、半導体ウエハ上にSi3N4膜を成膜することがそれぞれ行われていたことが記載されている。
又上記摘記事項(1c)によれば、反応容器11外部には、処理ガス14を導入するプラズマ発生容器20、マイクロ波導波管21、マイクロ波出力部22から構成されるプラズマ発生機構23が配設され、このような構成のプラズマ処理装置では、プラズマ発生機構23でプラズマ化したN2やO2等の処理ガスを輸送管24を介して処理ガス導入口15から反応容器11内に導き、一方反応ガス導入口17からはSiH4等の反応ガスを導き、これら混合ガス雰囲気中で所定の温度例えば400℃でSi3N4の成膜を行うこと、摘記事項(1e)によれば、実施例にも同様のことが記載され、
更に、上記摘記事項(1f)によれば、成膜処理例えばPo1y-Si成膜が終了してウエハ・アンロード後、ヒータ機構34により反応容器31を所定の処理温度まで昇温し、そしてエッチング用処理ガス源(本実施例ではCF4+O2またはNF3とする)から、プラズマ発生機構のプラズマ発生容器44内にCF4+O2またはNF3ガスを導入し、該CF4+O2またはNF3ガスをプラズマ化する、そしてこのプラズマ化したCF4+O2またはNF3ガスをプラズマ輸送管を通して処理ガス吐出管へと導きガス吐出孔から反応容器31内へ吐出し、反応容器31内部露呈面やウエハボート支持台38に付着した塵埃発生の原因となる不純物膜例えばPoly-Si膜等を除去する洗浄処理を行うことが記載されている。
ここで、摘記事項(1f)には、反応容器内に付着する反応生成物としてのPo1y-Si膜等を除去する洗浄処理が例として挙げられているが、上記のとおり従来から、半導体ウエハ上にSi3N4膜を成膜する場合には、プラズマCVD装置にSiH4ガスとNH3ガスを導入して、Si3N4膜を成膜すること、あるいは、活性化ガス輸送方式においては、SiH4ガスと反応容器外でプラズマ化したN2ガスとを導入して、Si3N4膜を成膜すること(摘記事項(1b)(1c))が記載されているから、いずれの場合であっても、半導体ウエハ上にSi3N4膜を成膜する場合には、反応容器内に付着する反応生成物は窒化ケイ素膜等になることは自明のことであり、又反応容器内に付着する反応生成物窒化ケイ素を、NF3ガスでプラズマクリーニングすることは周知である(必要ならば、特開平7-335563号公報の段落【0004】、特開平5-214531号公報の請求項1、段落【0022】参照。)から、刊行物には、半導体ウエハ上にSi3N4膜を成膜する場合には、反応容器内に付着する反応生成物は窒化ケイ素膜等になり、又反応容器内に付着する反応生成物窒化ケイ素を、NF3ガスでプラズマクリーニングすることが記載されていることになる。

そこで、上記摘記事項(1a)?(1g)をまとめると、刊行物には、
「反応容器内にSiH4ガスとNH3ガス(又はN2ガス)を導入して、Si3N4膜を成膜するに際し、反応容器外部に配設されたプラズマ発生容器内で処理ガスをマイクロ波出力部からマイクロ波を供給し、プラズマ化する処理ガスプラズマ化機構と、この処理ガスプラズマ化機構で生成された処理ガスプラズマを前記反応容器内へ導くプラズマ輸送管を備えた反応容器内で、Si3N4膜を成膜し、その後、反応容器内に付着した反応生成物膜例えば窒化ケイ素膜等を除去するために、反応容器を昇温するとともに、エッチングガスであるNF3ガスを処理ガスプラズマ化機構によりプラズマ化し、このプラズマ化したエッチングガスにより反応容器内の窒化ケイ素膜等をエッチング洗浄除去する処理方法。」(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されているといえる。

3-2.対比
本願発明1と上記刊行物記載発明とを対比する。刊行物記載発明の「反応容器」、「プラズマ発生容器」、「マイクロ波出力部」、「プラズマ化したエッチングガス」、「NF3ガス」、及び「プラズマ化」は、それぞれ本願発明1の「プロセスチャンバ」、「リモートチャンバ」、「リモートエネルギー源」、「反応種」、「清浄ガス」、及び「活性化」に相当し、刊行物記載発明において、反応容器を昇温することは、本願発明1でのプロセスチャンバの壁の少なくとも一部を加熱することに相当するから、
両者は、「窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での方法であって、リモートエネルギ源を用いて反応種を形成する為にリモートチャンバ内で清浄ガスを活性化するステップと、上記リモートチャンバから上記プロセスチャンバ内に上記反応種を流入するステップと、上記プロセスチャンバの壁の少なくとも一部を加熱している間に、上記反応種で上記プロセスチャンバの内面を清浄するステップと、を備える、方法」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点:本願発明1は、 窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での白色粉末の生成を低減する方法であるとしているのに対し、刊行物記載発明は、Si3N4膜を堆積するために用いられる反応容器内に付着した窒化ケイ素膜等の除去を行うものの、白色粉末の生成と低減については不明である点。

3-3.相違点の検討
本願発明1では、上記したとおり、プロセスチャンバ内での白色粉末の生成を低減する方法としての構成は、刊行物記載発明と一致しているものであって、それ以外の白色粉末の生成を低減する方法としての構成は何も特定されていないといえる。
そして、窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での白色粉末の生成とは、次の(a)、(b)が考えられる。
(a)本願明細書の記載によれば、「SiNは、基板上だけではなく壁や排気システムの上にも堆積する。既知の現場清浄プロセスは、清浄ガス(cleaning gas)(多くの場合、フッ化窒素(NF3)である)を供給し、排気可能な揮発性生成物を形成するためにRFプラズマを用いてチャンバ内部のガスを活性化することにより、壁からSiN膜を除去することが可能である。この反応は、次のように進行する。」(段落【0003】)、
「【化2】NF3---RFプラズマ--→NFx+F
F+SiN---RFプラズマ--→SiF4+N2
生成物フッ化ケイ素(SiF4)は、この後、SiN堆積プロセス中にNH3およびフッ化水素(HF)と反応して、例えば六フッ化アンモニウム((NH4)2SiF6)を形成する。このような生成物および他の同様のケイ素含有フッ化物生成物は、ここでは「白色粉末」と呼ばれ、より一般的には、部分反応SiN膜を構成する。」(段落【0004】)と記載されている。(上記「六フッ化アンモニウム」は、「六フッ化ケイ素アンモニウム」の誤記と認める。)
ここで、生成物フッ化ケイ素(SiF4)は、この後、SiN堆積プロセス中にNH3およびフッ化水素(HF)と反応して、例えば六フッ化ケイ素アンモニウムを形成し、このような生成物および他の同様のケイ素含有フッ化物生成物は、「白色粉末」と呼ばれるとしているから、白色粉末は、六フッ化ケイ素アンモニウムおよび他の同様のケイ素含有フッ化物生成物であって、堆積プロセスにおいて、原料としてアンモニアを使用したものと考えられる。

(b)一般的には、
(b-1)反応生成物ないし反応中間体としての窒化ケイ素の白色粉体(特開昭64-17857号公報、3頁右上欄7?12行)、
(b-2)薄膜形成装置、配管等に付着、堆積した窒化珪素をNF3ガスのプラズマクリーニングした際、生成する珪フッ化アンモニウム〔(NH4)2SiF6〕を主成分とする化合物の白色もしくは黄白色の粉体(特開平6-80962号公報、段落【0008】)、色は明示されていないが、窒化珪素をクリーニングした際に珪フッ化アンモニウムの粉体が二次的に汚染物を生成する原因となること(特開平8-60368号公報、段落【0002】37?41行)、
(b-3)モノシランのハロゲン置換体としてのジクロロシランガスとアンモニアガスとが反応する際の、副生成物ハロゲン化アンモニウム(塩化アンモニウム)の白色微粉末(特開平4-192330号公報、1頁右欄2?15行、特開昭54-160172号公報、2頁左上欄3?19行)等
が通常存在する。

以上の(a)(b)による白色粉末等の生成物がプロセスチャンバ内での生成、付着、堆積することができるだけ少ない方が好ましいことは自明のことであるから、刊行物記載発明においても、白色粉末の生成を低減することは当業者ならば当然に考慮することである。

次に、Si3N4膜の成膜においては、上記したとおり反応容器内にSiH4ガスとNH3ガスを導入する場合と、反応容器内にSiH4ガスとN2ガスを導入する場合があるので、それぞれの場合に分けて考察する。

(1)刊行物記載発明のSi3N4膜の成膜において、反応容器内にSiH4ガスとNH3ガスを導入する場合:
刊行物記載発明は、反応容器内に付着した窒化ケイ素膜等の除去を行うのに、エッチングガスであるNF3ガスを処理ガスプラズマ化機構によりプラズマ化し、このプラズマ化したエッチングガスにより反応容器内の窒化ケイ素膜等をエッチング洗浄除去し、その後、SiH4ガスとNH3ガスを導入して窒化ケイ素を堆積するのであるから、本願発明1と同じ反応条件になるものである。そうすると、刊行物記載発明においても、窒化ケイ素を堆積するために通常用いるSiH4ガスとNH3ガスを導入する場合、ケイ素含有フッ化物生成物としての「白色粉末」が生成していることになっている。
一方、反応容器内に反応生成物が付着しないように、反応容器内面を加熱しておくことも周知技術である(必要ならば、特開平8-124866号公報の段落【0032】参照。)から、刊行物記載発明においても、反応容器内を加熱しながら窒化ケイ素を堆積するということは、成膜時の反応容器加熱によって、反応生成物である窒化ケイ素(上記のとおり通常白色粉体と考えられる。)が付着しないようになっており、即ち反応容器内での白色粉末の生成付着を低減することができるものである。

(2)刊行物記載発明のSi3N4膜の成膜において、反応容器内にSiH4ガスとN2ガスを導入する場合:
上記(1)と同様に、反応容器内に付着した反応生成物膜である窒化ケイ素膜等を除去するために、反応容器外でプラズマ化したNF3ガスを用いるのであるが、Si3N4成膜工程において、N2ガスを用いておりNH3ガスを用いていないので、(NH4)2SiF6のようなアンモニア基を含むケイ素含有フッ化物生成物の白色粉末が直接形成されることはなく、該白色粉体の生成は抑えられるものと考えられる。
してみると、反応容器内にSiH4ガスとN2ガスを導入する場合には、NH3ガスに由来する白色粉末としてのケイ素含有フッ化物生成物の生成は抑えられるのであるから、他の白色粉末の生成があったとしても、上記(1)の場合よりは総量としては少なくなるものであって、結果的に、白色粉末の生成が低減されることになる。

以上のとおり、本願発明1では、窒化ケイ素を堆積するために用いられるプロセスチャンバ内での白色粉末の生成を低減する方法であるとしているものの、その技術課題は自明のことであるし、又そのための構成は、刊行物記載発明と相違するとは云えない。そして、上記の刊行物に記載されているとおり、刊行物記載発明において、窒化ケイ素を堆積するためにSiH4ガスとNH3ガス、又はSiH4ガスとN2ガスを導入することは通常のことであるから、それぞれの導入ガスの場合に限定することは当業者ならば適宜選択し得ることである。また、上記相違点に基づく効果も格別の作用効果は認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであり、他の請求項2?8に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-17 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-11 
出願番号 特願平9-324651
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
宮崎 園子
発明の名称 リモートプラズマ源清浄技術を用いた窒化ケイ素堆積中の白色粉末低減用の装置および方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 山田 行一  

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