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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1165079
審判番号 不服2005-6823  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-15 
確定日 2007-09-25 
事件の表示 平成 8年特許願第 50788号「画像形成方法及び画像形成用トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月26日出願公開、特開平 9-222750〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成8年2月15日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成19年6月18日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 トナー像の加熱定着を行なう画像形成方法に用いられる現像剤であって、該現像剤は、少なくともトナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であり、該トナーは、少なくとも磁性体、カーボンブラック並びにポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bの2種の熱可塑性ポリエステル樹脂を含有し、該磁性体の粒径が0.01?0.2μmであり、該トナー中の磁性体の含有量が重量基準で20?35%であり、該ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度と分子量が該ポリエステルBのそれらよりも高く、且つ、該ポリエステル樹脂Bはガラス転移温度が50?60℃のものであることを特徴とする画像形成用二成分現像剤。」

2.刊行物に記載された事項
これに対して、当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願出願前国内において頒布された刊行物である特開昭64-15755号公報(以下、「刊行物8」という。)には、次の事項が記載されている。
(8a)「1.ガラス転移温度が50℃以上で軟化温度が200℃以下である架橋ポリエステル樹脂(a)100重量部、及び軟化温度が150℃以下で重量平均分子量が3,000?50,000である直鎖状ポリエステル樹脂(b)0.5?80重量部を直鎖状ポリエステル樹脂(b)の軟化温度以上230℃以下の温度範囲下で混合することを特徴とするトナー用樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲 第1項)
(8b)「〈発明が解決しよりとする問題点〉
本発明の目的とするところは、低温定着性に優れ、かつ非オフセット性及び耐ブロッキング性に優れたトナーを得ることが可能なポリエステル樹脂の製造法を提供することにある。」(第2頁左下欄1?5行)
(8c)「本発明が効果を発揮するためには超高分子量ポリエステルは(1)架橋ポリエステルであって、(2)耐ブロッキング性の観点からガラス転移温度は50℃以上、好ましくは60℃以上であり、・・・。また超低分子量ポリマーは、(4)流動性付与の観点から重量平均分子量は3,000?50,000、好ましくは5,000?20,000であり、・・・。さらに非オフセット性については超高分子量ポリエステルである架橋ポリエステルの性質を利用し、低温定着性については低分子量ポリエステルの性質を利用し、さらに耐ブロッキング性に優れたトナー用樹脂として使用するには、(6)架橋ポリエステル樹脂(a)100重量部に対し直鎖状ポリエステル樹脂(b)を0.5?80重量部、好ましくは3?30重量部の範囲で配合しなければならない。」(第2頁右下欄13行?第3頁左上欄14行)
(8d)実施例1として
(架橋ポリエステルの合成)原料及び触媒として、テレフタル酸 50モル部、イソフタル酸 50モル部、ペンタエリスリトール 20モル部、エチレングリコール 160モル部、ジブチルスズオキシド 0.05モル部を用い、反応させることにより、ガラス転移温度71℃の架橋ポリエステル粉末を得たこと
(直鎖状ポリエステルの成分)原料及び触媒として、テレフタル酸 40モル部、イソフタル酸 60モル部、エチレングリコール 170モル部、テトラブトキシチタネート 0.08モル部を用い、反応させることにより、重量平均分子量28500、ガラス転移温度53℃の直鎖状ポリエステル粉末を得たこと
(トナー用樹脂の製造)先に合成した架橋ポリエステル樹脂粉末100部に対し、直鎖状ポリエステル樹脂粉末20部を、180℃に加熱したスクリュー押出機で混練し吐出した樹脂混合物を、水冷、乾燥後粉砕してトナー用樹脂を得たこと
(トナー用樹脂の評価)前記トナー用樹脂95部とカーボンブラック5部を2軸押用機により溶融混練し、冷却した後、ジェットミルで微粉砕し、ジグザグ分級機で分級し、平均粒径10.2ミクロンのトナーを得たこと、及び、このトナー5部に対し、鉄粉キャリヤ95部を加え、ポリエステルトナー用電子写真複写機(定着温度の変更を可能としたもの)を用いて静電荷像を現像し、毎分50枚の速度で、5000枚の連続コピーを行ったところ、カブリのない良好な画像が得られたこと(第4頁右下欄4行?第5頁右下欄下から3行)
(8e)実施例2として
(架橋ポリエステルの合成)原料及び触媒として、テレフタル酸 50モル部、イソフタル酸 50モル部、グリセリン 15モル部、エチレングリコール 160モル部、3酸化アンチモン 0.04モル部を用い、反応させることにより、ガラス転移温度68℃の架橋ポリエステル樹脂粉末を得たこと
(トナー用樹脂の製造)得られた架橋ポリエステル100部に対し、実施例1で合成した直鎖状ポリエステル10部を実施例1と同一の方法で処理し、トナー用樹脂を得たこと
(トナー用樹脂の評価)実施例1と同一の方法で平均粒径11.5ミクロンのトナーを得たこと、及び、これを実施例1で使用した複写機に装填し、毎分50枚の速度で5000枚連続コピーを行ったところ、カブリのない鮮明な画像が得られたこと(第5頁右下欄下から2行?第6頁右上欄下から3行)
(8f)実施例3として
(架橋ポリエステルの合成)原料及び触媒として、テレフタル酸 20モル部、イソフタル酸 70モル部、無水トリメリット酸 10モル部、エチレングリコール 100モル部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物 20モル部を用い、反応させることにより、ガラス転移温度69℃の架橋ポリエステル樹脂粉末を得たこと
(直鎖状ポリエステルの合成)縮合反応条件を変えた以外は実施例1の(直鎖状ポリエステルの合成)と同一の操作を行い、重量平均分子量11800、ガラス転移温度52℃の線状ポリエステル粉末を得たこと
(トナー用樹脂の製造)得られた架橋ポリエステル100部に対し、直鎖状ポリエステル3部を実施例1と同一の方法で処理し、トナー用樹脂を得たこと
(トナー用樹脂の評価)前記トナー用樹脂95部とカーボンブラック5部を、2軸押出機により溶融混練し、冷却した後、ジェットミルで微粉砕し、ジグザグ分級機で分級し平均粒径11.3ミクロンのトナーを得たこと、及び、このトナー5部に対し鉄粉キャリヤ95部を加え、ポリエステルトナー用電子写真複写機(定着温度の変更を可能としたもの)を用いて静電荷像を現像し、毎分50枚の速度で、5000枚の連続コピーを行ったところ、カブリのない良好な画像が得られたこと(第6頁右上欄下から1行?第7頁左上欄12行)
(8g)第9頁右上欄の第18表には、実施例1?3の各々について、最低定着可能温度、オフセット発生温度が記載されており、最低定着可能温度が低く、オフセット発生温度が高いことが示されており、さらに、耐ブロッキング性、定着強度、画質が「良」であることが記載されている。

3.対比・判断
刊行物8には、架橋ポリエステル樹脂(a)の分子量は明記されていないものの、記載事項8cの、架橋ポリエステルが超高分子量ポリエステルである旨の記載、及び、重量平均分子量が3,000?50,000のポリマー、即ち直鎖状ポリエステル樹脂(b)が超低分子量ポリマーである旨の記載からみて、架橋ポリエステル樹脂(a)の分子量は直鎖状ポリエステル樹脂(b)の分子量より高いことは明らかである。また、記載事項8d,8e,8fには、架橋ポリエステル樹脂(a)のガラス転移温度が直鎖状ポリエステル樹脂(b)のガラス転移温度より高い実施例1?3が記載されており、この実施例1?3で用いられる直鎖状ポリエステル樹脂(b)のガラス転移温度は53℃、53℃、52℃である。
そして、記載事項8d,8e,8fには、トナーに対しキャリヤを加え、ポリエステルトナー用電子写真複写機(定着温度の変更を可能としたもの)を用いて静電荷像を現像して画像形成を行いトナー用樹脂の評価を行ったことが記載されており、このトナーに対しキャリヤを加えたものは「現像剤」又は「二成分現像剤」と云え、また、定着温度の変更を可能とした電子写真複写機を用いていることからみて、トナー像の加熱定着を行なっていることは明らかである。
よって、刊行物8には、記載事項8a?8gからみて、次の発明(以下、「刊行物8発明」という。)が記載されていると云える。
「トナー像の加熱定着を行う画像形成方法に用いられる現像剤であって、該現像剤は、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であり、該トナーは、カーボンブラック並びに架橋ポリエステル樹脂(a)及び直鎖状ポリエステル樹脂(b)を含有し、該架橋ポリエステル樹脂(a)のガラス転移温度と分子量が該直鎖状ポリエステル樹脂(b)のそれらよりも高く、且つ、該直鎖状ポリエステル樹脂(b)はガラス転移温度が53℃又は52℃のものである画像形成用二成分現像剤。」
本願発明1と刊行物8発明を対比すると、後者における「架橋ポリエステル樹脂(a)」、「直鎖状ポリエステル樹脂(b)」は、各々、前者における「ポリエステル樹脂A」、「ポリエステル樹脂B」に相当する。そして、後者における「架橋ポリエステル樹脂(a)」、「直鎖状ポリエステル樹脂(b)」がいずれも熱可塑性ポリエステル樹脂であることは、記載事項8aに記載の両者の軟化温度からみて明らかである。
してみると、両者は、
「トナー像の加熱定着を行なう画像形成方法に用いられる現像剤であって、該現像剤は、少なくともトナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であり、該トナーは、少なくともカーボンブラック並びにポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bの2種の熱可塑性ポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度と分子量が該ポリエステルBのそれらよりも高く、且つ、該ポリエステル樹脂Bはガラス転移温度が50?60℃のものである画像形成用二成分現像剤。」
で一致し、下記の点で相違する。
(i)本願発明1は、トナーが磁性体を含有し、該磁性体の粒径が0.01?0.2μmであり、該トナー中の磁性体の含有量が重量基準で20?35%であるのに対し、刊行物8発明は、トナーに磁性体を含有すること自体特定がない点。

そこで、この相違点(i)について検討する。
本願明細書【0006】段落にも記載されているように、機械内でのトナー飛散やコピー画像の地汚れ現象を解決するために、二成分現像剤のトナー中に磁性体を添加することは、本願出願前当該技術分野において周知の技術である。
たとえば、特開平3-42675号公報には、磁性体粒子及び縮合ポリエステル樹脂を含有するトナーとキャリアを有する二成分系磁性現像剤について記載されており、磁性体粒子として平均粒径0.05?0.5μmのものを用い(第3頁左上欄3?7行)、磁性体粒子をトナーに対して5?15重量%含有させること(第3頁左上欄11?16行)が記載されている。特開平3-200156号公報には、磁性粉とそれを結着させる結着樹脂からなるトナーとキャリアとからなる二成分現像剤について記載されており、磁性粉は、平均粒子径0.05?0.20μmのものを用い(特許請求の範囲、第3頁左上欄3?10行)、トナーの結着樹脂100重量部に対して0.5?15重量部用いること(第3頁右上欄9?14行)が記載されている。特開昭58-216256号公報には、トナー中に磁性体と導電性微粉末を含有する二成分現象剤について記載されており、トナー中の磁性体の含有量は10?30重量%が好適であること(第2頁左上欄6?10行)が記載されている。さらに、特開昭57-130050号公報には、マグネタイト約20重量%?約50重量%及び重合体状エステル化生成物からなる樹脂と樹脂被覆キャリア材を含む二成分現像剤が記載されている。
よって、刊行物8発明においても、地汚れやトナー飛散を防止することを目的として、トナーに磁性体を含有させることは当業者が容易に想到し得たことであると認められる。
そして、その際、トナーへの磁性体の分散性を考慮して磁性体の粒径を0.01?0.2μmと特定することは、当業者が適宜為し得たことと認められる。さらに、トナー中の磁性体の含有量については、上述の例示文献においても、それぞれ、トナーに磁性を持たせることによる地汚れやトナー飛散の防止と磁性を有するトナーとキャリアとの付着力による現像性の低下とのバランスにおいて、磁性体の含有量を定めているところであり、刊行物8発明においてトナーに磁性体を含有させるに際し、使用するキャリアの種類、現像器の設定トナー濃度等を考慮して、その含有量を重量基準で20?35%と特定する程度のことは当業者が適宜為し得たことであると認められる。

そして、刊行物8発明においてトナーに磁性体を含有させたこと、さらには、磁性体の粒径を0.01?0.2μm、トナー中の磁性体の含有量を重量基準で20?35%と特定したことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物8に記載された発明、及び、本願出願前当該技術分野において周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし4に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-23 
結審通知日 2007-07-26 
審決日 2007-08-07 
出願番号 特願平8-50788
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 山口 由木
中澤 俊彦
発明の名称 画像形成方法及び画像形成用トナー  
代理人 武井 秀彦  

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